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論文関連の(ほぼ)個人用メモ。



arXiv:1512.09342
Wong et al. (2015)
3.6 and 4.5 μm Spitzer Phase Curves of the Highly-Irradiated Hot Jupiters WASP-19b and HAT-P-7b
(強い日射を受けているホットジュピター WASP-19b と HAT-P-7b のスピッツァーによる 3.6, 4.5 μm での位相曲線)

概要

スピッツァー宇宙望遠鏡を用いて、トランジットを起こすホットジュピター WASP-18b, HAT-P-7b の全軌道位相曲線を、3.6, 4.5 μm で観測した。

WASP-19b は、二次食 (secondary eclipse) の深さは、3.6, 4.5 μm でそれぞれ 0.485%, 0.584%であった。これは、2372 K の単一の黒体放射と整合的な値である。
HAT-P-7b は同じく 0.156%, 0.190%であった。これは 2667 K の単一の黒体放射に対応している。

得られた位相曲線を、1次元と 3次元の大気モデルと比較した。その結果、WASP-19b の昼側からの放射からは、温度逆転層が存在しないモデルと整合的であるという結果が得られた。また、穏やかかつ効率的な昼夜間の大気循環を起こしているモデルと整合的であった。さらに、東方向にシフトしたホットスポットが検出され、これは赤道ジェットが存在してスーパーローテーション的な大気循環が起きていることを示唆している。

対照的に、HAT-P-7b は昼側からの放射より、温度逆転層が存在するモデルと整合的な結果となった。また、昼夜間の大気循環は比較的非効率的であることが示唆される。さらに、ホットスポットの恒星直下点とのズレは検出されなかった

さらに両惑星において、昼側の放射の観測結果と整合的なモデルは、夜側からの放射の観測結果を説明することが出来なかった。この大気モデルと観測結果の比較のズレは、WASP-19b においては夜側の高高度にあるシリケイトの雲の存在か、大気の金属量が多いこと (またはその両方) が引き起こしていると考えられる。HAT-P-7b においては、3.6 μm で夜側の放射がモデル予測よりも暗いのは、全球的に C/O 比が大きくなっていることが原因と考えられる。

惑星のボンドアルベドは、WASP-19b はゼロと整合的で、1 σ で < 0.08 である。HAT-P-7b は 0.38 である。

熱的な位相曲線が測定されている他の系外惑星と比較すると、この 2つの惑星は、日射量が多い惑星では昼側から夜側への熱の再分配の効率が低いという全体的な傾向と合致している。

研究背景

惑星が恒星の周りを公転することで、惑星大気での反射光や惑星自身の放射光の見え方の変動が起こり、またトランジットや二次食を起こすことでの中心星の減光も発生する。この軌道の位相曲線が観測された例はこれまで 13 例にのぼる。このうち、多波長で観測されたものは 6 例に留まっている。HD 209458b (Knutson et al. 2012)、WASP-12b (Cowan et al. 2012)、WASP-18b (Maxted et al. 2013)、HAT-P-2b (Lewis et al. 2013)、WASP-43b (Stevenson et al. 2014)、WASP-14b (Wong et al. 2015)である。このうち、WASP-43b 以外は、スピッツァー宇宙望遠鏡による赤外線領域での観測である。

このような観測例がの増加によって様々なことがわかりつつある。その一例が、位相曲線の観測から、惑星の昼側と夜側の放射強度を比較する事が出来る。様々な観測から、惑星が受ける日射が強いほど、昼夜間の温度差が大きいことが分かっている (Perez-Becker & Showman 2013)。この傾向は、Cowan & Agol (2011) による昼側からの放射の解析結果とも整合的である。すなわち、多くの強い日射を受けている惑星は、系統的に昼側から夜側への熱の循環が非効率的であるということである。
この日射強度と昼夜間の熱循環効率の反相関関係は、大気の流体力学モデルでも再現されている (Perna et al. 2012, Perez-Becker & Showman 2013)。

また、ボンドアルベドの分布についても調べられている。Wong et al. (2015)では、Schwartz & Cowan (2015)の手法に従い、ボンドアルベドが2つのモードを持つことを示した。重い (7 - 10木星質量) ホットジュピターの場合はボンドアルベドはほぼ 0、その他の軽いホットジュピターの場合は大きくなる。

