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論文関連の(ほぼ)個人用メモ。



arXiv:1810.02362
Teachey & Kipping (2018)
Evidence for a Large Exomoon Orbiting Kepler-1625b
(ケプラー1625b を公転する大きな系外衛星の兆候)

概要

系外衛星 (exomoon) とは,太陽系の外にある恒星を公転する惑星の周囲にある天然衛星であり,現段階では存在が確認された例は存在しない.

ここでは,ケプラー1625b に付随している可能性のある系外衛星候補 ケプラー1625b-i の新しい観測結果について報告する.観測はハッブル宇宙望遠鏡を用い,系外衛星の存在を確認もしくは否定するのを目的とした.

その結果,惑星であるケプラー1625b のトランジットタイミングのずれと,中心星からのフラックスの減少が検出された.この結果はトランジットする大きな系外衛星の存在と整合的であり,衛星仮説を支持する証拠を見出した.

自己無撞着な光力学モデルからは,惑星ケプラー1625b はおそらく木星質量の数倍程度であり,系外衛星候補天体の質量と半径は海王星に類似していると推定される.

ここでの衛星仮説に関する推測は,観測回数が 1 回のみではあるが非常に精度の高いハッブル宇宙望遠鏡の観測に依拠している.今後のこの系の将来的なモニタリングから,理論モデルの予測を確認し,衛星起源と思われるシグナルが反復的に検出されるかどうかを確認することを提案する.

系外衛星の探査

これまでの系外衛星の探査

系外衛星の探査はまだ初期段階にある.現在のところ存在が確認された系外衛星は存在しないが,それらを検出するための技術は多数提案されている.例えば,重力マイクロレンズ (Han & Han 2002など),直接撮像 (Cabrera & Schneider 2007など),サイクロトロン電波放射 (Noyola et al. 2014),パルサータイミング (Lewis et al. 2008),トランジット (Sartoretti & Schneider 1999など) である.

これらのうち,トランジット法による系外衛星探査は特に魅力的である.これは,現在までにトランジット法によって最小で月半径程度の小さい惑星が既に多数検出されており,またトランジットは候補シグナルを更に研究するための観測機会が反復的に訪れるからである.

トランジットする系外衛星の過去の探査では,軌道長半径が 0.1 - 1 AU の惑星の周りでは,ガリレオ衛星サイズの衛星の存在は一般的ではないことが指摘されている (Teachey et al. 2018).このことは,惑星が内側へ移動する間に,惑星のヒル球が縮小することと,出差共鳴 (evection resonance) に捕獲されうるため,初期に存在した衛星が効率的に失われるという理論的な研究と整合的である (Namouni 2010,Spalding et al. 2016).

系外衛星候補ケプラー1625b-i

しかしながら,285 個のトランジット惑星のトランジットデータ中から,ケプラー1625b が大きな衛星を持っている可能性があることが最近指摘されている (Teachey et al. 2018).

ケプラー1625b は存在が確定した木星サイズの惑星で (Morton et al. 2016),太陽質量の恒星を公転している (Mathur et al. 2017).軌道は恐らく円軌道で,中心星から 1 AU の距離を公転している.そのため系外衛星探査のための先験的な候補である.

上記の事実に基づき,またケプラーで観測されていた 2 つのトランジットに見られる系外衛星の兆候を元に,ハッブル宇宙望遠鏡での観測を提案して採択された.その結果,ハッブル宇宙望遠鏡によって 2017 年 10 月 28-29 日に通算 4 回目となるトランジットが 1 回観測された.

観測結果

解析から得られた明確な結果として,ハッブル宇宙望遠鏡で得られたケプラー1625b のトランジットは,理論的な予測よりも 77.8 分早く発生した.これは,この系でのトランジット時刻変動 (transit timing variation, TTV) の存在を示唆している.

TTV を同定することは,系外衛星を発見するために最初に提案された手法の一つである (Sartoretti & Schneider 1999).しかし実際には,惑星系内における未発見の惑星の存在も TTV の原因となりうる.

今回の解析では,TTV 振幅が 25 分程度であれば,外側に存在する惑星によって説明できることを見出した.しかし今手元にあるのは 4 回のトランジットのデータのみであり,外側に存在する可能性のある惑星の質量や位置を制約することは不可能である.また,これまでに系内に他の惑星は発見されていない.

系外衛星の最も有力な証拠は,惑星の TTV が検出されることに加えて,系外衛星自身のトランジットが観測されることである.
もし惑星が実際に衛星の影響によって予測よりも早いトランジットを起こしているのであれば,惑星-衛星の共通重心の反対側にある衛星は,惑星よりも後にトランジットを起こすことが予測される.過去に言及した,観測期間の終わりに向かって見かけのフラックスの減少が検出されていることは,この衛星仮説のもとで予測されるものである.

この減光は天体物理的な現象である可能性が高いと考えているが,その有意性や自己無撞着な衛星モデルとの整合性についてはまだ検討を行っていない.

解析結果

系外衛星候補の軌道配置

検出された系外衛星候補に対して示唆されるパラメータについて検討する.

