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日々の感想などどうでもよいことを書き連ねるためだけのブログ。
太陽系外惑星が初めて発見されたのは1995年で、それ以降たくさん発見が続いています。
初めて発見されたのは「ペガスス座51番星b」(51 Peg b)という系外惑星で、恒星の非常に近い所を公転している巨大ガス惑星です。

厳密には51 Peg bは、「初めて発見された、主系列星の周りを公転している太陽系外惑星」ということになります。
パルサーの周りを回る惑星は1992年に発見されているので。

系外惑星がたくさん発見されるにつれて、いろんな種類があることも分かって来てますが、先日こんなニュースがありました。

155光年彼方に公転周期8万年の惑星(AstroArts記事)
カナダ・モントリオール大学の研究チームが、155光年彼方のうお座GU星を8万年という長い周期でめぐる巨大ガス惑星を発見した。分光観測を手がかりとしてこの惑星の温度は摂氏800度、中心星の年齢を手がかりとして惑星の質量は木星のおよそ9~13倍と推定されている。
(引用元: http://www.astroarts.co.jp/news/2014/05/15gu_psc_b/index-j.shtml)

なんと公転周期8万年!
中心星から遠く離れると公転周期は長くなります。例えば地球は軌道長半径は1AUで公転周期は1年ですが、軌道長半径が5.2AUの木星になると12年弱になります。
太陽系で一番外側にある海王星ですら公転周期は165年なので、公転周期8万年というのがいかにとんでもない数字か分かります。

うお座GU星(GU Psc)の周りを公転している惑星質量天体とのことなので、存在が確定したら「うお座GU星b」(GU Psc b)という名前になるのでしょう。
はっきりと惑星だと確定したわけではないので、ニュースの元になった論文の方では「Planetary-mass companion」、要するに惑星質量の伴星、という呼ばれ方をしています。

公転周期が非常に長いという事は、この惑星(候補)は非常に中心星から離れているということになります。
......というより話が逆で、中心星から非常に離れている惑星が発見され、それの軌道周期を計算したら8万年だった、という方が正しいです。
というのも、この天体は「直接撮像」で発見されているので、厳密に分かっているのは中心星(GU Psc)からの見かけの距離だけだからです。
見かけの距離は、2000±200 AU とのこと。

惑星の検出方法にはいろいろありますが、直接撮像法は文字通り惑星を直接撮影することで発見する方法というわけです。
これだけ言えば簡単なんですが、中心星が明るいため普通は惑星を撮影するのは非常に難しいんですね。これまでに発見されている系外惑星は、ほとんどがトランジット法や視線速度法など、間接的な発見方法です。

で、直接撮像に有利な系外惑星の条件というのは、
・中心星から離れた場所を公転している
・系の年齢が若い
という条件を満たしている場合です。

中心星に近いと当然中心星の光に埋もれて見えないんですが、離れている場合は分離して検出出来る可能性が高まります。

それから、系が若い場合は当然若いわけですが、若い惑星(特に木星のようなガス惑星)はかなり温度が高い、という特徴があります。
木星なんかは今は絶対温度にして150K以下にまでキンキンに冷えてしまっているわけですが、形成当時はそこそこ温度が高かったと考えられています。

温度が高いと何が有利かというと、赤外線領域で比較的明るいんですね。だから赤外線を使って観測してやると、若い巨大ガス惑星が直接撮像で検出しやすくなるというわけです。
元論文によると、赤外線観測と大気モデルを組み合わせて表面温度を推定すると、1000-1100 K 程度、すなわち727-827℃と推定されるということです。

中心星の年齢を元に惑星の質量も推定されていますが、これにはガス惑星の進化モデルが必要です。中心星の年齢はある程度推定出来るので、その年齢でどこまでガス惑星が冷えるかというのをモデルを使って考えてやるということのようです。


このような、中心星から非常に離れた所を公転している惑星というのは最近いくつか発見されてますが、こういったニュースとして大きく取り上げられるには理由があります。
それは、こんなに遠い所に巨大ガス惑星が存在するのは、現在の惑星形成理論では完璧には説明出来ないからです。

スタンダードな惑星形成理論では、惑星は中心星の周りに出来る「原始惑星系円盤」という円盤の中で出来ると考えられています。
原始惑星系円盤は質量のほとんどがガス、1%程度が岩石や氷などのダスト成分で出来ていて、この中でダストがくっついていって惑星になる、というのが標準的な理論です。

これはあくまで標準的なモデルであって、実は太陽系の形成にもいろいろと問題点があるんですが、このGU Psc周りに発見された惑星のような、非常に遠い所には円盤からのガス惑星形成はほとんど困難なのです。

