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論文関連の(ほぼ)個人用メモ。



arXiv:1802.08257
MacGregor et al. (2018)
Detection of a Millimeter Flare From Proxima Centauri
(プロキシマ・ケンタウリからのミリメートル波フレアの検出)

概要

プロキシマ・ケンタウリの,ALMA と ACA を用いて観測したデータの再解析を行った.観測周波数は 233 GHz (波長は 1.3 mm) で,観測の感度は ALMA が 9.5 µJy beam-1,ACA が 47 µJy beam-1 である.データは 2017 年 1 月 21 日 - 4 月 25 日の間に取得されたものである.

解析の結果,3 月 24 日の ACA での観測の最中に,プロキシマ・ケンタウリで大きなフレアイベントが発生していたことが明らかになった.イベントは全体でおよそ 1 分間継続した.フレア極大での電波フラックス密度は 100 ± 4 mJy であり,これは恒星が静穏な時期の放射よりも 1000 倍程度大きい値である.

フレアの極大では,連続放射は周波数の急激に低下するスペクトル指数によって特徴付けられ,\(F_{\nu}\propto\nu^{\alpha}\) とした時に \(\alpha=-1.77\pm0.45\) で表される.また,偏光の下限値は |Q/I| = 0.19 ± 0.02 である.

ACA の観測では,恒星が静穏な時期には放射の超過はみられなかったため,先行研究で報告されている,プロキシマ・ケンタウリから 1 - 4 AU の範囲のダスト帯の存在を仮定する必要はないと結論付けた.

また,ALMA の 12 m 口径望遠鏡での観測で得られたフラックス密度は 101 µJy であり,赤外線波長での観測から外挿して推定したフラックス密度の 74 µJy に対して僅かな超過を見せる.この超過は,おそらくは継続的な小さいフレアによるコロナ加熱によるものだと考えられる.このような現象は,M 型矮星のフレア星である AU Mic (けんびきょう座 AU 星) で見られる.
これが正しければ,プロキシマ・ケンタウリから ~ 0.4 AU の距離の温暖なダスト帯の存在を仮定する必要もないと結論付けられる.

プロキシマ・ケンタウリについて

プロキシマ・ケンタウリ系の特徴

プロキシマ・ケンタウリは,視線速度法を用いて地球質量の惑星プロキシマb がハビタブルゾーン内に検出されている恒星である (Anglada-Escud ́e et al. 2016).また,未確認であるが,トランジット候補イベントの検出も報告されている (Li et al. 2017).プロキシマb は,最も太陽系に近い系外惑星である.
しかし,スペクトル型 M5.5V のプロキシマ・ケンタウリは,頻繁に恒星フレアを起こすフレア星として知られている.これまでに,中心星の変動がその周囲の惑星の特性に与える影響について研究されてきた.

プロキシマ・ケンタウリのダスト帯

ここでは,ALMA 12 m 口径望遠鏡と Atacama Compact Array (ACA) を用いた 233 GHz での観測の新しい解析について報告する.解析に用いたデータは,Anglada et al. (2017) で公開されているものである.

Anglada et al. (2017) では,ALMA 12 m と ACA の観測から,プロキシマ・ケンタウリの周りに 3 つのダスト帯が存在する可能性を示唆している.それぞれ,
(1) ~ 0.4 AU の warm dust
(2) 1 - 4 AU の cold belt
(3) ~ 30 AU の外側ベルト

である

Anglada et al. (2017) では,(1) と (3) は暫定的な検出であり,(2) は確実な検出であると主張されている.今回の再解析では,ACA での観測最中に大きなフレアイベントがあることがわかったため,少なくとも (1) と (2) のダスト帯からの電波放射が存在するという仮説は再検証する必要がある

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