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論文関連の(ほぼ)個人用メモ。
arXiv:2001.02577
Feng et al. (2020)
Search for Nearby Earth Analogs. II. detection of five new planets, eight planet candidates, and confirmation of three planets around nine nearby M dwarfs
(近傍の地球類似天体の探査 II.近傍の 9 つの M 矮星まわりでの 5 つの新しい惑星,8 つの惑星候補の検出と,3 つの惑星の確認)
これに動機付けられ,UVES データを HARPS,Megellan/PFS,Keck.HIRES の視線速度データを合わせて解析を行った.その結果,合計 16 個の惑星候補天体が 9 個の M 矮星を公転していることが明らかになった.
これらのうち 5 個は視線速度シグナルに対応した新しい惑星で,この結果はノイズモデルの選択に依存せず,複数の期間にわたって複数のデータセットにおいて存在が識別された.8 つの惑星候補は,存在を確認するためにはさらなる観測が必要である.また,過去に報告されていた 3 つの惑星を確認した.
これらの新しい惑星のうち,GJ 180d と GJ 229Ac は中心星の保守的なハビタブルゾーンの中に位置するスーパーアースである.モンテカルロ法を用いたアプローチでこれらの惑星系の力学的な安定性を調査した,その結果,どちらの惑星軌道も他の惑星の重力的摂動に対して安定であることが確認された.
これらの天体は太陽に近いことから,中心星からハビタブルな可能性がある惑星までの角距離は,それぞれ 25, 59 mas である.そのため将来の JWST や E-ELT での直接観測の良い観測対象となりうる.
さらに GJ 433c は,海王星類似の惑星であり,これまでに探査があまりされていない低温のスーパーネプチューンに属する.この惑星と中心星との間隔は 0.5 mas であり,この惑星は低温な海王星型天体の直接撮像の初めての現実的な候補であろう.
これらの惑星の包括的なサーベイは惑星形成の研究に重要である.
arXiv:2001.02577
Feng et al. (2020)
Search for Nearby Earth Analogs. II. detection of five new planets, eight planet candidates, and confirmation of three planets around nine nearby M dwarfs
(近傍の地球類似天体の探査 II.近傍の 9 つの M 矮星まわりでの 5 つの新しい惑星,8 つの惑星候補の検出と,3 つの惑星の確認)
概要
Zechmeister et al. (2009) では,2000 年 3 月から 2007 年 3 月にかけて、VLT2 と UVES 分光器を用いて 38 個の近傍の M 型星がサーベイされた.この時のデータは Butler et al. (2019) で再解析され,ドップラー速度の測定精度が大きく改善された.これに動機付けられ,UVES データを HARPS,Megellan/PFS,Keck.HIRES の視線速度データを合わせて解析を行った.その結果,合計 16 個の惑星候補天体が 9 個の M 矮星を公転していることが明らかになった.
これらのうち 5 個は視線速度シグナルに対応した新しい惑星で,この結果はノイズモデルの選択に依存せず,複数の期間にわたって複数のデータセットにおいて存在が識別された.8 つの惑星候補は,存在を確認するためにはさらなる観測が必要である.また,過去に報告されていた 3 つの惑星を確認した.
これらの新しい惑星のうち,GJ 180d と GJ 229Ac は中心星の保守的なハビタブルゾーンの中に位置するスーパーアースである.モンテカルロ法を用いたアプローチでこれらの惑星系の力学的な安定性を調査した,その結果,どちらの惑星軌道も他の惑星の重力的摂動に対して安定であることが確認された.
これらの天体は太陽に近いことから,中心星からハビタブルな可能性がある惑星までの角距離は,それぞれ 25, 59 mas である.そのため将来の JWST や E-ELT での直接観測の良い観測対象となりうる.
さらに GJ 433c は,海王星類似の惑星であり,これまでに探査があまりされていない低温のスーパーネプチューンに属する.この惑星と中心星との間隔は 0.5 mas であり,この惑星は低温な海王星型天体の直接撮像の初めての現実的な候補であろう.
これらの惑星の包括的なサーベイは惑星形成の研究に重要である.
