忍者ブログ
日々の感想などどうでもよいことを書き連ねるためだけのブログ。
×

[PR]上記の広告は3ヶ月以上新規記事投稿のないブログに表示されています。新しい記事を書く事で広告が消えます。


論文関連の(ほぼ)個人用メモ。



arXiv:1607.02525
Wagner et al. (2016)
Direct Imaging Discovery of a Jovian Exoplanet Within a Triple Star System
(三重星系内の木星型惑星の直接撮像による発見)

概要

直接撮像観測では,系外惑星からの熱放射による惑星のパラメータの特徴付けが出来る.
今回,三重星系である HD 131399 系内の若い木星型惑星を近赤外線での直接撮像で発見し,また大気の特徴付けをおこなった.

惑星の軌道長半径は,他の連星系や三重星系ないで発見されている惑星に比べて近い.そのため,HD 131399 系は他の惑星系とは異なる特徴を持つと考えられる.

今回発見された惑星 HD 131399Ab は,直接撮像で発見された系外惑星の中でも低質量であり (4 ± 1 木星質量),また低温である (850 ± 50 K).

観測

この発見は,近傍の星団である Upper Scorpius-Centaurus-Lupus association の中の,~ 100 個の単独星・連星の A 型星を,Very Large Telescope (VLT) と Spectro-Polarimetric High-Contrast Exoplanet Research (SPHERE) を用いて観測するサーベイの一環で行われた.このサーベイ観測による初めての惑星の発見である.

HD 131399 (あるいは HIP 72940) は,年齢が 16 Myr と若い.Upper Centaurus-Lupus association (UCL) 内に存在し,距離は 98 pc である.初めの観測は 2015 年 6 月 12 日に行われ,その後フォローアップ観測が行われた.
※注釈
Association とは同じ起源を持ち,重力的には束縛されていない状態で同じ方向に運動している星の集団である.

Upper Centaurus-Lupus association は,Scorpius-Centaurus(-Lupus) Association (さそり座-ケンタウルス座アソシエーション) という大きな association の一部分であり,この大きな association は Upper Scorpius, Upper Centaurus-Lupus, Lower Centaurus-Crux の 3 領域に分割される.
詳細は Scorpius-Centaurus Association - Wikipedia, the free encyclopedia

観測からの特徴付け

測光観測から惑星の光度を測定した.その光度と,"hot-start" を初期条件をしたガス惑星の熱進化トラックモデルを用いて質量を推定したところ,4 ± 1 木星質量という結果を得た.

これは考えにくいことではあるが,仮に系がもっと古い場合 (数億歳) であっても,質量は 13 木星質量未満となり,この天体は惑星であると言える.

惑星の H バンドでの光度と,H - K の色の比較からは,この天体は hot-start が初期条件で,部分的に雲に覆われた大気を持っているか太陽より大きな金属量を持つ (またはその両方) というモデルと整合的であると考えられる.
"Cold-start",つまり非効率的な惑星へのガスの降着により初期のエントロピーを一部失った初期条件のモデルとは非整合的であった.
※注釈
ガス惑星の形成時の初期条件として,大きく分けて hot-start と cold-start と呼ばれる 2 つのモデルがある.
Hot-start は,ガス惑星が形成される際の質量の降着が効率的に起こり,初期のエントロピーを全て持ち込んだ状態,つまり "熱い" 状態が初期条件となるためこの名前がある.一方の cold-start では,降着が非効率的であったために初期のエントロピーを全ては持ち込めず,一部は外部へ散逸してしまい,比較的 "冷たい" 状態が初期条件となる.

ガス惑星は形成直後は高温であり,その後徐々に放射で熱を失って冷えていく.この冷えていく過程は惑星の質量によって異なる.直接撮像では惑星の光度を直接測定することが出来るが,現在の惑星の光度と惑星の年齢 (惑星がある系の年齢) を組み合わせることによって,惑星の質量を推定することが出来る.
しかしここで,形成直後のガス惑星の温度がどの程度であったのかが問題になる.形成直後が hot-start の初期条件であった場合と cold-start であった場合では,同じ質量であってもその後の熱進化が異なってしまい,質量の推定に幅が出てしまうからである.

一般に,直接撮像で発見されるような遠方の大きなガス惑星の場合は,重力不安定によって形成されて効率よく降着が起きるため,hot-start よりの初期条件で形成されると考えられている.一方でコア降着モデルの場合は cold-start よりの初期条件になる.

