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日々の感想などどうでもよいことを書き連ねるためだけのブログ。
論文関連の(ほぼ)個人用メモ。



arXiv:1712.05044
Shallue & Vanderburg (2017)
Identifying Exoplanets with Deep Learning: A Five Planet Resonant Chain around Kepler-80 and an Eighth Planet around Kepler-90
(深層学習を用いた系外惑星の同定:ケプラー80 まわりの 5 惑星の共鳴鎖とケプラー90 まわりの 8 番目の惑星)

概要

ケプラーは太陽型星周りの地球サイズ惑星の存在度を決定するために設計されたが,このサイズの惑星はケプラーミッションの感度の限界に近い.そのため,これらの惑星の存在度を正確に決定するためには,観測のシグナルノイズ比が低い場合であっても,個々のトランジットシグナル候補が実際に惑星である可能性を自動的かつ正確に評価する必要がある.

ここでは,近年様々な問題において最先端の技術となっている機械学習アルゴリズムの一種である深層学習 (deep learning) を用いて,ケプラーで取得した光度曲線中の潜在的な惑星のシグナルを分離する方法を提示する

与えられた信号がトランジットする系外惑星によるものなのか,あるいは天体物理的な現象,もしくは観測機器の影響によって引き起こされた偽陽性 (false positive) なのかを予測するため,深層畳み込みニューラルネットワークを学習させる.このモデルは,それらが実際に惑星である可能性を用いて個々の候補シグナルをランク付けするのに非常に効果的である.

このモデルを,これまでのケプラーの光度曲線の解析で複数の惑星を持つことが分かっている系での,確定されていないトランジット候補シグナルに適用した.
その結果,高い信頼度で新しい 2 つの惑星の存在を確認した


1 つは,ケプラー80 のまわりの 5 つの惑星の共鳴鎖 (resonant chain) のうちの 1 つであるケプラー80g であり,この惑星の軌道周期は 3 体ラプラス関係から予測されるものと近い値であった.

もう一つはケプラー90 を公転するケプラー90i である.この系はこれまでに 7 個のトランジット惑星が存在することが知られていた.今回の 8 個目の惑星の発見により,ケプラー90 は太陽と並んで最も多くの惑星を持つことが知られている系となった

ケプラー80 系とケプラー80g

今回発見されたケプラー80g は,この系で最も外側を公転する惑星である.

ケプラー80 は 5 個の惑星を持つことが既に知られている.それぞれ軌道周期が 0.98, 3.07, 4.65, 7.05, 9.52 日のものである.これらの惑星のうち外側の 4 個は resonant chain (共鳴鎖) という希少な力学的な配置に入っている (Lissauer et al. 2014など).
なお最も短周期の惑星 ケプラー80f は,外側の惑星たちとは力学的に切り離されている.

ケプラー80f 以外の隣り合ったそれぞれの惑星のペアは軌道周期が整数比に近く (この系の場合 2:3 か 3:4),さらに連続した 3 惑星の軌道周期は,以下のラプラス関係を満たしている.
\[\frac{p}{P_{1}}-\frac{p+q}{P_{2}}+\frac{q}{P_{3}}\approx 0\]
ここで \(p\) と \(q\) は整数,\(P_{i}\) は 3 惑星の軌道周期である.ケプラー80d, e, b の 3 惑星は \((p,\,q)=(2,\,3)\) を満たし,ケプラー80e, b, c は \((p,\,q)=(1,\,2)\) を満たす.

惑星がラプラス関係を満たしているということは,共鳴鎖内の隣接する惑星のトランジット時刻変動の「超周期」(super-period) が,各惑星のペアについてほぼ同じであるという事に相当する.

ケプラー80 系では,各隣接惑星の超周期は 192 日に近い値となる (MacDonald et al. 2016).ケプラー80g は,9.52 日周期の惑星の外側を 2:3 の周期比で公転しており,その 2 惑星の超周期は 192 日である.これは,他の惑星ペアの超周期と一致する.

