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論文関連の(ほぼ)個人用メモ。
arXiv:1804.05510
Morishima (2018)
Architectures of planetary systems formed by pebble accretion
(ペブル降着で形成される惑星系の構造)
一方で大きな planetary embryo は,微惑星に含まれずに残っているペブルの降着によって効率的に成長する.この過程はペブル降着 (pebble accretion) と呼ばれ,巨大惑星のコアを形成するための新しい有望な経路である.しかしこの過程を介して形成される惑星系の構造は不明である.
ここでは,粒子ベースのハイブリッドコードを用いた惑星系形成のシミュレーションを行った.シミュレーションには,大部分の重要な物理的効果を可能な限り正確に実装した.原始惑星系円盤のサイズ,乱流粘性,ペブルのサイズ,微惑星の形成効率,初期の微惑星の質量分布を変化させて計算を行った.
シミュレーションでは,微惑星はまず,初期のサイズが 100 km かそれ以下のオーダーの際に相互衝突によって成長する.微惑星が ~ 1000 km サイズに成長すると,ペブル降着により効率的に成長するようになる.
大きな原始惑星系円盤中で,円盤の外側領域から長期間に渡ってペブルの供給が継続する場合,planetary embryo は暴走ガス降着を起こすのに十分な質量にまで成長し,巨大ガス惑星を形成する.
シミュレーションからは,太陽系のような惑星系は,やや大きな乱流粘性を持つ原始惑星系円盤から形成されることが示唆される.もし円盤の乱流粘性が十分に低い場合,惑星はガス円盤中にギャップを形成して,暴走ガス降着が始まるよりも前にペブルの降着を阻害する.このような状況では,複数の海王星サイズ惑星を持つ惑星系が形成される.
arXiv:1804.05510
Morishima (2018)
Architectures of planetary systems formed by pebble accretion
(ペブル降着で形成される惑星系の構造)
概要
惑星降着のモデルでは,ダストの濃集によりペブル (pebble) が形成され,それらが中心星に向かって急速に落下していく.微惑星は原始惑星系円盤の時代を通じてペブルから継続的に形成されると思われるが,その機構は不明である.一方で大きな planetary embryo は,微惑星に含まれずに残っているペブルの降着によって効率的に成長する.この過程はペブル降着 (pebble accretion) と呼ばれ,巨大惑星のコアを形成するための新しい有望な経路である.しかしこの過程を介して形成される惑星系の構造は不明である.
ここでは,粒子ベースのハイブリッドコードを用いた惑星系形成のシミュレーションを行った.シミュレーションには,大部分の重要な物理的効果を可能な限り正確に実装した.原始惑星系円盤のサイズ,乱流粘性,ペブルのサイズ,微惑星の形成効率,初期の微惑星の質量分布を変化させて計算を行った.
シミュレーションでは,微惑星はまず,初期のサイズが 100 km かそれ以下のオーダーの際に相互衝突によって成長する.微惑星が ~ 1000 km サイズに成長すると,ペブル降着により効率的に成長するようになる.
大きな原始惑星系円盤中で,円盤の外側領域から長期間に渡ってペブルの供給が継続する場合,planetary embryo は暴走ガス降着を起こすのに十分な質量にまで成長し,巨大ガス惑星を形成する.
シミュレーションからは,太陽系のような惑星系は,やや大きな乱流粘性を持つ原始惑星系円盤から形成されることが示唆される.もし円盤の乱流粘性が十分に低い場合,惑星はガス円盤中にギャップを形成して,暴走ガス降着が始まるよりも前にペブルの降着を阻害する.このような状況では,複数の海王星サイズ惑星を持つ惑星系が形成される.
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論文関連の(ほぼ)個人用メモ。
arXiv:1804.05551
Burdanov et al. (2018)
KPS-1b: the first transiting exoplanet discovered using an amateur astronomer's wide-field CCD data
(KPS-1b:アマチュア天文家の広視野 CCD データを用いて発見された初めてのトランジット系外惑星)
ここでは,この惑星の発見に用いられた機器と観測技術,SOPHIE 分光器での分光観測による特徴付け,1 m 級の望遠鏡で得られた高精度測光観測について記述する.また,KPS プロジェクトの進化を Galactic Plane eXoplanet survey (GPX) にまとめる.この惑星の発見は,系外惑星学の急成長している分野への,アマチュア天文家の貢献の大きな一歩である.
しかしこれら全てを合わせても,空の多くの部分がまだ探査されておらず,特に銀河面の方向は比較的未探査である.