まず,衛星の軌道は円軌道であることを仮定する.これは,惑星の潮汐力による円軌道化が急速に働くだろうと考えられるため正当化される.

しかし衛星の可能な 3 次元軌道を探査した結果,非同一平面上に存在する可能性がある兆候が見出された.衛星軌道は惑星の軌道面から 45度傾いている可能性があり,また順行と逆行はどちらも可能性がありうる.

このような傾いた軌道にあり,比較可能な既知の大きな衛星は海王星の衛星トリトンのみである.海王星とトリトンの系は,カイパーベルト天体を捕獲して形成された可能性があると一般に考えられている.

しかし注意すべき点として,ここでの軌道配置に関する制約は弱いものであり.実際の軌道が同一平面上であったとしても驚くことではない.

惑星-衛星系の規模

この惑星-衛星系の厄介な要素の一つは,その絶大な規模にある.系外衛星は 4 地球半径あり,サイズとしては海王星や天王星に非常に近い.解析から推定した質量は \(\log\left(M_{\rm S}/M_{\oplus}\right)=1.2\pm0.3\) であり,これも海王星や天王星に近い (ただしこの解は経験的な質量-半径関係によって事前に部分的に情報が与えられていることに注意).

この海王星的な衛星は,木星とほとんど同程度のサイズ (11.4 地球半径) を持つ惑星を公転しているが,惑星質量は木星よりも数倍重い可能性が高い.

系外衛星の物理要素と環境

最後に,この系外衛星の物理要素について考察する.

衛星の軌道周期の解は大きく縮退している.また多峰性の分布ではあるが,軌道長半径は惑星半径の 40 倍程度と比較的大きな軌道長半径を持つことを見出した.惑星のヒル半径は 200 ± 50 惑星半径であることから,衛星はヒル球の内部にあり,また衛星が十分に安定な領域として期待される範囲内にある.

惑星と衛星の黒体平衡温度は,アルベドがゼロであると仮定すると ~ 350 K となる.より現実的なアルベドの値をを採用すると ~ 300 K となる.おそらくはガス天体のペアであることから,ここでは惑星と衛星の居住可能性については見込みが薄い.しかし,ハビタブルゾーンの楽観的な定義の温度領域に入っていると思われる.

この系について特に興味深い点は,恒星は太陽質量であり,主系列段階を離れようとしている段階にあるということである.最近の Gaia DR2 の結果や独自の等時線の解析から,この恒星が実際に太陽よりも年老いており,年齢は 90 億星と推定される.そのため現在の惑星と衛星の位置での過去の日射は現在よりも低かったことが期待される.

中心星の光度は一生の大部分において太陽に近かったと考えられ,木星のアルベドを仮定した場合の惑星と衛星の平衡温度は ~ 250 K にまで下がる.

この系の年齢が古いことは潮汐進化のための十分な時間があったことを指摘しており,このことは衛星が比較的大きな軌道間隔を持っていることを説明可能である.

系外衛星の形成機構

この系の起源については,現段階では推測することしかできない.

衛星と惑星の質量比が 1.5% であることは,ガスが枯渇した円盤モデル (gas-starved disk models) を用いたその場形成からは,非物理的な比率ではないことは確かである.しかし数値シミュレーションで形成可能な質量の上端の値である (Cilibrasi et al. 2018).
また,周惑星円盤内で形成されたとするシナリオでは,軌道の傾きに関しては独立した説明が必要である.


連星交換によって形成されたとするシナリオは,初期に海王星質量の天体が同程度の質量の天体,例えばスーパーアースと連星を形成している必要があることから,困難だと考えられる.おそらくは潮汐捕獲を介した初期の連星惑星の形成は,起こりそうもないように思われる.これは,シミュレーションではその様なイベントからは近接した軌道を生成する傾向にあるためである.

もし系外衛星であると確認された場合,ケプラー1625b-i は理論家が解くべき興味深い問題を与えることになる.

結論

ケプラーおよびハッブル宇宙望遠鏡での観測結果を説明するには,系外衛星仮説が好ましいことを見出した.その主要なポイントは以下の通りである.

(i) ハッブル宇宙望遠鏡でのトランジットは予測より 77.8 分早く観測され,強い TTV が検出された
(ii) 惑星のトランジットの後に衛星によると思われるトランジットの特徴が起きている


また解析からは,
(i) 衛星によると思われるトランジットは,装置の一般モード,残差ピクセルの感度変化,あるいは chromatic systematics による誤検出ではないこと
(II) 衛星によると思われるトランジットは,観測された惑星の TTV を説明する正しい位相位置にあること
(iii) 同時のトレンド除去と光力学モデリングは,データに適合するだけではなく,物理的にも自己一環的に解を復元すること
が判明し,系外衛星仮説は今回の解析で補強された.

TTV の存在と惑星のトランジット後に中心星からのフラックスが減少しているという減少の両方を説明する仮説としては,系外衛星仮説が最もシンプルなものである.その他の仮説は,2 つの独立した,お互いに独立した説明が必要となる.

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