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2017 年 10 月 25 日 (UT) に,太陽系外に起源を持つと思われる小天体 1I/2017 U1 (ʻOumuamua) の発見が報告されました (正確には,この天体が太陽系外起源である可能性がこの日に指摘されました).
その内容について簡単にまとめておくことにしました.気が向いた時に随時追加.
(2017 年 11 月 13 日 最終更新)

基本情報

JPL Small-Body Database Browser - 'Oumuamua (A/2017 U1)
NASA/JPL の小天体データベースの 1I/2017 U1 (ʻOumuamua) のページ

MPEC 2017-U181: COMET C/2017 U1 (PANSTARRS)
双曲線軌道にあり恒星間天体である可能性に初めて言及した MPC のサーキュラー

MPEC 2017-U183: A/2017 U1
彗星ではなく小惑星であることを報告した MPC のサーキュラー

MPEC 2017-V17 : NEW DESIGNATION SCHEME FOR INTERSTELLAR OBJECTS
恒星間天体としての仮符号の創設,ならびに固有名 ʻOumuamua の命名に関する MPC のサーキュラー

発見

Pan-STARRS サーベイによる発見

この天体が発見されたのは 2017 年 10 月 19 日である.

ハワイ・ハレアカラ (Haleakala) にある,ハワイ大学の Pan-STARRS 1 望遠鏡によって初めて検出された.この望遠鏡では NASA の地球近傍天体 (near-Earth objects) の探索プログラムが行われており,ハワイ大学の Institute for Astronomy のポスドク研究員である Rob Weryk がこの天体を最初に同定し,Minor Planet Center (MPC, 小惑星センター) へ届け出た.

Weryk が直後に Pan-STARRS (パンスターズ) の画像アーカイブを調べたところ,この天体の画像が前日の夜にも撮像されていたが,この時は見落とされていたことも判明した.
※出典 Small Asteroid or Comet 'Visits' from Beyond the Solar System | NASA


なお,パンスターズは "The Panoramic Survey Telescope and Rapid Response System" の略称であり,ハワイ大学の Institute of Astronomy によって運営されている広視野観測プロジェクトの名称である.地球近傍天体の捜索を行っており,このサーベイ観測の一環で発見された彗星 (パンスターズ彗星) も多数存在する.

彗星として認識

この天体は当初彗星であると考えられたため,C/2017 U1 という仮符号が与えられた.
C/ は彗星を意味する "comet" から来ており,ひとまず彗星として観測された天体にはこの "C/" というプレフィックスが与えられる.

パンスターズのサーベイによって発見されたため,C/2017 U1 (PANSTARRS) という表記になることもある.これは,彗星の名称は発見者もしくは発見グループの名前が早い順に 3 つまで (自動的に) 付けられるためである.小惑星の場合は発見者に命名提案権が与えられるのみであり,ルールに従って提案した名称が国際天文学連合で承認されるまで固有名は与えられない.
なお後述の様に,この天体は直後に彗星ではないことが判明したため,C/2017 U1 も C/2017 U1 (PANSTARRS) も使用されない.


なお彗星の仮符号に関しては,"2017" は発見された年を意味し,その後の英数字は発見された年の中での時期と,さらにその中での発見順を意味している.

具体的には,1 年を半月毎に 24 分割し (各月を 1 〜 15 日と 16 日〜月末の 2 つに分割),それぞれにアルファベットを順番に与えている.ただし,"I" は "1" や "J" との混同を避けるため使用せず,また "Z" も使用しない.そのため,"U" は 10 月の後半を意味することになる.従って,C/2017 U1 という仮符号は,2017 年 10 月後半に発見された 1 番目の彗星,という意味を持つ.
※参考 新天体の仮符号:彗星 (国立天文台)

プレフィックスにも複数の種類があり,前述の通り,ひとまず彗星と見做された天体には "C/" が与えられる.
その後,当該彗星が周期彗星 (ここでの周期彗星は軌道周期がおおむね 200 年未満のものを指す) であることが確定した場合は,プレフィックスが "P/" に改められる.これは周期彗星の "periodic comet" から採られたものだと思われる.従って,周期彗星ではなかったり,長周期彗星・非周期彗星である場合は,プレフィックスは "C/" のままとなる.

彗星が消滅した (木星に衝突した,太陽接近時に破壊されたなど) 場合には,プレフィックスは "D/" に置き換えられる.例えば,木星に衝突して消滅したシューメーカー・レヴィ第9彗星の場合は,仮符号は D/1993 F2 となっている.
また,軌道が確定されなかった彗星の場合は,プレフィックスは "X/" となる.さらに,彗星と思われていたため "C/" と付けられたものの,後に小惑星であることが判明した場合は,プレフィックスは "A/" に改められる.これは小惑星 (asteroid) に由来すると思われる.


なお,周期彗星であることが確定し "P/" のプレフィックスが与えられた彗星のうち,周期彗星の番号が確定したものは,"1P/" の様に番号を頭につけて表す.さらに彗星の固有名が命名された場合は,"/" 以下に固有名を付けて表現する場合もある.
例えば周期彗星 1 番目のハレー彗星の場合は 1P/Halley,55 番目のテンペル・タットル彗星は 55P/Tempel-Tuttle,332 番目の池谷・村上彗星は 332P/Ikeya–Murakami となる.

その後の推移

著しい双曲線軌道

その後の観測で,この天体の軌道離心率が大きな値を示すことが報告された.これは,小惑星センターの発行している電子版のサーキュラー (Minor Planet Electronic Circular, MPEC) で公表された.

