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日々の感想などどうでもよいことを書き連ねるためだけのブログ。
論文関連の(ほぼ)個人用メモ。



arXiv:1607.03512
Zhou et al. (2016)
KELT-17b: A hot-Jupiter transiting an A-star in a misaligned orbit detected with Doppler tomography
(KELT-17b:A 型星をトランジットする,ドップラートモグラフィーで軸のずれが検出されたホットジュピター)

概要

KELT プロジェクトによって,トランジット法で惑星 KELT-17b を発見した.中心星の KELT-19 (BD+14 1881) は視等級 9.23 の A 型星である.また惑星の公転軸は,中心星の自転軸に対して -115.9° ずれている

惑星はトランジット法に加え,視線速度観測と,ドップラートモグラフィー (Dopper tomography) によっても確認された.中心星の自転軸と惑星の公転軸のずれの配置 (spin-orbit misalignment) から,恒星の差動回転の度合いに制限をかけることが出来た.KELT-17 は,剛体回転と,太陽と同程度の差動回転率の両方と整合的である.

KELT-17 は,トランジット惑星が存在することが確認されている中では 4 番目の A 型星である.質量は 1.635 太陽質量,有効温度は 7454 K,天球面上に投影した自転速度は 44.2 km s-1 であり,トランジット惑星を持つ恒星の中では,最も重く,高温で,高速自転をしている部類の恒星である.

ドップラートモグラフィーについて

自転速度が速い重い恒星まわりの惑星は,ドップラートモグラフィー (Doppler tomography) によって存在を確認することが出来る.

惑星が恒星をトランジットしている最中,惑星は自転している恒星の手前を通過していることになるため,恒星からのスペクトル線の分布がトランジットに伴って変化する.
恒星の自転が比較的遅い場合は,この変化は恒星の合計の見かけの速度の変化として観測され,これは Rossiter-McLaughlin effect (ロシター・マクローリン効果) として知られている (Rossiter 1924, McLaughlin 1924).一方,自転によるスペクトル線の広がり (broadening) がその他の要素よりも大きい恒星の場合は,トランジットする惑星の "影" が,恒星の自転によって広がったスペクトル線の形状への侵入という形で分解することが出来る.これが,惑星のドップラートモグラフィーによる検出 (Doppler tomopgraphic detection) である.

ドップラートモグラフィーは,A 型星のまわりの 3 惑星で検出されている.WASP-33b (Collier Cameron et al. 2010など),KOI-13b (Szabo et al. 2011など),HAT-P-57b (Hartman et al. 2015) である.また,その他の 9 惑星でも検出されている.確認されているのは,WASP-3b (Miller et al. 2010),WASP-38b (Brown et al. 2012),CoRoT-11b (Gandolfi et al. 2012),HAT-P-2b, ケプラー25c (Albrecht et al. 2013),KOI-13b (Johnson et al. 2014),KOI-12b (Bourrier et al. 2015),ケプラー7b, HAT-P-56b (Bieryla et al. 2015) である.

惑星の分光学的な影 (spectroscopic shadow) の深さと幅は,中心星と惑星の半径比と直接関係している.
ドップラートモグラフィーで得られた半径比と,トランジット測光観測でのトランジット深さから得られた半径比が対応していれば,トランジットによる惑星検出の偽陽性 (false positive) にありがちな,背景星の変動による偽シグナルの混入の可能性が排除できる.特に,背景の食連星の混入とトランジットを区別するのに適している.なぜならば,背景の食連星の混入の場合は,ドップラートモグラフィーではシグナルは現れないからである.

パラメータ

KELT-17
質量:1.635 太陽質量
半径:1.645 太陽半径
光度:7.51 太陽光度
有効温度:7454 K
金属量:[Fe/H] = -0.18
KELT-17b
軌道周期:3.0801716 日
軌道長半径:0.04881 AU
質量:1.31 木星質量
半径:1.525 木星半径
平均密度:0.46 g cm-3
平衡温度:2087 K

KELT-17 系の特徴

KELT-17 系での,主星の自転軸と惑星の公転軸のずれ (spin-orbit misalignment) は -115.9° である.

中心星の KELT-17 の投影した自転速度は 44.2 km s-1 である.トランジット惑星を持つ恒星の中でこれよりも自転速度が大きいのは,WASP-33 (Collier Cameron et al. 2010),KELT-1 (Siverd et al. 2012),KOI-12 (Bourrier et al. 2015),KOI-13 (Szabo et al. 2011),KELT-7 (Bieryla et al. 2015),HAT-P-57 (Hartman et al. 2015) のみである.

また,KELT-17 は 1.635 太陽質量と,トランジット惑星を持つ恒星の中では上位 3%に入る重さであり,表面温度は上位 0.5%に入る高さである.

惑星の KELT-17b は,理論的な予測よりも大きな半径を持つ惑星である.中心星から受けている日射は,4.31 × 109 erg cm-2 s-1 であり,これは膨張半径を持つための経験的な閾値 2 × 108 erg cm-2 s-1 (Demory & Seager 2011) よりも大きい.

現在のところ,トランジット惑星を持つ恒星の中で,有効温度が 6250 K よりも高いのは 26 個ある.このうちの 70%では,大きな spin-orbit misalignment (> 10°)が検出されている.実際に,A 型星まわりに発見されている 4 惑星は大きく軸がずれている.

KELT-17 系で,恒星の自転軸と惑星の公転軸が揃うために必要なタイムスケールは ~ 1011 年である (Hansen 2012より).従って,この軸のずれは,恒星と惑星の潮汐相互作用によって発生したのではなく,このずれている状態は中心星の手系列段階の寿命の間にわたって安定だろうと考えられる.

KELT-17b は super-synchronous (超同期) の状態にある.中心星の自転周期の上限値は ~ 1.7 日であり,惑星の公転周期は ~ 3.08 日である.これは,他の F, A 型星まわりの惑星でも見られる状態である.より低温な恒星まわりにケプラーによって発見されている惑星の中には,超同期状態にあるものは発見されていない (Walkowicz & Basri 2013).

惑星の潮汐の Q 値を 105 と仮定すると,Goldreich & Soter (1966) による円軌道化のタイムスケールは ~ 107 年となる.従って,惑星の軌道は円軌道化されているだろうと考えられる.







Spin-orbit misalignment の適切な日本語訳って無いんでしょうか.直訳だと「自転-軌道のずれ」となりそうですが,今ひとつピンときません.「自転-公転軸不整合」とかでしょうか.

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