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論文関連の(ほぼ)個人用メモ。



arXiv:1607.05263
Crossfield et al. (2016)
197 Candidates and 104 Validated Planets in K2's First Five Fields
(K2 の最初の 5 視野内の 197 個の惑星候補と 104 の確定した惑星)

概要

NASA のケプラー K2 ミッションの最初の 1 年 (Campaign 0 - 4) で観測した 5 視野内で検出された,197 の惑星候補イベントについて報告する.これらの候補について,集中的な測光観測,恒星の分光観測,高分解能撮像観測,統計的な検証を行った.

その結果,197 の惑星候補イベントのうち,104 個が惑星であることを確定させ,またそのうち 57 個は複数惑星系内の惑星であった.また,30 イベントは惑星由来ではない偽陽性 (false positive) であると判断され,残り 63 イベントはまだ確定されていない惑星候補イベントである.
上記の 104 個の確定した惑星のうち,今回が初の発見報告となるのは 64 個であり,残り 40 個は既に別の論文で惑星と判明していたものである.

今回確定した 104 個の惑星は,大きさは 2.3 地球半径,軌道周期 8.6 日の中央値を持ち,それらの中心星は有効温度 5300 K,ケプラーでの等級は 12.7 等級の中央値を持つ.

これらの中で特に興味深いのは,2 地球半径より小さい惑星は 37 個あり,そのうち 15 個は等級が 11.5 等級より明るい恒星の周りに存在する点である.うち 5 個は地球と同程度の水準の日射を受けており,そのいくつかは複数惑星系内にある.その一例が,M 型矮星 K2-72 のまわりに平均運動共鳴に近い状態で存在している,4 つの惑星である.

これまでのケプラー K2 ミッションでの成果を外挿すると,計画されている全 4 年のミッション中に,K2 では 500 - 1000 個の惑星の発見が期待される.ただしこれは効率的なフォローアップ観測がされた場合の話である.

結果の概観

197 の惑星候補イベントに対して偽陽性確率 (false positive probability, FPP) の評価を行ったところ,63 のイベントでははっきりとした傾向が出なかった (0.01 < FPP < 0.99).これらの候補イベントは典型的には大きな半径 (惑星だと仮定した場合) を持つ (3 地球半径以上).

惑星が受ける日射量の幅は広く,地球と同程度から 10000 倍以上までとなっている.予想された通り,最も低温と考えられる惑星は K 型星,M 型星の周囲を公転している.しかし,ここで計算した恒星のパラメータは,広帯域のカラーもしくは Huber et al. (2016) の情報,あるいはその両方を用いているため,不定性が大きく,バイアスも残っている.これらの恒星と惑星の特性をより強く制限するためのフォローアップ分光観測が現在進行中である (Dressing et al. in prep, Martinez et al. in prep).

個別の惑星についての注釈

今回確定された 104 個の惑星のうち,64 個が新しく確定したものである.

今回新たに確定した惑星

K2-72
K2-72 (EPIC 206209135) は,5.57 日周期の惑星候補 (Vanderburg et al. 2016) を持つ矮星である.今回,さらに 3 つの惑星候補イベントを発見し,合計 4 イベントは全て惑星であると確定した.

恒星 K2-72 の半径は Huber et al. (2016) では 0.23 太陽半径とされていたがこれはおそらく過小評価であり,Maldonado et al. (2015) の半径-質量依存性を用いると 0.40 太陽半径と示唆される.これより惑星の半径を求めると,4 惑星は 1.2 - 1.5 地球半径を持つ惑星だと考えられる.

4 惑星の軌道周期は 5.58, 7.76, 15.19, 24.19 日である.いくつかの惑星の日射量は,地球の日射量と同程度である.また,いくつかの惑星ペアは平均運動共鳴に近く,K2-72 c と d の軌道は 2:1 平均運動共鳴に近く,K2-72b と c は 7:5 の平均運動共鳴に近い.

中心星は暗いため,視線速度観測のための分光観測や惑星大気組成の観測は難しいが,惑星の軌道周期が整数比に近いことから,系内の惑星の質量と平均密度をトランジット時刻変動 (transit timing variations, TTV) から推測することが可能かもしれない.
複数惑星系
Campaign 4 の視野内に,4 つの複数惑星系 (惑星数は 2 個) を同定した.同定したのは,K2-80 (EPIC 210403955), K2-83 (EPIC 210508766), K2- 84 (EPIC 210577548) と K2-90 (EPIC 210968143) である.

