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arXiv:1710.11099
Bayliss et al. (2017)
NGTS-1b: A hot Jupiter transiting an M-dwarf
(NGTS-1b・M 型矮星をトランジットするホットジュピター)

概要

早期 M 型矮星をトランジットするホットジュピター NGTS-1b の発見について報告する.
中心星 NGTS-1 の有効温度は 3916 K で,惑星の軌道周期は 2.764 日である.

この惑星は,Next Generation Transit Survey (NGTS) の一環で発見された.
惑星の質量は 0.812 木星質量であり,M 型矮星をトランジットする惑星の中では最も重い.惑星の半径は 1.33 木星半径であった.

惑星は中心星をかすめるような位置関係でトランジットを起こしているため (grazing transit),惑星の半径は,データのモデリングと既知の巨大ガス惑星のポピュレーションからの密度に対する prior を置いて推定を行った.


NGTS-1b は,M 型矮星の周りに発見された 3 番目のトランジット巨大惑星である.
今回の発見は,M 型矮星まわりの近接ガス惑星は,太陽型星周りでのホットジュピターの既知のポピュレーションと同様に形成され移動するという考えを補強するものである.

中心星の活動星を確認したが,明確な活動星は示さなかった.
また運動学的には,この恒星が厚い銀河円盤のに属している天体であることが示唆される.

中心星の光度は K = 11.9 で,惑星のトランジット深さは 2.5%であり,ジェームズ・ウェッブ宇宙望遠鏡 (James Webb Space Telescope, JWST) の透過光分光観測を介して M 型矮星まわりの巨大惑星の組成を探査するための有力候補である.

M 型星まわりの惑星探査

これまでの M 型星まわりの惑星探査

最近の M 型星周りでの惑星発見で特に興味深いのは,プロキシマ・ケンタウリ (Anglada-Escud ́e et al. 2016) と TRAPPIST-1 (Gillon et al. 2017) の発見である.
M 型星のまわりでは,惑星と中心星の半径比 \(R_{\rm p}/R_{\rm star}\) と質量比 \(M_{\rm p}/M_{\rm star}\) が太陽型星周りでの惑星系よりずっと大きいため,トランジットや視線速度法で惑星を検出しやすい.また中心星の光度が小さいためハビタブルゾーンが恒星に近い.そのためハビタブルゾーンにある惑星の検出がしやすい (恒星近傍の惑星のほうが検出しやすいため).

さらに,M 型矮星は銀河系内で最も一般的な恒星であり,銀河系の恒星の~ 75%を占める (Henry et al. 2006).


しかし,系外惑星の観測という点では M 型星には困難な点が多い.

元々の光度が小さいため,他のタイプの恒星に比べると見かけの等級がずっと暗く,正確な測光観測や視線速度の測定が難しくなる.また M 型矮星のスペクトルには分子による吸収が多く,これは太陽型星に多いシャープな構造を持つ金属の線とは異なり,精密な視線速度測定を行うことを難しくしている.さらに中心星の有効温度が低いため,フラックスの極大が可視光領域の外にあり (赤外線),多くの測光観測や分光観測がターゲットとしている可視光領域からは外れている.

このような困難はあるものの,M 型矮星周りの惑星探査は進行している,特に,地球サイズの系外惑星 GJ 1132b (Berta-Thompson et al. 2015) や,スーパーアース GJ 1213b (Charbonneau et al. 2009) などが,地上からのトランジットサーベイプロジェクト MEarth で検出されている (Nutzman & Charbonneau 2008).

また,大きな視線速度サーベイブログラムが HARPS を用いて行われている.

このようなサーベイプログラムの中に,広視野の Next Generation Transit Survey (NGTS) がある.
このサーベイは,スペクトル型が K 型や早期 M 型の恒星まわりのトランジット観測を目的とし,地上から達成できる限界の測光精度で観測を行っている.

M 型星まわりの巨大惑星

半径が 0.5 - 4 地球半径の小型の惑星は,M 型星周りではよく見られる一方で (Dressing & Charbonneau 2013) で,巨大ガス惑星は極めて希少である.
Meyer et al. (2017) によると,M 型矮星周りでの 1 - 10 木星質量の惑星の存在頻度は 0.07 である.