ここでは、さらに 2つのホットジュピターの位相曲線を得た。
WASP-19b は、1.15木星質量 (Hebb et al. 2010)、G8型星のまわりを 0.789日 (Tregloan-Reed et al. 2013)で公転するホットジュピターである。
HAT-P-7b は、1.78木星質量 (Pa ́l et al. 2008)、F8型星のまわりを 2.20日 (Morris et al. 2013)で公転する。
どちらもほぼ円軌道であり、受けている日射量も近く、重力も同程度である。照射温度 (irradiation temperature) はそれぞれ 3000 K, 3200 Kであり、最も強く日射を受けているホットジュピターである。

基本パラメータ

・WASP-19
質量:0.96太陽質量
半径:0.94太陽半径
金属量:[Fe/H] = 0.15 dex
有効温度:5568 K

・WASP-19b
軌道周期:0.78883942日
質量:1.15木星質量
半径:1.31木星半径
軌道長半径:0.0165 AU
軌道離心率:0.0024
照射温度:3000 K
平衡温度:2520 K


・HAT-P-7
質量:1.47太陽質量
半径:1.84太陽半径
金属量:[Fe/H] = 0.15 dex
有効温度:6441 K

・HAT-P-7b
軌道周期:2.204737日
質量:1.78木星質量
半径:1.36木星半径
軌道長半径:0.0377 AU
軌道離心率:0.0055
照射温度:3210 K
平衡温度:2700 K

※平衡温度は、ボンドアルベドを 0 とし、昼側からのみ熱放射をしていると仮定

観測結果

惑星のパラメータについて

この観測では、両惑星の全位相曲線を初めて観測した。

WASP-19b では、二次食の深さは同じくスピッツァー宇宙望遠鏡で観測された Anderson et al. (2013)の結果と概ね一致した。また昼側の大気輝度は、両バンドにおいて有効温度が 2372 K である場合と整合的であった。

HAT-P-7b では、昼側の有効温度が 2667 K とするものと整合的であった。

これらの観測結果から両惑星の軌道のパラメータのアップデートも行い、軌道周期はそれぞれ 0.788838989 ± 0.000000040 日、2.2047372 ± 0.0000011 日となった。

大気モデルとの比較

観測結果を、大気の 1次元輻射輸送モデルと、熱化学平衡と太陽組成気体を仮定している 3次元 general circulation model (GCM) と比較した。

WASP-19b の昼側からの放射光観測からは、大気の温度逆転層が存在しないというモデルと整合的であるということが分かった。また、昼側から夜側への熱の輸送は比較的効率的である。さらに、恒星直下点から東側にずれた位置に、最も温度が高いホットスポットがあることが判明した。これは GCM の予言と整合的であり、大気はスーパーローテーション的な赤道ジェットを持つことが示唆される。

惑星夜側の惑星・恒星のフラックス比は、太陽組成・熱化学平衡を仮定したモデルではうまく再現されなかった。代わりに、有効温度 1090 K の黒体放射と整合的であった。この結果は、夜側には大気の高い位置にシリケイトの雲が存在するか、大気の金属量が太陽組成よりも多い (あるいはこの両方) によって説明可能であると予想される。例として、後者の場合は太陽組成の 5倍の金属量を仮定するとよく一致する。

一方 HAT-P-7b の方は対照的に、惑星昼側からの放射光観測は、温度逆転層が存在するモデルと整合的であった。また、昼側から夜側への循環は非効率的である。さらに、ホットスポットの恒星直下点からのずれは検出されなかった。

加えて、夜側からの放射は、1D, 3D モデル共に合致しなかった。特に 3.6 μm でのフラックスが低かった。これは、この波長での大気のオパシティが大きいことを示唆し、C/O 比が太陽組成より大きくなっていると考えられる。

惑星の C/O 比の測定は現段階では不可能であるが、恒星の値を測定することは可能である。HAT-P-7 は太陽に近い金属量を持っている ({Fe/H} = 0.16 dex) (Torres et al. 2012)。従って、統計的には HAT-P-7b は高い C/O 比は持たないと予想される (Teske et al. 2014)。
しかし惑星形成段階においては、形成や軌道移動のプロセスによっては広い範囲の C/O 比を取り得る。これは主に、惑星が大気を獲得したガス円盤の領域によって変わる (Oberg et al. 2011など)。

これらの結果については、今後のハッブル宇宙望遠鏡などでの観測で組成の解明が期待される。また、非太陽組成での化学や非平衡化学、雲の影響も取り入れた GCM の発展も期待される。

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