HD 131399 系

HD 131399 系の概観

この系には,HD 131399A, HD 131399B, HD 131399C の 3 つの恒星と,HD 131399Ab という 1 つの惑星が存在する.
HD 131399A のまわりを HD 131399Ab が公転している.また,HD 131399B と HD 131399C の 2 つが連星を成している.さらに,HD 131399A + b の系と,HD 131399 B + C の系同士が,お互いの共通重心のまわりを公転しているという系になっている.

パラメータ

・HD 131399A
スペクトル型:A1V
質量:1.82 太陽質量
有効温度:9300 K

・HD 131399Ab (今回発見された惑星)
スペクトル型:T2 - T4
質量:4 ± 1 木星質量
有効温度:850 ± 50 K
HD 131399A からの投影距離:0.839 秒角 → 0.830 秒角 (2015年6月→2016年5月)

・HD 131399B
スペクトル型:G
質量:0.96 太陽質量
有効温度:5700 K
HD 131399A からの投影距離:3.149 秒角 → 3.150 秒角 (2015年6月→2016年5月)

・HD 131399C
スペクトル型:K
質量:0.6 太陽質量
有効温度:4400 K
HD 131399A からの投影距離:3.215 秒角 → 3.220 秒角 (2015年6月→2016年5月)

軌道配置と安定性

HD 131399B + C ペアが HD 131399A のまわりを公転する軌道長半径は,アストロメトリ観測から 349 ± 28 AU,軌道長半径は 0.13 ± 0.05 である.また天球面に対する軌道面の傾斜角は 45 - 65° である.

HD 131399Ab が HD 131399A を公転する軌道は,誤差が大きいため暫定的な数値であるが.82 (+23, -27) AU,軌道離心率は 0.35 ± 0.25,天球面に対する軌道面の傾斜角は 40° (+80°, -20°) である.

N 体計算からは,安定な軌道が存在することが示された.ただしアストロメトリ観測から制限されている軌道の範囲では,不安定な軌道である可能性も有り得る.この系はまだ若いため,不安定ではあるが現在はまだ系からはじき出されて自由浮遊惑星 (free-floating planet) になっていないという可能性もある.しかしこのシナリオは最も有りうるシナリオというわけではない.軌道不安定による系からの放出や衝突までのタイムスケールはわずか数百万年だが,この系の年齢はおよそ 1600 万年だからである.

いずれにせよ,HD 131399B, C ペアの影響を受けているため,HD 131399Ab の軌道はケプラー回転ではない状態になっている.

惑星の形成シナリオ

このような特異な系のでの惑星の形成には,以下の 3 つのシナリオが考えられる.

(A) HD 131399A まわり短周期惑星として形成され,惑星同士の遭遇によって弾き飛ばされ,現在のような長周期の軌道へ変化した
この場合,内側にも重いガス惑星が存在するはずである.発見されていないが,検出限界以下の惑星が存在する可能性はある.また,このシナリオを採用する場合,HD 131399Ab の軌道の軌道離心率が若干高いことも説明できる可能性がある.

(B) HD 131399B, C のまわりの周連星惑星 (circumbinary planet) として形成され,他の惑星や連星自身と近接遭遇して散乱された
このシナリオの場合も,(A) と同様に軌道離心率がやや大きいことが説明可能である.

(C) HD 131399A - HD 131399B, C 系が現在の配置になる前に,どちらかの周囲で形成された
恒星の軌道は,周囲の円盤や永年効果によって進化し得る.このシナリオでは,2 つ目の内側の惑星は不要である.しかし,結果として落ち着く惑星の軌道は判別することが出来ないため,惑星ははじめに形成された際に公転していた恒星の周りには既に存在していないという可能性もある.
このシナリオの場合,実は HD 131399Ab は 3 つの恒星全てのさらに外側を公転しているという解とも整合的だが,そのような軌道は寿命が短いためその配置であることは考えづらい.






この惑星の発見は,「太陽が 3 つある惑星」としてニュースにもなりました.

拍手[0回]

PR

コメント
この記事へのコメント
コメントを投稿
URL:
   Vodafone絵文字 i-mode絵文字 Ezweb絵文字

Pass:
秘密: 管理者にだけ表示
 
トラックバック
この記事のトラックバックURL

この記事へのトラックバック