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論文関連の(ほぼ)個人用メモ。
arXiv:1912.12305
Loyd et al. (2019)
Current Population Statistics Do Not Favor Photoevaporation over Core-Powered Mass Loss as the Dominant Cause of the Exoplanet Radius Gap
(現在の惑星統計は系外惑星半径ギャップの主要な原因としてコア駆動質量放出よりも光蒸発を好まない)
半径ギャップの原因が光蒸発であるなら,半径ギャップは惑星を持つ恒星の初期の高エネルギー放射と関連しているはずである.代わりに,もし原因がコア駆動質量損失であるなら,そのような傾向は存在しないはずである.
重要な点としては,半径ギャップと恒星が持つ特性の間の疑わしい傾向は,潜在的な恒星の輻射との相関から生じる.この潜在的な相関を考慮すると,半径ギャップと恒星の質量の間,あるいは近紫外線放射として測定された現在の恒星活動との間に見られる傾向は残らないことを示す.
恒星の現在の近紫外線放射は寿命初期の高エネルギー放射を示しているとは考えにくいため,ここでは半径ギャップと近紫外線放射との傾向が存在しないことは棄却されるが,一般的な利用目的として GALEX による近紫外線と遠紫外線の放射測定のカタログを提供する.
質量依存性を考慮した恒星の高エネルギー放射の進化を伴った惑星大気の光蒸発のシミュレーションから,恒星質量と半径ギャップの間に依存性が見られなかったことの解釈を行った.シミュレーションによると,現実的な誤差の原因の元では,半径ギャップと恒星質量の間には検出できない程度の依存性が生成される.
この解析やその他の文献から,系外惑星の半径ギャップの主要な原因として,光蒸発かコア駆動質量損失かのどちらも明確に支持する証拠は現時点では存在しないと結論付けた.しかし,よく特徴づけられた 4 地球半径未満の惑星の数が概ね 2 倍になった段階でこの解析を再び行うことで,光蒸発シナリオを確認するか否定することができるだろう.
4 地球半径未満の惑星で,半径測定の精度が 10% かそれより良いものの数は 1700 個に到達し,半径ギャップの存在はより明確になっている.
半径ギャップは,形成初期の厚い水素・ヘリウムエンベロープを保持している惑星と,それらを失ってしまったか,もしくは厚いエンベロープが形成されなかった惑星を隔てる明確な境界であると考えられる (Owen & Wu 2013など).
初期の大気を引き剥がすいくつかのメカニズムが提唱されている.
XUV 蒸発シナリオでは,恒星の極端紫外線と X 線 (XUV,波長 912 Å 未満) が,惑星大気の大部分を初期の 1 億年の間に失わせるとしている (Owen & Jackson 2012など).別の説として,コア駆動質量放出理論では,惑星のコアに残っている降着熱が,十億年かそれ以上の間にわたって大気損失を駆動すると考える (Ginzburg et al. 2016).
一方で系外惑星の統計は,原始惑星系円盤の散逸と巨大衝突に大きな違いを引き起こす理論は支持していない (Fulton & Petigura 2018).
XUV 蒸発とコア駆動質量放出理論の間には重要な違いがある.XUV 蒸発は中心の恒星の活動に依存する一方,コア駆動質量放出は恒星活動による違いが生じない.ここでは,半径ギャップを引き起こす原因をよりよく理解するために,その違いを使用する.
惑星半径-軌道周期平面上での半径ギャップの傾きは -0.08 ± 0.01 で,過去の -0.09 (+0.02, -0.04) (Van Eylen et al. 2018),-0.11 ± 0.02 (Martinez et al. 2019) と近い.
今回の研究で重要なのは,惑星への輻射に対する依存性である.惑星半径と惑星への日射量平面上では,正の傾き 0.10 を得た.半径ギャップは惑星に対する近紫外線の超過放射と遠紫外線の超過放射において正の依存性を示す.
半径ギャップは,惑星への異なる輻射の影響を考慮した後には,恒星質量との間の統計的に有意な傾向も見られなかった.この考慮は,系外惑星のサンプルにおける日射量と恒星質量の間の潜在的な相関の影響を取り除くために重要である.
XUV 蒸発にさらされた惑星の種族のシミュレーションによる検証では,理想的な環境下では,現在の系外惑星の統計で半径ギャップと恒星質量の間の逆相関が検出可能であることが示唆された.しかし個々の恒星の XUV 放射の測定値の分散を考慮し,現実的な測定誤差も考慮すると,予測された恒星質量の依存性は弱められる.
過去のいくつかの研究で報告された,半径ギャップと恒星質量の間の正の相関は,惑星の日射量と恒星質量の間の潜在的な相関によって説明されることを見出した.これは Gupta & Schlichting (2019) で示された解釈を確認するものであり,独立した発見である.
arXiv:1912.12305
Loyd et al. (2019)
Current Population Statistics Do Not Favor Photoevaporation over Core-Powered Mass Loss as the Dominant Cause of the Exoplanet Radius Gap
(現在の惑星統計は系外惑星半径ギャップの主要な原因としてコア駆動質量放出よりも光蒸発を好まない)
概要
系外惑星の半径ギャップの原因について調査を行った.半径ギャップとは,半径が 1.8 地球半径程度の惑星の個数が少ないというものである.半径ギャップの原因が光蒸発であるなら,半径ギャップは惑星を持つ恒星の初期の高エネルギー放射と関連しているはずである.代わりに,もし原因がコア駆動質量損失であるなら,そのような傾向は存在しないはずである.
