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論文関連の(ほぼ)個人用メモ。



arXiv:1805.10290
Teague et al. (2018)
A Kinematical Detection of Two Jupiter Mass Planets
(2 つの木星質量惑星の運動学的検出)

概要

原始惑星系円盤内にある原始惑星の,初めての kinematical detection (運動学的検出) について報告する

ここでは,HD 163296 の ALMA 観測のアーカイブデータを用いて,CO 同位体置換体の回転曲線をケプラー回転と比較し,パーセント以下の精度で測定する新しい技術を実証する.
これらの回転曲線は,円盤内の半径方向の圧力勾配における局所的な摂動によって引き起こされる一定の大きさのずれの存在を裏付けるものであり,おそらくは木星質量の惑星によって円盤のガス表面密度に開けられたギャップによって引き起こされている.

流体力学シミュレーションとの比較から,観測結果は,円盤の表面密度が 83 au と 137 au に存在する 2 つの木星質量惑星によって擾乱を受けている場合のガス回転分布と非常によく一致することが示される

円盤内のガスの回転は全ガス成分の圧力に依存するため,この手法はその他の手法では問題となる,ダストガス比や局所的な化学組成に起因する大きな不定性を招くこと無く,ガス表面密度分布の独特な探査方法になる.両方の方法を組み合わせた将来的な分析によって,円盤内に埋め込まれた惑星質量の最も正確で確実な測定値を提供できるだろうと考えられる.

また今回の方法は,ミリメートル連続波で検出される外縁を超える大きな軌道半径にある惑星を探査したり,円盤内での粒子成長のモデリングに必要なガス圧力分布をトレースするためのユニークな手段となり得るだろう.

円盤内のギャップ構造と隠れている惑星

原始惑星系円盤のギャップ構造

円盤のギャップの形成は,惑星のみによるとは限らない.重い惑星は円盤に渦巻波動を起こし,二番目と三番目のギャップを開けることが出来る (Bae et al. 2017,Fedele et al. 2018).一方で,スノーライン周辺での粒子成長 (Zhang et al. 2015) や (磁気)流体力学的不安定によるダストの shepherding によっても,電波の連続波で観測される円盤構造にリング状の構造を形成可能である (Flock et al. 2015,Birnstiel et al. 2015,Okuzumi et al. 2016).

これらの効果は,ギャップの特徴から導出される惑星質量に大きな不定性をもたらし,また惑星由来ではないにも関わらず惑星が存在するという間違った推論を導く可能性もある.

円盤ガス回転からの圧力勾配探査

代替アプローチとして,円盤内の局所的な圧力勾配を探査するためにガスの回転を用いるというものがある.

円盤が動径方向にも垂直方向にも静水圧平衡が成り立っている場合,円盤内のガスの回転速度は
\[
\frac{v_{\rm rot}^{2}}{r}=\frac{GM_{*}r}{\left(r^{2}+z^{2}\right)^{3/2}}+\frac{1}{\rho_{\rm gas}}\frac{\partial P}{\partial r}
\]
となる.ここで,\(M_{*}\) は中心星の質量,\(\partial P/\partial r\) は局所的な圧力勾配である.

なおここでは,円盤の自己重力は無視している.円盤の自己重力は,最も重い円盤でのみ大きな半径での回転がわずかに早まるという効果として現れ,小さいスケールでの擾乱には効かない.

円盤内の惑星が局所的なガス密度を擾乱した場合,局所的な圧力勾配が変化するため,それは円盤ガスの回転速度の変化として現れる.この手法では圧力勾配をトレースしていることになるため,円盤ガスの回転速度のケプラー速度からのずれから,擾乱の形状についての情報を得ることができる.従って,ガス圧力を直接的に追跡することにより,この技術はこれまでの手法が受けやすかった上述の不定性から解放されることとなる.

HD 163296 について

HD 163296 は 101.5 pc (Bailer-Jones et al. 2018) の距離にある A1 星である.

この天体は,一酸化炭素の輝線と連続波での観測から円盤の内部構造を持つことが分かっており,円盤内に複数の惑星を持つことが示唆されている (Isella et al. 2016,Liu et al. 2018).なおこの研究は,Gaia による観測で改定される前の距離である 122 pc (van den Ancker et al. 1997) に基いている.

まとめ

ここでは,円盤内のガス圧分布の直接測定を可能にする新しい手法を提供した.これにより,従来の方法よりもガス面密度分布への制約が厳しく,より正確になった.
さらにこの手法はギャップの分布に敏感なため,典型的には円盤の輝度分布からはよく制約できない,ガス中のギャップ幅に関する本質的な情報を得ることが出来る.

この手法を HD 163296 の CO 同位体放射の観測結果に適用した.
放射の高度を正確に測定し,線幅を局所的なガス温度の代用として用いると,C18O へのこれらの擾乱の主な駆動源として,局所的なガス密度の変化を分離することが出来た.

この結果を流体力学シミュレーションと比較すると,100 au にある 1 木星質量の惑星と,165 au にある 1.3 木星質量の惑星が円盤に及ぼす影響とよく一致した.ただし,この天体までの推定距離を Gaia によって得られた新しい距離にスケールすると,軌道長半径はそれぞれ 83 au と 137 au に対応する.

より円盤内側での擾乱は,シミュレーションとあまりよく一致せず,考えられうるシナリオを区別するためにはさらなる高分解能観測が必要である.

この手法は,原始惑星系円盤の中に埋もれている惑星を探査するための新しいアプローチである.円盤のガス圧力を介して全ガス成分をトレースすることで,この手法はフラックスの測定値をガス表面密度にマッピングする従来のアプローチに伴う多くの不定性から解放される.







同じ日に,同一の天体に対して類似した手法を用いて惑星を発見したという論文が独立に発表されています.各論文でそれぞれ惑星の数と位置が異なっており,類似した手法で別々の惑星の検出を報告しています.

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