また,これらの広視野サーベイや,将来の宇宙空間からのミッションである PLATO や TESS は,一般に空間分解能は悪い.そのため恒星が密集している銀河面方向では視野内への恒星の混入が発生し,トランジットのシグナルが弱められることによる検出可能性の低下や,食連星が混入することによる偽陽性確率の大きな上昇などの原因となる.
そのため,これまでの多くのサーベイでは,銀河面方向である低銀緯の領域を避けてきた.従って,その領域には多数の未検出のホットジュピターが存在している可能性がある.KPS プロジェクトは,これらの発見にアマチュア天文学が重要な役割を果たす可能性があるという仮説に基づくプロジェクトである.
ただし上記のプロジェクトは,既に存在しているデータ中からの惑星の検出や探査に焦点を当てたものであり,既に観測されている系外惑星候補や,プロの天文学者によって発見されている既知の惑星を持つ恒星が観測対象となっている.
現在は,広視野 CCD データを直接収集することによって,アマチュア天文家も系外惑星の探査に貢献することが出来る.
観測は,ロシアの Ural Federal University (ウラル連邦大学) が所有する Kourovka astronomical observatory の,MASTER-II-Ural robotic telescope を使用して,銀河面領域を探査した.2014 年以降はアメリカ・マサチューセッツ州の個人所有の Acton Sky Portal Observatory の Rowe-Ackermann Schmidt Astrograph が参加し,銀河面方向ではないが,おおぐま座の領域の探査が行われた.
ここでは,後者の領域での観測結果から新しい惑星を発見した.
有効温度:5165 K
金属量:[Fe/H] = 0.22
質量:0.892 太陽質量
半径:0.907 太陽半径
軌道長半径:0.0269 au
質量:1.090 木星質量
半径:1.03 木星半径
平均密度:木星の 0.99 倍
平衡温度:1459 K
日射量:地球の 729 倍
arXiv:1804.05551
Burdanov et al. (2018)
KPS-1b: the first transiting exoplanet discovered using an amateur astronomer's wide-field CCD data
(KPS-1b:アマチュア天文家の広視野 CCD データを用いて発見された初めてのトランジット系外惑星)
概要
トランジットするホットジュピター KPS-1b の発見について報告する.この惑星は,Kourovka Planet Search (KPS) プロジェクトのプロトタイプによって発見された.KPS プロジェクトは,容易に入手可能で比較的手頃な装置を使用して,アマチュア天文家によって集められた広視野 CCD データを使用して系外惑星の探査を行うプロジェクトである.ここでは,この惑星の発見に用いられた機器と観測技術,SOPHIE 分光器での分光観測による特徴付け,1 m 級の望遠鏡で得られた高精度測光観測について記述する.また,KPS プロジェクトの進化を Galactic Plane eXoplanet survey (GPX) にまとめる.この惑星の発見は,系外惑星学の急成長している分野への,アマチュア天文家の貢献の大きな一歩である.
背景
既存のトランジット探査プロジェクト
現在までに,トランジットするホットジュピターは 300 個程度が知られている.地上からの広視野測光サーベイ,例えば WASP, HAT, KELT, Qatar, XO, TrES が多くのホットジュピターを発見している.これらに加えて,宇宙空間からの CoRoT, ケプラー,K2 ミッションも貢献している.しかしこれら全てを合わせても,空の多くの部分がまだ探査されておらず,特に銀河面の方向は比較的未探査である.
また,これらの広視野サーベイや,将来の宇宙空間からのミッションである PLATO や TESS は,一般に空間分解能は悪い.そのため恒星が密集している銀河面方向では視野内への恒星の混入が発生し,トランジットのシグナルが弱められることによる検出可能性の低下や,食連星が混入することによる偽陽性確率の大きな上昇などの原因となる.
そのため,これまでの多くのサーベイでは,銀河面方向である低銀緯の領域を避けてきた.従って,その領域には多数の未検出のホットジュピターが存在している可能性がある.KPS プロジェクトは,これらの発見にアマチュア天文学が重要な役割を果たす可能性があるという仮説に基づくプロジェクトである.
