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日々の感想などどうでもよいことを書き連ねるためだけのブログ。
論文関連の(ほぼ)個人用メモ。



arXiv:1708.07909
Turner et al. (2017)
Investigating the physical properties of transiting hot Jupiters with the 1.5-m Kuiper Telescope
(1.5 m カイパー望遠鏡によるトランジットホットジュピターの物理特性の調査)

概要

11 個のトランジットするホットジュピター (CoRoT-12b, HAT-P-5b, HAT-P-12b, HAT-P-33b, HAT-P-37b, WASP-2b, WASP-24b, WASP-60b, WASP-80b, WASP-103b, XO-3b) の測光観測データの解析について報告する.この観測と解析より,これらの惑星のパラメータの更新と,惑星大気についての情報に制約を与える.

これら 11 個の惑星のうち,CoRoT-12b,HAT-P-37b,WASP-60b については,これらの惑星の発見報告以降,初めてのフォローアップ観測である.これに加えて,WASP-80b と WASP-103b の初めての近紫外線でのトランジット観測の結果も報告する

ここでの解析の結果を過去の研究と比較し,トランジット時刻変動 (transit timing variation, TTV) の有無を調査した,また,トランジット深さの波長依存性についても調べた.
TTV は惑星系における三体目の天体を探査するのに使うことができ,惑星半径の波長依存性からは,系外惑星の大気の特性に制約を与えるのに使うことができる.

解析の結果,WASP-103b と XO-3b について,大気中での散乱の証拠と思われるトランジット深さの波長による違いを検出した.HAT-P-37b の B バンドでのトランジット深さは,近赤外線領域でのトランジット深さよりも小さい値となり,これは TiO (酸化チタン) や VO (酸化バナジウム) による吸収を示唆する.
これらの変動は 2 - 4.6 σ の確度で検出されており,これらの結果を確認するためにはフォローアップ観測が必要である.

加えて,HAT-P-5b, HAT-P-12b, WASP-2b, WASP-24b, WASP-80b の 5 惑星では,可視光の波長帯で平坦な透過スペクトルが検出された.これはこれらの惑星大気中には雲が存在することを示唆する結果である.

観測した全ての天体において,軌道周期と天体暦を計算して更新した.

WASP-80b を除き,今回の解析では TTV は検出されなかった.WASP-80b での検出については TTV の存在を確定させるためにさらなるフォローアップ観測が必要である.

観測は全て,アリゾナ・ツーソン付近にある Mt. Bigelow の,アリゾナ大学の Steward Observatory の 1.55-m Kuiper Telescope を用いて行われた.観測に用いたバンドは,Bessel U (303 - 417 nm),Harris B (360 - 500 nm),Harris R (550 - 900 nm) である.

詳細な結果

CoRoT-12b

この惑星の検出は CoRoT 衛星にて行われ,その後地上からの視線速度観測にて存在が確認された (Gllon et al. 2010).この惑星は,一般的なモデルで説明が可能な程度の半径を持つ,膨張したホットジュピターである.

Harris R フィルターでトランジットを観測した.惑星半径と中心星の半径比 (Rp/Rstar) は,発見報告論文での値より 4.6 σ 大きいものであった.

惑星の物理パラメータは Gillon et al. (2010) の報告とよく一致した.惑星半径は過去の推定の 1.3 σ の範囲内,質量は 1 σ の範囲内であった..

HAT-P-5b

この惑星は HATNet によって,やや金属量が豊富な恒星の周りに発見された (Bakos et al. 2008).
Southworth et al. (2012) での観測によって惑星の存在が確定した.また,波長によって惑星の半径が異なることが分かっており,レイリー散乱単独から予想されるよりも大きな半径が,U バンドでの観測で検出されている.これは,著者によると未知の機器の系統による誤差である可能性が示唆されている.

今回はこの惑星のトランジットを,Bessel U フィルターで観測した.

物理パラメータは過去の報告とよく一致した.U バンドでの惑星半径は,350 - 733 nm での観測からの重み付け平均した惑星半径と 1 σ 内で整合する.なお今回の U バンドでの観測における誤差は,Southworth et al. (2012) での観測結果が,彼らが示唆するように未知の系統誤差に起因するかどうかを判断するには大きすぎるものであった.

