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arXiv:1703.06924
Ormel et al. (2017)
Formation of TRAPPIST-1 and other compact systems
(TRAPPIST-1 とその他のコンパクトな系の形成)

概要

TRAPPIST-1 は,太陽近傍の 0.08 太陽質量の M 型星である.最近,少なくとも 7 個の地球質量惑星を 0.1 AU 以内に持つ惑星系であることが判明した.この軌道配置は,その場形成でも惑星移動モデルでも簡単には説明できないため,理論家を困惑させている.

この論文では,この系の形成と軌道配置を再現するためのシナリオを提案する.
このモデルでは,惑星形成は水のスノーラインで始まる.この場所では,円盤外側に起源を持つペブルサイズの粒子が集積し,ストリーミング不安定 (streaming instability) を引き起こす.

それらの形成後,原始惑星はべブルの集積によって急速に成長する.この惑星の成長は,地球質量程度で止まる.この質量になると,円盤への惑星の重力によるフィードバックによってペブルが惑星に寄せ付けられなくなる.

これらの惑星はタイプ I 惑星移動 (type I migration) によって,恒星の磁気圏による円盤内側の穴の部分まで移動し,最終的に複数の惑星が平均運動共鳴に入る.
円盤が消失する間,中心の円盤の穴の半径は拡大し,その過程で最も内側の惑星は共鳴から離脱する.

ここでは,このモデルはその他のコンパクトな惑星系にも適用できることと,その他の多数の近接スーパーアース系は TRAPPIST-1 系のスケールアップバージョンであることについても議論する.また,いくつかの近接した軌道を持つ惑星があるコンパクトな系は,遠方に巨大惑星を持つという仮説を提案する.これは,外側に巨大惑星が存在することによって,円盤外側からのペブルの流束が抑制されるからである.

TRAPPIST-1 円盤モデル

このモデルでは,TRAPPIST-1 の周囲にあった原始惑星系円盤を,内側円盤と外側円盤に分けて考える.

内側円盤は r ≦ 0.1 AU の領域とする.この領域はスノーラインがある領域であり,惑星形成が起きる領域である.
外側は r >> 1 AU である.この領域は,全円盤質量の大部分を占める領域である.

簡単のため,円盤の縦横比は内側円盤では 0.03 に,外側円盤は 0.1 に固定した.
また,恒星磁場による円盤の切り取りの半径は 0.01 AU 程度とスケーリングした.これは恒星表面磁場を 180 G とした場合に対応している.この磁場の強度は典型的なおうし座 T 型性の ~ kG 程度という値よりは小さいが,褐色矮星での観測結果とは整合的である (Reiners et al. 2009).

惑星系形成の概要

微惑星形成

まずは,ペブル (pebble) サイズの粒子の集積と,その後に起きる重力崩壊による微惑星の形成が起きる.

有名な機構としては,固体粒子のガスに対するバックリアクションによる,粒子のフィラメント状のクランプ形成である,ストリーミング不安定 (Youdin & Goodman 2005) がある.これらのフィラメントが後に分裂して,微惑星形成に繋がるとされる (Johansen et al. 2007).

効率的なペブル集積

ストリーミング不安定の結果として形成される微惑星は,~ 100 km 程度のサイズになりうる (Schafer et al. 2017).これらの微惑星は,円盤の外側領域からやってきたペブルを集積する.これはいわゆるペブル集積 (pebble accretion) と呼ばれるものである.

ペブル集積による微惑星の成長時間は, 0.012/εPA Myr と見積もられる.ここで,εPA はペブル集積効率 (pebble accretion efficiency) である.簡単な見積もりでは εPA = 0.17 程度と考えられる.より詳細には,N 体シミュレーションから 0.45 程度という値が得られる.

太陽型星に比べると,TRAPPIST-1 の円盤ではペブル集積が効率的だと考えられる.これは,円盤が薄く,ペブルは二次元極限で集積することと,中心星の質量が小さいためヒル半径が大きくなることによる.このような円盤内では,地球サイズの惑星を形成するのには 104 年しかかからない.

ペブル孤立 (pebble isolation)

惑星が成長し,惑星からの円盤への重力的なフィードバックが重要になるとペブル集積は終わる.そのような圧力極大において,ペブルの移動は止まる.基本的には,ペブル孤立は円盤へのギャップ形成を意味する.

太陽質量星周りでの 5 AU の距離における,ペブル孤立質量は 20 地球質量程度と見積もられている (Lambrechts et al. 2014).TRAPPIST-1 円盤のスノーラインではこれはより小さな質量となるだろう.

円盤へのギャップ形成に必要な条件は,ヒル半径が円盤のスケールハイトを上回ることである (Lin & Papaloizou 1993),この場合,TRAPPIST-1 円盤でのペブル孤立質量は 0.72 地球質量に対応する.

惑星移動と共鳴捕獲

ここでは,タイプ I 惑星移動は簡単のため内側へのみ動くとする.つまり,惑星移動の符号を反転させ得るような熱力学的な効果 (Paadekooper et al. 2011など) は考慮しないものとする.

ここまでのプロセスの繰り返しにより,6 - 7 個の惑星の隊列が形成される.
この円盤のモデルでは,形成された惑星は 2:1 軌道共鳴に捉えられる可能性がある,それは,円盤の内縁半径でのガス密度がやや低いためである (Ogihara & Kobayashi 2013).

しかし,2:1 軌道共鳴に入っている惑星を 3:2 共鳴へ持っていく方法はいくつかある.例えば,確率運動,円盤内での密度擾乱による駆動などである (Paadekooper et al. 2013).ここでは,円盤消失のフェーズでは内側の惑星は全て 3:2 共鳴に入っていると仮定する.

円盤消失と反発

観測からは,内側の TRAPPIST-1b/c ペアと c/d ペアは,現在は平均運動共鳴に入っていない.惑星を共鳴から外す機構としては,恒星潮汐による減衰 (Lithwick & Wu 2012),巨大衝突 (Ogihara et al. 2015) などがある.ここでは磁気圏反発 (magnetospheric rebound, Liu et al. 2017) を考慮する.

磁気圏反発による共鳴からの脱出は,恒星磁気圏による円盤の穴が円盤消失中に拡大し,円盤の内縁が外側へ移動する事によるものである.
原則として,最も内側の惑星は不均衡な強いトルクの影響で円盤と強く結合しているため,穴の半径が外側に拡大するのに付いていく傾向がある.しかし穴の拡大が速すぎる場合,つまり,拡大率が惑星の移動率の最大値より大きい場合は,惑星は円盤の結合から外れ磁気圏による穴の中に入ることになる.

ここでは,円盤消失は二段階に分かれていると考える.
まず円盤内縁が 0.01 から 0.02 AU へと倍になる.この間に TRAPPIST-1b は比較的早く円盤との結合が切れるが,TRAPPIST-1c は惑星移動レートの係数が比較的大きいため,円盤との結合が切れずに円盤内縁の移動に付いて行く (この係数は惑星の質量が大きいと大きく,また軌道共鳴鎖に入っている惑星が多いと小さくなる).この間に,TRAPPIST-1b と c の 3:2 共鳴が破壊される.

引き続く二番目の円盤消失フェーズで,TRAPPIST-1d は c との共鳴から抜ける.それより外側では共鳴関係は維持される.

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