これまでに M 型星をトランジットする巨大惑星は,2 個発見されているのみである.発見されているのは,ケプラー45b (0.505 木星質量,0.96 木星半径,Johnson et al. 2012),HATS-6b (0.32 木星質量,1.00 木星半径,Hartman et al. 2015).

また,WASP-80b (0.55 木星質量,0.95 木星半径,Triaud et al. 2013) は早期 M 型星に非常に近い低質量の主星をトランジットしており,物理的特性はケプラー45b に類似している.

しかしケプラーの統計からは,M 型星周りだけではなく太陽型星周りでもホットジュピターは希少であることが分かっている.

パラメータ

NGTS-1
スペクトル型:M0
有効温度:3916 K
質量:0.617 太陽質量
半径:0.573 太陽半径
距離:224 pc
NGTS-1b
軌道周期:2.647298 日
軌道離心率:0.016
質量:0.812 木星質量
半径:1.33 木星半径
軌道長半径:0.0326 AU
平衡温度:790 K

議論

NGTS-1b は M 型矮星まわりをトランジットする 3 番目の巨大ガス惑星であり,それらの中では最も重い.

トランジットは grazing なので惑星半径の精度はあまり良くなく,また得られる推定値は使用した density prior に強く影響される.

M 型星周りの希少な巨大惑星

惑星形成理論では,M 型矮星まわりでは FGK 型星と比べて巨大惑星は希少であることが示唆されている (Kennedy & Kenyon 2008).

低質量星周りでは力学的な時間スケールが長く,惑星形成プロセスにかかる時間が長くなる.また,原始惑星系円盤の質量は中心星質量に概ね比例するため,惑星となる材料が少ない.そのため M 型星まわりでの巨大惑星の存在頻度の決定は,惑星の形成過程への重要な新しい見識を与えるはずである.

太陽型星の場合,中心星の金属量が増加すると巨大惑星の存在頻度も高くなることが長く知られている (Fischer & Valenti 2005).太陽よりも明確に金属量が少ない恒星周りでは,巨大惑星はわずかしか発見されていない.
しかし同様の相関は,海王星質量やスーパーアースに対しては見られず,中心星の金属量と海王星質量惑星・スーパーアースの存在頻度は独立しているように思われる (Sousaet al. 2008; Buchhave & Latham 2015; Jenkins et al. 2017).

巨大惑星探査の困難

視線速度探査
巨大ガス惑星の存在頻度を探査すること,特に M 型矮星まわりのホットジュピターを探査することは難しい.これは中心星が暗く,視線速度サーベイでモニターすることが難しいためである,

M 型矮星を対象とした最も規模の大きい視線速度サーベイでは,最小質量が 0.1 - 1.0 木星質量の範囲にある惑星で,軌道周期が 10 日未満の惑星の存在頻度の上限は ~ 1% (Bonfis et al. 2013) と推定されている.
しかしこの結果は,FGK 型星まわりよりも M 型星周りではホットジュピターの存在頻度が低いという制限は与えない.FGK 星周りでは,ケプラーミッションから 0.55 - 2 木星半径で 10 日未満の惑星は 0.43 ± 0.05%と推定されている.
トランジット探査
トランジットサーベイも,視線速度サーベイと同様の困難さに直面している.中心星の光度が小さいため,M 型星のうちごく一部だけしか測光観測でモニターできないという点である.

WASP や HATNet のような小さい望遠鏡を用いたサーベイでは,M 型星のような非常に暗く赤い天体は検出しない,そのため M 型矮星のポピュレーションの大部分をカバーすることが出来ない.

一方で,MEarth のような大型望遠鏡を用いて単独の恒星をモニターするサーベイでは,ホットジュピターの存在頻度を探査するといった目的にかなうほどの,十分な個数の M 型星をカバーすることが出来ない.
また,1 m 口径の宇宙望遠鏡であるケプラーは視野内の M 型星をモニター出来るが,100 平方度の視野しかカバーしないため,観測可能な数は 4000 個程度に限られる.

そのため NGTS は現在,M 型星まわりのホットジュピターの存在頻度を探るために最も適しているサーベイプロジェクトである.NGTS では,通常の探査キャンペーンの一環として,1 年あたり 20000 個の早期型 M 型星をモニターする予定である.

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