これまでのアマチュア天文家参加プロジェクト
アマチュア天文家による系外惑星分野への貢献には,Zooniberse に基づくプロジェクトである Planet Hunters (Fischer et al. 2012) と,Exoplanet Explorers がある.また,地上からのフォローアップ観測にもアマチュア天文家が貢献しており,例えば KELT サーベイで検出された系外惑星候補の KELT-FUN 観測 (McLeod et al. 2017) や,ケプラーで検出された系外惑星候補天体 KOI-1257b の追加観測 (Santerne et al. 2014),トランジット時刻変動の調査 (Baluev et al. 2015) などがある.ただし上記のプロジェクトは,既に存在しているデータ中からの惑星の検出や探査に焦点を当てたものであり,既に観測されている系外惑星候補や,プロの天文学者によって発見されている既知の惑星を持つ恒星が観測対象となっている.
現在は,広視野 CCD データを直接収集することによって,アマチュア天文家も系外惑星の探査に貢献することが出来る.
Kourovka Planet Search (KPS) プロジェクト
2012 - 2016 年の間に,Kourovka Planet Search (KPS) プロジェクトを実行した.これは,低銀緯領域でのトランジット系外惑星の探査を主目標にしたサーベイのプロトタイプにあたるものである.観測は,ロシアの Ural Federal University (ウラル連邦大学) が所有する Kourovka astronomical observatory の,MASTER-II-Ural robotic telescope を使用して,銀河面領域を探査した.2014 年以降はアメリカ・マサチューセッツ州の個人所有の Acton Sky Portal Observatory の Rowe-Ackermann Schmidt Astrograph が参加し,銀河面方向ではないが,おおぐま座の領域の探査が行われた.
ここでは,後者の領域での観測結果から新しい惑星を発見した.
パラメータ
KPS-1
等級:V = 13.033有効温度:5165 K
金属量:[Fe/H] = 0.22
質量:0.892 太陽質量
半径:0.907 太陽半径
KPS-1b
軌道周期:1.706291 日軌道長半径:0.0269 au
質量:1.090 木星質量
半径:1.03 木星半径
平均密度:木星の 0.99 倍
平衡温度:1459 K
日射量:地球の 729 倍
論文関連の(ほぼ)個人用メモ。
arXiv:1804.03735
Tamburo et al. (2018)
Confirming Variability in the Secondary Eclipse Depth of the Super-Earth 55 Cancri e
(スーパーアースかに座55番星e の二次食深さの変動の確認)
ここでは特に,Demory et al. (2016) で報告されている,二次食データ中の変動の可能性に着目した.
トランジットのデータから,この惑星の軌道要素をアップデートした.更新された惑星半径の推定値は 1.89 ± 0.05 地球半径である.
トランジットデータの解析の結果,トランジットの深さは一定であるとした場合と整合的であり,トランジットの深さは変動していないと結論付けた.
一方で 8 回の二次食観測データの解析では,二次食の深さに大きな変動を発見し,相関解析を介して Demory et al. (2016) での報告と一致することを確認した.
二次食の測定結果を惑星の輝度温度に変換し,惑星の二次食深さの時間経過に伴う進化を説明するための,いくつかの発見的モデルを生成して議論を行った.二次食の深さは,年ごとに深さが変動するとするモデルによって最もよくモデル化出来るが,より短いタイムスケールで変動している可能性も否定できない.
観測から導出された輝度温度の範囲は,非効率的な熱の再分配を伴う暗い表面を持つ惑星が,反射性の粒子によって昼側半球の大部分を断続的に覆われている状態で再現することが出来る.おそらくは,火山活動もしくは雲の変動性に起因する可能性がある.
かに座55番星e の二次食深さの時間変動は,現在計画中の宇宙空間からの観測ミッション (ジェームズ・ウェッブ宇宙望遠鏡) や,現在提案されているミッション (ARIEL など) で観測可能である.
この二次食深さの増加は,惑星の輝度温度が 2012 - 2013 年の間に大きくなっていることを意味しており,Demory et al. (2016) では輝度温度が 1600 K から 2600 K に上昇していると報告している.
輝度温度の変化の要因として,火山活動によるものという仮説が提案されている.火山プルームは,原理的には 4.5 µm での光球を,低温の大気高層に押し上げることが可能である.そのため,プルーム活動が活発な時は低温な上層を観測していることになり,熱放射が小さくなる.
今回の再解析の結果,トランジット深さについては一定とするのが整合的な結果となった.ただし 1 年程度の周期での変動が存在する可能性の否定は出来ない.今後の,高頻度もしくは長期間のトランジット観測が必要である.
この平坦モデルでフィッティングすると,二次食深さは 84 ± 14 ppm となる.
このモデルでのフィッティングでは,2012 年の二次食深さは 24 ± 20 ppm,2013 年の二次食深さは 138 ± 18 ppm となる.
