×
[PR]上記の広告は3ヶ月以上新規記事投稿のないブログに表示されています。新しい記事を書く事で広告が消えます。
論文関連の(ほぼ)個人用メモ。
arXiv:1510.06446
Diaz et al. (2015)
The HARPS search for southern extra-solar planets. XXXVII. Bayesian re-analysis of three systems. New super-Earths, unconfirmed signals, and magnetic cycles
(HARPSによる南天の系外惑星探査XXXVII 3つの系に対するベイズ再解析 新たなスーパーアース、未同定のシグナル、磁気サイクル)
解析の際は、惑星候補に対応したケプラー関数を用いたデータのモデリングを行っている。また恒星の磁気的活動の長周期・短周期双方の効果も含めたモデルである。データのモデリングとモデル選択の双方には、ベイズ解析によるアプローチを採用している。
再解析の結果、HD 1461では新たに1つのスーパーアースが発見された。HD 40307では、発見が報告されていた6つのうち4つを確認し、特徴付けを行った。残りの2つの惑星候補についても議論を行っている。特に、恒星のハビタブルゾーン内にあると考えられている HD 40307gについては、現在のデータは存在するという決定的な結論は得られなかった。HD 204313については、発見が報告されていた海王星質量の惑星を完全に特徴づけした。
HARPSデータの解析に関しては、振幅 ~ 1.4 m s-1の1年周期のシグナルが検出されていた。これは、CCDのエラーによるシステマティックな影響であるという事が判明している(Dumusque et al. 2015)。
(※参考記事
天文・宇宙物理関連メモ vol. 38 Dumusque et al. (2015) CCDの構造に起因する1年周期の視線速度の混入)
従って、今回の解析ではこの影響を引き起こすスペクトル線は解析から除外している。その結果、1年周期のエラーは消失した。
解析の結果、5.77日周期の変動を確認した。視線速度の変動は 2.37 m s-1であり、最小質量は 6.4地球質量であった。この結果は、Rivera et al. (2010)と整合的なものであった。
視線速度のデータからこの惑星による変動を取り除いた残差には、さらに振幅が 1.5 m s-1、周期が 13.5日のシグナルが存在した。これが恒星活動に起因するものかどうかの検討を行った。しかしこのシグナルは、HD 1461の活動度が最小の時期においても変動が見られなかった。そのため、このシグナルは恒星の磁気的活動のサイクルによるものであるという可能性は低い。その他の解析から、惑星起源のシグナルとするとよく説明できる。この惑星の最小質量は ~ 6地球質量であった。
さらに、~ 3000日の視線速度の変動も検出された。この視線速度の変動は、9.64年周期の恒星の磁気的活動サイクルによるものであると結論付けた。
Rivera et al. (2010)で報告されていた、~ 450日と ~ 5000日の変動については、磁気的活動サイクルの不完全なサンプリングによるものであったと考えられる。しかし結論を出すためにはデータが不足している。
さらにTuomi et al. (2013)では、HARPSの公開データと、3度の追加の観測結果より、軌道周期が 34.62日 (HD 40307e)、51.76日 (HD 40307f)、197.8日 (HD 40307g)のさらなる3つの惑星の検出を報告した。このうち、HD 40307gはハビタブルゾーン内に存在する惑星とされている。さらにTuomi et al. (2013)では、~ 320日の周期の視線速度の変動も検出されている。この変動は、視線速度の振幅がスペクトルによって異なるため、恒星の磁気的活動によるものだと結論付けられている。
この系の観測結果の再解析を行った結果、Mayor et al. (2009)で報告された 3つの惑星は確認された。Tuomi et al. (2013)での3惑星については、 51.6日の周期のものは同じく確認された。ただし視線速度の振幅は彼らのものよりやや小さくなり、それに伴って最小質量も 5.2地球質量から 3.6地球質量へと下方修正された。
そのほかの2つの候補については、HD 40307gは変動が惑星起源のものとは確定できなかった。特にHD 40307eは、恒星の活動サイクルの周期と類似している。
さらに Robertson et al. (2012)は、Segransan et al. (2010)のデータと、McDonald天文台での追加観測結果と合わせ、1.7木星質量、周期 2800日の惑星の発見を報告している。また、最初に発見された惑星と 3:2の平均運動共鳴に入っている可能性についても言及されている。
再解析の結果、軌道周期が 5年の惑星と、海王星質量の惑星については確認されたが、Roberston et al. (2012)に報告されている長周期の変動は検出されなかった。
arXiv:1510.06446
Diaz et al. (2015)
The HARPS search for southern extra-solar planets. XXXVII. Bayesian re-analysis of three systems. New super-Earths, unconfirmed signals, and magnetic cycles
(HARPSによる南天の系外惑星探査XXXVII 3つの系に対するベイズ再解析 新たなスーパーアース、未同定のシグナル、磁気サイクル)
概要
