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論文関連の(ほぼ)個人用メモ。



arXiv:1804.03075
Sestovic et al. (2018)
Investigating hot-Jupiter inflated radii with hierarchical Bayesian modelling
(ホットジュピター膨張半径を階層的ベイズモデリングで調査する)

概要

これまでに多数のホットジュピターが発見されているが,それらの大部分の膨張した半径は未だに説明できていない.この異常半径を説明するためのいくつものメカニズムが提案されているが,大部分は特定の条件下でしか働かないか.あるいは最も極端なケースを説明することが出来ない.

ホットジュピターの半径分布全体を説明するには単一の機構で十分なのか,あるいは複数の機構の組み合わせが必要なのかも現時点では不明確である.

ここでは,惑星半径と恒星からの輻射,および惑星質量との関係性の理解を深め,ホットジュピターが膨張を起こす質量の範囲を見つけることをを目指す.また,観測できないパラメータに起因する,半径における固有の物理的な分散を見つけ出し,半径膨張を起こしているホットジュピターの割合に制約を与えることを目指す.

階層的ベイズモデルを構築し,286 個の巨大ガス惑星の,惑星半径・質量と入射フラックスの間の確率的な関係を推論する.ここでは,データの観測的な不定性と,分布における内因的な物理的ばらつきを別々に取り入れている.これにより,半径における内因性の物理的な分散 (重元素の割合のような潜在的パラメータに起因するもの) を,推論されるパラメータとして扱うことが可能となる.


その結果,惑星半径の膨張に対しては惑星質量が重要な役割を果たすことを見出した.

質量が ~ 0.37 - 0.98 木星質量の範囲にある惑星は,最も大きく膨張した半径を持つ.惑星質量がさらに大きくなると,入射フラックスに対する惑星半径の応答は減少し始める.

また,0.37 ± 0.03 木星質量の閾値よりも小さい質量を持つ惑星では,1.4 木星半径程度より大きな膨張半径を維持することができないが,惑星への入射フラックスが 106 W m-2 を超えると,入射フラックスが増加するに伴って惑星半径が小さくなる傾向を示す.

また 1 木星質量未満では,大きな入射フラックスではそれ以上の膨張惑星が発見されないという,フラックスのカットオフが存在することが判明した.このカットオフが起きるフラックスの値は,惑星質量が減少するに連れて小さくなる.

惑星への入射フラックスが 1.6 × 106 W m-2 よりも大きく,質量が 0.37 - 0.98 木星質量の惑星では,膨張していないものが存在するという証拠は検出されなかった (全てが膨張半径を持つ).

ホットジュピターの膨張半径

半径異常とそのメカニズム候補

ガス惑星の内部モデルと半径の進化モデルとして,Fortney et al. (2007) や Baraffe et al. (2008) のモデルが存在する.これらのモデルは,惑星が受ける恒星からの輻射が小さい場合は観測と一致するが,輻射が強い場合は問題点が残る.

惑星が受ける輻射が ~ 2 × 105 W m-2 より大きい場合 (Miller & Fortney 2011,Demory & Seager 2011),多くのガス惑星がモデルによる理論予測よりも大きな半径を持つことが分かっている.例えば,ホットジュピター WASP-17b,WASP-121b,ケプラー435b などは ,1.8 木星半径よりも大きな半径を持っている.

惑星半径を膨張させるメカニズムとしては,惑星内部での潮汐散逸を含むもの (Bodenheimer et al. 2001,2003,Arras & Socrates 2010,Jermyn et al. 2017),動力学的な加熱 (Guillot & Showman 2002),大気の高い不透明度 (Burrows et al. 2007),二重拡散対流 (Chabrier & Baraffe 2007),温位の鉛直移流 (Youdin & Mitchell 2010,Tremblin et al. 2017),磁気流体力学的効果を介したオーム加熱 (Batygin & Stevenson 2010,Perna et al. 2010,Wu & Lithwick 2013,Ginzburg & Sari 2016) が提案されている.

膨張半径の統計的研究

ホットジュピターの半径異常に関するこれまでの研究は,個別の惑星を対象にしたり,あるいは狭いパラメータセットにおける惑星半径の予測などに限られてきた.しかし惑星半径は多くのパラメータに依存すると考えられ,その中には,観測できないものやあまりよく制限できていないもののような,潜在的なパラメータも存在すると思われる.例えば,惑星のコア質量,惑星系の年齢,惑星の内部組成,大気の不透明度である.

単一の惑星から得られる情報には限度があるが,これまでに系外惑星は多数発見されている.そのため,惑星の膨張半径を集団的に扱うことが出来る.


分析にあたって,実際の潜在的な物理的パラメータに起因する半径の分散と,観測の不定性による分散を区別する必要がある.例えば,ホットジュピターの半径は,~ 1.99木星半径 (ケプラー435b,Delrez et al. 2016) から ~ 0.84 木星半径 (ケプラー41b,Santerne et al. 2011) まで範囲の範囲を取りうる.

この半径分布の広がりのうち,どれだけが半径測定の不定性で説明され得るのかを理解するのを目標とする.またこれにより,現時点では未特定の物理過程によって引き起こされている膨張半径の「真の」範囲が制約される.

ここでは,トランジットする巨大ガス惑星のうち質量と半径が測定されているもの 286 個を解析した.先述の,内因的な影響と測定の不定性を区別するために,階層的ベイズモデルを使用した.

主な結論

惑星質量との関連性

惑星半径の膨張の度合いには,惑星質量が大きな役割を果たしている.

大部分の膨張半径を持つホットジュピターは,0.37 - 0.98 木星質量の範囲の質量を持つ.

また,入射フラックスに対する半径の応答は,惑星質量が増えるに連れ減少する.
これは,惑星の質量が増えるに伴って惑星コア質量も増加する傾向 (膨張する閾値を下回るガス惑星に見られるものと同様) に起因するものか,あるいは惑星質量の増加に伴い表面重力が増加することに起因するものである可能性がある.後者は,表面重力が大きいと半径を膨張させづらいということに対応している.

入射フラックスへの依存性

0.37 木星質量未満では,非常に膨張した半径を持つ惑星が急激に減少し,入射フラックス 105 W m-2 付近で惑星半径が減少し始める.このような,フラックスの増加に伴って惑星半径が減少する傾向は,より大きな質量の惑星では見られないものである.

また,ホットジュピターがもはや存在しない領域に,入射フラックスのカットオフ点が存在する.また 1.0 木星質量以下の膨張惑星では,このカットオフ点は質量が減るに連れて小さくなる.


惑星への入射フラックスが 1.6 × 105 W m-2 より大きく,質量範囲が 0.37 - 0.98 木星質量の惑星では,半径が膨張していない惑星が存在するという証拠は存在しない.

なおここでの「膨張していない」の定義は,恒星からの入射フラックスによる惑星光球へのエネルギー注入のみを考慮し,追加の膨張効果が考慮されていない理論モデルによって惑星半径が再現できるものを指す.

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