このモデルでは,ベースライン時の二次食深さが 58 ± 16 ppm,2013 年の最初 2 つの二次食の深さが 173 ± 26 ppm となった.
2013 年のデータについて,二次食深さを一次関数 \(y=mx+b\) でフィッティングした.その結果 \(m=-2.36\pm1.59\) ppm/日,\(b=164.7\pm 26.0\) ppm となった.
観測データを,周波数が半日から 3 年の間で Levenberg-Marquardt フィッティングした.その結果,多数の異なるサイン波周期がデータを同様によく近似した.これは観測データに大きなエイリアシングが存在することが影響している.観測データのサンプリングレートでは,異なる多数のサイン波を区別することが出来ない.
フィッティングの結果に基づくと,2 日間で 300 ppm の二次食深さの変動を起こすモデルが “最良” のモデルであることが分かるが,そのような速い変化は非物理的であるように思われる.周期が 20 日より長いものを選んだ場合,ベストフィットは \(A=76.46\pm 18.99\) ppm,\(f=0.179057\) days-1,\(\delta=1.28\pm 0.30\),\(c=103.54\pm 14.16\) ppm となった.
BIC スコアより,フラットモデルは最もフリーパラメータ数が少ないにも関わらず,明確に排除される.その他の 5 個のモデルの BIC の値は,6 以内の範囲に収まっている.そのため確実に区別はできない.
年々変化モデルは,二次食深さが何らかの変動を起こすとするモデルの中では最もフリーパラメータ数が少ないため,惑星の二次食深さの変動を解釈するための現在のモデルの中では最も良いと結論付けられる.
サイン波モデルは BIC スコアは最も良い値になる.しかし,エイリアシングが非常に多いデータへのフィッティングの結果であることに留意する必要がある.サイン波モデルが現実的かどうかの判断には.より多くの観測が必要である.
arXiv:1804.03735
Tamburo et al. (2018)
Confirming Variability in the Secondary Eclipse Depth of the Super-Earth 55 Cancri e
(スーパーアースかに座55番星e の二次食深さの変動の確認)
概要
スピッツァー宇宙望遠鏡を用いて 2011 - 2013 年の間に観測された,超短周期スーパーアース 55 Cnc e (かに座55番星e) の 5 回のトランジットと 8 回の二次食の再解析を行った.この解析は,スピッツァー宇宙望遠鏡のデータから正確なトランジットと二次食の深さを導出することを目標としており,そのためにピクセルレベルの非相関化を使用した.また,広範囲な誤差解析を行った.ここでは特に,Demory et al. (2016) で報告されている,二次食データ中の変動の可能性に着目した.
トランジットのデータから,この惑星の軌道要素をアップデートした.更新された惑星半径の推定値は 1.89 ± 0.05 地球半径である.
トランジットデータの解析の結果,トランジットの深さは一定であるとした場合と整合的であり,トランジットの深さは変動していないと結論付けた.
一方で 8 回の二次食観測データの解析では,二次食の深さに大きな変動を発見し,相関解析を介して Demory et al. (2016) での報告と一致することを確認した.
二次食の測定結果を惑星の輝度温度に変換し,惑星の二次食深さの時間経過に伴う進化を説明するための,いくつかの発見的モデルを生成して議論を行った.二次食の深さは,年ごとに深さが変動するとするモデルによって最もよくモデル化出来るが,より短いタイムスケールで変動している可能性も否定できない.
観測から導出された輝度温度の範囲は,非効率的な熱の再分配を伴う暗い表面を持つ惑星が,反射性の粒子によって昼側半球の大部分を断続的に覆われている状態で再現することが出来る.おそらくは,火山活動もしくは雲の変動性に起因する可能性がある.
かに座55番星e の二次食深さの時間変動は,現在計画中の宇宙空間からの観測ミッション (ジェームズ・ウェッブ宇宙望遠鏡) や,現在提案されているミッション (ARIEL など) で観測可能である.
研究背景
Demory et al. (2016) による,スピッツァー宇宙望遠鏡を用いた 4.5 µm 波長でのかに座55番星e の二次食観測では,二次食の深さが 2012 年から 2013 年にかけて増加していることが発見された.この二次食深さの増加は,惑星の輝度温度が 2012 - 2013 年の間に大きくなっていることを意味しており,Demory et al. (2016) では輝度温度が 1600 K から 2600 K に上昇していると報告している.