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論文関連の(ほぼ)個人用メモ。
arXiv:2001.01759
Xuan et al. (2020)
A Rotation Rate for the Planetary-Mass Companion DH Tau b
(惑星質量伴星おうし座DH星b の自転周期)
この天体の形成の歴史を明らかにするため,Keck/NIRSPEC での近赤外線の高分散分光観測 (R~25000) を行い,この天体の自転によるスペクトル線の広がりを初めて測定した.
おうし座DH星b の射影した自転速度 \(v \sin i\) は 9.6 ± 0.7 km/s で,この天体対して予測されている回転破壊速度の 9-15% の範囲内に対応している.この天体の自転が低速なことは,惑星への質量降着の最終段階における,天体と周惑星円盤の間の磁気的な結び付きによって角運動量が減少し,自転を律速するというシナリオの予測と一致している.
この自転速度を,他の惑星質量天体 (0.3-20 木星質量) で測定されている値と比較したが,この質量範囲内では自転速度と天体質量の間に相関があるという証拠は得られなかった.
最後に,この天体のスペクトル中に様々な分子の兆候が存在するかどうかを探査した.その結果スペクトルは一酸化炭素と水が支配的であり,メタンが存在する証拠は得られなかった.この結果は,おうし座DH星b が比較的高い有効温度を持つ (~2300 K) ことによる予想と一致する.
arXiv:2001.01759
Xuan et al. (2020)
A Rotation Rate for the Planetary-Mass Companion DH Tau b
(惑星質量伴星おうし座DH星b の自転周期)
概要
DH Tau b (おうし座DH星b) は,~200 万歳の中心星 DH Tau (おうし座DH星) から射影距離 320 AU を公転する若い惑星質量天体である.推定質量は 8-22 木星質量で,重水素燃焼を起こすことが出来る限界質量付近におり,コア集積やペブル集積,円盤不安定性,あるいは分子雲の分裂から形成された可能性がある.この天体の形成の歴史を明らかにするため,Keck/NIRSPEC での近赤外線の高分散分光観測 (R~25000) を行い,この天体の自転によるスペクトル線の広がりを初めて測定した.
おうし座DH星b の射影した自転速度 \(v \sin i\) は 9.6 ± 0.7 km/s で,この天体対して予測されている回転破壊速度の 9-15% の範囲内に対応している.この天体の自転が低速なことは,惑星への質量降着の最終段階における,天体と周惑星円盤の間の磁気的な結び付きによって角運動量が減少し,自転を律速するというシナリオの予測と一致している.
この自転速度を,他の惑星質量天体 (0.3-20 木星質量) で測定されている値と比較したが,この質量範囲内では自転速度と天体質量の間に相関があるという証拠は得られなかった.
最後に,この天体のスペクトル中に様々な分子の兆候が存在するかどうかを探査した.その結果スペクトルは一酸化炭素と水が支配的であり,メタンが存在する証拠は得られなかった.この結果は,おうし座DH星b が比較的高い有効温度を持つ (~2300 K) ことによる予想と一致する.
論文関連の(ほぼ)個人用メモ。
arXiv:2001.02217
Frustagli et al. (2020)
An ultra-short period rocky super-Earth orbiting the G2-star HD 80653
(G2 型星 HD 80653 を公転する超短周期岩石スーパーアース)
ここでは,太陽型星 HD 80653 (EPIC 251279430) を公転する超短周期惑星の発見について報告する.ケプラー K2 ミッションの Campaign 16 で得られた光度曲線と,HARPS-N 分光器による 108 の視線速度観測を元にして検出された.発見されたのはスーパーアースサイズの惑星 (1.613 地球半径) のトランジットで,軌道周期は 0.719573 日という短周期である.
視線速度測定から,HD 80653b の質量を 5.60 地球質量と推定した.また視線速度データに明確な長周期のトレンドが検出された.
恒星の基本的なパラメータを導出し,ここから恒星の年齢が 27 ± 12 億歳と推定された.惑星のバルク密度は 7.4 ± 1.1 g cm-3 であり,地球に類似した,岩石と鉄を主体とし,分厚い大気を持たない組成と整合的である.
K2 での測光観測結果の解析では,惑星による浅い二次食の兆候も検出され,その深さは 8.1 ppm であった.軌道位相に伴ったフラックスの変動はゼロと整合的であった.最も重要な寄与はおそらく,表面温度が ~ 3480 K の惑星昼側の熱放射である.
