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論文関連の(ほぼ)個人用メモ。



arXiv:1803.02224
Hellier et al. (2018)
New transiting hot Jupiters discovered by WASP-South, Euler/CORALIE and TRAPPIST-South
(WASP-South, Euler/CORALIE と TRAPPIST-South による新しいトランジットホットジュピターの発見)

概要

WASP-South トランジットサーベイでの 8 個のホットジュピターの発見について報告する.

パラメータ

WASP-144 系

WASP-144
スペクトル型:K2V
有効温度:5200 K
金属量:[Fe/H] = 0.18
質量:0.81 太陽質量
半径:0.81 太陽半径
等級:V = 12.9
WASP-144b
軌道周期:2.2783152 日
質量:0.44 木星質量
半径:0.85 木星半径
密度:0.72 木星密度
軌道長半径:0.0316 AU
平衡温度:1240 K (アルベド 0 仮定)
WASP-144 系について
惑星のトランジットの他にも,21 日周期で振幅が 4 - 8 mmag の,自転変調と思われる変光も検出した.これを元に導出した恒星の自転周期と,恒星半径が 0.81 太陽半径という推定値から,恒星の表面自転速度は 1.96 km s-1 と推定される.これは観測されている \(v \sin i\) の 1.9 ± 1.2 km s-1 と同程度の値である.そのため,恒星の自転軸は地球からの視線方向に対してほぼ垂直であると考えられる.

惑星半径の 0.85 木星半径という値は,ホットジュピターとしては最も小さい部類である.この惑星と類似しているのは,0.50 木星質量,0.90 木星半径の WASP-60b (Hebrard et al. 2013) と,0.55 木星質量,0.89 木星半径のケプラー41b (Santerne et al. 2011) である.
ただし,この 2 つは G 型星を公転する惑星であるが,WASP-144 は K2 星である.

WASP-145A 系

WASP-145A
スペクトル型:K2V
有効温度:4900 K
金属量:[Fe/H] = -0.04
質量:0.76 太陽質量
半径:0.68 太陽半径
等級:V = 11.5
WASP-145Ab
軌道周期:1.7690381 日
質量:0.89 木星質量
半径:0.9 木星半径
密度:1.2 木星密度
軌道長半径:0.0261 AU
平衡温度:1200 K (アルベド 0 仮定)
WASP-145A 系について
中心星 WASP-145A は,伴星 WASP-145B を持っている.中心星と伴星の天球上の距離は 5.14 arcsec である.WASP-145B は A に物理的に付随している伴星だと思われるが,詳細は未確認である.

WASP-145Ab のトランジットは,衝突径数が 0.97 の grazing transit (かすめるようなトランジット) である.そのためトランジットの第 2 接触と第 3 接触は分解することが出来ず,惑星半径の精度良い推定が出来ない.

そのため,惑星半径の推定値は 0.9 ± 0.4 木星半径と誤差の大きな値になる.仮に惑星半径が誤差の下限値いっぱいの値であった場合は,ホットジュピターとしては異常に小さい半径になる.

トランジット深さの 1.1% という値は,恒星半径が 0.68 太陽半径と比較的小さいことを考えると,ホットジュピターとしては典型的な値である.

WASP-158 系

WASP-158
スペクトル型:F6V
有効温度:6350 K
金属量:[Fe/H] = 0.24
質量:1.38 太陽質量
半径:1.39 太陽半径
等級:V = 12.1
WASP-158b
軌道周期:3.656333 日
質量:2.79 木星質量
半径:1.07 木星半径
密度:2.3 木星密度
軌道長半径:0.0517 AU
平衡温度:1590 K (アルベド 0 仮定)
WASP-158 系について
中心星の WASP-158 の推定年齢は 19 億歳であり,まだ主系列から進化が進んでいない恒星である思われる.

WASP-158b は比較的重い惑星である.WASP-38b が比較的類似した惑星として挙げられ,2.7 木星質量,1.1 木星半径,軌道周期 6.9 日であり,F8 星まわりを公転している (Barros et al. 2011).また WASP-99b とも類似しており,こちらは 2.8 木星質量,1.1 木星半径,軌道周期 5.8 日で,F8 星を公転している (Hellier et al. 2014).

WASP-159 系

WASP-159
スペクトル型:F9
有効温度:6120 K
金属量:[Fe/H] = 0.22
質量:1.41 太陽質量
半径:2.11 太陽半径
等級:V = 12.9
WASP-159b
軌道周期:3.840401 日
質量:0.55 木星質量
半径:1.38 木星半径
密度:0.21 木星密度
軌道長半径:0.0538 AU
平衡温度:1850 K (アルベド 0 仮定)
WASP-159 系について
中心星の WASP-159 の推定年齢は 34 億歳である.半径は 2.1 太陽半径とやや大きく,主系列段階から離れて進化している途中の恒星であると思われる.恒星半径が大きいため,トランジット深さは 0.45% と,地上観測からの発見としては比較的小さい値である.