輝度温度の変化の要因として,火山活動によるものという仮説が提案されている.火山プルームは,原理的には 4.5 µm での光球を,低温の大気高層に押し上げることが可能である.そのため,プルーム活動が活発な時は低温な上層を観測していることになり,熱放射が小さくなる.
トランジット深さの解析
トランジット深さについて,Demory et al. (2016) は 2011 年と 2013 年の間の平均値の比較を行い,25% の変動が存在すると報告している.ただし 1σ の水準であり,変動の検出は暫定的であるとも報告していた.今回の再解析の結果,トランジット深さについては一定とするのが整合的な結果となった.ただし 1 年程度の周期での変動が存在する可能性の否定は出来ない.今後の,高頻度もしくは長期間のトランジット観測が必要である.
二次食深さの解析
Demory et al. (2016) では,二次食の深さは 2012 年に 47 ± 21 ppm,2013 年には 176 ± 28 ppm へ増加したと報告されている.今回の再解析の結果,二次食深さの変動はデータ中に確かに存在し,解析手法によって引き起こされたわけではないと結論付けた.二次食変動のモデリング
二次食の変動の原因について,5 つのモデルを考慮した.平坦モデル
一つ目は,平坦な食モデルである.これは二次食深さは時間の経過に伴って変化していないとするもので,”通常の” 惑星に対して予想されるモデルである.つまり惑星からの熱フラックスは時間に対してほぼ一定と考える.この場合,モデルのフリーパラメータは重み付け平均した二次食深さのみとなる.この平坦モデルでフィッティングすると,二次食深さは 84 ± 14 ppm となる.
年々変化モデル
二つ目は Demory et al. (2016) で提案されたものと同じモデルで,2012 年と 2013 年の間で年ごとの変化をするモデルである.ここでは,2012 年と 2013 年の間に二次食深さとして別々の定数をフィットした.この年々変化モデルは 3 つのフリーパラメータを持つ.2012 年と 2013 年それぞれの二次食深さと,二次食深さが遷移する時刻である.このモデルでのフィッティングでは,2012 年の二次食深さは 24 ± 20 ppm,2013 年の二次食深さは 138 ± 18 ppm となる.
スパイクモデル
三つ目は “スパイク” モデルである.このモデルは,他より深い食を示した 2013 年の最初 2 つの二次食を除いては,トランジット深さが一定とするものである.このモデルは 4 つのフリーパラメータを持ち,ベースラインでの二次食深さ,”スパイク” になっている時の二次食深さ,スパイクの開始時刻と終了時刻である.このモデルでは,ベースライン時の二次食深さが 58 ± 16 ppm,2013 年の最初 2 つの二次食の深さが 173 ± 26 ppm となった.
スロープモデル
四つ目は “スロープ” モデルである.これは三つ目のスパイクモデルと似ているが,2013 年の観測では食深さが時間の経過に伴い線形で減少しているとするモデルである (2012 年は二次食深さは時間によらず平坦とする).このモデルもフリーパラメータは 4 つであり,2012 年の平均の二次食深さ,二次食深さが遷移する時刻,2013 年の二次食の極大と二次食深さ変化の傾きの値である.2012 年の二次食深さについては,年々モデルと同じ値を使用した.2013 年のデータについて,二次食深さを一次関数 \(y=mx+b\) でフィッティングした.その結果 \(m=-2.36\pm1.59\) ppm/日,\(b=164.7\pm 26.0\) ppm となった.
サイン波モデル
最後の五つ目は,単純なサイン波とするモデルである.つまり,二次食深さを \(A\sin\!\left(2\pi f t+\delta\right)+c\) とする.ここで \(A\) は振幅,\(f\) は周波数,\(\delta\) は位相シフトで \(c\) は 0 からの定数のずれを表す.つまり,このモデルも 4 つのフリーパラメータを持つ.観測データを,周波数が半日から 3 年の間で Levenberg-Marquardt フィッティングした.その結果,多数の異なるサイン波周期がデータを同様によく近似した.これは観測データに大きなエイリアシングが存在することが影響している.観測データのサンプリングレートでは,異なる多数のサイン波を区別することが出来ない.
フィッティングの結果に基づくと,2 日間で 300 ppm の二次食深さの変動を起こすモデルが “最良” のモデルであることが分かるが,そのような速い変化は非物理的であるように思われる.周期が 20 日より長いものを選んだ場合,ベストフィットは \(A=76.46\pm 18.99\) ppm,\(f=0.179057\) days-1,\(\delta=1.28\pm 0.30\),\(c=103.54\pm 14.16\) ppm となった.