等級:V = 9.452
距離:109.86 pc
質量:1.18 太陽質量
半径:1.22 太陽半径
年齢:26.7 ± 12.0 億歳
光度:log(L*/Lsun) = 0.24
軌道長半径:0.0166 AU
質量:5.60 地球質量
半径:1.613 地球半径
arXiv:2001.02217
Frustagli et al. (2020)
An ultra-short period rocky super-Earth orbiting the G2-star HD 80653
(G2 型星 HD 80653 を公転する超短周期岩石スーパーアース)
概要
超短周期惑星は,軌道周期が一日よりも短い系外惑星の分類である.このタイプの惑星の起源は未だに不明で,形成シナリオの違いは超短周期惑星の組成に大きく依存する.したがってこの系外惑星の分類をより良く理解するためには,詳細な質量と半径の測定が行われている超短周期惑星のサンプル数を増やす必要がある.これには惑星が受ける輻射の水準の推定や,系内に存在する可能性がある他の天体の情報も含む.ここでは,太陽型星 HD 80653 (EPIC 251279430) を公転する超短周期惑星の発見について報告する.ケプラー K2 ミッションの Campaign 16 で得られた光度曲線と,HARPS-N 分光器による 108 の視線速度観測を元にして検出された.発見されたのはスーパーアースサイズの惑星 (1.613 地球半径) のトランジットで,軌道周期は 0.719573 日という短周期である.
視線速度測定から,HD 80653b の質量を 5.60 地球質量と推定した.また視線速度データに明確な長周期のトレンドが検出された.
恒星の基本的なパラメータを導出し,ここから恒星の年齢が 27 ± 12 億歳と推定された.惑星のバルク密度は 7.4 ± 1.1 g cm-3 であり,地球に類似した,岩石と鉄を主体とし,分厚い大気を持たない組成と整合的である.
K2 での測光観測結果の解析では,惑星による浅い二次食の兆候も検出され,その深さは 8.1 ppm であった.軌道位相に伴ったフラックスの変動はゼロと整合的であった.最も重要な寄与はおそらく,表面温度が ~ 3480 K の惑星昼側の熱放射である.
パラメータ
HD 80653
別名:EPIC 251279430等級:V = 9.452
距離:109.86 pc
質量:1.18 太陽質量
半径:1.22 太陽半径
年齢:26.7 ± 12.0 億歳
光度:log(L*/Lsun) = 0.24
HD 80653b
軌道周期:0.719573 日軌道長半径:0.0166 AU
質量:5.60 地球質量
半径:1.613 地球半径
論文関連の(ほぼ)個人用メモ。
arXiv:2001.01484
Iino et al. (2020)
14N/15N isotopic ratio in CH3CN of Titan's atmosphere measured with ALMA
(ALMA で測定したタイタン大気の CH3CN の 14N/15N 同位体比)
CH3CN (アセトニトリル) の場合,ある光化学モデルは 14N/15N の値がタイタンの下部成層圏で 120-130 になると予測している.これは HCN (シアン化水素) と HC3N (シアノアセチレン) での値である ~67-94 よりもずっと大きい.
Atacama Large Millimeter/submillimeter Array (ALMA) のアーカイブデータの解析から,ミリ波での 338 GHz バンドで,タイタンの大気スペクトルから CH3C15N の回転遷移 (J=19-18) の検出に成功した.これらの観測を同時に取得された CH3CN J=19-18 の 349 GHz バンドでのスペクトル線と比較した.これは大気の高度 160- ~400 km の領域を探査していることに相当する.
その結果,アセトニトリルの 14N/15N は 125 (+145, -44) と測定された.データ品質の限界のため導出された値の範囲は不十分な精度しか持たないものの,ベストフィットの値は,アセトニトリルでの窒素同位体比は HCN と HC3N で過去に観測され理論的に予測されていたものよりも大きいことを示している.これは最近の光化学モデルが示唆するように,大気中の高度によって窒素分子の解離源が異なることで説明できる可能性がある.
1986 年に 30 m 単一鏡電波望遠鏡を用いた観測で,タイタン大気に最も豊富な窒素化合物である HCN (シアン化水素) が発見された.その後,HC3N (シアノアセチレン),CH3CN (アセトニトリル),HNC (イソシアン化水素),C2H5CN (プロパンニトリル) が,宇宙望遠鏡や地上からのミリ波・サブミリ波観測で検出された.
