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論文関連の(ほぼ)個人用メモ。



arXiv:1803.10187
Park et al. (2018)
Search for OH 18-cm radio emission from 1I/2017 U1 with the Green Bank telescope
(グリーンバンク望遠鏡によるオウムアムアからの OH 18 cm 電波放射の探査)

概要

初めて発見された恒星間天体であるオウムアムアの,OH の 18 cm 線での電波観測について報告する.観測は Green Bank Telescope (グリーンバンク望遠鏡) を用い,周波数 1665.402 MHz, 1667.359 MHz,1720.53 MHz 周辺での観測を,スペクトル分解能 357 Hz で行った.
この観測を行った段階では,オウムアムアは地球から 1.07 au の距離にあり,地球を基準とした相対速度は 63.4 km s-1 である.また太陽からの距離は 1.8 au,太陽との相対速度は 39 km s-1 である.

観測の結果,スペクトル中には OH の明確な輝線は見られなかった.観測を元に,OH の生成の上限値として,Q[OH] < 0.17 × 1028 s-1 という値を得た.また,Meech et al. (2017) で議論されている通り,この天体が小惑星起源であることを確認した.

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論文関連の(ほぼ)個人用メモ。



arXiv:1803.08684
Sairam et al. (2018)
Atmospheric mass loss of extrasolar planets orbiting magnetically active host stars
(磁気的に活発な主星を公転する系外惑星の大気質量放出)

概要

系外惑星を持っている恒星での磁気的活動は,恒星のすぐ近くに位置している系外惑星を照らす高エネルギーの放射を生み出す可能性がある.この放射は惑星の高層大気で吸収され,加熱を引き起こして大気を蒸発させ,輻射誘起の惑星大気の質量損失を引き起こす可能性がある.

ここでは,XMM-Newton の新しい観測データに基づき,惑星を持つ恒星ケプラー63,ケプラー210,WASP-19,HAT-P-11 の 4 つの磁気的に活発な恒星の,高エネルギー放射について研究を行った

その結果,これらの恒星の X 線光度は,活動的磁気の太陽の水準よりも数桁大きいことを見出した.惑星が受ける合計の XUV 輻射は,これまでによく調べられているホットジュピターよりも強いことが期待される.

惑星大気へのエネルギーインプットとしての推定 XUV 光度を用いて,これらのホットジュピターの合計の質量放出率の上限値を推定した.

系外惑星の大気散逸

惑星からの質量散逸は,大部分はジーンズ散逸 (Jeans escape) によって発生すると考えられてきた.しかし HD 209458b の大気散逸の観測からは,ジーンズ散逸では実際の質量損失を大きく過小評価することが指摘されている (Vidal-Madjar et al. 2003).

Lammer et al. (2003) では,系外惑星は大気をジーンズ散逸とは異なる機構で散逸しているという仮説を提唱した.これはもともと Watson et al. (1981) によって提案されていた流体力学的な質量散逸モデルであり,これによりジーンズ散逸よりも数桁大きい質量放出率が実現される.
このモデルでは,惑星大気の上層で吸収された高エネルギー放射が,高層大気を 10000 K 程度にまで加熱し,古典的な太陽風のパーカーモデルと類似した大気流出が発生すると考えている.

観測対象

ケプラー63
この恒星は若い太陽型星であり,年齢は 2.1 億歳 (Sanchis-Ojeda et al. 2013,Estrela & Valio 2016).距離は 200 pc である.質量は 0.98 太陽質量,有効温度 5576 K (Sanchis-Ojeda et al. 2013).自転周期は 5.4 日である (Estrela & Valio 2016).

Ca II H&K 線の観測からは,恒星の彩層活動度が高いことが示唆されている.また,恒星黒点に伴うと思われる光度の変動が検出されている.ケプラーによる観測データに基づくと,恒星の磁気活動サイクルは 1.27 年周期であることが示唆される.

この恒星は 6.1 地球半径のホットジュピターケプラー63b を持つ.この惑星の軌道は,大きく傾いた極軌道で,軌道周期 9.434 日,軌道長半径は 0.08 AU である (Sanchis-Ojeda et al. 2013).