モデルの BIC 評価
上記 5 個のモデルのベイズ情報量規準 Bayesian Information Criterion (BIC) を評価した.フラットモデル,年々変化モデル,スパイクモデル,スロープモデル,サイン波モデルのそれぞれの BIC は, 40.58, 13.02, 16.48, 12.89, 10.58 となった.この数値は小さいほうが好ましい.BIC スコアより,フラットモデルは最もフリーパラメータ数が少ないにも関わらず,明確に排除される.その他の 5 個のモデルの BIC の値は,6 以内の範囲に収まっている.そのため確実に区別はできない.
年々変化モデルは,二次食深さが何らかの変動を起こすとするモデルの中では最もフリーパラメータ数が少ないため,惑星の二次食深さの変動を解釈するための現在のモデルの中では最も良いと結論付けられる.
サイン波モデルは BIC スコアは最も良い値になる.しかし,エイリアシングが非常に多いデータへのフィッティングの結果であることに留意する必要がある.サイン波モデルが現実的かどうかの判断には.より多くの観測が必要である.
論文関連の(ほぼ)個人用メモ。
arXiv:1804.04008
Takarada et al. (2018)
Planets around the evolved stars 24 Booties and γ Libra: A 30d-period planet and a double giant-planet system in possible 7:3 MMR
(進化した恒星うしかい座24番星とてんびん座ガンマ星の周りの惑星:30 日周期の惑星と 7:3 平均運動共鳴にある可能性がある 2 つの巨大惑星系)
一つ目は 24 Boo (うしかい座24番星) 周りの惑星で,軌道周期は 30.35 日である.この惑星は視線速度法で進化した恒星周りに発見されたものの中では,最も短い軌道周期を持つものの一つである.
この恒星からは 150 日周期の視線速度変動も検出された.これは恒星活動によるものと考えられる
またこの恒星は,惑星を持つ恒星としては最も金属量が低いものの一つである.
二つ目の γ Lib (てんびん座ガンマ星) は 2 つの惑星を持つことが分かった.この恒星は,2 つ以上の惑星を持つ巨星の中では 2 番目に金属量が低い恒星である.
この系の力学的な安定性解析からは,軌道傾斜角の最小値は 70° と推定され,また 2 つの惑星は 7:3 の平均運動共鳴に入っていることが示唆される.しかし得られた視線速度データに対する現在のベストフィットの軌道では,軌道周期は完全には整数比にはなっていない.
スペクトル型:G3IV
等級:V = 5.58
距離:100.0 pc
光度:59.45 太陽光度
有効温度:4893 K
金属量:[Fe/H] = -0.77
質量:0.99 太陽質量
半径:10.64 太陽半径
軌道離心率:0.042
最小質量:0.91 木星質量
軌道長半径:0.190 au
うしかい座24番星b によるシグナルの他に,152.1 日周期のシグナルも検出された.これは,惑星だとすると 0.504 木星質量,軌道離心率は 0.28 に対応する.
統計解析の結果,惑星が 1 個だけのモデルも 2 個のモデルも両方有り得る.しかし,恒星の大きな変動を仮定すると有意性が小さくなる.また恒星の最大自転周期はおよそ 160 日であり,検出されたシグナルの周期と近い.そのため,2 番目の惑星は現段階では確定できず,恒星の脈動に伴う視線速度の変動であると解釈できる.
スペクトル型:K0III
等級:V = 3.91
距離:50.02 pc
光度:70.79 太陽光度
有効温度:4822 K
金属量:[Fe/H] = -0.30
質量:1.47 太陽質量
半径:11.1 太陽半径
軌道離心率:0.21
最小質量:1.02 木星質量
軌道長半径:1.24 au
軌道離心率:0.057
最小質量:4.58 木星質量
軌道長半径:2.17 au
一方でてんびん座ガンマ星b, c は,巨星周りの惑星としては典型的な軌道周期である.