そのため,ケプラー80g はケプラー80 の三体共鳴鎖の一部であることがほとんど確実であり,この発見によってケプラー80 系の共鳴鎖にいる惑星数は 5 個となった.また,ケプラー80 系内の惑星数は 6 個になった.

ケプラー90 系とケプラー90i

ケプラー90 系の惑星

ケプラー90 は,7 個のトランジット惑星を持つことが知られていた系である.
このような多数の惑星を持つ系は希少である.NASA Exoplanet Archive によると,2017 年 8 月 19 日の時点では,ケプラー90 と TRAPPIST-1 (Gillon et al. 2017) が 7 惑星で最多であった.

なお,HD 10180 (Lovis et al. 2011) では,視線速度観測から 6 個の惑星が存在していることが確定しており,さらに最大で 3 個の惑星が存在する可能性が報告されている (Lovis et al. 2011, Tuomi 2012),ただし後の解析ではこれらは確定されていない (Kane & Gelino 2014).


ケプラー90 はケプラーの解析パイプラインで検出され,Borucki et al. (2011) では KOI 351 と命名されており,各種カタログにも KOI 351 の名称で記載されている場合がある.

Borucki et al. (2011) では,3 つの大きな長周期のトランジット惑星候補が検出されており,これらは後にケプラー90e, g, h として確定した.更なるデータと解析から,さらに短周期の小さいトランジット惑星候補が同定され,これにより惑星数は合計 7 個となった (Cabrera et al. 2014など).

ケプラー90 の周囲には,7 日と 8.7 日周期の軌道に 1.5 地球半径の惑星が 2 つ存在し,59.7, 91.9, 124.9 日周期の軌道に地球のおよそ 3 倍の大きさの惑星,さらに 210.6, 331.6 日周期の軌道に 2 つの巨大惑星が存在する.

ケプラー90i

新しく発見された ケプラー90i は 14.4 日周期で 1.3 地球半径であり,ケプラー90c (軌道周期 8.7 日) と ケプラー90d (59.7 日) の間の,最も軌道周期の開きが大きいギャップとなっていた部分に存在している.

ケプラー90i は,この系内で最も短周期の部類のケプラー90b と c の半径 (1.4, 1.6 地球半径) と同程度である.ケプラー90b, c, i の半径からは,これらの惑星は岩石惑星と予想される (Rogers 2015).

ケプラー90 系の軌道配置

この系は,惑星半径と軌道周期が順序よく並んでいるのが印象的である.つまり,小さい惑星は恒星に近く,大きい惑星は恒星から遠い.ただしこれは検出バイアスによるものである可能性はあるという点には注意が必要である.ケプラー90i はケプラーの検出限界を僅かに上回る程度であり,さらに遠くを公転する小さい惑星を検出する可能性は低い.

また,この系がどれくらい整然としているかも興味の対象である.
これまでの 7 惑星のトランジット継続時間は軌道周期でよく規格化でき,トランジット継続時間は軌道周期の 1/3 乗に比例していた,しかしケプラー90i はその傾向に反している.

ケプラー90i のトランジットから推定される恒星の平均密度は,他の惑星のトランジットから推定される恒星の平均密度,および分光観測から推定される平均密度と整合的ではある.しかしケプラー90i のトランジット継続時間である 2.8 時間は,惑星が円軌道でかつ同一平面上にある場合に期待される長さである 5 時間より短い.そのため,視線方向からわずかに傾いた軌道を持っている可能性がある.

もし ケプラー90i の軌道が完全に円軌道なら,トランジットのインパクトパラメータは 0.85,(視線方向に対する) 軌道傾斜角は 88 度となる.その他の惑星は 89 度かそれより大きい (90 度に近い) 値を持つ.
ケプラー90i の傾斜角が大きいと仮定して,ケプラー90 系はやや大きな傾斜角の惑星を持つと期待される幾つかの理由がある.例えば Becker & Adams (2016) では,ケプラー90 系は相互軌道傾斜角の自己励起が最も起きやすい複数惑星系であることを指摘している.


ケプラー90 に 8 個目の惑星が加わったことにより,8 個の惑星を持つことがわかっている初めての惑星系となった.また既知の惑星数としては太陽に並ぶこととなった.

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