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論文関連の(ほぼ)個人用メモ。



arXiv:1706.00027
Allart et al. (2017)
Search for water vapor in the high-resolution transmission spectrum of HD189733b in the visible
(HD 189733b の可視光での高分散透過スペクトル中における水蒸気の探査)

概要

最近の地上望遠鏡での高分解能の透過・放射スペクトルから,系外惑星の大気の構造と組成についての研究が盛んに行われている.これらの観測から,ナトリウムや一酸化炭素,水などの多数の原子や分子種が,多くのホットジュピターで検出されている.

ほっとじゅぴたー大気中の分子種は近赤外領域でのみ検出されているが,大気中の原子は可視光で検出されている.とりわけ,水蒸気の検出と存在度の決定は,惑星形成過程に重要な制限を与える.

ここでは,HARPS を用いて可視光での高分散分光観測を行い,HD 189733b の大気中の水蒸気の検出を試みた.大気の透過光コード Molecfit を使用して,地球大気での吸収特性の補正を行った.その後 3 回のトランジットのデータセットを用いて,HD 189733b の高分散透過光スペクトルを計算し,6500 Å 周辺の水分子による吸収を探した.

結果として,地球大気による吸収の特徴はノイズレベルにまで補正することが出来た.また,HD 189733b 大気中における水の吸収については,100 ppm という 5 σ の上限値を与えた.

透過光スペクトルの検出精度は 1 σ で 20 ppm を達成し,地球大気に強い吸収源がある分子 (例えば今回の水分子) に対しても,地上観測から宇宙望遠鏡での観測に匹敵する程度の感度が実現できることを示した.
この手法は, VLT に設置される ESPRESSO のような将来的な装置を用いて,系外惑星大気中の様々な原子や分子を検出するための新しい視点を与える.今回の結果を外挿すると,ESPRESSO では 1 回のトランジットで HD 189733b のような雲の無い大気を持つホットジュピター中の水蒸気を十分検出できるだろうと考えられる.

今後の近赤外分光観測装置によって,より広い範囲の分子種に対して効果的で十分な感度の観測が期待される.さらに,同じ分子種を異なるバンド (例えば可視光と近赤外で) で検出することは,惑星大気のレイリー散乱やエアロゾル (雲 and/or ヘイズ) の存在などの大気の構造や組成の制限につながる.

研究背景

ホットジュピターの大気観測

ホットジュピターのトランジット観測からは大気に関する様々な情報が明らかになる.例えば,一次食 (primary transit) では惑星大気の透過スペクトル,二次食 (secondary eclipse) では惑星からの熱放射や表面での反射光が検出出来る.

惑星大気からの初めての原子の検出は,HD 209458b の透過スペクトル中から得られた (Chabonneau et al. 2002).この観測では,ハッブル宇宙望遠鏡の STIS 分光器を用いて,可視光の波長でナトリウムの doublet の吸収を検出した.

地上望遠鏡での初めての大気成分の検出は,Redfield et al. (2008) によるものである.この観測では,HD 189733b でナトリウムの doublet を検出した,その後 HD 209458b でも,Snellen et al. (2008) が地上からの観測でナトリウムを検出している.

CO の検出は,赤外線の高分散透過スペクトル観測で行われた.HD 209458b と HD 189733b でそれぞれ検出されている (Snellen et al. 2010, Brogi et al. 2016).これらの観測は,超大型望遠鏡 (Very Large Telescope, VLT) の CRIRES 分光器を用いて行われている.

さらに Deming et al. (2013) と McCullough et al. (2014) では,両惑星の赤外透過スペクトル中に水の存在を検出している.この観測はハッブル宇宙望遠鏡の WFC3 を用いて行われている.

これまでに数十個のホットジュピターで,同種の観測がおこなれている.いくつかの惑星では大気中のエアロゾルの存在が,レイリー散乱やミー散乱の特徴を介して検出されている (Lecavelier des Etangs et al. 2008など).また,大気散逸の存在 (Lecavelier des Etangs et al. 2008など),大気中での温度勾配の存在 (Huitson et al. 2012など).大気循環 (Snellen et al. 2010).大きな C/O 比の検出 (Mashusudhan et al. 2011など) も報告されている.

HD189733b について

今回観測するのは HD 189733b である.主星の HD 189733 は活発で明るい金属豊富な K0V 星である.この惑星は潮汐固定していると思われるホットジュピターで,可視光では青い色を示すことが分かっている (Evans et al. 2013).

大気大気はナトリウム (Redfield et al. 2008など),水 (Birkby et al. 2013など),一酸化炭素 (de Kok et al. 2013など) を含む.また,青い波長ではレイリー散乱を示す (Pont et al. 2008など).これは大気中の高高度にあるヘイズと,Ly α 吸収で存在が示されている,水素原子の散逸によって引き起こされていると考えられる (Lecavelier des Etangs et al. 2010など).

結論

Molecfit ツールを用いることにより,地球大気による水の吸収の影響は,ノイズレベルにまで除去することができた.

HD 189733b 大気中での水の吸収の相互相関関数においての 1 σ で 10 ppm の精度を達成した.
理論的に予想されるスペクトルの最大のコントラストは 46 ppm であり,今回のデータは HD 189733b における水蒸気の存在に意味のある制限を与えるにはノイズが多すぎる.

今回の手法を元に,HD 189733b 的な惑星で水蒸気を検出するためには何回のトランジットが必要か検証した.観測手段として,HARPS や将来の ESPRESSO での観測を念頭において検証を行った.ESPRESSO の波長カバー領域などを考慮すると,より強いシグナルが期待される 7400 Å のバンドでは,1 回のトランジットで水を検出可能と考えられる.そのため,ESPRESSO は地球型惑星探査だけではなく,可視光での惑星大気の特徴付けの機器としても使える.

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