進化した恒星周りの短周期の惑星としては,TYC-3667-1280-1b (軌道周期 26.4 日,軌道長半径 0.21 au,Niedzielski et al. 2016),ケプラー91b (軌道周期 6.2 日,軌道長半径 0.072 au,Lillo-Box et al. 2014,Barclay et al. 2015,Sato et al. 2015) が最も短周期の 2 つである.これらの恒星の半径は 5 - 6 太陽半径である.
arXiv:1804.04008
Takarada et al. (2018)
Planets around the evolved stars 24 Booties and γ Libra: A 30d-period planet and a double giant-planet system in possible 7:3 MMR
(進化した恒星うしかい座24番星とてんびん座ガンマ星の周りの惑星:30 日周期の惑星と 7:3 平均運動共鳴にある可能性がある 2 つの巨大惑星系)
概要
2 つの進化した巨星周りの惑星を,視線速度測定から検出した.観測は Okayama Astrophysical observatory (岡山天体物理観測所) で行った.一つ目は 24 Boo (うしかい座24番星) 周りの惑星で,軌道周期は 30.35 日である.この惑星は視線速度法で進化した恒星周りに発見されたものの中では,最も短い軌道周期を持つものの一つである.
この恒星からは 150 日周期の視線速度変動も検出された.これは恒星活動によるものと考えられる
またこの恒星は,惑星を持つ恒星としては最も金属量が低いものの一つである.
二つ目の γ Lib (てんびん座ガンマ星) は 2 つの惑星を持つことが分かった.この恒星は,2 つ以上の惑星を持つ巨星の中では 2 番目に金属量が低い恒星である.
この系の力学的な安定性解析からは,軌道傾斜角の最小値は 70° と推定され,また 2 つの惑星は 7:3 の平均運動共鳴に入っていることが示唆される.しかし得られた視線速度データに対する現在のベストフィットの軌道では,軌道周期は完全には整数比にはなっていない.
パラメータ
うしかい座24番星系
うしかい座24番星
別名:HR 5420,HD 127243,HIP 70791スペクトル型:G3IV
等級:V = 5.58
距離:100.0 pc
光度:59.45 太陽光度
有効温度:4893 K
金属量:[Fe/H] = -0.77
質量:0.99 太陽質量
半径:10.64 太陽半径
うしかい座24番星b
軌道周期:30.3506 日軌道離心率:0.042
最小質量:0.91 木星質量
軌道長半径:0.190 au
うしかい座24番星系について
うしかい座24番星は固有運動が大きく,銀河系の厚い円盤に属する恒星だと考えられている (Takeda et al. 2008).この天体の 2003 年 4 月 - 2016 年 6 月までの期間の計 149 データの解析を行った.うしかい座24番星b によるシグナルの他に,152.1 日周期のシグナルも検出された.これは,惑星だとすると 0.504 木星質量,軌道離心率は 0.28 に対応する.
統計解析の結果,惑星が 1 個だけのモデルも 2 個のモデルも両方有り得る.しかし,恒星の大きな変動を仮定すると有意性が小さくなる.また恒星の最大自転周期はおよそ 160 日であり,検出されたシグナルの周期と近い.そのため,2 番目の惑星は現段階では確定できず,恒星の脈動に伴う視線速度の変動であると解釈できる.
てんびん座ガンマ星系
てんびん座ガンマ星
別名:HR 5787,HD 138905,HIP 76333スペクトル型:K0III
等級:V = 3.91
距離:50.02 pc
光度:70.79 太陽光度
有効温度:4822 K
金属量:[Fe/H] = -0.30
質量:1.47 太陽質量
半径:11.1 太陽半径
てんびん座ガンマ星b
軌道周期:415.2 日軌道離心率:0.21
最小質量:1.02 木星質量
軌道長半径:1.24 au
てんびん座ガンマ星c
軌道周期:964.6 日軌道離心率:0.057
最小質量:4.58 木星質量
軌道長半径:2.17 au
てんびん座ガンマ星系について
2002 年 2 月 - 2016 年 6 月までの計 146 データの解析を行った.議論
うしかい座24番星b は,10 太陽半径よりも大きく進化した恒星の周りの惑星としては,最も短い軌道周期を持つ惑星である.一方でてんびん座ガンマ星b, c は,巨星周りの惑星としては典型的な軌道周期である.
進化した恒星周りの短周期の惑星としては,TYC-3667-1280-1b (軌道周期 26.4 日,軌道長半径 0.21 au,Niedzielski et al. 2016),ケプラー91b (軌道周期 6.2 日,軌道長半径 0.072 au,Lillo-Box et al. 2014,Barclay et al. 2015,Sato et al. 2015) が最も短周期の 2 つである.これらの恒星の半径は 5 - 6 太陽半径である.
論文関連の(ほぼ)個人用メモ。
arXiv:1804.03471
Belton et al. (2018)
The Excited Spin State of 1I/2017 U1 `Oumuamua
(オウムアムアの励起された自転状態)
オウムアムアの光度曲線について,29.3 日にわたる合計 818 回の観測結果を解析した.解析には,CLEAN と ANOVA アルゴリズムを使用した.