惑星の WASP-159b の半径はやや膨張している.この惑星の質量と半径は,これまでに発見されているホットジュピターの質量-半径プロットでは密度の高い領域である.地上からのトランジットサーベイでは膨張した半径を持つ惑星は最も簡単に発見される..

WASP-162 系

WASP-162
スペクトル型:K0
有効温度:5300 K
金属量:[Fe/H] = 0.28
質量:0.95 太陽質量
半径:1.11 太陽半径
等級:V = 12.2
WASP-162b
軌道周期:9.62468 日
質量:5.2 木星質量
半径:1.00 木星半径
密度:5.2 木星密度
軌道長半径:0.0871 AU
平衡温度:910 K (アルベド 0 仮定)
WASP-162 系について
中心星の WASP-162 は低質量星としては半径が大きく,やや年老いた恒星であると推定される.推定される年齢は 130 億年程度である.恒星は磁気的活動によって膨張した半径を持っている可能性がある.

惑星 WASP-162b は 5.2 木星質量と重い.軌道周期が 9.6 日とやや長く,軌道離心率は 0.43 と大きな値を持つ.このような惑星の円軌道化のタイムスケールは,Adams & Laughlin (2006) に基づくと 300 億年のオーダーとなる (惑星の潮汐 Q ~ 105 を仮定).そのため,この惑星の大きな軌道離心率と恒星の年齢とは矛盾しない.

この系では惑星の掩蔽 (二次食) が起きる可能性もあり,Kane & von Braun (2009) に基づくと,二次食を起こす可能性は 46% 以上である.

WASP-162b に類似した,質量が大きく長周期で軌道離心率が大きい系には,2.2 木星質量,軌道周期 8.2 日,軌道離心率 0.31 の WASP-8b (Queloz et al. 2010) と,9.9 木星質量,軌道周期 8.9 日,軌道離心率 0.57 のケプラー75b (Hebrard et al. 2013) がある.

WASP-168 系

WASP-168
スペクトル型:F9V
有効温度:6000 K
金属量:[Fe/H] = -0.01
質量:1.08 太陽質量
半径:1.12 太陽半径
等級:V = 12.1
WASP-168b
軌道周期:4.153658 日
質量:0.42 木星質量
半径:1.5 木星半径
密度:0.12 木星密度
軌道長半径:0.0519 AU
平衡温度:1340 K (アルベド 0 仮定)
WASP-168 系について
WASP-168b のトランジットは,衝突径数が 0.97 の grazing transit である.そのため WASP-145Ab の場合と同様で,惑星半径はあまりよく制約が出来ず,推定される半径は 1.5 (+0.5, -0.3) 木星半径である.
なお,惑星半径は膨張している.

WASP-172 系

WASP-172
スペクトル型:F1V
有効温度:6900 K
金属量:[Fe/H] = -0.10
質量:1.49 太陽質量
半径:1.91 太陽半径
等級:V = 12.0
WASP-172b
軌道周期:5.477433 日
質量:0.47 木星質量
半径:1.57 木星半径
密度:0.12 木星密度
軌道長半径:0.0694 AU
平衡温度:1740 K (アルベド 0 仮定)
WASP-172 系について
中心星の WASP-172 は高温の恒星であり.惑星 WASP-172b はやや膨張した半径を持つ.

中心星の半径は 1.9 太陽半径と大きいため,地上からのトランジット観測の場合は,惑星が膨張した半径を持たない場合は検出が難しくなる.そのため,高温の恒星周りのホットジュピターはしばしば大きな半径を持つことが分かっているが,そのようなサンプルを扱う場合は観測バイアスについて注意する必要がある.

WASP-173A 系

WASP-173A
スペクトル型:G3
有効温度:5800 K
金属量:[Fe/H] = 0.16
質量:1.05 太陽質量
半径:1.11 太陽半径
等級:V = 11.3
WASP-173Ab
軌道周期:1.38665318 日
質量:3.69 木星質量
半径:1.20 木星半径
密度:2.14 木星密度
軌道長半径:0.0248 AU
平衡温度:1880 K (アルベド 0 仮定)
WASP-173A 系について
WASP-173A は連星である事が分かっており,そのうちの明るい方の恒星である.WDS23366−3437 としてカタログ化されている (Mason et al. 2001).連星はそれぞれ等級が V = 11.3, 12.1 で,6 arcsec 離れた位置にある.Gaia による年周視差の測定からは,主星と伴星の距離は 1400 ± 200 AU であることが示唆される.

中心星は 7.9 日周期の自転による変動を示す.また,惑星は重く,恒星に非常に近い軌道を公転している.

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