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論文関連の(ほぼ)個人用メモ。



arXiv:1804.02145
Honda et al. (2018)
Mid-infrared Multi-wavelength Imaging of Ophiuchus IRS 48 Transitional Disk
(へびつかい座 IRS 48 遷移円盤の中間赤外線多波長撮像)

概要

ハービッグ Ae/Be 星 (Herbig Ae/Be star) まわりの遷移円盤 (transitional disk) は,円盤進化と惑星形成という文脈で興味深い研究対象である.

Oph IRS 48 (へびつかい座 IRS 48) は ハービッグ Ae 星である.この天体の周囲の円盤は,内側のダスト空洞と,方位角方向に偏ったダストの分布を示す.ここでは,この天体の 8.56 - 24.6 µm の間の 8 個の中間赤外波長での新しい観測画像を提供する.観測は,8.2 m すばる望遠鏡の COMICS を使用した.

N バンド (7 - 13 µm) の画像は,フラックス分布は中心にピークがあり,わずかに空間的な広がりを持つという特徴を示した.一方で Q バンド (17 - 25 µm) での画像は,非対称な二重ピーク構造を西と東方向にそれぞれ持っている.

18.8 µm と 24.6 µm での画像を用い,これらの西と東のピークでのダスト温度を 135 ± 22 K と推定した.従って,円盤の非対称はダスト温度の違いに起因するものではない可能性がある.

今回の結果を過去のモデリングの研究と比較した結果,内側円盤は外側円盤と向きが揃っていると結論付けた.内側の光学的に厚い円盤が作る影は,外側円盤からの中間赤外線での熱放射の構造に大きな影響をもたらす.

ハービッグ Ae/Be 星と遷移円盤

円盤の観測

ハービッグ Ae/Be 星は,おうし座 T 型星 (T Tauri star) の中間質量星版 (2 太陽質量程度以上) に相当するものであり,スペクトル型が A と B のものを指す (Herbig 1960,Waters & Waelkens 1998).

このタイプの天体の周りには多様な星周円盤がある.
これらの円盤に対する,空間的に分解されていないスペクトルエネルギー分布 (spectral energy distribution, SED) の測定からは,いくつかの天体は円盤の内側に空洞が形成されていることが分かっている.このような円盤は,前遷移円盤 (pre-transitional disk) や遷移円盤 (transitional disk) と呼ばれる.

最近の高空間分解能観測では,渦状腕やワープ構造,方位角方向に偏った構造など,より複雑な円盤構造が検出されている.

円盤構造の起源

このような原始惑星系円盤中の内側のでのギャップや凹みの理論的な解釈としては,様々なモデルが提案されている.
例えば,円盤中での例えばダスト成長 (Tanaka et al. 2005,Dullemond & Dominik 2005,Birnstiel et al. 2012),光蒸発 (Clarke et al. 2001,Alexander et al. 2006),磁気回転不安定 (Chiang & Murray-Clay 2007),恒星や準恒星質量の伴星との力学的相互作用 (Lin & Papaloizou 1979,Lin & Papaloizou 1979,Artymowicz & Lubow 1994) である.

これらの他にも,形成中の惑星も円盤に空洞を形成する可能性がある (Lin & Papaloizou 1986,Bryden et al. 1999,Zhu et al. 2011,Rice et al. 2006,Zhu et al. 2012,Pinilla et al. 2012).

中間赤外線観測の重要性

これまでに,十から二十の (前)遷移円盤が研究されてきた.これらの多くは,補償光学を用いた近赤外線での観測と,高分解能の電波波長での撮像観測である.これらの観測は,円盤の詳細な構造を明らかにするのに大きな貢献を果たした,

しかし近赤外線放射と電波放射は,円盤内側の温かいダストの特性を適切に制約することができない,それに対して中間赤外線での観測は,内側領域からの熱放射を検出することが出来る.またこの波長は,地上からの観測で高空間分解能での観測が可能である.

へびつかい座 IRS 48

へびつかい座 IRS 48 (Oph IRS 48,別名 WLY 2-48) は,へびつかい座ロー領域 (ρ Ophi region) にある A0 星である (Wilking et al. 1989).距離は 120 pc.質量は 2.0 - 2.5 太陽質量,推定年齢は 500 - 1500 万歳である (Brown et al. 2012,Follette et al. 2015).

この天体では,ALMA を用いて非常に非対称なサブミリメートル波長でのダスト連続波放射が検出されている (van der Marel et al. 2013).このような方位角方向に偏ったフラックス分布は,局所的なガス圧極大領域への粒子の捕獲によって説明できる可能性がある.

この天体の初めての分解観測は,Very Large Telescope (VLT) の VISIR を用いて,波長 8.6, 9.0, 11.3, 11.9, 18.7 μm で行われた (Geers et al. 2007a) で.N バンド (7.5 - 13 µm) では,放射は中心星の場所で強いピークを示す,これは多環芳香族炭化水素 (polyciclic aromatic hydrocarbons, PAHs) か,あるいは非常に小さい炭素質粒子 (very small carbonaecous grains, VSGs) のどちらか,あるいはこれら両方が大部分の放射の起源だと考えられる.

一方で,18.7 µm 波長の画像ではリング状の構造が検出されている,リング状構造の半径は 60 AU で,円盤中心に空洞が存在する.この観測結果は,中心星から 60 AU 以内では µm サイズのダストがほとんど欠如していることを示唆している (Maaskant et al. 2013).

その後多数の観測が行われて解析が行われたが,円盤の構造の解釈には差異がある.
Maaskant et al. (2013) は,空洞内の内側構造として,光学的に薄いハロー構造の存在を提案した.一方,Bruderer et al. (2014) と Follette et al. (2015) は光学的に厚い円盤の存在を示唆している.

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