惑星の軌道周期は,過去の推定とよく一致した.

HAT-P-12b

この惑星は,低密度ので土星より軽い質量を持つ (Hartman et al. 2009).

Sing et al. (2016) の観測では,青から近赤外の波長に向かって強い可視光の散乱スロープが発見された.この結果は,ハッブル宇宙望遠鏡とスピッツァー宇宙望遠鏡を用いた観測を元にしている.

今回はこの惑星のトランジットを Harris B フィルターで観測した.

得られた半径比 Rp/Rstar は過去の観測と 1 σ 以内の範囲であった.

スペクトルは,大気の高高度に雲を持つとするものと整合的な結果であった.また Line et al. (2013) の結果とも一致した.惑星の軌道周期は Mallonn et al. (2015) での報告と近い値であった.

HAT-P-33b

この惑星は,光度ゆらぎの大きい恒星を公転する膨張ホットジュピターである (Hartmann et al. 2011).恒星の大きなゆらぎは,対流の非一様性が起源だと思われる.この大きなゆらぎのため,惑星の半径と質量 (軌道離心率と恒星のパラメータに依存する) はあまり良い制度では分かっていない.惑星の軌道が円軌道の場合は半径は 1.7 木星半径,離心軌道であったは 1.8 木星半径となる.

この惑星の Transiting Exoplanet Monitoring Project (TEMP) による初めてのフォローアップ観測では,TTV の兆候は見られなかった (Wang et al. 2017).

今回の観測は Harris R フィルターを用いて行った.

観測の結果,半径比 Rp/Rstar は発見報告論文での値より 3.4 σ 大きい値が得られた.この違いの原因を解明するためには,さらなる観測が必要である.

HAT-P-37b

この惑星は HATNet によるトランジットサーベイで同定され,高分解能分光観測とさらなる測光観測によって存在が確定した (Bakos et al. 2012).
1.169 木星質量,1.178 木星半径を持つホットジュピターであり,軌道周期は 2.797436 日である.このパラメータはフォローアップ観測によって確定したものである (Maciejewski et al. 2016).

今回はこの惑星を Harris B と R フィルターで観測した.

半径比 Rp/Rstar は各フィルターで 1.7 σ 異なる値となった.R バンドでの値の方が大きくなった.また B バンドでの半径比は,近赤外での半径比よりも 2.85 σ 小さい値となった.

各フィルター間での差異が現実のものか,誤差によるものかを区別するには,さらなる観測が必要である.その他の物理パラメータは,過去の結果の 1 σ の範囲内であった.

WASP-2b

この惑星は WASP サーベイで検出され,SOPHIE 分光器での視線速度観測で確定した短周期ホットジュピターである (Collier Cameron et al. 2007).

今回は Harris B で観測した.

物理パラメータとトランジット深さは,過去の結果の 1 σ 以内で一致した.

WASP-24b

この惑星は,WASP サーベイで検出され,追加の測光観測と視線速度測定で存在が確定したホットジュピターである (Street et al. 2010).ロシター効果の測定も行われており,順行で揃った公転軸を持っていることが示唆されている (Simmpson et al. 2011).

今回は Harris R フィルターで 2 回のトランジットを観測し,それぞれを解析した.

半径比 Rp/Rstar の重み付け平均値は,過去の R バンド観測 (Southworth et al. 2014) と 4 σ で不一致であった.この違いの原因は不明であり,将来のさらなる観測が必要である.

その他の導出したパラメータは過去の推定と概ね一致した,しかし惑星半径と平衡温度はそれぞれ 1.4 σ と 1.9 σ 異なる値となった.

WASP-60b

この惑星は WASP-North で同定され,視線速度測定とフォローアップ測光観測で存在が確定した (Hebrard et al. 2013).金属欠乏星を公転する,理論予測値よりずっと小さな半径を持つコンパクトな惑星である.

今回は Harris B で観測を行った.この観測は,この惑星の検出後初めてのフォローアップ観測である.

観測中に自動追尾装置が短時間故障した影響で,トランジット光度曲線に穴が生じている.しかし,過去のパラメータと 1 σ 以内で一致するパラメータを得た.B バンドでの半径比 Rp/Rstar は,発見報告での半径比より 1.3 σ 大きい.

