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論文関連の(ほぼ)個人用メモ。



arXiv:1511.08679
Kane et al. (2015)
Evidence for Reflected Light from the Most Eccentric Exoplanet Known
(最も大きな軌道離心率を持つ系外惑星からの反射光の証拠)

概要

大きな軌道離心率を持つ惑星は、太陽系には存在しないタイプの天体である。これらの惑星のうち最も極端なものは、HD 20782を公転する惑星である。この惑星は、軌道周期が 597日、軌道離心率は e ~ 0.96である。ここではこの天体の Transit Ephemeris Refinment and Monitoring Survey (TERMS)でのデータとその解析結果について報告する。また、恒星の基本的なパラメータを独立して得るために、CHIRONスペクトルを得て解析を行った。

また、惑星が近点を通過している際の視線速度のデータを AAT, PARASによって取得した。これらのデータから、惑星の軌道の性質の理解を大きく深めることが出来る。ケプラー軌道の解析と、ヒッパルコス衛星でのアストロメトリデータとの複合解析より、惑星軌道の傾斜角は i > 1.25°という制限が与えられた。これにより、HD 20782bの質量が恒星質量である可能性は排除された
(※視線度法で得られる最小質量は M sin iであり、真の質量は 最小質量を sin iで割ったものになるため)

長期間に渡る自動測光観測から、恒星は長時間にわたって極めて静穏な活動であることが分かった。また、MOSTによる恒星の測光観測からは、トランジットを起こしうるタイミングでのトランジットは検出されなかった。また惑星が金展付近を通過する際の測光観測のデータから、惑星の位相による光度の変動を検出した。これは惑星大気での反射光によるものだと考えられる。惑星が金展を通過する前後では恒星と惑星との間隔が大幅に変化し、それにともなって反射光の強さも大きく変化する。

研究背景

これまでの観測から、大きな軌道離心率を持つ巨大ガス惑星がいくつも発見されている。その例が、HD 114762b (Latham et al. 1989)、おとめ座70番星b (Marcy & Butler 1996)である。これらはそれぞれ軌道離心率が 0.33、0.40という値を持つ。このような大きな軌道離心率を持つ惑星は、惑星の形成理論にも影響を与える。例えば、惑星同士の散乱の効果や (Chatterjee et al. 2008)、潮汐による円軌道化 (Pont et al. 2011)などである。

特に大きな軌道離心率を持つ惑星は、HD 20782のまわりで発見された (Jones et al. 2006)。この惑星は、最小質量が M sini ~ 2木星質量で、軌道周期が 297日、軌道離心率が非常に大きいことが分かった。軌道要素は後の観測で改訂され、軌道離心率は e ~ 0.97 (O'Toole et al. 2009)と判明した。これはこれまでに発見されている系外惑星の中で最も大きな軌道離心率の値である。このような系は、惑星が近点付近を通過する際は視線速度が非常に大きな変化を示すためデータを得るのが難しい。この系を、TERMSによって継続的に観測した。

観測のモチベーション

HD 20782は、HD 20781との遠距離の連星となっている。投影距離は ~ 9000 AUである (Mack et al. 2014)。このような系での惑星の軌道の精密な決定が観測のモチベーションの一つである。

また、長周期で軌道離心率が大きい惑星のトランジットの検出も目標の一つである。類似の惑星でトランジットが検出されている例としては、軌道離心率が 0.93のHD 80606b (Naef et al. 2001)がある。この系では、二次食 (secondary eclipseが)検出され (Laughlin et al. 2009)、その後トランジットも確認されている (Fossey et al. 2009, Garcia-Melendo & McCullough 2009, Moutou et al. 2009)。

さらに、惑星が近点を通過する際は恒星と惑星の間隔が急激に小さくなるため、惑星の反射光も大幅に増加する。この時の惑星の軌道の位相による変化の観測もモチベーションの一つである (Kane & Gelino 2010)。このような観測は、惑星の幾何学的アルベドや、放射のタイムスケール、医龍のタイムスケールの制限に関して重要である (Seager et al. 2005, Fortney et al. 2008)。

HD 20782系のパラメータ

HD 20782

中心星の基本的なパラメータの決定には、チリの Cerro Tololo Inter-American Observatory (CTIO)の 1.5 m望遠鏡に搭載されている CHIRONを用いた。この装置は、415 - 880 nmの波長帯で、R = 79000の波長分解能を持つ。

等級:V = 7.4
距離:35.5 pc
有効温度:5798 K
金属量:[Fe/H] = 0.01 dex
質量:1.02太陽質量
半径:1.09太陽半径
年齢:5.53 Gyr

HD 20782b

ヒッパルコス衛星によるアストロメトリデータ
ヒッパルコス衛星によるアストロメトリデータ (van Leeuwen 2007)より、HD 20782bの軌道傾斜角は i = 3.4 (+22.3, -0.5)度という制限が得られたが、非常に弱い制限にとどまった。

しかし Sahlmann et al. (2011)のシミュレーションによると、軌道長半径がヒッパルコス衛星の精度の少なくとも 70%の場合は、常に 3σで検出することが出来る。従って、2.45 mas以上の軌道の特徴はヒッパルコス衛星のデータセットから検出できたはずである。これにより、HD 20782bの質量には上限値が与えられる。

結果として、傾斜角の下限値は 1.22度、質量の上限値は 66木星質量となった。アストロメトリのデータでは系の傾斜角を強く制限することは出来なかったが、軌道が検出できないという事実からは質量の上限値が得られ、恒星同士の伴星であるという可能性は排除された。
測光観測
また、系はトランジットを起こす確率が比較的高い。トランジットを起こす確率は、恒星と惑星の半径と、視線方向の恒星と惑星の間隔の関数である。恒星半径は既に独立した観測で見積もり済みである。惑星の半径については、最小質量が 1.41木星質量であることと、Kane & Gelino (2012)の質量-半径依存性から、1.0木星半径とした。

仮に軌道長半径が同じ値で、円軌道だった場合、トランジット確率は ~ 0.4%と非常に小さい値となる。しかし軌道離心率が非常に大きく、近点距離は 0.061 AU、トランジットが起きうる場所での距離は 0.076 AUと構成に非常に近いため、0.076 AUの位置でのトランジット確率は 7.1%にまで上昇する。

しかしトランジットは観測されず、惑星の軌道の位相による変動は検出された。

これらの観測から惑星の要素の改訂も行い、軌道周期 597.065日、軌道離心率 0.956、最小質量 1.43木星質量、軌道長半径 1.397 AU、近点距離 0.061 AU、遠点距離 2.7 AUとなった。

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