これらの惑星のうち低次の平均運動共鳴に入っているものは存在しなかったが,トランジットしない別の惑星が存在し,それらが軌道共鳴に近い状態にあって TTV で検出される可能性はある.
K2-65
K2-65 (EPIC 206144956) は Campaign 3 の視野内にあり,1.6 地球半径の惑星を持つ.

軌道周期は 13 日と比較的長く,予測される視線速度変動の大きさも 1 m s-1 程度かそれ以下だが,中心星が明るく (V = 10.8, J = 9.0),惑星サイズが比較的小さく,また惑星の受け取る日射量が低い (地球の 45 倍) ことから,将来的な視線速度法での観測の良い対象である.
K2-89
K2-89 (EPIC 210838726) も視線速度法でのフォローアップ観測の対象となりうる.

この恒星は M 型星で,軌道周期が 1 日でおおよそ地球サイズの強く日射を受ける惑星を持っている.惑星による視線速度の大きさはおおむね 1 m s-1 と予想され,また中心星は特別明るくはないものの (Kp = 13.3, K = 10.1),計画されている高精度のドップラー分光観測で検出可能な範囲にあると期待される.

既に同定されていた惑星

K2-3 と K2-26
K2-3 (EPIC 201367065) まわりの K2-3b, K2-3c, K2-3d,K2-26 (EPIC 202083828) まわりの K2-26b は,M 型星まわりの小型の海王星型惑星として既に同定されていた (Crossfield et al. 2015, Schlieder et al. 2016).
また,K2-3b はドップラー分光観測によって確定されていた (Almenara et al. 2015).今回はこれらの報告とは独立して惑星の同定を行った.

ただしここで我々が推定した恒星のパラメータは,過去のこれらの発見論文中で分光学的に導出されているより精度の高い推定値に比べると,系統的に過小評価されていることに注意が必要である.
K2-10 と K2-27
K2-10b (EPIC 201577035b) と K2-27b (EPIC 201546283b) はこれまでに惑星と同定されている (Montet et al. 2015, Van Eylen et al. 2016).

今回の論文ではどちらも FPP < 0.01 となり,独立して惑星の同定を行った.
WASP-47
WASP-47 (EPIC 206103150) は,ホットジュピターの WASP-47b (Hellier et al. 2012),軌道周期 1.5 年の巨大惑星 WASP-47c (Neveu-VanMalle et al. 2016,視線速度法で検出),さらに短周期のトランジット惑星 WASP-47d, WASP-47e を持つ (Becker et al. 2015).今回の解析では,3 つのトランジット惑星に対し,FPP < 0.01 を得た.従ってこれも独立した惑星の同定である.
K2-19
K2-19 (EPIC 201505350) まわりには,K2-19b, K2-19c の惑星が発見されており,その軌道周期は 7.9 日と 11.9 日と 3:2 の軌道共鳴に入っている (Armstrong et al. 2015, Narita et al. 2015, Barros et al. 2015).また,2.5 日周期の 3 番目の惑星候補が同定され,惑星と確定されている (Sinukoff et al. 2016).

今回の解析では,これら 3 つ全ての惑星を同じく同定した.
K2-21 と K2-24
K2-21 (EPIC 206011691) は K2-21b, K2-21c が同定されている (Petigura et al. 2015).この 2 惑星は 1.5 - 2 地球半径で, 軌道周期は 5.3 の尽数関係になっている.また,K2-24 (EPIC 203771098) は K2-24b, K2-24c が同定されている (Petigura et al. 2016).この 2 惑星は低密度で小型の土星より軽い惑星であり,軌道周期は 2:1 の尽数関係にある.今回の解析では全ての惑星に対して FPP < 0.01 となり,惑星の存在を確認した.
K2-22
K2-22 (EPIC 201637175) は短周期岩石惑星 K2-22b を持つことが報告されている.この惑星は周期が 9 時間で,崩壊しつつあると考えられている (Sanchis-Ojeda et al. 2015).

今回の解析では,このシグナルは惑星によるものだという可能性が高いと考えられる (FPP = 15%).しかし,解析コードの vespa は,大きく変化するトランジット深さ (1% から 10-3 未満まで変化) には適用できないため,導出された FPP は信頼度が低い.

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