WASP-80b

この惑星は,0.55 木星質量のウォームサターンもしくはホットジュピターである.最も大きなトランジット深さを示す系外惑星のうちのひとつである (0.17126 ± 0.00031, Triaud et al. 2013).

過去の観測では,大気の透過スペクトルは厚い雲と大気のヘイズが存在するとするものと整合的であった (Fukui et al. 2014).

今回はこの惑星のトランジットを Bessel U フィルターで観測した.

荒れた天候の影響により追尾が一時故障した影響で,トランジット光度曲線に穴が生じている.しかし過去の結果に近い物理パラメータが導出された.

TTV と思われるシグナル検出したが,確認のためには更なる観測が必要である.

WASP-103b

この惑星は 1.49 木星質量のホットジュピターであり,0.925542 日という非常に短い周期を持つ.軌道半径は,ロッシュ限界半径よりわずかに 20%大きいだけである (Gillon et al. 2014).

この系には,暗く低温で,近距離 (射影距離 0.242 arcsec) にある WASP-103 の伴星がある (Wo ̈llert & Brandner 2015).

過去の観測では,青い側の可視光の波長で惑星半径が大きくなっていることが報告されている.しかし Southworth & Evans (2016) では,近傍の伴星の混入を考慮したとしても,大気中での散乱はこの観測結果の主要な原因にはならないと指摘している.

今回は Bessel U で観測を行った.

このフィルターでの半径比 Rp/Rstar は,発見報告論文での値と 2.1 σ 異なるものであった.

その他のパラメータは過去の観測と 1 σ 以内で一致した,軌道周期も過去の報告と一致した.

半径比の近赤外線と今回の紫外線での値の違いは,Southworth & Evans (2016) で報告されたものと一致する.

XO-3b

この惑星は XO サーベイで発見された.11.79 木星質量と重く,e = 0.26 と大きな軌道離心率を持つ惑星である (Johns-Krull et al. 2008).

Hebrard et al. (2008) によると,中心星 XO-3 の自転軸は XO-3b の公転軸とずれていることが指摘されている.

今回は Harris B フィルターで観測した.

物理パラメータは過去の報告と一致した.
半径比 Rp/Rstar は V バンドでの過去の観測 (Winn et al. 2008) より 2 σ 大きいものであった.

議論

HAT-P-5b, HAT-P-12b, WASP-2b, WASP- 24b, and WASP-80b については,可視光の範囲内でのトランジット深さは一定であった.これは,惑星の高層大気に雲かヘイズが存在している事を示唆している.あるいは,等温の圧力温度構造を持っている可能性もある (Fortney et al. 2006).

CoRoT-12b, HAT-P-33b, HAT-P-37b, WASP-103b, XO-3b については,トランジット深さの波長による違いを検出した.これは,大気中のエアロゾルもしくはレイリー散乱,あるいは吸収の存在を示唆している.

HAT-P-37b は B バンドでのトランジット深さが,赤い波長や近赤外線でのトランジット深さよりも小さい値を示した.このような傾向は,Evans et al. (2016) によって WASP-121b で報告されているのみである.Evans et al. (2016) では,この特徴は TiO/VO の吸収によるものであると主張している,これが HAT-P-37b の大気中でも起きている可能性がある.しかし TiO/VO が吸収源かどうかはさらなる理論モデル化が必要.さらに,近赤外での小さい半径は WASP-1b でも報告されている (Turner et al. 2016),しかしこれは B バンドでの観測ではない.レイリー散乱起源の散乱かどうか確認するためには,WASP-103b と XO-3b のさらなる近紫外線と青い波長での観測が必要である.

HAT-P-5b,WASP-80b,WASP-103b の近紫外線観測では,トランジット光度曲線の非対称性は見られなかった.この結果は,先行研究での 19 例の他の惑星の地上からの近紫外線観測の結果と整合的である (Southworth et al. 2012など).さらに Turner et al. (2016) の CLOUDY プラズマシミュレーションコードによる理論モデルでは,吸収を引き起こす可能性のある物理現象に関係なく,広帯域の近紫外線で非対称トランジットは形成されないことが指摘されている.

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