現在,これらの分子の生成は窒素分子の解離による窒素原子の生成が起点であると考えられている.この解離は,紫外線照射,磁気圏電子,銀河宇宙線によって誘起される.
Loison et al. (2015) では,以下のような HCN 生成経路を考えている.まず,基底状態の窒素原子と CH2 から H2CN が生成する.次に,H2CN と H が反応して HCN + N2 が生成される.
一方で,励起状態の窒素原子はタイタンで 2 番目に多い分子種である CH4 と容易に反応し,CH2NH を生成する.CH2NH は光解離によって失われて H2CN を生成し,これから HCN が生成される.
HCN が生成されると,その光分解により反応性の CN ラジカルが生成し,これは C2H2 と反応して HC3N を生成する.なお HCN の異性体である HNC の生成過程は HCN と類似している.HNC は H2CN + H 反応における微量生成物である.
CH3CN の生成経路,は HCN とその娘分子種とは異なると考えられる.Koison et al. (2015) では,基底状態の窒素分子と C2H3 から CH2CN が生成され,CH2CN と H と金属原子から CH3CN が生成されると示唆している.CH2CN は多く存在する CH3 ラジカルと反応して C2H5CN を生成し,また C2H3 ラジカルの生成は大気中の高圧力領域 (低高度) のみで発生すると考えられる (Loison et al. 2015).このような低高度では窒素分子の光解離はめったに発生しない.代わりに,その高度での基底状態の窒素原子の生成は,銀河宇宙線による窒素分子の解離によると考えられる.
最近の Dobrijevic & Loison (2018) のモデルでは,高度 600 km 以下では,基底状態の窒素原子の生成は紫外線や磁気圏電子によるものではなく,銀河宇宙線起源で占められることを示した.そのため,CH3CN と C2H5CN の生成は 600 km 以下でも継続していることが期待される.
窒素原子の異なる解離プロセスは,複雑な窒素組成と化学過程の要因となる.そのため,タイタンの大気化学の理論モデルを評価する際には,窒素の同位体比の観測が重要となる.
Dobrijevic & Loison (2018) は,特に窒素分子の解離過程の違いに依存して同位体比は大きく変化することを指摘した.具体的には,CH3CN と C2H5CN の 14N/15N 比は,モデルでは ~ 800 km の高高度では ~80 で,下部成層圏 (~200 km) では ~120 に増加すると予測した.一方で HCN と HC3N での同位体比は 800 km 以下で ~80 で比較的一定と予想した.
HCN と HC3N に関しては過去の観測と一致しており,HCN は 94 ± 13 (Gurwell 2004),72.2 ± 2.2 (Molter et al. 2016),HC3N では 67 ± 14 (Cordiner et al. 2018) である.
同位体比に関しては異なる値を出すモデルもある.Vuitton et al. (2019) では同位体分別過程を含めたモデルから,1000 km 以上の高高度では CH3CN の同位体比は HCN と HC3N より小さくなると予測している.これは,CH3CN は 15N では豊富な,励起状態の窒素原子から生成されることが原因としている.200 km の下部成層圏では,3 つの窒素化合物が ~55 程度の同程度の同位体比を持つと予測.これは,窒素分子と銀河宇宙線の衝突で生成される分別されていない窒素原子が,リサイクル過程を介して同位体比を均質化するからである.
銀河宇宙線はタイタンの大気の組成に影響を及ぼす.銀河宇宙線の影響を評価するためには CH3CN の窒素同位体比の観測的導出が重要である.最近,Palmer et al. (2017) は CH3C15N のシグナルを ALMA を用いてサブミリ波で検出し,同位体比の値として 8 9± 5 を導出した.この解析ではアセトニトリルの存在度分布は Marten et al. (2002) で導出された参照分布と同じと仮定している.つまり,CH3C15N と CH3CN のそれぞれの観測は 2014 年と 1998 年の異なる時期に,大きく異なる空間分解能で行われていることを意味する.
