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日々の感想などどうでもよいことを書き連ねるためだけのブログ。
論文関連の(ほぼ)個人用メモ。



arXiv:1602.04683
Lecavelier des Etangs & Vidal-Madjar (2016)
The orbit of Beta Pic b as a transiting planet
(トランジット惑星としてのがか座ベータ星bの軌道)

概要

1981年に,がか座ベータ星 (β Pictoris, β Pic) は,巨大惑星のトランジットによると思われる速い光度変化を起こした.後にこの恒星の周りには,惑星質量天体のがか座ベータ星b (β Pic b) が直接撮像によって発見された.

2003年,2009 - 2015年の観測から,がか座ベータ星b は投影距離が 6 - 9 AU であり,edge-on の軌道 (軌道面をほぼ真横から見ている状態) にあることが分かっている.観測された惑星の動きは,1981年に内合を起こした (トランジットを起こした) という予想と整合的である.従って,1981年の減光はトランジットによるものである可能性がある.

ここでは,がか座ベータ星b が 1981年の内合時にトランジットを起こしたと仮定し,過去の観測による惑星の位置についての研究を行った.その結果,過去の観測からの制限を満たす 2つの軌道の解を発見した.

1つ目は,軌道周期が 17.97年,軌道離心率 ~ 0.12 の軌道,2つ目は軌道周期が 36.38年,軌道離心率 ~ 0.32 の軌道である.これらの解のどちらであるかは,今後のさらなる直接撮像の観測で判別できると考えられる.

また,次のがか座ベータ星b のトランジットの予測も行い,次のトランジットは2017年か 2018年に起きると予想した

がか座ベータ星とその惑星

がか座ベータ星は,直接撮像によって円盤が発見された初めての天体である (Auman et al. 1983, Smith & Terrile 1984).また直接撮像観測によってがか座ベータ星b が発見されている (Lagrange et al. 2009).

さらに,がか座ベータ星は 1981年 11月に大きな変光を起こしている (Lecavelier des Etangs et al. 1994, 1995).この変光は,主星から数 AU の位置にいる巨大ガス惑星によるトランジットか (Lecavelier des Etangs et al. 1994, 1995, 1997),大きな彗星によるものと考えられている (Lamers et al. 1997).

光度曲線の解析から,Lecavelier des Etangs et al. (1997) では,
(1) 円軌道の場合は軌道周期は 19年未満 (1981年 11月 10日と 11日の観測より)
(2) サイズは 2 - 4木星半径 (減光の入りより)
と推定している.また,U バンドでの観測では短波長側で大きな吸収を示している.これは惑星大気中のダストによる散乱である可能性がある (Lecavelier des Etangs et al. 2008a, b).

解析結果

軌道の解析

過去の観測データと,MCMC 解析の組み合わせを行った.

軌道離心率が小さいケースでは,軌道周期 17.97年,軌道長半径 8.20 AU,軌道離心率 0.118 という結果を得た.
軌道離心率が大きいケースでは,軌道周期 36.38年,軌道長半径 13.18 AU,軌道離心率 0.323 という結果となった.

低軌道離心率のケースでは,次のトランジットは 2017年7月15日 - 2018年3月1日,高軌道離心率のケースでは2018年1月1日 - 2018年6月30日に発生すると予測される.これはどちらも 2 σ の結果である.
また,カイ二乗検定からは,高軌道離心率のケースのほうが観測結果とよく合う.

系の特徴

もしがか座ベータ星b がトランジットを起こす惑星であった場合,以下の点で非常に特殊な惑星であると言える.

1. 4等星という明るい恒星をトランジットする惑星である.そのため惑星大気について前例のないデータを得ることが出来る可能性がある.

2. トランジット継続時間が数時間と非常に長くなる.そのため惑星の縁部分の大気構造を含む,大気構造の更なる探査が期待される.

3. 周惑星物質を持つ若い惑星である.詳細な観測からは,衛星形成が起きている,または形成直後の,衛星や環を含む惑星周辺環境についての情報を得ることが出来るかもしれない.

4. 8 AU か 13 AU という大きな軌道長半径を持つ惑星である.これは太陽系の巨大惑星に近く,主星から離れた惑星のトランジットという点でも特殊である.現在のトランジット観測はどれも短周期惑星のものであるが,これらの結果とは異なる可能性がある.


今後の観測から,ここで提案した説を確認,もしくは否定する必要がある.
ここで予測した 2つの軌道の解は,観測と解析の時点ではほぼ同一だが,2015年以降は分岐するため,今後の観測から判別することが出来る.

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