その結果,2 つの基本的な周期性を発見した.2.77 ± 0.11 回転/日と 6.42 ± 0.18 回転/日である.これは周期にすると,それぞれ 8.67 ± 0.34 時間と 3.74 ± 0.11 時間に対応している.
位相データは,光度曲線は単純なサイクルでの繰り返しではない事を示しているが,およそ 2.77 回転/日での二重極小と 6.42 回転/日での単一の極小を示す.これは励起された自転状態の特徴である.
解析の結果,オウムアムアは長軸モード (long axis mode, LAM) か短軸モード (short axis mode, SAM) のどちらかで自転している可能性があることが示唆された.どちらの場合も,天体の長軸は全角運動量ベクトルの周りを平均周期 8.67 ± 0.34 時間で歳差運動している.
ここで発見した 3 つの LAM の場合,長軸周りの自転周期として可能性があるのは,6.58,13.15,54.48 時間で,最も可能性が高いのは 54.48 時間である.また,オウムアムアはこれらの値それぞれの半分の周期で転頭 (nutating) 運動をしている可能性もある.
また,SAM 状態として 2 つの取りうる可能性を発見した.こちらの状態の場合,オウムアムアは長軸の周りを 13.15 時間か 54.48 時間で振動している可能性があり,最も可能性が高いのは後者である.
この場合,同じ周期で転頭が起きる可能性がある.
光度曲線にモデルを直接フィットさせることで,この天体の自転状態,転頭の振幅,全角運動量ベクトルの方向,平均全自転周期の決定が可能だろうと考えられる.もし最も低い自転エネルギーに近い場合はオウムアムアは “cigar-shaped” (タバコ状の形状) であり,もし総角運動量について最も高いエネルギー状態に近い場合は,非常に扁平な回転楕円体であることを見出した.
arXiv:1804.03471
Belton et al. (2018)
The Excited Spin State of 1I/2017 U1 `Oumuamua
(オウムアムアの励起された自転状態)
概要
ここでは,恒星間天体 1I/2017 U1 `Oumuamua (オウムアムア) の励起された自転は,高エネルギーの LAM 状態である事を示す.そのため,この天体の形状は,過去の研究で報告されているような非常に細長い形状とは程遠い可能性が示唆される.オウムアムアの光度曲線について,29.3 日にわたる合計 818 回の観測結果を解析した.解析には,CLEAN と ANOVA アルゴリズムを使用した.
その結果,2 つの基本的な周期性を発見した.2.77 ± 0.11 回転/日と 6.42 ± 0.18 回転/日である.これは周期にすると,それぞれ 8.67 ± 0.34 時間と 3.74 ± 0.11 時間に対応している.
位相データは,光度曲線は単純なサイクルでの繰り返しではない事を示しているが,およそ 2.77 回転/日での二重極小と 6.42 回転/日での単一の極小を示す.これは励起された自転状態の特徴である.
解析の結果,オウムアムアは長軸モード (long axis mode, LAM) か短軸モード (short axis mode, SAM) のどちらかで自転している可能性があることが示唆された.どちらの場合も,天体の長軸は全角運動量ベクトルの周りを平均周期 8.67 ± 0.34 時間で歳差運動している.
ここで発見した 3 つの LAM の場合,長軸周りの自転周期として可能性があるのは,6.58,13.15,54.48 時間で,最も可能性が高いのは 54.48 時間である.また,オウムアムアはこれらの値それぞれの半分の周期で転頭 (nutating) 運動をしている可能性もある.
また,SAM 状態として 2 つの取りうる可能性を発見した.こちらの状態の場合,オウムアムアは長軸の周りを 13.15 時間か 54.48 時間で振動している可能性があり,最も可能性が高いのは後者である.
この場合,同じ周期で転頭が起きる可能性がある.
光度曲線にモデルを直接フィットさせることで,この天体の自転状態,転頭の振幅,全角運動量ベクトルの方向,平均全自転周期の決定が可能だろうと考えられる.もし最も低い自転エネルギーに近い場合はオウムアムアは “cigar-shaped” (タバコ状の形状) であり,もし総角運動量について最も高いエネルギー状態に近い場合は,非常に扁平な回転楕円体であることを見出した.
天文・宇宙物理関連メモ vol.236 Demory et al. (2016) スーパーアースかに座55番星eの輝度マップ