アセトニトリルとは対照的に,HCN と HC3N はそれぞれ 79.5, 79.6 という低い窒素同位体比が予測される.ここで導出したアセトニトリルの窒素同位体比は,HCN と HC3N に予想される値とは非整合である.このことは,異なる窒素分子解離過程が存在するというモデルの予測を支持している.
arXiv:2001.01484
Iino et al. (2020)
14N/15N isotopic ratio in CH3CN of Titan's atmosphere measured with ALMA
(ALMA で測定したタイタン大気の CH3CN の 14N/15N 同位体比)
概要
タイタンの大気中に存在するそれぞれの窒素化合物は,異なる 14N/15N の同位体比を持つことが予想される.これはそれぞれの窒素化合物の生成過程が,主に紫外線照射や磁気圏の電子,銀河宇宙線などの異なる起源によって誘起される様々な窒素分子の解離過程に依存するためである.CH3CN (アセトニトリル) の場合,ある光化学モデルは 14N/15N の値がタイタンの下部成層圏で 120-130 になると予測している.これは HCN (シアン化水素) と HC3N (シアノアセチレン) での値である ~67-94 よりもずっと大きい.
Atacama Large Millimeter/submillimeter Array (ALMA) のアーカイブデータの解析から,ミリ波での 338 GHz バンドで,タイタンの大気スペクトルから CH3C15N の回転遷移 (J=19-18) の検出に成功した.これらの観測を同時に取得された CH3CN J=19-18 の 349 GHz バンドでのスペクトル線と比較した.これは大気の高度 160- ~400 km の領域を探査していることに相当する.
その結果,アセトニトリルの 14N/15N は 125 (+145, -44) と測定された.データ品質の限界のため導出された値の範囲は不十分な精度しか持たないものの,ベストフィットの値は,アセトニトリルでの窒素同位体比は HCN と HC3N で過去に観測され理論的に予測されていたものよりも大きいことを示している.これは最近の光化学モデルが示唆するように,大気中の高度によって窒素分子の解離源が異なることで説明できる可能性がある.
背景
タイタン大気の特徴は複雑な窒素化合物が存在する点である.1986 年に 30 m 単一鏡電波望遠鏡を用いた観測で,タイタン大気に最も豊富な窒素化合物である HCN (シアン化水素) が発見された.その後,HC3N (シアノアセチレン),CH3CN (アセトニトリル),HNC (イソシアン化水素),C2H5CN (プロパンニトリル) が,宇宙望遠鏡や地上からのミリ波・サブミリ波観測で検出された.
現在,これらの分子の生成は窒素分子の解離による窒素原子の生成が起点であると考えられている.この解離は,紫外線照射,磁気圏電子,銀河宇宙線によって誘起される.
Loison et al. (2015) では,以下のような HCN 生成経路を考えている.まず,基底状態の窒素原子と CH2 から H2CN が生成する.次に,H2CN と H が反応して HCN + N2 が生成される.
一方で,励起状態の窒素原子はタイタンで 2 番目に多い分子種である CH4 と容易に反応し,CH2NH を生成する.CH2NH は光解離によって失われて H2CN を生成し,これから HCN が生成される.
HCN が生成されると,その光分解により反応性の CN ラジカルが生成し,これは C2H2 と反応して HC3N を生成する.なお HCN の異性体である HNC の生成過程は HCN と類似している.HNC は H2CN + H 反応における微量生成物である.
CH3CN の生成経路,は HCN とその娘分子種とは異なると考えられる.Koison et al. (2015) では,基底状態の窒素分子と C2H3 から CH2CN が生成され,CH2CN と H と金属原子から CH3CN が生成されると示唆している.CH2CN は多く存在する CH3 ラジカルと反応して C2H5CN を生成し,また C2H3 ラジカルの生成は大気中の高圧力領域 (低高度) のみで発生すると考えられる (Loison et al. 2015).このような低高度では窒素分子の光解離はめったに発生しない.代わりに,その高度での基底状態の窒素原子の生成は,銀河宇宙線による窒素分子の解離によると考えられる.
最近の Dobrijevic & Loison (2018) のモデルでは,高度 600 km 以下では,基底状態の窒素原子の生成は紫外線や磁気圏電子によるものではなく,銀河宇宙線起源で占められることを示した.そのため,CH3CN と C2H5CN の生成は 600 km 以下でも継続していることが期待される.
窒素原子の異なる解離プロセスは,複雑な窒素組成と化学過程の要因となる.そのため,タイタンの大気化学の理論モデルを評価する際には,窒素の同位体比の観測が重要となる.