2017 年 10 月 25 日 3:53 (UT) の MPC の発表で,軌道離心率がおよそ 1.2 であることが公表された
※出典 MPEC 2017-U181: COMET C/2017 U1 (PANSTARRS)

ここでは,今後の観測でこの軌道の特性が確定した場合は,この天体は初めての "interstellar comet" (星間彗星・恒星間彗星) であることが指摘された.
Although it is probably not too sensible to compute meaningful original and future barycentric orbits, given the very short arc of observations, the orbit below has e ~ 1.2 for both values. If further observations confirm the unusual nature of this orbit, this object may be the first clear case of an interstellar comet.
太陽に重力的に束縛されている天体は楕円軌道となり,その軌道離心率は 1 よりも小さくなる.惑星は円に近い (離心率が 0 に近い) 軌道を持っているが,一部の小惑星や彗星は離心率の大きな細長い楕円軌道を持つ.特に太陽系の外縁部に起源を持つ長周期・非周期の彗星の場合は,軌道離心率がほぼ 1 の軌道になるものがある.

長周期・非周期彗星の場合,惑星との遭遇によって軌道離心率が 1 を上回る放物線軌道・双曲線軌道になる場合がある.しかし今回のように離心率が 1 を大きく超えた値を示す天体はこれが初めてであり,離心率 1.2 という双曲線軌道は,この天体が太陽の重力に束縛されておらず太陽系外に起源を持つ天体である可能性を強く示唆している

なお,これまでに発見されていた天体で最も大きな軌道離心率を持つものは,ボーエル彗星 (C/1980 E1 (Bowell)) で e ~ 1.0577 であった.(※出典 JPL Small-Body Database Browser の C/1980 E1 (Bowell) のページより)
これと比較すると,軌道離心率がおよそ 1.2 というのは際立って大きな値である.

なお,2017 年 11 月 13 日時点での JPL Small-Body Database におけるこの天体の軌道離心率は,e = 1.199347117975996 となっている.
※出典 JPL Small-Body Database Browser

彗星ではなく小惑星であることが判明

その直後,2017 年 10 月 25 日 22:22 (UT) の MPC の発表で,この天体は彗星ではなく小惑星である事が発表された.
※出典 MPEC 2017-U183: A/2017 U1

この発表によると,ハワイ大学 Institute of Astronomy の K. Meech による,チリの超大型望遠鏡 (Very Large Telescope,VLT) を用いた観測の結果,この天体は完全に恒星状に見える (すなわち,彗星の特徴であるコマの存在など,彗星としての活動が見られない) という事が判明した.
K. Meech (Institute of Astronomy, University of Hawaii) reports that in a very deep stacked image, obtained with the VLT, this object appears completely stellar.
そのため,上述のプレフィックスのルールに従い,C/2017 U1 は A/2017 U1 と名称が変更されることとなった.

恒星間天体としての仮符号および命名

A/2017 U1 は初の明確な太陽系外に起源を持つと思われる天体であり,その軌道や物理的性質について様々な議論が盛り上がり,またニュースにもなった.そんな中,2017 年 11 月 6 日に MPEC で,この天体の仮符号のプレフィックスのさらなる変更と,固有名の付与についてアナウンスされた.
※出典 MPEC 2017-V17 : NEW DESIGNATION SCHEME FOR INTERSTELLAR OBJECTS

ここでは,恒星間天体に与える仮符号のプレフィックスとして,"I/" を新たに加えることを発表している.これは恒星間天体 "interstellar object" の "I" であると考えられる.
A new series of small-body designations for interstellar objects will be introduced: the I numbers.
これに基づき,A/2017 U1 であった仮符号は,1I/2017 U1 に改められることになった.冒頭の数字の 1 は,番号が確定した周期彗星の頭につけられる番号と同様に,「1 番目の恒星間天体」であることを意味している.


さらに,このサーキュラーでは,この天体に ʻOumuamua という固有名を与えることも発表している.この名前はパンスターズのチームによって提案されたものであり,偵察者・斥候 (scout) や使者 (messenger) を意味するハワイ語が由来である.
MPEC によると,"ʻou" は "reach out for" (〜に向かって手を伸ばす,〜を得ようとする,など) という意味があり,"mua" は "first" や "in advance of" (初めての,〜より先に,など) という意味,さらにそれを 2 回繰り返して "muamua" とすることでその意味を強調する役割がある.
Accordingly, the object A/2017 U1 receives the permanent designation 1I and the name ʻOumuamua. The name, which was chosen by the Pan-STARRS team, is of Hawaiian origin and reflects the way this object is like a scout or messenger sent from the distant past to reach out to us (ʻou means reach out for, and mua, with the second mua placing emphasis, means first, in advance of).
これによって,この天体の正しい表記は
1I (恒星間天体としての番号のみで表す場合)
1I/2017 U1 (仮符号を用いて表す場合)
1I/ʻOumuamua (固有名を用いて表す場合)
1I/2017 U1 (ʻOumuamua) (仮符号と固有名を併記する場合)
となる.

日本語表記に関しては特に取り決めなどはされていないものの,「オウムアムア」が表記として妥当であろうと考えられる.


なお 10 月末から 11 月頭にかけてメディアでも話題となったが,この新しいプレフィックスの創設より前であったため,メディアでは "A/2017 U1" の名称で報道されているものが多い.

1I/2017 U1 (ʻOumuamua) に関する論文・議論など

To be updated...

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