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論文関連の(ほぼ)個人用メモ。



arXiv:1805.00424
Mansfield et al. (2018)
A HST/WFC3 Thermal Emission Spectrum of the Hot Jupiter HAT-P-7b
(ホットジュピター HAT-P-7b の HST/WFC3 熱放射スペクトル)

概要

いくつかの最も高温な部類のホットジュピターの二次食 (secondary eclipse) 観測は,特徴に欠けた黒体状のスペクトル,もしくは分子放射の特徴を示す.これらの特徴は,惑星の大気中に温度逆転層が存在するという説と整合的である.

理論的には,温度逆転を伴う高温な大気と,温度逆転を持たない低温な大気の間の遷移があることが予測されるが,これが起きる正確な遷移点は不明である.この問題をさらに探求するため,ホットジュピター HAT-P-7b の二次食を 2 回,ハッブル宇宙望遠鏡の WFC3 で観測した.これらのデータを,過去のスピッツァー宇宙望遠鏡とケプラーでの二次食観測と合わせて解析を行った.

ハッブル宇宙望遠鏡とスピッツァー宇宙望遠鏡のデータは,この惑星の昼側のスペクトルは,有効温度が 2692 K の黒体放射でよくフィットできる.また,ケプラーによるデータからは,この惑星の幾何学的アルベドを 0.077 と制約した.

これらのデータを,三次元の大気循環モデルと,一次元の自己無撞着前進モデルを用いてモデル化した.

一次元モデルからは,この惑星の大気は温度逆転層を持ち,昼から夜への熱の再分配は弱く,また探査した圧力領域では水分子の解離が起きていることが示唆される.この結果は,この惑星の WFC3 で観測されたスペクトルと,もしかしたら他の幾つかの超高温ホットジュピターのスペクトルは,黒体状に見えることを示唆する.これは,これらの観測で探査している領域は,大気温度が圧力とともにゆっくり変化する対流圏界面の付近に相当するからである.

さらに一次元モデルは,この惑星の大気の金属量に対して [M/H] = -0.87 という制約を与えた.また C/O 比は,99% の確度で 1 未満である.

大気が太陽組成とした場合の三次元大気循環モデルは,スピッツァー宇宙望遠鏡のデータと一致した.しかし WFC3 バンドパスでのフラックスを過小予測し,また特徴に欠けたスペクトルの形状を再現できない.この理論と観測結果の乖離は,大気循環への抗力の存在や,夜側大気中の雲の存在によって説明可能だと考えられる.
将来的なジェームズ・ウェッブ宇宙望遠鏡でのさらなる観測によって,大気特性をより良く理解できることが期待される.

HAT-P-7b について

この惑星はホットジュピターであり,アルベドをゼロと仮定し,熱の再分配を昼側に限定した場合,昼側の平衡温度は 2600 K になると推定される.

この惑星はスピッツァー宇宙望遠鏡で観測され,大気中の温度逆転層の存在が報告されている (Christiansen et al. 2010.Wong et al. 2016).しかし,スピッツァー宇宙望遠鏡では系外惑星のスペクトルを少ない波長帯でしか観測できないため,分子の存在度との縮退がある.そのため,それらのデータのみでは実際に温度逆転層が存在すると結論付けることは出来ない (Mashusudhan & Seager 2010,Line et al. 2014).今回は,ハッブル宇宙望遠鏡を用いて 1.1 - 1.7 µm の波長域で観測を行った.

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