惑星が発見されている、HD 1461、HD 40307、HD 204313の3つの系に対して、HARPSのデータの再解析を行った。各系について、8年近くに渡るデータセットを解析に用いている。また、200夜以上で平均化した視線速度データとなっている。そのため、長周期・低質量の惑星に関しても感度が高くなっている。さらに恒星の磁気的活動のサイクルによる効果に対しても感度がある。解析の際は、惑星候補に対応したケプラー関数を用いたデータのモデリングを行っている。また恒星の磁気的活動の長周期・短周期双方の効果も含めたモデルである。データのモデリングとモデル選択の双方には、ベイズ解析によるアプローチを採用している。
再解析の結果、HD 1461では新たに1つのスーパーアースが発見された。HD 40307では、発見が報告されていた6つのうち4つを確認し、特徴付けを行った。残りの2つの惑星候補についても議論を行っている。特に、恒星のハビタブルゾーン内にあると考えられている HD 40307gについては、現在のデータは存在するという決定的な結論は得られなかった。HD 204313については、発見が報告されていた海王星質量の惑星を完全に特徴づけした。
各系の(再)解析結果
HD 1461系
過去の観測では、周期 5.77日のスーパーアースが発見されている(Rivera et al. 2010)。これは、12.8年に渡る、Keck望遠鏡のHIRESを用いて観測された結果である。さらにRivera et al. (2010)では、より長周期の 446.1日、5017日の視線速度の変動も報告されている。HARPSデータの解析に関しては、振幅 ~ 1.4 m s-1の1年周期のシグナルが検出されていた。これは、CCDのエラーによるシステマティックな影響であるという事が判明している(Dumusque et al. 2015)。
(※参考記事
天文・宇宙物理関連メモ vol. 38 Dumusque et al. (2015) CCDの構造に起因する1年周期の視線速度の混入)
従って、今回の解析ではこの影響を引き起こすスペクトル線は解析から除外している。その結果、1年周期のエラーは消失した。
解析の結果、5.77日周期の変動を確認した。視線速度の変動は 2.37 m s-1であり、最小質量は 6.4地球質量であった。この結果は、Rivera et al. (2010)と整合的なものであった。
視線速度のデータからこの惑星による変動を取り除いた残差には、さらに振幅が 1.5 m s-1、周期が 13.5日のシグナルが存在した。これが恒星活動に起因するものかどうかの検討を行った。しかしこのシグナルは、HD 1461の活動度が最小の時期においても変動が見られなかった。そのため、このシグナルは恒星の磁気的活動のサイクルによるものであるという可能性は低い。その他の解析から、惑星起源のシグナルとするとよく説明できる。この惑星の最小質量は ~ 6地球質量であった。
さらに、~ 3000日の視線速度の変動も検出された。この視線速度の変動は、9.64年周期の恒星の磁気的活動サイクルによるものであると結論付けた。
Rivera et al. (2010)で報告されていた、~ 450日と ~ 5000日の変動については、磁気的活動サイクルの不完全なサンプリングによるものであったと考えられる。しかし結論を出すためにはデータが不足している。
HD 40307
この系では、3つのスーパーアースの発見が報告されており、軌道周期はそれぞれ 4.311日 (HD 40307b)、9.6日 (HD 40307c)、20.5日 (HD 40307d)である(Mayor et al. 2009)。これは 2.4年のHARPSによる観測に基づくものである。さらにTuomi et al. (2013)では、HARPSの公開データと、3度の追加の観測結果より、軌道周期が 34.62日 (HD 40307e)、51.76日 (HD 40307f)、197.8日 (HD 40307g)のさらなる3つの惑星の検出を報告した。このうち、HD 40307gはハビタブルゾーン内に存在する惑星とされている。さらにTuomi et al. (2013)では、~ 320日の周期の視線速度の変動も検出されている。この変動は、視線速度の振幅がスペクトルによって異なるため、恒星の磁気的活動によるものだと結論付けられている。
この系の観測結果の再解析を行った結果、Mayor et al. (2009)で報告された 3つの惑星は確認された。Tuomi et al. (2013)での3惑星については、 51.6日の周期のものは同じく確認された。ただし視線速度の振幅は彼らのものよりやや小さくなり、それに伴って最小質量も 5.2地球質量から 3.6地球質量へと下方修正された。
そのほかの2つの候補については、HD 40307gは変動が惑星起源のものとは確定できなかった。特にHD 40307eは、恒星の活動サイクルの周期と類似している。
HD 204313
この系では、軌道周期がおよそ 5年、最小質量が 4木星質量の惑星が発見されている(Segransan et al. 2010)。これは CORALIEによる観測結果である。またHARPSのデータから、海王星質量を持つ、軌道周期 34.9日の惑星も発見されている(Mayor et al. 2011)。さらに Robertson et al. (2012)は、Segransan et al. (2010)のデータと、McDonald天文台での追加観測結果と合わせ、1.7木星質量、周期 2800日の惑星の発見を報告している。また、最初に発見された惑星と 3:2の平均運動共鳴に入っている可能性についても言及されている。
再解析の結果、軌道周期が 5年の惑星と、海王星質量の惑星については確認されたが、Roberston et al. (2012)に報告されている長周期の変動は検出されなかった。
PR
この記事のトラックバックURL
この記事へのトラックバック