Dobrijevic & Loison (2018) は,特に窒素分子の解離過程の違いに依存して同位体比は大きく変化することを指摘した.具体的には,CH3CN と C2H5CN の 14N/15N 比は,モデルでは ~ 800 km の高高度では ~80 で,下部成層圏 (~200 km) では ~120 に増加すると予測した.一方で HCN と HC3N での同位体比は 800 km 以下で ~80 で比較的一定と予想した.
HCN と HC3N に関しては過去の観測と一致しており,HCN は 94 ± 13 (Gurwell 2004),72.2 ± 2.2 (Molter et al. 2016),HC3N では 67 ± 14 (Cordiner et al. 2018) である.
同位体比に関しては異なる値を出すモデルもある.Vuitton et al. (2019) では同位体分別過程を含めたモデルから,1000 km 以上の高高度では CH3CN の同位体比は HCN と HC3N より小さくなると予測している.これは,CH3CN は 15N では豊富な,励起状態の窒素原子から生成されることが原因としている.200 km の下部成層圏では,3 つの窒素化合物が ~55 程度の同程度の同位体比を持つと予測.これは,窒素分子と銀河宇宙線の衝突で生成される分別されていない窒素原子が,リサイクル過程を介して同位体比を均質化するからである.
銀河宇宙線はタイタンの大気の組成に影響を及ぼす.銀河宇宙線の影響を評価するためには CH3CN の窒素同位体比の観測的導出が重要である.最近,Palmer et al. (2017) は CH3C15N のシグナルを ALMA を用いてサブミリ波で検出し,同位体比の値として 8 9± 5 を導出した.この解析ではアセトニトリルの存在度分布は Marten et al. (2002) で導出された参照分布と同じと仮定している.つまり,CH3C15N と CH3CN のそれぞれの観測は 2014 年と 1998 年の異なる時期に,大きく異なる空間分解能で行われていることを意味する.
モデルとの比較
ベストフィットの窒素同位体比 14N/15N は 125 で,Dobrijevic & Loison (2018) のモンテカルロ計算からによる,高度 200 km での 70-170 という予測の範囲内である.モデルではアセトニトリルは紫外線と銀河宇宙線による窒素分子の解離という 2 つの可能な経路がある.そのため 200 km で 90 と 160 という 2 つの極大値の予想がある.これはそれぞれ,紫外線起源と銀河宇宙線起源に対応している.しかしデータの品質の限界から,どちらのシナリオかを明確に識別するのは困難である.アセトニトリルとは対照的に,HCN と HC3N はそれぞれ 79.5, 79.6 という低い窒素同位体比が予測される.ここで導出したアセトニトリルの窒素同位体比は,HCN と HC3N に予想される値とは非整合である.このことは,異なる窒素分子解離過程が存在するというモデルの予測を支持している.
天文・宇宙物理関連メモ vol.1305 Gilbert et al. (2020),Rodriguez et al. (2020),Suissa et al. (2020) TESS による初のハビタブルゾーン内地球サイズ惑星の発見とその特徴
論文関連の(ほぼ)個人用メモ。
arXiv:2001.00952
Gilbert et al. (2020)
The First Habitable Zone Earth-sized Planet from TESS. I: Validation of the TOI-700 System
(TESS による初めてのハビタブルゾーンの地球サイズ惑星 I.TOI-700 系の実証)
地上からのフォローアップ観測の結果と組み合わせ,一般的な天体物理的な偽陽性シナリオの可能性を否定し,検出されたシグナルが惑星系由来のものであることを実証した.
最も外側の惑星 TOI-700d は 1.19 ± 0.11 地球半径で,中心星の保守的なハビタブルゾーンの中に軌道を持つ.地球の日射量のおよそ 86% を受けている.
ハビタブルゾーン内に地球サイズの惑星を持つその他の低質量星とは対照的に,この恒星は恒星活動の水準が低い.そのため,おそらく岩石質であるこの惑星の大気を探査するための良い対象である.
ジェイムズ・ウェッブ宇宙望遠鏡 (JWST) での TOI-700d の大気の特徴付けを行うことは難しいものの,より大きなサイズであるサブネプチューン TOI-700c (2.63 地球半径) は,JWST やさらに将来の観測機器での良い観測対象である.
