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論文関連の(ほぼ)個人用メモ。



arXiv:1606.05247
Brucalassi et al. (2016)
Search for giant planets in M67 III: excess of hot Jupiters in dense open clusters
(M67 での巨大惑星探査 III:高密度の散開星団におけるホットジュピターの超過)

概要

2008年より,高精度の視線速度観測で散開星団 M67 中の主系列星と進化した星まわりの重い惑星の探査を行ってきた.この探査の主な目標は,散開星団中での巨大ガス惑星形成の長期に渡る探査と,惑星形成が恒星質量と化学組成にどう依存するかの調査である.

ここでは,主系列星 YBP 401 まわりにホット・ジュピターを発見したことを報告する.また,これまでの探査でホットジュピターを持つことが分かっていた YBP 1194 と YBP 1514 の視線速度観測のアップデートを行った.

これまでの観測サンプルは,主系列星・やや進化して HR 図上で転回点付近に位置する星で合わせて 66 個であり,このうち 3 つがホットジュピターを持っている.ここからこの散開星団がホットジュピターを持っている割合を算出すると,他の星団外の恒星と比べて高く,全体で 4.5 (+4.5, -2.5) %,単独星に限れば 5.6 (+5.4, -2.6) % となることが分かった.

M67 では,恒星の金属量とホットジュピターを持つ割合の関連性は見られなかった.また恒星の質量とも関連性は無かった.

これらの結果と,この星団内で発見されている惑星の軌道離心率がゼロではない有意な値を持つ事を考慮すると,ホットジュピターの形成機構としては,惑星が他の恒星や伴星と近接遭遇し,その後惑星-惑星散乱によって軌道が内側へ移動するという説と定性的には整合的であると言える.このシナリオは,N 体シミュレーションでも予言されるものである.
※注釈
YBP = Yadov + Bedin + Piotto であり,この散開星団の恒星の観測を行った論文の著者から取られている (Yadov et al. 2008).YBP の後の数字はカタログ上の通し番号.

研究背景

ここでは,ホットジュピターを,質量が 0.3 木星質量より大きく,軌道周期が 10 日未満のものとする.

これまでの観測から,太陽型星のまわりにホットジュピターが存在する確率は,~ 1.2%と考えられている (Wright et al. 2012).

ホットジュピターはその場で形成することは困難だと考えられる.そのため,スノーライン (snow line,雪線,凝結線など) よりも外側の,氷が多く存在して内側より惑星が大きく成長できる領域で形成され,その後何らかの機構によって恒星近傍まで移動してきたと考えられている.

惑星の軌道を移動させる機構としては,円盤との相互作用 (II 型惑星移動,Goldreich & Tremaine 1980など) や,他の惑星との重力散乱 (Rasio & Ford 1996, Lin & Ida 1997) などが提案されている.
その他には,3 体目の天体との遭遇による激しい軌道変化も考えられる.最近の N 体シミュレーションでは,星が生まれた環境の混みあった所では,惑星と恒星の近接遭遇と力学相互作用によってホットジュピターが形成されるという機構が提案されている (Davies et al. 2014など).散開星団は,そのシナリオを検証する事ができる観測対象である.

観測結果

YBP 401 とその惑星

中心星の YBP 401 は,スペクトル型 F9V の恒星である.
惑星 YBP 401b は,軌道周期が 4.0873 日,軌道離心率が 0.141,最小質量が 0.41 木星質量である.

発見済み惑星のパラメータのアップデート

YBP 1194b は,軌道周期が 6.959 日,軌道離心率が 0.294,最小質量が 0.32 木星質量の惑星である.

YBP 1514b は,軌道周期が 5.1189 日,軌道離心率が 0.332,最小質量が 0.42 木星質量の惑星である.

散開星団中のホットジュピター

今回の観測で発見された YBP 401b を合わせて統計を取ると,散開星団 M67 中では,66 個の恒星のうち 3 個がホットジュピターを持ち (~ 4.5%),単独星に限定すれば 53 個中 3 個がホットジュピターを持つことになる (~ 5.6%).
この結果は,モンテカルロシミュレーションを用いた結果の ~ 5.5%と整合的である (Brucalassi et al. submitted).

星団以外の恒星の観測では,視線速度法を用いた探査では 1.2 ± 0.38%という値が得られており (Wright et al. 2012),M67 中の恒星がホットジュピターを持つ割合は星団外の恒星に比べて大きいと言える.また,ケプラーを用いた観測では,ホットジュピターを持つ割合は 0.4%という値が得られている (Howard et al. 2011).
ただし,異なるサンプルやシミュレーション結果との比較は自明ではないことに注意が必要である.

かつて,散開星団中では惑星は未発見だったが,最近の発見 (Malavolta et al. 2016, Quinn et al, 2012, 2014) は状況を大きく変えた.これらの結果は,初期のサーベイ観測 (Paulson et al. 2004) とは不一致である.Paulson et al. (2004) では,ヒアデス星団中の G 型から M 型星 94 個のまわりにホットジュピターは発見されなかった.

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