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論文関連の(ほぼ)個人用メモ。



arXiv:1511.01068
Placek et al. (2015)
Characterization of Kepler-91b and the Investigation of a Potential Trojan Companion Using EXONEST
(EXONESTを用いたケプラー91bの特性評価とトロヤ群候補天体の研究)

概要

ケプラー91b (KIC 8219268)のケプラーデータの再解析を行った。解析の際は、ベイズ解析とベイズモデル試験の両方が可能なソフトウェアである EXONESTを用いた。解析の結果、トランジットと二次食に加え、二次食からおおむね 60°の位相における、3つ目の減光を検出した。これはラグランジュ点の L4か L5に存在するトロヤ天体による二次食である可能性がある。

この観測結果を説明し得る 4つの可能性について、全ての参照可能なケプラーによる測光データ、最近の視線速度観測データ、N体シミュレーションから検証を行った。

その結果、測光観測を元にしたモデルでは、ケプラー91b単体のものよりも、ケプラー91bに加えトロや天体が存在するというモデルのほうが良いという結果を得た。しかしトロヤ天体としては非物理的な高い温度を示すため、光度曲線における3つ目の減光は偽陽性であるかもしれない。

研究背景

ケプラー91系について

ケプラー91は、赤色巨星分枝に属する進化した恒星である。1.31太陽質量、6.30太陽半径を持ち、表面温度は 4550 Kである。

この恒星は惑星ケプラー91bが発見されている(Lillo-Box et al. 2013)。ケプラー91bは0.88木星質量であり、軌道長半径は中心星半径の 2.32倍と非常に近く、軌道周期は 6.24650日である(Batalha et al. 2013, Lillo-Box et al. 2013, 2014)。この惑星は赤色巨星のまわりを最も短周期で好転するもののうちの一つである。
また軌道離心率は 0.066とやや大きい。傾斜角は 68.5°とやや小さいが、中心星が大きいためこの角度でもトランジットを起こすことが出来る。また惑星の平衡温度は 2460 Kと見積もられている。

Lillo-Box et al. (2013)では、二次食からおよそ 60°の位相で 3つ目の減光が観測された。これを説明できる可能性としては、

(1) L4, L5にあるトロヤ天体の二次食
(2) 同一平面にない外側の軌道共鳴に入っている惑星のトランジット
(3) ケプラー91bまわりの共鳴軌道にある大きな衛星のトランジット
(4) ケプラーパイプラインでの装置による影響か、恒星の活動によるもの

が挙げられている。

トロヤ天体仮説

制限三体問題では、ラグランジュ点として知られている 5つの平衡点が存在する。L1, L2, L3は中心性と伴星(惑星)を結ぶ直線上に存在し、L4, L5は惑星軌道上の 60°離れた位置に存在する。中心星が伴星の 24.96倍の質量を保つ場合、L4, L5は安定である。また L1, L2, L3は有効重力ポテンシャルの不安定な鞍点 (saddle point)である。

L4, L5にある重い天体は秤動運動を行う。その周期は、トロヤ天体の周期と、中心性と伴星の相対質量に依存する。

観測されている、60°の位相のずれをもつ減光は、トロヤ天体によるトランジットの可能性がある。しかし仮にそうである場合、この減光は恒星の手前を横切る時のトランジット (primary transit)ではなく、二次食 (secondary eclipse)であると考えられる。もしこれがトランジットであった場合は、惑星との位相差は 120°ということになり、トロヤ天体ではない。

外側惑星仮説

ケプラー91bの外側に、軌道共鳴に入っている惑星が存在し、この惑星によるトランジットが原因だと考えることも出来る。

しかし光度曲線を、ケプラー91bの軌道周期の倍で折りたたんで解析した場合のものと比較すると、この仮説では上手く説明出来ないことが示唆される。

系外衛星仮説

共鳴状態にある大きな衛星が減光に関わっている可能性もある。

この場合、衛星は惑星が二次食を起こす 60°前か後にトランジットを起こす必要がある。また衛星の軌道周期はケプラー91bの軌道周期と同一か、整数倍になっている必要がある。