なお惑星の質量は現状では不明である.これは,中心星の活動度の影響で視線速度の観測精度がよくないためである.視線速度の半振幅の値からは,惑星質量に対して 120 地球質量という上限が与えられている.これを元にすると,惑星の平均密度の上限は 3.0 g cm-3 である.
ケプラー210
この恒星は若い活発な K 型矮星であり,自転周期は 12.33 日,年齢は 3.5 億歳と推定されている (Ioannidis et al. 2014).
ケプラーの光度曲線中の大きな変動によって,恒星活動の存在が確認されている.

この恒星は,少なくとも 2 つの海王星サイズ惑星を持つ.ケプラー210b は,3.75 地球半径,軌道周期 2.453 日,軌道長半径 0.014 AU であり,ケプラー210c は 4.78 地球半径,軌道周期 7.972 日,軌道長半径 0.037 AU である.

この天体の視線速度データは得られていないため,各惑星の質量は不明である.Lissauer et al. (2011) による,惑星質量と惑星半径の間のシンプルな関係式を用いると,半径から質量を推定することができる.
\[
M_{\rm p}=\left(\frac{R_{\rm p}}{R_{\oplus}}\right)^{2.06}M_{\oplus}
\]
これは,土星より小さいサイズの惑星に対してよく成り立つ関係式である.これを用いると,ケプラー210b, c の各質量の推定値は,15.92 地球質量と 26.27 地球質量となり,平均密度は 1.66 g cm-3 と 1.32 g cm-3 となる.
WASP-19
この恒星は活発な G8V 星であり (Knutson et al. 2010),0.96 太陽質量,0.94 太陽半径である.また,10.5 日周期の強い変動が検出されている.

Barnes (2007) の gyrochronology 関係によると,この系は比較的若く ~ 6 億歳と推定されている.
一方で,等時線 (isochrone) フィッティングと,惑星の軌道離心率がゼロであると仮定したモデルからは, 55 億 (+90 億, -45 億) 歳と推定されている (Hebb et al. 2010).これは恒星が年老いていることを示す値だが,推定の誤差は非常に大きい.

惑星 WASP-19b は今回のサンプルの中では最も大きく,15.21 地球半径,371 地球質量であり,木星より大きい.軌道周期は 0.7888 日と短周期で,軌道長半径 0.0162 AU と非常に近距離を公転する惑星である.

惑星の平均密度は 0.58 g cm-3 である.しかし面白いことに,この惑星の平均密度は木星の半分程度であり,この惑星はその質量に対してやや膨張した半径を持っていることが示唆される.この惑星の大きな半径は,中心星からの高エネルギー輻射か,あるいは惑星内部での潮汐エネルギー散逸の結果だと解釈できる.
HAT-P-11
この恒星は,活発な金属量豊富な K4 矮星である.金属量は [Fe/H] = 0.31 で,距離は 38 pc である.測光観測と分光観測から,Bakos et al. (2010) は 0.81 太陽質量,0.75 太陽半径,有効温度 4780 K と推定した.また年齢は 65 億歳と推定されている.

ケプラーの測光データから,黒点に由来すると思われる変動が検出されている (Samchis-Ojeda & Winn 2011,Deming et al. 2011).また強い彩層放射が検出されており.これもこの恒星が活発であることを示唆している.

この恒星はスーパーネプチューン惑星 HAT-P-11b を持っている.惑星は 4.96 地球半径,25.74 地球質量であり,平均密度は 1.33 g cm-3 である.軌道長半径は 0.053 AU,軌道周期は 4.887 日である.

Fortney et al. (2007) の惑星内部モデルと比較すると,この惑星の半径は,同じ質量で 50% 氷・岩石コア + 50% 水素・ヘリウムエンベロープを持つ場合よりも小さく,純粋な氷・岩石コアのみで水素・ヘリウムのガスエンベロープを持たない場合よりは大きいことが指摘されている (Bakos et al. 2010).
そのため,惑星が受ける輻射や重元素の分布,年齢などのいくつかのパラメータに基づいた議論から,この惑星は 10% 水素ヘリウムガスエンベロープを持つだろうと推定されている.

