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arXiv:1712.05217
Cheetham et al. (2017)
Direct imaging of an ultracool substellar companion to the exoplanet host star HD 4113A
(系外惑星を持つ恒星 HD 4113A の超低温準恒星伴星の直接撮像)

概要

Very Large Telescope (VLT) の SPHERE を用いて,系外惑星を持っている恒星 HD 4113A の周囲に存在する,低温の褐色矮星伴星の高コントラスト撮像観測を行った.これはこの伴星の初の撮像観測である.

褐色矮星 HD 4113C は,複雑な力学系の一部を構成している.中心星 HD 4113A とそれを公転する巨大惑星,さらに大きく離れた場所にある M 型矮星の伴星 HD 4113B が存在する系の中にある.

HD 4113C と主星との間隔は 535 mas (ミリ秒角) であり,H バンドのコントラスト 13.35 mag であった.これは射影距離が 22 AU で,等時線からの質量推定を元にすると,質量は 36 ± 5 木星質量となる (COND モデルを使用).

また,強いメタンの吸収の特徴を示す.大気モデルとのフィッティングから,この天体の表面重力は log g = 5,有効温度は ~ 500 - 600 K と推定される.

この天体のスペクトルを T 型矮星と比較した結果,晩期 T 型のスペクトルタイプであることが示唆され,最もよく合うスペクトル型は T9 であった.


撮像観測から観測されたアストロメトリと,過去 27 年に渡る視線速度の観測を合わせ,この褐色矮星の軌道をフィッティングし,軌道と物理パラメータに制約を与えた.これと同時に惑星 HD 4113Ab のパラメータも改善した (この惑星は過去の視線速度観測から発見されていたもの).

データからは,褐色矮星の力学的な質量は 66 木星質量であり,やや大きな軌道離心率 0.44 を持つと推定された.この推定質量は,等時線からの推定質量とは一致しない.これは,新しく発見された天体が空間分解されていない連星褐色矮星であるか,あるいはこの連星系内に更なる別の天体が存在するかである可能性がある.

力学的シミュレーションからは,惑星は強い Lidov-Kozai サイクルの最中であることが示唆された.そのため,惑星は初めは離心率の小さい準円軌道で形成され,褐色矮星との相互作用によって現在観測されているような非常に大きな軌道離心率 (~ 0.9) になった可能性がある.

将来の視線速度・直接撮像,Gaia のアストロメトリの組み合わせから,この褐色矮星の力学的質量に精密な制限をかけ,進化モデルと大気モデルとより詳しい比較ができるだろう.

HD 4113 系について

HD 4113A は太陽近傍の G5 矮星であり,惑星を持っていることが分かっている.この惑星は最も大きな軌道離心率 (0.9) を持つ系外惑星の一つである.

惑星 HD 4113Ab は,視線速度法で発見された (Tamuz et al. 2008).これは La Silla Observatory の 1.2 m Swiss telescope の CORALIE 分光器を用いた結果である.

この惑星が大きな軌道離心率を持っていることの説明の一つは,Lodiv-Kozai 機構である (Kozai 1962, Lidov 1962).すなわち,より大きな軌道を持つ伴星との相互作用によるというものである.

Tamuz et al. (2008) の視線速度測定では,そのような相互作用を起こしうる,より長周期の伴星の存在を示唆するトレンドがあったことが報告されている.それらのデータからは,伴星が存在する場合,最小質量が 10 木星質量,最小の軌道長半径が 8 AU であると推定されている.


Tamuz et al. (2008) での観測結果を元に,この未発見の伴星を撮像しようという試みが何度か行われてきたが,いずれも成功しなかった.

2006 - 2007 年には,VLT の NACO 装置を用いて H バンドのスペクトル差分撮像が行われた (Montagnier 2008).また 2008 年にコロナグラフで,2013 年には非コロナグラフの L バンド 観測が行われた (Hagelberg 2014).

これらの観測では天体は検出されず,主星から 0.3 - 2.5 arcsec (8 - 100 AU) の範囲内には恒星質量の伴星は存在しないと結論付けられた,そのため,外側に伴星が存在する場合は褐色矮星以下の質量であることが示唆された.

これとは別に,HD 4113A と共動する恒星質量の伴星 HD 4113B が,より遠方 (49 arcsec, 2000 AU) に発見された.これは近赤外測光観測によって早期 M 型星であると判明した (Mugrauer et al. 2014).HD 4113B の質量と周期は,過去に観測されていた視線速度のトレンドを説明するには小さく長過ぎる.

また,主星から 190 - 6500 AU の範囲では,水素燃焼質量限界を超える別の恒星の存在は否定された.

パラメータ

HD 4113A
スペクトル型:G5V
距離:41.70 pc
有効温度:5688 K
金属量:[Fe/H] = 0.20
年齢:5.0 Gyr (50 億年)
質量:1.05 太陽質量
HD 4113Ab
軌道周期:526.586 日
軌道離心率:0.8999
最小質量:1.602 木星質量
軌道長半径:1.298 AU
HD 4113B
スペクトル型:M0-1V
有効温度:3833 K
質量:0.55 太陽質量
HD 4113C
軌道周期:104.6 年
軌道離心率:0.377
最小質量:64.4 木星質量 (力学的質量)
軌道長半径:23.0 AU

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