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論文関連の(ほぼ)個人用メモ。
arXiv:1706.02018
Burgasser & Mamajek (2017)
On the Age of the TRAPPIST-1 System
(TRAPPIST-1 系の年齢について)
年齢推定において,色-絶対等級ダイアグラム,平均密度,リチウム吸収,表面重力の特徴,金属量,運動学,自転および磁気的活動に基づく経験的な年齢の制限を用いた.その結果,TRAPPIST-1 は遷移的な thin/thick 円盤に属する恒星であり,年齢は 7.6 ± 2,2 Gyr (~ 76 億歳) と推定した.
この恒星の色-光度ダイアグラム上での位置は,この恒星がやや金属量豊富 ([Fe/H] ~ +0.06) であることと整合的であり,過去に報告されていた近赤外での分光観測からの金属量とも一致する.また恒星の半径 (0.121 太陽半径) が太陽組成の進化モデルと比べると 9 - 14% 大きいということとも整合的である.
この系のパラメータであまり制限を与えられていない重要なものに,この系の年齢がある.これは,超低温の M 型矮星に適用できる経験的な年齢の診断法が貧弱であることが要因である.
太陽型星にとっては,自転周期 (Gyrochronology を用いるもの),恒星活動度の診断,恒星大気中のリチウムの欠乏は,スタンダードな年齢診断法である (Soderblom 2010).
一方で超低温矮星の光球の電離度は低く,恒星から吹き出す磁気的風との磁気的な結合が弱くなる.そのため自転速度が減速するタイムスケールは,天の川銀河の年齢を超えうる (West et al. 2008).
リチウムの欠乏は太陽型星に対して最大で 1 - 2 Gyr のおおよその年齢を与える (Sestito & Randich 2005).この手法は,全対流をしている低質量星では ~ 200 Myr の間までは完全であり,つまり若い超低温矮星のみに有効な手法である (Stauffer et al. 1998).
また,スペクトルからの年齢の診断法,例えば表面重力に敏感な特徴の測定については,こちらは ~ 300 Myr よりも年老いた年齢に限定される.
TRAPPIST-1 の運動学からはこの恒星は “old disk” に属する恒星であることが示唆される一方 (Leggett 1992, Burgasser et al. 2015),このような分類は年齢を制限するのにはあまり使えない.
過去の研究では,Filippazzo et al. (2015) ではあまり制限が付けられていない 0.5 - 10 Gyr という値を与え,Luger et al. (2017) ではより制限を付けた,しかしまだ広い値である 3 - 8 Gyr を与えた.これらとは対照的に,幾つかの研究では TRAPPIST-1 の非熱的磁気放射の強度を根拠にして,この系は若い可能性について議論している (Bourrier et al. 2017など).
arXiv:1706.02018
Burgasser & Mamajek (2017)
On the Age of the TRAPPIST-1 System
(TRAPPIST-1 系の年齢について)
概要
太陽系近傍 (12 pc) にある M8 型の矮星 TRAPPIST-1 は,少なくとも 7 個の地球に似たサイズの惑星からなる,コンパクトな軌道配置の惑星系を持つ.惑星形成と進化の理論を調べることの重要性や,銀河系内で最もありふれた恒星である M 型矮星を公転する地球サイズの系外惑星での居住可能性について評価することを考え,この系の年齢の総合的な評価を行った.年齢推定において,色-絶対等級ダイアグラム,平均密度,リチウム吸収,表面重力の特徴,金属量,運動学,自転および磁気的活動に基づく経験的な年齢の制限を用いた.その結果,TRAPPIST-1 は遷移的な thin/thick 円盤に属する恒星であり,年齢は 7.6 ± 2,2 Gyr (~ 76 億歳) と推定した.
この恒星の色-光度ダイアグラム上での位置は,この恒星がやや金属量豊富 ([Fe/H] ~ +0.06) であることと整合的であり,過去に報告されていた近赤外での分光観測からの金属量とも一致する.また恒星の半径 (0.121 太陽半径) が太陽組成の進化モデルと比べると 9 - 14% 大きいということとも整合的である.
TRAPPIST-1 について
TRAPPIST-1 は別名 2MASS J23062928−0502285 (Gizis et al. 2000) であり.超低温の M8 矮星である.最近になって,ハビタブルゾーン内を公転する惑星 3 個を含む,合計 7 個の惑星が検出されている (Gillon et al. 2016, 2017など).この系のパラメータであまり制限を与えられていない重要なものに,この系の年齢がある.これは,超低温の M 型矮星に適用できる経験的な年齢の診断法が貧弱であることが要因である.
太陽型星にとっては,自転周期 (Gyrochronology を用いるもの),恒星活動度の診断,恒星大気中のリチウムの欠乏は,スタンダードな年齢診断法である (Soderblom 2010).
一方で超低温矮星の光球の電離度は低く,恒星から吹き出す磁気的風との磁気的な結合が弱くなる.そのため自転速度が減速するタイムスケールは,天の川銀河の年齢を超えうる (West et al. 2008).
リチウムの欠乏は太陽型星に対して最大で 1 - 2 Gyr のおおよその年齢を与える (Sestito & Randich 2005).この手法は,全対流をしている低質量星では ~ 200 Myr の間までは完全であり,つまり若い超低温矮星のみに有効な手法である (Stauffer et al. 1998).
また,スペクトルからの年齢の診断法,例えば表面重力に敏感な特徴の測定については,こちらは ~ 300 Myr よりも年老いた年齢に限定される.
TRAPPIST-1 の運動学からはこの恒星は “old disk” に属する恒星であることが示唆される一方 (Leggett 1992, Burgasser et al. 2015),このような分類は年齢を制限するのにはあまり使えない.
過去の研究では,Filippazzo et al. (2015) ではあまり制限が付けられていない 0.5 - 10 Gyr という値を与え,Luger et al. (2017) ではより制限を付けた,しかしまだ広い値である 3 - 8 Gyr を与えた.これらとは対照的に,幾つかの研究では TRAPPIST-1 の非熱的磁気放射の強度を根拠にして,この系は若い可能性について議論している (Bourrier et al. 2017など).
議論
恒星の金属量と運動学的な年齢の確率分布関数と,リチウム吸収線の欠乏と自転周期からの年齢の下限値の組み合わせから,年齢を 7.6 ± 2.2 Gyr と推定した.これは,過去の定性的な研究結果の一部,例えば "比較的若い" とした Bourrier et al. (2017) や "若い" とした O’Malley-James & Kaltenegger (2017) とは非整合的である.また,Luger et al. (2017) での推定値である 3 - 8 Gyr の上限値付近の値である.PR
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天文・宇宙物理関連メモ vol.389 Gillon et al. (2017) TRAPPIST-1 まわりの 7 つの惑星の発見
天文・宇宙物理関連メモ vol.408 Lugar et al. (2017) ケプラーのデータによる TRAPPIST-1h の軌道周期の決定