質量放出率の推定値

Watson et al. (1981),Lammer et al. (2003),Sanz-Forcada et al. (2010) および Erkaev et al. (2007) に基づく流体力学的な質量散逸モデルでは,質量放出率は
\[
\dot{M}=\frac{3\pi\beta^{2}\epsilon F_{\rm XUV}}{4GK\rho_{\rm p}}
\]
で表される.
ここで \(\rho_{\rm p}\) は惑星の密度,\(F_{\rm XUV}\) は入射する X 線と極端紫外線のフラックス,\(G\) は重力定数である.また \(\beta=R_{\rm XUV}/R_{\rm p}\) であり,これは惑星半径と XUV 吸収半径の補正のための係数である.

ここでは加熱効率は \(\epsilon=0.4\) を使用している.これは強く輻射を受けているホットジュピターと岩石惑星に対して示唆されている値である (Valencia et al. 2010).なお,他の研究ではこれより小さい値を示唆しているものもある (Owen & Jackson 2012,Shematovich et al. 2014).

また \(K\) はロッシュローブオーバーフローを介した質量放出の効果を表す係数で,惑星質量.恒星質量,軌道長半径,惑星半径で決まる値である.

この関係式と観測から推定した各恒星の XUV 光度を用いて質量放出率の上限値の推定を行った.その結果,ケプラー63b は 7.41 × 1011 g s-1,ケプラー210b, c はそれぞれ 2.318 × 1012 g s-1,4.27 × 1011 g s-1,WASP-19b は 6.317 × 1012 g s-1,HAT-P-11b は 6.5 × 1010 g s-1 となった.

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論文関連の(ほぼ)個人用メモ。



arXiv:1803.08730
Picogna et al. (2018)
Particle accretion onto planets in discs with hydrodynamic turbulence
(流体力学乱流を伴う円盤中での惑星へのペブル降着)

概要

原始惑星の成長は,原始惑星系円盤内にまだ残っている多数の固体のペブルサイズの物質 (センチメートルサイズの物質) を降着することによって加速することが出来る.この過程が,現実的な乱流円盤中でどのくらい効率的にはたらくかはまだ分かっていない.

ここでは,純粋な流体力学的鉛直シア不安定 (vertical shear instability, VSI) によって駆動される乱流円盤中でのペブルの降着について調べた.ここでは,VSI 円盤中に埋まっている状態の 5 - 100 地球質量の原始惑星コアが,中心星から 5.2 au の位置にある場合の,局所等温の大局的三次元シミュレーションを実行した.

さらに,乱流中のガスと粒子の間の摩擦力の効果のもとでの円盤内のペブルの群れの進化を追った.それと同時に,粒子が確率的なキックを経験する,層状粘性円盤中の比較シミュレーションを行った.
どちらの場合も,コア質量と粒子のストークス数の関数として降着率を測定し,最近の MRI 乱流シミュレーションと比較した.


全体的な結果として,VSI 乱流円盤中の粒子と層流円盤中で確率的なキックを受ける場合の粒子は,動力学的な振る舞いは非常に似ている.

惑星が低質量 (5 - 10 地球質量) の場合,ストークス数が 1 程度のよくガスと結合した粒子 (この位置の場合,粒子サイズが 1 メートルに相当) は,降着効率 (内向きに流れる粒子の率) は 1.6 - 3% である.より小さい粒子と大きい粒子に対しては,この効率は高くなる.しかし,ストークス数 1 の粒子の速い内側への移動によって,惑星の急速な成長にとっては最も効率的になる.質量の倍加時間は 20000 年程度である.

質量が 10 - 30 地球質量の間では,惑星コアはペブル孤立質量 (pebble isolation mass) に到達し,粒子は惑星のすぐ外側の圧力極大に捕獲され,さらなる粒子降着が止まる.

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arXiv:1803.08820
Haywood et al. (2018)
An accurate mass determination for Kepler-1655b, a moderately-irradiated world with a significant volatile envelope
(穏やかに輻射を受ける一定量の揮発性物質エンベロープを持つケプラー1655b の正確な質量決定)

概要

サイズが小さく,穏やかに輻射を受けている海王星サイズの惑星の発見について報告する.
この惑星ケプラー1655b は一定量のガスエンベロープを持ち,軌道周期は 11.8728787 ± 0.0000085 日で,静穏な太陽型の G0V 星ケプラー1655 を公転している.

ケプラーの光度曲線の解析から,ケプラー1655b の半径は 2.213 地球半径と推定される.

