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論文関連の(ほぼ)個人用メモ。



arXiv:1802.08385
Puranam & Batygin (2018)
Chaotic Excitation and Tidal Damping in the GJ 876 System
(GJ 876 系でのカオス的な励起と潮汐減衰)

概要

M 型矮星 GJ 876 は,複数の系外惑星を持つ系としては最も太陽系に近い.この系は,カオス的なラプラス型の共鳴に入っている外側の 3 つの惑星と,軌道離心率が大きい短周期のスーパーアースを持っており,系外惑星系の動力学の観点からユニークな例の一つである.

この系の長期的な進化と,中心星に近接した軌道を持つ惑星全般の運命に関して,重要な疑問点が存在する.それは,最も内側を公転する惑星が持つ軌道離心率は,宇宙の年齢と同程度のタイムスケールにおいて,潮汐円軌道化に対抗してどのように維持されているのかという点である.

ここでは確率的な永年摂動理論と N 体シミュレーションを用いて,最も内側の惑星の軌道離心率は,外因的なカオス的な強制力と,潮汐散逸の間の微妙なバランスによって保たれていることを示す.そのため,この内側惑星の軌道離心率を測定することは,その惑星の潮汐の Q 値の間接的な測定を行っていることに相当する.
現在の GJ 876 系の惑星の配置に基づくと,スーパーアース GJ 876d の潮汐の Q 値は,104-5 と推定される.これは太陽系の巨大ガス惑星の典型的な値である.

GJ 876 系について

GJ 876 系の惑星の発見

GJ 876b は 2.2 木星質量の惑星である.軌道周期は 60 日で,中心星から 0.2 AU の距離を公転している (Marcy et al. 1998).この惑星は,系外惑星の中でも最も早い時期に発見されたホットジュピターである.

後に GJ 876b の内側に,軌道長半径 0.13 AU,0.7 木星質量の GJ 876c が発見された.この惑星は GJ 876b と 2:1 の軌道共鳴に入っている (Marcy et al. 2001).

さらに GJ 876c の内側,軌道長半径 0.02 AU のスーパーアース GJ 876d が発見された (Rivera et al. 2005),
また,最も外側に天王星質量惑星 GJ 876e が発見された (Rivera et al. 2010).GJ 876e は軌道長半径 0.35 AU で 120 日周期である,GJ 876c-b-e の 3 惑星で,ラプラス共鳴と呼ばれる共鳴状態に入っている.

GJ 876 系の軌道の特徴

GJ 876 系は,
(1) M 型星のまわりでは木星型惑星は希少であること (Valenti and Fischer 2005)
(2) GJ 876c-b-e のラプラス共鳴は速い力学的カオスを持つが,これは木星のガリレオ衛星のラプラス共鳴のようなよく揃った状態ではない (Batygin et al. 2015)
という点で独特の惑星系である.

さらに,短周期のスーパーアース GJ 876d は,興味深いことにやや大きい軌道離心率 e = 0.05 - 0.15 を持っている (Correia et al. 2010,Nelson et al. 2016,Trifonov et al. 2018,Millholland et al. 2018).
潮汐散逸による円軌道化を受けているにも関わらず,このような明確にゼロでない軌道離心率を持っている理由は分かっていなかった.

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