TESS はその拡張ミッションにおいて,再び 11 sectors にわたって南天および TOI-700 を観測する予定である.その観測によって,既知の惑星のパラメータを更に制限し,さらなる惑星の探査やトランジット時刻変化の探査を行えることが期待される.
ケプラー62 系には,早期 K 型星の周りを公転する地球に近い日射を受ける 2 つの惑星が存在するが,距離が ~300 pc と比較的遠く暗いため,フォローアップ観測が難しい.
ケプラーによる重要な発見の一つに,低質量の M 型星回りでは惑星の存在頻度が高いというものがある.特に,2 地球半径よりも小さい惑星は非常に多く発見されている.
ハビタブルゾーン内にある地球サイズ惑星の初めての確実な発見はケプラー186f である.距離は ~179 pc で,太陽の半分程度の質量を持つ M 型星を公転する複数惑星系の一部である (Quintana et al. 2014など).
ケプラーの拡張ミッションである K2 ミッションでは,メインのミッションより一桁多い M 型矮星を観測している (主要ミッションでは ~3000 個の M 型星が観測された).K2 ミッションでは低質量星が多く観測され,複数のハビタブルゾーン内の小型のトランジット惑星が発見された.例として,K2-3d,K2-18b,K2-9b,K2-72e,K2-288Bb が挙げられる.これらのうち,おそらく岩石質の惑星だと言えるほど十分小さいものは,1.3 地球半径を持つ K2-72e のみである (Rogers 2015).
ケプラーと K2 ミッションでは多数の小型の惑星が発見されたが,ターゲット選定の戦略と限られた観測期間の影響で,大部分の天体は詳細なフォローアップ観測をするには暗すぎるものとなっている.
地上からの測光観測でのトランジット,および分光観測での視線速度測定でも,M 型星まわりの惑星の観測が進行している.例えば,GJ 1214b,GJ 1132b,LHS 1140b, c が MEarth プログラムで発見されている.また,プロキシマ・ケンタウリb や,7 つの地球型惑星を持つ非常に晩期の M 型星 TRAPPIST-1 も発見されている.
LHS 1140b は特に興味深い対象で,岩石質であることが示唆される質量を持つスーパーアースである (Ment et al. 2019).TRAPPIST-1 の惑星もハビタブルゾーン内に位置しており,トランジット時刻変化から質量が測定されている.その結果,岩石質のものから,より揮発性物質が豊富な地球サイズ惑星までと多様性があることが分かっている.
距離:31.127 pc
スペクトル型:M2V
有効温度:3480 K
金属量:[Fe/H] = -0.07
質量:0.416 太陽質量
半径:0.420 太陽半径
光度:0.0233 太陽光度
自転周期:54.0 日
半径:1.010 地球半径
日射量:地球の 5.0 倍
軌道長半径:0.0637 AU
半径:2.63 地球半径
日射量:地球の 2.66 倍
軌道長半径:0.0925 AU
半径:1.19 地球半径
日射量:地球の 0.86 倍
軌道長半径:0.163 AU
TOI-700 系の考えられる形成シナリオとしては,内側 2 つの惑星は早期に形成されて大量のガスを降着したが,外側の惑星はよりゆっくりと形成され,ガスをあまり降着しなかったというものがある.大気の光蒸発は惑星の恒星からの距離に非常に敏感であるため,最も内側の惑星はそのエンベロープを光蒸発によって失ったと考えられる.
別の可能性として,大きな軌道移動は惑星のフィーディングゾーンに大きな多様性をもたらしうるため,結果として形成される惑星の組成も異なるというものが挙げられる.TOI-700c は円盤外側から内側へ移動してきて,惑星 TOI-700b と d に比べて異なる環境 (そしておそらくはより速い形成) を経験した可能性がある.しかし質量が類似していることから,なぜ 1 つの惑星だけが内側へ移動し,残りはしなかったのかを理解するのは難しい.
この 2 番目のシナリオは,もし将来的な研究で TOI-700c の質量が b と d よりもずっと大きいことが示唆された場合は,もっともらしい候補になるだろう.
arXiv:2001.00954
Rodriguez et al. (2020)
The First Habitable Zone Earth-Sized Planet From TESS II: Spitzer Confirms TOI-700 d
(TESS による初めてのハビタブルゾーンの地球サイズ惑星 II.スピッツァーによる TOI-700d の確認)
スピッツァー宇宙望遠鏡の観測で TESS による TOI-700d の発見を確認し,トランジットシグナルは本物の惑星によるものであることが示された.