TNG/HARPS-N で 95 セットの視線速度の観測を行った.この結果から,中心星の特徴付けと惑星の質量の測定を行った,その結果,質量は 5.0 (+3.1, -2.8) 地球質量と推定される.質量推定から,98% の信頼度でこの惑星が地球と同じ組成である可能性を否定できる.

この惑星は,evaporation valley と呼ばれる岩石惑星とガス惑星の遷移領域の,惑星の存在個数が比較的少ない領域の上端に位置している.そのため,今後の観測でさらにパラメータを特徴付けるための活発な観察を行うべき惑星である.

パラメータ

ケプラー1655
距離:230.41 pc
有効温度:6148 K
金属量:[Fe/H] = -0.24
質量:1.03 太陽質量
半径:1.03 太陽半径
年齢:25.6 億歳
自転周期:13.6 日
ケプラー1655b
軌道周期:11.8728787 日
半径:2.213 地球半径
質量:5.0 (+3.1, -2.8) 地球質量
平均密度:2.5 (+1.6, -1.4) g cm-3
軌道長半径:0.103 AU
日射量:地球の 155 倍

この天体は,これまでは未確定の惑星候補 KOI-280.01 として報告されていた (Borucki et al. 2011)

議論

ケプラー1655b の質量は,95% の信頼度で 10.1 地球質量未満と推定される.この惑星は,小さい岩石惑星と大きいガス豊富な惑星の間の,ecapolation valley にまたがる領域に存在している (FUlton et al. 2017など).また,観測されている evaporation desert 領域に近い軌道を持つ (Sanchis-Ojeda et al. 2014,Lundkvist et al. 2016).

観測データ中には,中心星ケプラー1655 の磁気的活動が検出された.測光観測と分光観測からは,太陽の静穏期に似ていることが示唆されている.
また,平均寿命が 23 日の活動領域の出現を,ケプラー測光データ中から検出した.

この系では,中心星の活動は比較的静穏である.しかし恒星の磁気的活動によって誘起される視線速度の二乗平均平方根は,惑星によって引き起こされる軌道運動の振幅と同程度である.

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論文関連の(ほぼ)個人用メモ。



arXiv:1803.08163
Feng et al. (2018)
Detection of the closest Jovian exoplanet in the Epsilon Indi triple system
(インディアン座イプシロン三重星系中の最も近い木星型系外惑星の検出)

概要

インディアン座イプシロン星A (Epsilon Indi A) の視線速度データ中に,長周期の惑星質量天体の存在を示唆する傾向があることを確認した.視線速度の観測は HAPRS を用いて行った.

解析から,惑星インディアン座イプシロン星Ab (Epsilon Indi Ab) は低温な木星型惑星であると推定される.最小質量は 2.71 (+2.19, -0.44) 木星質量,軌道長半径は 12.82 au (+4.18, -0.71) au で,ほぼ円軌道である.また軌道周期は 52.62 (+27.70, -4.12) 年である.

さらに視線速度データ中にはこの惑星によるものとは別の顕著なシグナルが複数見られた.様々なスペクトル診断の調査を行い,これらのシグナルは恒星活動によって誘起される視線速度変動であると解釈される.特に,周期が 2500 日と 278 日のシグナルは,恒星の磁気活動周期によるものであると考えられる.

17.8 日周期のシグナルはさらなる惑星に起因する可能性があるが,この 17.8 日周期のシグナルと 11 日周期のシグナルは,およそ 35 日周期の恒星の自転に伴うものであるとすると最も簡単に解釈できる.


解析から,従来の恒星活動指標には多くの感度が存在する事を発見した.特に,スペクトル中のナトリウムのラインとカルシウムの HK 線の指標は,全ての活動誘起シグナルに対して感度がある.スペクトル線の二等分線測定は恒星の自転シグナルに対して感度があるが,Hα 線は二次的磁気周期に感度がある.

一般に,それぞれの感度が異なるため,これらの活動指標はノイズモデルに含まれる場合に余分なノイズを引き起こすが,差分視線速度は波長依存性のノイズを効率的に除去する確実な代替手段を与える.
これらの解析に基づき,ここでは高精度視線速度データ中から低振幅のシグナルを検出するための,活動診断手法を提案する.

