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論文関連の(ほぼ)個人用メモ。



arXiv:1912.08049
Sucerquia et al. (2019)
Can close-in giant exoplanets preserve detectable moons?
(近接巨大系外惑星は検出可能な衛星を保てるか?)

概要

系外惑星の発見は,見えない系外衛星を発見するための数多くの試みを動機付けるきっかけとなったが,系外衛星は未だに発見されていない.系外衛星が発見されていないことに対するもっともらしい説明は,大部分の発見されている惑星は中心星に近接した軌道にあり,そのような惑星の衛星は潮汐進化に晒され軌道からの離脱を引き起こすというものである,

惑星が,軌道進化する過程で系外衛星は中心の惑星に衝突する可能性が最も高いと考えられていたが,最近の系外衛星の潮汐駆動移動のモデルでは,衛星は外向きに押し出され,ここでは “satellite tidal orbital parking distance” と呼ぶ位置 \(a_{\rm stop}\) に到達する可能性があることが指摘されている.この軌道はしばしば不安定軌道に対する限界の内側に位置しており,系の初期条件である質量比,軌道長半径,自転に依存する.

半解析計算と数値シミュレーションから,異なる系の初期パラメータに対する \(a_{\rm stop}\) を計算した.また近接惑星の周囲の系外衛星のトランジット検出可能性に対して制約を与えた.

衛星と惑星の質量比が 10-4 以上の場合,軌道は安定であり,現在の観測装置 (ケプラーや TESS など) で,直接的もしくは惑星+衛星トランジットによる二次効果から検出可能である.これは,このような質量比の衛星は重く,サイズが大きく,また軌道移動がゆっくりであることが理由である.ただし,このような質量比の系は形成されづらいとされる.

対照的に質量比が低い場合は,衛星は一時的なものであり,そのため検出が難しい.さらに,小さい衛星を検出して確認し,完全な特徴付けを行うためには,TESS での短い間隔での観測と,地上観測による高感度の測光観測の両方が必要である.

現在参照可能なデータベース中には長周期の惑星の発見数は少ないが,潮汐軌道移動モデルは長周期の惑星が初めての検出可能な系外衛星を持つ可能性が高いことを示す.

太陽系外衛星について

ケプラー1625b I

これまでのところ,系外衛星の発見例はない.

Teachey & Kipping (2018) は,系外惑星ケプラー1625b の異常なトランジットの存在を検出した.この研究では,ケプラーによる観測データは,海王星サイズという一般的ではない系外衛星が存在している兆候を示していると主張した (Teachey et al. 2018).
暫定的にケプラー1625b I と呼ばれているこの天体のサイズは非常に大きく,「二重惑星」と呼ぶべきものであろう.

しかしこのシグナルは後の研究では検出されておらず,議論が続いている.
この報告の後にケプラーとハッブル宇宙望遠鏡を用いて得られたデータからは,光度曲線を説明するためには系外衛星が存在するという解釈ではなく,代替の説明が好ましいことが指摘されている (Heller et al. 2019).またハッブル宇宙望遠鏡による単独のトランジットの解析から,Kreidberg et al. (2019) では系外衛星によるシグナルは発見されなかったと報告されている.

ただし,もし今後の研究で存在が確認された場合,20 年以上前の系外惑星の初発見のような,顕著な発見になるだろう.

系外衛星の検出の試み

系外衛星の直接観測は,赤外線波長で,少なくとも形成の最も初期の段階では可能性がある.例えば ALMA の観測による原始月円盤の質量への制約などである (Perez et al. 2019).

最近では ALMA の電波観測で,巨大系外惑星 PDS 70c まわりでの系外衛星形成の初期段階の状態が検出されている (Isella et al. 2019).この観測では,この惑星が衛星を形成可能な円盤を持っていることが判明しており,可視光と赤外線の VLT での観測との比較から,円盤と惑星の質量比が 10-5 - 10-4 と制約されている (Muller et al. 2018)

衛星が惑星の周囲を公転し,さらに惑星が恒星の前をトランジットする場合,transit timing variation (TTV) と transit duration variation (TDV) の 2 つの効果が同時に発生する.これらの効果は同時に検出が可能で,惑星がトランジットしていることが必要だが,衛星自身のトランジットは必ずしも必要ではない.

ケプラー1625b I の報告例を除くと,ケプラーの膨大なトランジット測光データの中には,衛星のようなシグナルを示すものは報告されていない (Kipping et al. 2012, 2013, 2014).これは系外衛星は “はかない” (ephemeral) 天体であることを支持するものである.系外衛星に由来するシグナルがほとんど見られないことは,規則衛星の長期間の軌道不安定性の結果である可能性がある.

系外衛星の進化と生存

何人かの研究者は,近接惑星周りでの比較的短いタイムスケールでの衛星が欠乏していることを説明する,異なる機構を提案している.例えば永年摂動・共鳴摂動 (Barnes & O’Brien 2002,Spalding et al. 2016),惑星散乱 (Hong et al. 2018),潮汐離脱 (tidal detachment) (Sucerquia et al. 2018,Martinez et al. 2019) が挙げられる.

現在の巨大惑星と規則衛星の形成モデルでは,衛星の質量や半径,軌道長半径といった初期の物理的特徴や軌道特性は,ランダムに分布しているのではなく惑星の特性に密接に関連していることが知られている.例えば,その場形成される衛星の総質量は,惑星質量の 10-4 に制限されることが指摘されている (Canup & Ward 2006).ただし,最近のガリレオ衛星的な衛星系の形成のシミュレーションでは,惑星質量の 10-3 - 10-2 倍の質量のものも形成可能としている (Cilibrasi et al. 2018).仮説上の系外衛星が惑星移動を生き延びる場合,最終的な惑星の軌道半径における潮汐に誘起される軌道崩壊が衛星の最終的な運命を決める (Barnes & O’Brien 2002など).
初期の潮汐モデルでは,多くの場合で系外衛星は外側に移動し,その後の後期段階で内側に引かれるまでの間,一時的に生き残るとされる,しかし他の衛星は,潮汐相互作用によって遠方に押されるのに十分な角運動量の交換が発生するため,軌道が不安定となり母星である惑星から離脱する.これらの切り離された系外衛星の多くは,惑星と衝突したり,恒星に飲み込まれたり,十分に成長した準惑星もしくは惑星の胚となるだろう (Sucerquia et al. 2019).

Alvarado-Montes et al. (2017) は初期の軌道の潮汐進化モデルを拡張し,惑星の半径収縮と内部構造進化を含めたモデルを構築した.その結果,大部分のケースで,(もし衛星が存在する場合) 内側移動のフェーズは抑制されることを見出した.この物理的シナリオが正しい場合,大部分の規則衛星は「安全な」漸近的な最大距離にとどまることになる.

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