装置の効果と恒星変動

装置や解析のパイプラインによって変動が見えてしまうという可能性も考えられる。
Lillo-Box et al. (2013)では、太陽型星の振動を取り除くことによって、恒星の変動による影響という可能性を排除している。

解析結果

測光観測データ

ケプラー91bの特性は、0.91木星質量、1.39木星半径であり、Lillo-Box et al. (2013)と整合的な結果であった。惑星の昼側の温度は 2441.7 Kと推定される。ただしこの値は、二次食中の増光イベントの影響のため、大きく過小評価している可能性がある。またこの温度はLillo-Box et al. (2013)による平衡温度の推定値 2460 Kと近い。軌道離心率は 0.028と、Lillo-Box et al. (2013)の値よりも小さくなった。

また、トロヤ天体を仮定した2惑星モデルの場合でも、惑星のパラメータは大きく変化しない (0.99木星質量、1.38木星半径, アルベド 0.39、昼側の温度 2513.2 K)。この値は 1惑星モデルと 1σの範囲内で一致している。
2惑星モデルの場合、トロヤ天体のパラメータは 0.025木星質量 (8.89地球質量)、0.28木星半径 (2.91地球半径)となった。これは海王星より小さいサイズである。また惑星との位相の違いは 65.4°であった。

トロヤ天体の昼側の温度は 5184.6 K、夜側の温度は 2372.6 Kである。また 2惑星モデルでは、ケプラー91bの昼側温度 2513.2 ± 317.9 Kと夜側温度 2871 ± 183.6 Kは非常に近い。これは短周期の赤色巨星まわりのホットジュピターでの予想 (Spiegel & Madhusudhan 2012)とは異なる。

視線速度観測

視線速度観測からは、ケプラー91bの最小質量は 0.86木星質量となり、これと傾斜角を合わせると真の質量は 0.92木星質量となった。これは測光観測からのデータと整合的である。

またトロヤ天体については、視線速度観測では肯定も否定もされないという結果が得られた。

軌道の安定性

N体計算を用いて、ケプラー91bと、トロヤ天体の軌道安定性について解析した。
様々なパラメータを与えて計算した結果、50000日程度、8000周の間安定であった。今後のより長い期間の計算による安定性の確認が必要である。

系外衛星の安定性について

系外惑星の可能性についても軌道計算を行って安定性を調べた。観測の特徴から、月の軌道周期と惑星の軌道周期は共鳴状態に入っていると考えられる。そのため、月の軌道周期を、惑星の公転周期の 0.1 - 3倍までで、0.1刻みで周期を変えて調べた。

衛星質量が惑星の 0.1倍の場合、どの軌道周期でも安定な軌道は存在しなかった。1:10軌道共鳴の場合、どの初期軌道配置であっても衛星は惑星に衝突した。1:5軌道共鳴の場合、78%で衛星は惑星に衝突し、22%で中心星周りのより遠い軌道へと変化した。残りの場合、全てのケースで衛星は中心星を回るより遠い軌道へと変化した。これは衛星の軌道長半径が惑星のヒル球よりも大きかったことに対応する。

ケプラー91bのヒル球は 0.0041 AU程度であり、衛星の軌道長半径に読み替えると 惑星軌道周期の 0.51倍となる。これよりも長い周期を持つ衛星はヒル球の外にあり、つまり惑星に重力的に束縛されていない。

従って、トランジットのシグナルになり得るような衛星が存在する可能性は低いと考えられる。

結論

EXONESTを用いて、ケプラー91bの特性評価を行った。

また観測された3番目の減光についての特性評価も行った。この光度曲線中の減光は、トロヤ天体によって引き起こされている可能性がある。また視線速度観測ではトロヤ天体の存在は排除できなかった。軌道の安定性の解析では、8000周の間は安定であった。

一方、ここでのモデルでは、トロヤ天体の昼側の温度は非物理的なほど高温になり、二次食の深さがトランジットよりも大きいという結果となった。これは、その天体に未知の加熱源が存在するか、あるいは検出が偽陽性であるという可能性を示唆する。後者の方があり得る解である。

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