この系は,少なくともインディアン座イプシロン星A,インディアン座イプシロン星Ab と,長周期の褐色矮星連星 インディアン座イプシロン星Ba と Bb からなる系である.そのためこの系は,巨大ガス惑星と褐色矮星の形成における我々の理解の基準となる可能性がある.

インディアン座イプシロン星系について

インディアン座イプシロン星A (Epsilon Indi A, 別名:HIP 108870, HR 8387, HD 209100, GJ845) は,太陽系近傍の若い K2V 星である.年齢は 14 億歳 (Bonfanti et al. 2015).距離は 3.62 pc (van Leeuwen 2007) である.また,質量は 0.762 太陽質量 (Demory et al. 2009),光度は 0.22 太陽光度である.

インディアン座イプシロン星A から 1459 au 離れた位置に,連星褐色矮星 インディアン座イプシロン星Ba と Bb のペアをがあることが分かっている (Scholz et al. 2003).インディアン座イプシロン星A の視線速度データに見られる変動の傾向は,この連星褐色矮星によって引き起こされるものよりもずっと大きいため,30 年より長い周期を持つ別の伴星が存在する可能性が指摘されていた (Endl et al. 2002,Zechmeister et al. 2013).

主な結果

木星型惑星インディアン座イプシロン星Ab の検出

インディアン座イプシロン星A の視線速度データを解析した結果,低温の木星型惑星を検出した.

軌道周期は 19205.51 (+10111.37, -1502.23) 日,もしくは 52.62 (+27.70, -4.12) 年であり,最小質量は 2.71 (+2.19, -0.44) 木星質量,軌道長半径は 12.82 au (+4.18, -0.71) au である.軌道離心率は 0.01 (+0.12, -0.01) とほぼ円軌道である.

インディアン座イプシロン星Ab は,視線速度法とトランジット法でこれまでに発見された系外惑星の中では,最も周期が長い惑星である
※注釈
NASA Exoplanet Archive では,現時点では視線速度法で検出された HIP 70849b の軌道周期 17337.5±15512.5 日が最長だが精度が悪い.2 番手でもう少し精度良く周期が推定されているおおぐま座47番星b (47 UMa b) は軌道周期が 14002 (+4018, -5095) 日である.トランジット法での検出の場合は,最大でも軌道周期は 1000 日程度である.直接撮像で発見された惑星には,さらに長周期のものが複数存在する (直接撮像は遠方の巨大惑星に感度があるため).

恒星活動に起因するシグナルの検出

惑星に起因するシグナル以外には,11, 17.8, 278 日周期の変動が検出された.

278 日周期の視線速度変動は,恒星活動の指標となるシグナルにおいて強く現れるため,恒星活動に起因する可能性が高い.

また 2500 日程度の周期を持つシグナルも明確に検出されたが,これも恒星活動由来であると思われる.これは恒星の磁気周期による変動で,278 日周期の変動はこの磁気変動の二次的サイクルによるものだと思われる.

17.8 日周期と,その倍の 35.6 日周期の強いシグナルも検出された.恒星活動に由来する指標と相関を取った後も,17.8 日周期シグナルは残る.そのため,恒星の自転の非線形効果に伴うものか,あるいは恒星の自転周期の半分に近い軌道周期を持つ惑星が存在することによるシグナルか,どちらかである可能性がある.

11 日周期のシグナルは,2500 日と 17.8 日周期のシグナルを差し引いた後に明確に現れるという独特の特徴を持っている.そのため,このシグナルは恒星活動に起因するものか,活動に誘起されたシグナルのエイリアスである可能性がある.

最終的な結論としては,2500 日周期シグナルは恒星の主要な磁気周期に由来するもの,278 日周期シグナルは二次的な磁気周期に由来するものであると考えられる.

恒星の自転周期はおよそ 35 日である.その半分の値である 17.8 日周期のシグナルは,この自転周期よりも顕著に視線速度中に現れる.これは,他の恒星でも見られる現象で (HD 147379,Feng et al. 2018など),恒星表面にある黒点等によって引き起こされることがある.
また,1/(1/35 + 1/17.8) = 11.8 となるため,11 日周期シグナルも恒星の自転によって引き起こされうる.

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