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論文関連の(ほぼ)個人用メモ。
Evidence of a plume on Europa from Galileo magnetic and plasma wave signatures
Jia et al. (2018)
Evidence of a plume on Europa from Galileo magnetic and plasma wave signatures
(ガリレオの磁場とプラズマ波の特徴からのエウロパの噴出物の証拠)
しかし,これまでの全ての望遠鏡による検出は,データの感度限界で行われているため,その場観測による噴出の兆候に関する研究が必要である.
ここでは,エウロパからの噴出 (plume,プルーム) のその場観測からの証拠を,木星探査機ガリレオがエウロパに最近接遭遇した時に得られた,磁場とプラズマ波の観測結果から検出したことを報告する.
この時のガリレオのフライバイでは,エウロパ表面から高度 400 km 以下の距離にまで接近した.この最中にガリレオの磁気計が,およそ 1000 km スケールの磁場の回転と,200 nT を超える磁場の減少を記録した.また,Plasma Wave Spectrometer では,短いが一定のプラズマ密度の増加を示す結果が得られ,強い局在波放射を記録した.
磁場とプラズマ波が測定された場所,期間および変動は,もしハッブル宇宙望遠鏡の画像から示唆される特徴を持ったプルームがエウロパの熱的異常領域から噴出していた場合,エウロパと木星の共回転プラズマの相互作用と整合的であることを示す.
これは,エウロパにプルームが存在することの,強い独立した証拠である.
Magnetometer (MAG) データは,ガリレオの 8 年間のミッションの最中にあったエウロパへの合計 8 回の接近の際に取得された,しかしこれらの接近のうち,エウロパ表面から 400 km 以下の距離にまで接近したのは 2 回のみであり,それぞれ E12 と E26 がそれに該当する.
400 km という高度は,過去の観測によって報告されているプルームが,プラズマや磁場の特徴に影響を及ぼしうる高さである.
E12 と E26 の 2 回とも,エウロパの後行半球 (公転方向とは反対側の半球) に接近し,E12 では得るの赤道付近,E26 では南半球の高緯度領域に接近した.短時間の間に大きな振幅の擾乱が,最近接の際に記録されており,これは磁場の急激な減少を伴うものであった.
プルームがエウロパのプラズマ相互作用に及ぼしうる影響についての過去の研究では,E26 の最中の磁場の擾乱は,噴出物由来の大気の非均一性に起因することが示唆されている.
ここでは,E12 の最近接フライバイ最中の MAG データ中の局所的な特徴が,ガリレオがエウロパ表面付近から上昇する噴出物を横切った際に発生する事が期待される擾乱と完全に一致することを示す.
近接遭遇はエウロパ表面からの高度 206 km まで接近し,その際の時刻は UT 12:03:20 である.
UT 12:00 - 12:03 の間に,磁場の 3 成分の大きな変化が 3 分間に渡って観測された.最近接遭遇のおよそ 1 分前に,わずか 16 秒の間に磁場が数百 nT 変化した.
エウロパに対するガリレオの相対速度が 6 km/s であることを考慮すると,3 分という時間は ~ 1000 km のスケールに相当する.このスケールは,ハッブル宇宙望遠鏡で撮像されたプルームの高度 400 km 程度での,典型的なスケールと同程度である.
プラズマ波スペクトルは Plasma Wave Spectrometer (PWS) で取得された.これにより,短いタイムスケールの磁場の擾乱と同時に発生する,孤立した変化の存在が明らかになった.強い放射の周波数における突然の短時間のジャンプは,局在したプラズマ源によるものと整合的だと解釈できる.そのため,磁場の擾乱は局在したプルームを通過したことによって引き起こされたという仮説が支持される.
シミュレーションモデルは,O+ (磁気圏のプラズマ由来) と O2+ (エウロパ起源のイオン),および電子流体を別々に追うものである.また,エウロパ大気中で起きる電離,電荷交換,再結合を含む.
プルームを考慮したモデルと,していないモデルで比較を行った.その結果全体的には,シミュレーションは平滑化した観測データとよく一致した,ただし非常に小さい振幅の衝撃波 shocklet は再現されなかった.
これまでのハッブル宇宙望遠鏡での観測では,エウロパからの水と思われる噴出物の存在が観測されていましたが,これは過去に木星探査機ガリレオがエウロパに接近した際の磁場とプラズマの観測データから,噴出物の存在を検出したという報告です.
噴出物のある位置での磁場とプラズマの密度の急激な変化が観測されましたが,水や水に由来する成分が直接検出されたわけではないため,論文中ではあくまで plume が検出された,という表現にとどまっています.
この研究結果は,エウロパからの水の噴出の可能性が高まったとしてニュースにも取り上げられました.
Evidence of a plume on Europa from Galileo magnetic and plasma wave signatures
Jia et al. (2018)
Evidence of a plume on Europa from Galileo magnetic and plasma wave signatures
(ガリレオの磁場とプラズマ波の特徴からのエウロパの噴出物の証拠)
概要
木星の衛星エウロパの氷の表層は,全球的な海洋の上に存在していると考えられている.ハッブル宇宙望遠鏡を用いたエウロパの観測では,エウロパ表面からの水の噴出と考えられる兆候が検出されており,これは表層下に海が存在するという理論を支持している.しかし,これまでの全ての望遠鏡による検出は,データの感度限界で行われているため,その場観測による噴出の兆候に関する研究が必要である.