巨大ガス惑星を作るためには、まず固体の原始惑星が成長していって、そいつが原始惑星系円盤のガスを集める必要があります。
原始惑星が十分大きくなると周囲の円盤のガスを大量に引きつけ、その分原始惑星の質量が大きくなるからさらに重力で周りのガスを引きつけ、その分また質量が......という感じで、どこかの段階で暴走的なガス降着が発生します。

だから大きな原始惑星が出来ればいいじゃん、ということになるわけですが、原始惑星はそう簡単に大きくなってくれるわけではなく、ガスを暴走的に獲得する段階に入る前に原始惑星系円盤のガスが散逸してしまうとガス惑星が出来ないという結果になるわけです。
なので、巨大ガス惑星を作るには、原始惑星の成長スピードと、原始惑星系円盤のガスが無くなるまでの時間の競争になるということです。

原始惑星の成長スピードは中心星から遠いほど遅くなります。
木星や土星程度の距離でもかなり怪しいということが分かっているんですが(上で言った、『太陽系の形成にもいろいろ問題点がある』の一つがこれ)、2000AUなんていう距離は問題外なほど遠すぎるのです。

となれば、何か別の形成過程を考える必要があります。

この惑星の観測に携わった人もいくつか候補を挙げています。
一つ目は、
◯内側で形成したのち、外側に飛ばされた
原始惑星の成長スピードは中心星から遠いと遅いですが、逆に言うと内側であれば速く成長するということになります。
原始惑星の成長スピードが速く、巨大ガス惑星形成に有利な内側で形成されたあと、何らかの原因で外側まで移動した、というのが著者らの挙げている1つめの候補です。

何らかの原因というのは、具体的にはGU Pscに付随しているかもしれない別の天体との重力相互作用です。
巨大ガス惑星が近い距離に3個以上存在する系では、軌道は不安定ということが分かっています。
しばらくはおとなしく公転を続けるのですが、どこかの段階で軌道が大きく乱れ、一つが遠くへ弾き飛ばされるというカタストロフィックな現象が発生します。

弾き飛ばされたものは二度と戻ってこない場合もありますし、なんとか中心星の重力圏に残って非常に長い公転周期を持つ惑星になる場合もあります。

ただ、この場合は弾き飛ばす元になったもう一つ(あるいはそれ以上)の天体が必要です。
それがあるかどうかは今後の観測で明らかにするしかなさそうです。

二つ目は
◯GU Pscと惑星は別の場所で形成されたあと、一緒に揃って弾き飛ばされた
個人的にはどうかなと思うシナリオですが、まぁ不可能では無いシナリオです。

GU Pscと惑星は、別のより巨大な恒星周りの原始惑星系円盤の中で作られたあと、何らかの原因によってセットでその系から弾き飛ばされた、というもの。
GU Pscは太陽の3分の1程度の小さい恒星であり、単独で誕生するだけではなくもっと大きな恒星の周りでオマケ的に形成されるという可能性もあるわけです。実際、大きな恒星の周りを小さい恒星が公転している、というような系は無数に発見されています。

とある大きな重い恒星の周りでGU Pscという恒星がオマケ的に生成され、同じく惑星のGU Psc bも生成されたあと、重力による散乱の影響でセットで系を飛び出した、というのが2番目の候補です。

三つ目は
◯全く無関係の惑星質量天体がGU Pscに捕獲された
惑星というのは基本的には中心星の周りを公転しているものですが、何かの回りを公転しておらず、単体で孤独に存在している"惑星"も発見されています。
こういう天体を惑星と呼んで良いかは議論の分かれる所で、"free-floating planet"、すなわち自由浮遊惑星と呼ばれたり、"planetary mass object"、すなわち惑星質量天体と呼ばれたりします。

元々GU Pscとは全く無関係のところで誕生した惑星質量天体が、偶然GU Pscに捕獲されて惑星になった、というのが3番目の候補として論文中で言及されています。
惑星質量天体の形成過程も諸説ありますが、普通に原始惑星系円盤の中で形成された後に軌道が乱れて系外に放り出されたものや、恒星が出来る時にオマケ的に小さい天体が出来て、それが惑星質量天体となるという過程があります。

3番目のシナリオで出来たのであれば、GU PscとGU Psc bの性質、特に組成などは同じである理由はありません。
もし組成が大きく違う事が分かれば、3番目のシナリオである可能性がぐっと高まることになります。


論文内では触れられていませんでしたが、原始惑星系円盤が重い場合は円盤が重力不安定で分裂していきなりガス惑星程度の天体が出来る可能性もあります。
もっとも、このシナリオでも2000AUという距離でそれを行うのは難しいので、どのみち外側へ飛ばすような仕組みが必要になるようです。


いろいろ謎な部分はありますが、いろいろなタイプの天体が見つかるのはとても面白い事です。
特に今回発見された惑星については、直接観測でいろいろ分かりそうなので、今後の進展に期待したいところです。

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