重要な点としては,半径ギャップと恒星が持つ特性の間の疑わしい傾向は,潜在的な恒星の輻射との相関から生じる.この潜在的な相関を考慮すると,半径ギャップと恒星の質量の間,あるいは近紫外線放射として測定された現在の恒星活動との間に見られる傾向は残らないことを示す.
恒星の現在の近紫外線放射は寿命初期の高エネルギー放射を示しているとは考えにくいため,ここでは半径ギャップと近紫外線放射との傾向が存在しないことは棄却されるが,一般的な利用目的として GALEX による近紫外線と遠紫外線の放射測定のカタログを提供する.
質量依存性を考慮した恒星の高エネルギー放射の進化を伴った惑星大気の光蒸発のシミュレーションから,恒星質量と半径ギャップの間に依存性が見られなかったことの解釈を行った.シミュレーションによると,現実的な誤差の原因の元では,半径ギャップと恒星質量の間には検出できない程度の依存性が生成される.
この解析やその他の文献から,系外惑星の半径ギャップの主要な原因として,光蒸発かコア駆動質量損失かのどちらも明確に支持する証拠は現時点では存在しないと結論付けた.しかし,よく特徴づけられた 4 地球半径未満の惑星の数が概ね 2 倍になった段階でこの解析を再び行うことで,光蒸発シナリオを確認するか否定することができるだろう.
半径ギャップとその特徴
4 地球半径未満の系外惑星は 2 つの異なるグループに分類できる.この 2 つのグループは,1.8 地球半径周辺における惑星の存在頻度の急激な減少によって分割される (Fulton et al. 2017),これはしばしば,半径ギャップ (radius gap) と呼ばれる.4 地球半径未満の惑星で,半径測定の精度が 10% かそれより良いものの数は 1700 個に到達し,半径ギャップの存在はより明確になっている.
半径ギャップは,形成初期の厚い水素・ヘリウムエンベロープを保持している惑星と,それらを失ってしまったか,もしくは厚いエンベロープが形成されなかった惑星を隔てる明確な境界であると考えられる (Owen & Wu 2013など).
初期の大気を引き剥がすいくつかのメカニズムが提唱されている.
XUV 蒸発シナリオでは,恒星の極端紫外線と X 線 (XUV,波長 912 Å 未満) が,惑星大気の大部分を初期の 1 億年の間に失わせるとしている (Owen & Jackson 2012など).別の説として,コア駆動質量放出理論では,惑星のコアに残っている降着熱が,十億年かそれ以上の間にわたって大気損失を駆動すると考える (Ginzburg et al. 2016).
一方で系外惑星の統計は,原始惑星系円盤の散逸と巨大衝突に大きな違いを引き起こす理論は支持していない (Fulton & Petigura 2018).
XUV 蒸発とコア駆動質量放出理論の間には重要な違いがある.XUV 蒸発は中心の恒星の活動に依存する一方,コア駆動質量放出は恒星活動による違いが生じない.ここでは,半径ギャップを引き起こす原因をよりよく理解するために,その違いを使用する.
データ解析
解析に用いた惑星データは,以下の基準で抽出した.- 中心星の重力が 4-5 cm s-2 のものを抽出した.これは進化した恒星を除去するため.
- 4 地球半径未満の惑星.
- 惑星トランジットの衝突径数が 0.9 未満のもの.これは惑星半径と衝突径数の不定性の間に存在する強い相関を回避するため.
- 軌道周期が 100 日未満のもの.これは恒星からの輻射が半径ギャップを形成するのに不十分なほど弱い惑星を取り除くため.
- 惑星半径の測定精度が \(\sigma_{\rm P}/R_{\rm P}<0.1\) のもの,
結果
今回の解析で得られた半径ギャップのフィットは,過去の研究での報告と整合的であった.惑星半径-軌道周期平面上での半径ギャップの傾きは -0.08 ± 0.01 で,過去の -0.09 (+0.02, -0.04) (Van Eylen et al. 2018),-0.11 ± 0.02 (Martinez et al. 2019) と近い.
今回の研究で重要なのは,惑星への輻射に対する依存性である.惑星半径と惑星への日射量平面上では,正の傾き 0.10 を得た.半径ギャップは惑星に対する近紫外線の超過放射と遠紫外線の超過放射において正の依存性を示す.
結論
半径ギャップは,恒星の光度のうちの近紫外線光度の割合 (\(L_{\rm NUV_{\rm e}}/L_{\rm bol}\)) への依存性を示さなかった.このことは単に,恒星の現在における活動水準は,それらの初期の活動度との相関に乏しいことを示唆するものであり,半径ギャップの原因として XUV 蒸発を否定するものではない.半径ギャップは,惑星への異なる輻射の影響を考慮した後には,恒星質量との間の統計的に有意な傾向も見られなかった.この考慮は,系外惑星のサンプルにおける日射量と恒星質量の間の潜在的な相関の影響を取り除くために重要である.
XUV 蒸発にさらされた惑星の種族のシミュレーションによる検証では,理想的な環境下では,現在の系外惑星の統計で半径ギャップと恒星質量の間の逆相関が検出可能であることが示唆された.しかし個々の恒星の XUV 放射の測定値の分散を考慮し,現実的な測定誤差も考慮すると,予測された恒星質量の依存性は弱められる.
過去のいくつかの研究で報告された,半径ギャップと恒星質量の間の正の相関は,惑星の日射量と恒星質量の間の潜在的な相関によって説明されることを見出した.これは Gupta & Schlichting (2019) で示された解釈を確認するものであり,独立した発見である.
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