ここでは,エウロパからの噴出 (plume,プルーム) のその場観測からの証拠を,木星探査機ガリレオがエウロパに最近接遭遇した時に得られた,磁場とプラズマ波の観測結果から検出したことを報告する.
この時のガリレオのフライバイでは,エウロパ表面から高度 400 km 以下の距離にまで接近した.この最中にガリレオの磁気計が,およそ 1000 km スケールの磁場の回転と,200 nT を超える磁場の減少を記録した.また,Plasma Wave Spectrometer では,短いが一定のプラズマ密度の増加を示す結果が得られ,強い局在波放射を記録した.
磁場とプラズマ波が測定された場所,期間および変動は,もしハッブル宇宙望遠鏡の画像から示唆される特徴を持ったプルームがエウロパの熱的異常領域から噴出していた場合,エウロパと木星の共回転プラズマの相互作用と整合的であることを示す.
これは,エウロパにプルームが存在することの,強い独立した証拠である.
ガリレオのエウロパ接近観測
ガリレオの接近観測の概要
過去のハッブル宇宙望遠鏡での観測画像によると,プルームはエウロパの固体表面から ~ 200 km の高さまで上昇しているように思われる.これらのうちエウロパの赤道に近いものは,比較的表面温度が高い領域の中にある,エウロパの後行半球の赤道の南に位置している.またその他にも,後行縁のプルームに関連しているかもしれない,独特の特徴の存在が報告されている.Magnetometer (MAG) データは,ガリレオの 8 年間のミッションの最中にあったエウロパへの合計 8 回の接近の際に取得された,しかしこれらの接近のうち,エウロパ表面から 400 km 以下の距離にまで接近したのは 2 回のみであり,それぞれ E12 と E26 がそれに該当する.
400 km という高度は,過去の観測によって報告されているプルームが,プラズマや磁場の特徴に影響を及ぼしうる高さである.
E12 と E26 の 2 回とも,エウロパの後行半球 (公転方向とは反対側の半球) に接近し,E12 では得るの赤道付近,E26 では南半球の高緯度領域に接近した.短時間の間に大きな振幅の擾乱が,最近接の際に記録されており,これは磁場の急激な減少を伴うものであった.
プルームがエウロパのプラズマ相互作用に及ぼしうる影響についての過去の研究では,E26 の最中の磁場の擾乱は,噴出物由来の大気の非均一性に起因することが示唆されている.
ここでは,E12 の最近接フライバイ最中の MAG データ中の局所的な特徴が,ガリレオがエウロパ表面付近から上昇する噴出物を横切った際に発生する事が期待される擾乱と完全に一致することを示す.
磁場とプラズマ波変動の検出
E12 のデータは,1997 年 12 月 16 日に取得された.磁場強度とプラズマ密度がエウロパ上流で非常に高く,磁場の変動のタイムスケールは数分であった.近接遭遇はエウロパ表面からの高度 206 km まで接近し,その際の時刻は UT 12:03:20 である.
UT 12:00 - 12:03 の間に,磁場の 3 成分の大きな変化が 3 分間に渡って観測された.最近接遭遇のおよそ 1 分前に,わずか 16 秒の間に磁場が数百 nT 変化した.
エウロパに対するガリレオの相対速度が 6 km/s であることを考慮すると,3 分という時間は ~ 1000 km のスケールに相当する.このスケールは,ハッブル宇宙望遠鏡で撮像されたプルームの高度 400 km 程度での,典型的なスケールと同程度である.
プラズマ波スペクトルは Plasma Wave Spectrometer (PWS) で取得された.これにより,短いタイムスケールの磁場の擾乱と同時に発生する,孤立した変化の存在が明らかになった.強い放射の周波数における突然の短時間のジャンプは,局在したプラズマ源によるものと整合的だと解釈できる.そのため,磁場の擾乱は局在したプルームを通過したことによって引き起こされたという仮説が支持される.
シミュレーションとの比較
E12 で得られた特徴がプルームによるという仮説を検証するため,多流体の 3 次元磁気流体シミュレーションを行った.シミュレーションモデルは,O+ (磁気圏のプラズマ由来) と O2+ (エウロパ起源のイオン),および電子流体を別々に追うものである.また,エウロパ大気中で起きる電離,電荷交換,再結合を含む.
プルームを考慮したモデルと,していないモデルで比較を行った.その結果全体的には,シミュレーションは平滑化した観測データとよく一致した,ただし非常に小さい振幅の衝撃波 shocklet は再現されなかった.
これまでのハッブル宇宙望遠鏡での観測では,エウロパからの水と思われる噴出物の存在が観測されていましたが,これは過去に木星探査機ガリレオがエウロパに接近した際の磁場とプラズマの観測データから,噴出物の存在を検出したという報告です.
噴出物のある位置での磁場とプラズマの密度の急激な変化が観測されましたが,水や水に由来する成分が直接検出されたわけではないため,論文中ではあくまで plume が検出された,という表現にとどまっています.
この研究結果は,エウロパからの水の噴出の可能性が高まったとしてニュースにも取り上げられました.
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