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論文関連の(ほぼ)個人用メモ。



arXiv:1907.00449
Benneke et al. (2019)
A Sub-Neptune Exoplanet with a Low-Metallicity Methane-Depleted Atmosphere and Mie-Scattering Clouds
(低金属量のメタン欠乏大気とミー散乱雲を持つサブネプチューン系外惑星)

概要

太陽系には類似したものが存在しないタイプである,地球と海王星の中間程度の半径を持つ惑星が系外惑星には多数発見されている.これらのスーパーアースとサブネプチューンは,おそらく惑星形成の結果としては最も一般的なものだろうと考えられる.

このような惑星の質量と半径の測定からは,全体の組成は巨大ガス惑星よりも多様性があることが示唆されている.しかし大気中の分子吸収の分光学的な直接検出と,大気ガスの混合比への制約は,海王星よりも重い惑星に限られていた.

ここでは,ハッブル宇宙望遠鏡とスピッツァー宇宙望遠鏡を用いた 12 回のトランジットと 20 回の二次食観測から,サブネプチューン GJ 3470b を解析した.この惑星は 12.6 地球質量であり,これまでに探査された系外海王星型惑星 (22-23 地球質量),および岩石惑星の密度を持つことが分かっている 7 地球質量のものたちの中間に位置している.

何年にもわたるデータ取得から,大気中の水の吸収の確実な検出を報告する (5σ 以上).また,これまでで最も弱い輻射を受けている惑星からの熱放射の検出も報告する.

今回の観測から,この惑星が巨大ガス惑星に似た低金属量で水素主体の大気を持つことが明らかになったが,大気中のメタンガスは大きく欠乏していることが分かった.

この惑星が太陽に近く,大気の金属量が低い (O/H = 0.1- 18) ことは,低質量惑星の形成過程や,その後の固体の降着過程に対して重要な制約を与える.
大気中のメタンの存在度が低いことは,これまでに予想されていたよりもメタンが効率的に破壊されていることを示唆する.このことから,中心星に近接する惑星においては,CH4/CO の遷移曲線を再考する必要があることを指摘する結果である.

最後に,ミー散乱の特徴である 2-3 µm での雲の不透明度の急激な減少も検出した.これにより雲の粒子サイズ対して狭い制約を与えることを可能とした.これらの結果は,この惑星を JWST を用いた中間赤外線での特徴付け観測の主要なターゲットとするものである.

GJ 3470b について

ハッブル宇宙望遠鏡を用いた低質量系外惑星の大気のスペクトルサーベイの一環として GJ 3470b を観測した.この惑星は軌道周期 3.3 日,12.6 地球質量であり,中心星に近接したサブネプチューン惑星の典型例である.

惑星の表面重力が小さく,中心星に近く,また中心星のサイズが小さいことから,大気の詳細な特徴付のための良い観測対象である.

観測

波長 1.1-1.7 µm を観測できる Wide Field Camera 3 を用いて観測を行った.また Space Telescope Imaging Spectrograph で可視光 (0.55-1.0 µm) の範囲も観測した.

さらに,スピッツァー宇宙望遠鏡の IRAC でも 3.6, 4.5 µm の波長帯を用いて観測した.

結果

観測の結果,1.4 µm の波長帯で,弱まってはいるものの統計的に有意な水の吸収を検出した.また,大気は低金属量で水素主体の大気であるとするモデルと一致し,O/H (水素に対する酸素の存在比) は太陽の 0.2-18 倍であった
トランジット深さの波長ごとの変化から,高金属量で高分子量の大気を持つ可能性は否定される.

この惑星の高高度の雲は,過去に報告されていたヘイズによるレイリー散乱や,単純な灰色の雲層では再現できない.そのかわり,有限サイズのミー散乱エアロゾル粒子による消散の直接的な観測的証拠が得られた.
エアロゾル雲は波長 2-3 µm で急速に透明になり,雲の最も上層での有効粒子サイズは 0.60 µm であるとの制約が得られた

メタン欠乏の原因

この惑星の透過スペクトルでは,メタンの吸収が明確に欠乏していることが判明した.
この惑星のように比較的低温で低金属量の大気に対しては,炭素-酸素比が太陽と同じ場合は,炭素を保持する分子としてメタンが主要な成分になることが予測される.しかし WFC3 の 1.6 µm のメタンの吸収とスピッツァー宇宙望遠鏡 IRAC 3.3 µm での吸収ではメタンは検出されず,この惑星の大気はメタンが大きく欠乏していることが示唆された.

メタンの欠乏に関しては二次食の観測からも支持されており.ベストフィットモデルでは,メタンの存在度は化学平衡状態の予測と比べて 3 桁も低いものであった.

光化学モデルを用いてメタン欠乏の原因を評価した.その結果,今回の観測で探査された大気層においては,層中のメタンの存在量は光化学反応によって実質的に減少はしないことが示された.
欠乏の原因として考えられるのは,惑星内部での加熱,大気の深い層でのメタンの触媒作用による光化学的欠乏,あるいは惑星形成過程の結果としての低い C/O 比などが考えられる.

内部加熱シナリオの場合,内部温度を 300 K 以上にして CO 主体の状態にする必要がある.GJ 3470b の進化モデルは,形成による内部熱は惑星の年齢よりもずっと短い数百万年の間に放射で失われてしまう.しかし系内に未発見の惑星があり,強制離心率による潮汐加熱が存在する場合は,内部加熱の原因になりうる.これは木星の衛星イオと似た状況である.

その他には,大気の深層で NH3 と H2S の光解離によって大量の水素原子が放出されてメタンの触媒破壊が発生している可能性がある.この惑星の大気組成を化学-運動学モデリングと比較するとアンモニアも不足していることから,この触媒破壊の可能性と整合的である.

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