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論文関連の(ほぼ)個人用メモ。



arXiv:1912.09192
Hedman et al. (2019)
Photometric analyses of Saturn's small moons: Aegaeon, Methone and Pallene are dark; Helene and Calypso are bright
(土星の小衛星の測光解析:アイガイオン,メトネとパレネは暗く,ヘレネとカリプソは明るい)

概要

衛星の細長い形状を明示的に考慮し,異なる衛星の間の比較を容易にする測光モデルを用いて,土星の小型の衛星の表面輝度の調査を行った.
このモデルを用いた土星探査機カッシーニの撮像データの解析から,アイガイオン,メトネ,パレネは,近傍の中間サイズの衛星のこれまでの観測から与えられている傾向から予測されるよりも暗いことが判明した.一方で,トロヤ衛星のカリプソとヘレネは,軌道を共有する衛星テティスとディオネに比べてずっと明るい表面を持っていることが分かった.

これらの観測は,土星衛星の表面輝度は E 環の粒子の局所的な流束によって左右されているという理論とは非整合的であり,その他の現象が表面組成に影響を及ぼしていることを強く示唆するものである.

アイガイオン,メトネ,パレネの暗さは,高エネルギーの陽子の存在と相関しており,高エネルギー放射が小さい衛星を暗化させる原因となっていることを示唆している.一方で,プロメテウスとパンドラは近傍のチリの多い F 環との相互作用によって表面が明るくなっているように思われる.

またカリプソとヘレネの輝度が予測より明るいことの説明としては,増加したダストのフラックスが原因である可能性がある.しかし,E 環にはこれらの 2 衛星を選択的に明るくするような明確な構造は見られない.そのため,E 環の粒子の軌道要素に関連する,流束の非対称性につながる微妙な原因があるか,あるいは最近これらの衛星の輝度を一時的に増加させる何かが発生しているかしている必要がある.

土星の小型衛星について

土星の規則衛星は非常に多様なスペクトルおよび測光特性を持つ.

エンケラドゥスは非常に明るく氷が豊富な表面を持ち,イアペトゥスの後行半球は土星の不規則衛星に由来するデブリの層で覆われた極めて暗い表面を持つ.タイタンと環の間を公転する中間サイズの衛星 (ミマス,エンケラドゥス,テティス,ディオネ,レア) は,観測されたスペクトルと測光データに基づくと,多くは E 環との相互作用と関係していると考えられる.

この広く薄い E 環は,ダスト程度の大きさの氷豊富な粒子から出来ており,エンケラドゥスの地質学的活動によって生成され,それぞれの衛星表面にそれぞれの割合で衝突している.E 環の明るさと密度は,これらの衛星の可視光と電波での幾何学的アルベドと強く相関している (Verbiscer et al. 2007,Ostro et al. 2010など).またスペクトルの特徴は水氷の吸収バンドの深さに似ている.さらにこれらの衛星の先行半球と後行半球には明るさの非対称性があり,衛星表面への E 環粒子の流束の違いに起因すると思われる.

しかし,E 環内を公転するいくつかの小さい衛星には,表面の散乱特性が大きい衛星に観測されている傾向とは乖離しているものがある.非常に小さい 4 衛星 (アイガイオン,アンテ,メトネ,パレネ) は E 環のすぐ内側に発見されている.

アイガイオンは G 環の中のヤヌスとミマスの間に位置しており,一方でメトネ,アンテ,パレネはミマスとエンケラドゥスの間を公転している.そのため,これらの衛星はヤヌス,ミマス,エンケラドゥスと同じ傾向に従うことが期待されるが,実際にはその傾向が予測するよりもいくらか暗い (Thomas et al. 2018,Verbiscer et al. 2018).一方で,テレストとカリプソはテティスと軌道を共有する小さい衛星であり,ヘレネとポリデウセスはディオネの軌道を共有している.しかしこれらは,軌道を共有する大きい衛星と同じ分光・測光学的特徴を持っているようには見えない.

これらの天体の輝度を推定する上での主要な困難点は,これらの天体の多くはかなり細長い形状であり,明るさが観測者と太陽との相対的な配置に大きく依存して変化することである.そのため,任意の位相角での積分した輝度の推定には大きな分散を生じる.

幸いにもこれらの天体は自転が同期しており,太陽と探査機に対する衛星の配置は確実に予測することができる.さらにこれらの衛星のほとんど全ては,形状を決定できるほどの十分な分解能で観測されており,アイガイオン,メトネ,パレネは特に完全な楕円体に非常に近いことが観測されている.そのため,形状に関連した明るさの変動をモデル化することが可能である.

まとめ

  • プロメテウスとパンドラは,それらの内側と外側を公転する衛星に比べて明るく,F 環からのダストがこれらの衛星の表面を明るくしていることを示唆している.
  • ヤヌスとエピメテウスは先行半球が後行半球よりも明るく,E 環の粒子の衝突から期待される表面のパターンと整合的である.
  • アイガイオン,メトネ,パレネは全て,E 環の中のそれらの位置から予測されるよりも暗い表面を持っている.これは高エネルギーフラックスの強い流束に起因するものである可能性が高い.
  • アイガイオンとメトネのスペクトルデータは,これらの衛星を暗くしている何らかの物質は,広い範囲の波長に渡ってこの衛星の明るさを減少させ,明確なスペクトル特徴を持たないことを示唆している.
  • 測光データからは,アンテの形状はおそらくメトネと類似していると考えられる.
  • パレネの先行側は後行側よりもわずかに暗い.
  • テレストとポリデウセスの表面輝度は,これらと軌道を共有している大きい天体 (それぞれ,テティスとディオネ) と類似している.
  • カリプソはテティスとテレストよりもずっと明るく,一方でヘレネはディオネとポリデウセスよりずっと明るい.これらの現象は,E 環の粒子の非対称性か,最近の大きな衝突体との衝突によるものである可能性がある.

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