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arXiv:1912.01009
Mankovich & Fortney (2019)
Evidence for a Dichotomy in the Interior Structures of Jupiter and Saturn from Helium Phase Separation
(ヘリウムの相分離による木星と土星の内部構造の二分性の証拠)

概要

流体の金属水素中におけるヘリウムの非混和性についての最近の理論的研究を適用して,木星と土星の熱進化の比較研究を行った.

2 つの惑星の内部におけるヘリウムの再分配は,非常に異なる様相で進行する.木星探査機ガリレオのプローブによるその場観測では,木星大気のヘリウムが欠乏していることが分かっており,このことから木星の内部のヘリウムは緩やかに分化していることが確認される,

また,太陽年齢における木星のヘリウムの欠乏,半径および内部からの熱流束を調和させるモデルを構築した.最近改定された木星のボンドアルベドの値は,木星の内部からの熱流束が低いことを示唆しており,やや超断熱状態の内部で発生するようなヘリウム分化に基づく光度を用いることで,すべての観測的制約を満たすことが出来る.

同じモデルをより軽い質量を持つ土星に適用した結果,土星は不可避的にヘリウム豊富なシェルや核を形成する,劇的なヘリウム分化が進行することが予測される.これは,過去に Stevenson & Salpeter などによって提唱されていた結果である.

土星のヘリウム分化に起因する光度は,土星内部が断熱的であった場合でも,冷却時間を太陽系年齢まで伸ばすには不十分である.このモデルは,土星の大気ヘリウムは Y = 0.07 ± 0.01 にまで減少していることを予測し,これは He/H2の 混合比が 0.036 ± 0.006 であることに対応している.
また,内部でのネオンの分化は,どちらの惑星でも過去に光度に寄与していたことが示された.

今回の結果は,木星と土星の熱進化は単一の物理モデルで自己無撞着に説明できることを示し,土星の内部構造とダイナモの将来のモデルに重要な示唆を与えるものである.

ガス惑星の内部構造モデル

木星を取り扱う進化モデルでは,効率的な対流の結果としてよく混合されてほぼ断熱な内部であるとした場合に,太陽年齢 (=現在) の時点での木星の光度を説明することに広く成功している (Graboske et al. 1975,Fortney et al. 2011).
しかし似たモデルを土星に適用した結果,観測されている熱流を再現できないことが分かっている (Pollack et ak. 1977など).そのため,土星に関してはさらなる光度の起源が必要である.

惑星内部の熱エネルギーに由来する一次光度とは別に (Hubbard 1968),組成の分化は低温ガス惑星の主要な光度源となる可能性が指摘されている (Smoluchowski 1967など).特に,液体金属水素へのヘリウムの溶解度は限られているため,液体金属水素内でヘリウム豊富な液滴が形成され,対流再分配のタイムスケールと比べて短い時間で内部へ落下してしまうと考えられる (Salpeter 1973).

Stevenson & Salpeter (1977) で述べられている通り,一様で断熱な木星の内部構造モデルが成功していることから,木星ではヘリウムの落下はつい最近始まったばかりか,あるいは全く起きていないことが示唆される一方,より低温な土星ではおそらく組成の分化は重要であることが示唆される.

その後に木星の大気で観測されたヘリウムの欠乏は,木星では最近ヘリウムの分化が始まったことを示唆している (von Zahn et al. 1998).

ヘリウムの雨が土星の光度を説明できるという仮説は,信頼できる相図 (暫定的な相図であっても) のヘリウムの非混和性を含んだ進化計算によって支持されている (Hubbard et al. 1999など).

一方,Leconte & Chabrier (2013) は異なる重要なシナリオを提案しており,土星の深部が二重拡散対流によって断熱構造から大きく離れた構造になることで,ヘリウムの非混和性に頼らずとも土星の光度を説明できるとしている.
しかし,木星ではヘリウム分化が起きているという直接的な証拠があり,内部がより低温であると考えられる土星では,ヘリウムの分化を避けるのは難しいと思われる.


この研究の主要な動機は 2 つある.
まず,木星のボンドアルベドが,カッシーニの複数機器のデータの解析に基づいて,最近大幅に改定されたことである.これは,木星は過去のボイジャーとパイオニアのデータの組み合わせ (Hanel et al. 1981) に基づいてこれまで考えられてきたよりも太陽のフラックスを吸収する量が少なく,木星自身からの内部フラックスがより多いことを示唆している (Li et al. 2018).この表面環境のアップデートは,ヘリウムの雨の寄与である可能性がある,内部からのより多くなフラックスがあることを示唆している.

2 番目は,非理想エントロピー効果を含み,あり得るヘリウム割合の全領域をカバーする,過去の研究に基づいた新しい相図の研究が発表されたことである (Sch ̈ottler & Redmer 2018).

結論

土星の光度が驚くほど高いことは,これまで未解決問題とされてきた.土星のもっともらしい進化経路を提供するモデルでは,単純な冷却を超える追加の光度源の存在,あるいはある程度の非対流熱輸送による断熱構造からの大きなずれをもつ内部構造のいずれかを必要としていた.

一方で木星の光度はシンプルな内部構造モデルで十分説明できるが,経験的によく制約された木星大気の存在量からは,ヘリウムおよびネオンを分離させる内部過程の存在が明らかとなっている.

ここでは木星と土星に対して同一の仮定を課し,水素とヘリウムの非混和性に関する物理的研究の最近の結果と,木星の内部熱流束の近年大幅に改定された結果に基づき,新しい熱進化モデルを計算した.その結果,このモデルは木星と土星のどちらの現在の熱流束を説明可能で,木星大気のヘリウム欠乏も説明できる.

主な結果は,

1. 木星大気で観測されているヘリウム欠乏 (von Zahn et al. 1998) は, Scho ̈ttler & Redmer (2018) の位相曲線が 2 Mbar で予測するよりも温かい,539 K での水素とヘリウムの相分離の発生を示唆する.

2. 木星の薄いヘリウム勾配領域を通過する熱流は,Rp ~ 0.05 でいくらか超断熱的になる.

3. ここで明らかにしたように,土星では組成の分化によって,原始太陽もしくは木星類似の混合からの大きな局所的な乖離が発生する.そのため,ヘリウム混合比空間をカバーする相図は,低温の巨大ガス惑星内でのヘリウムの分布を自己無撞着に予測するために必要である.

4. ここで考慮したヘリウムの過剰密度の急速な rainout の極限では,現実的な相図を元にすると,常に濃くヘリウム豊富な層を土星の深部に形成する.

5. 木星のガリレオ探査機によるヘリウムの制約と整合的な相図を満たす土星モデルは,ボイジャーの時代の土星のボンドアルベドの推定 ~0.3 を用いた場合,太陽年齢での観測されている土星の熱流束を再現できない.

6. 土星に対するモデルは,土星の真のボンドアルベドが ~0.5 だった場合に,すべての要素を説明可能である.

7. 土星の内部は,断熱と超断熱構造どちらの可能性も同様にあり得る.

8. ネオンの分化はどちらの惑星の熱進化においても大きなエネルギー的な寄与を起こしたと考えられるが,ヘリウムの分化による影響よりは 1-2 桁弱い.

9. 木星のガリレオ探査機によるヘリウムの制約を満たす相図は,土星大気のヘリウム存在度を精密に予測する.具体的な値は,Y = 0.07 ± 0.01,He/H2 の混合比が 0.036 ± 0.006 である.

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