視線速度の半振幅はとして期待される値は ~ 80 cm/s であり,最新の視線速度測定装置を用いて TOI-700d を検出することは可能である.
arXiv:2001.00955
Suissa et al. (2020)
The First Habitable Zone Earth-sized Planet from TESS. III: Climate States and Characterization Prospects for TOI-700 d
(TESS による初めてのハビタブルゾーンの地球サイズ惑星 III.TOI-700d の気候状態と特徴付けの可能性)
20 パターンのシミュレーションにおいて,気候モデルから透過スペクトル,組み合わされた光のスペクトル,積分した広帯域位相曲線を合成した.これらの気候学に基づいた観測可能量は,この惑星の将来的な特徴付けに必要な技術的な能力をコミュニティが評価するのを助けるだけではなく,将来的に高感度のスペクトル観測を得た場合に,その気候状態を識別するのに役立つだろう.
結果として,TOI-700d はハビタブルな惑星の手堅い候補であり,大気組成の広い範囲において温暖な表層環境を保持する可能性があることを見出した.
残念ながら,結果として合成した透過スペクトルのスペクトル特徴の深さと,ピークフラックス,および合成した位相曲線は 10 ppm を超えない.そのためジェイムズ・ウェッブ宇宙望遠鏡による大気の特徴付けを行うのは難しいだろうと予想される.
arXiv:2001.00952
Gilbert et al. (2020)
The First Habitable Zone Earth-sized Planet from TESS. I: Validation of the TOI-700 System
(TESS による初めてのハビタブルゾーンの地球サイズ惑星 I.TOI-700 系の実証)
概要
近傍 (31.1 pc) の M2 星 TOI-700 (TIC 150428135) を公転する 3 惑星系の発見と実証について報告する.この天体は TESS の黄道の南天における continuous viewing zone (継続的に観測が可能な領域) に位置しており,11 sectors にわたる観測から,複数の惑星のトランジットが検出された.惑星半径は 1-2.6 地球半径,軌道周期は 9.98-37.43 日である.地上からのフォローアップ観測の結果と組み合わせ,一般的な天体物理的な偽陽性シナリオの可能性を否定し,検出されたシグナルが惑星系由来のものであることを実証した.
最も外側の惑星 TOI-700d は 1.19 ± 0.11 地球半径で,中心星の保守的なハビタブルゾーンの中に軌道を持つ.地球の日射量のおよそ 86% を受けている.
ハビタブルゾーン内に地球サイズの惑星を持つその他の低質量星とは対照的に,この恒星は恒星活動の水準が低い.そのため,おそらく岩石質であるこの惑星の大気を探査するための良い対象である.
ジェイムズ・ウェッブ宇宙望遠鏡 (JWST) での TOI-700d の大気の特徴付けを行うことは難しいものの,より大きなサイズであるサブネプチューン TOI-700c (2.63 地球半径) は,JWST やさらに将来の観測機器での良い観測対象である.
TESS はその拡張ミッションにおいて,再び 11 sectors にわたって南天および TOI-700 を観測する予定である.その観測によって,既知の惑星のパラメータを更に制限し,さらなる惑星の探査やトランジット時刻変化の探査を行えることが期待される.
背景
ハビタブルゾーン内に存在する小さい惑星としては,ケプラー22b が初めての発見例である (Borucki et al. 2012).しかしこの惑星の半径は 2 地球半径よりも大きいため,岩石惑星ではない可能性が高い.ケプラー62 系には,早期 K 型星の周りを公転する地球に近い日射を受ける 2 つの惑星が存在するが,距離が ~300 pc と比較的遠く暗いため,フォローアップ観測が難しい.
ケプラーによる重要な発見の一つに,低質量の M 型星回りでは惑星の存在頻度が高いというものがある.特に,2 地球半径よりも小さい惑星は非常に多く発見されている.
ハビタブルゾーン内にある地球サイズ惑星の初めての確実な発見はケプラー186f である.距離は ~179 pc で,太陽の半分程度の質量を持つ M 型星を公転する複数惑星系の一部である (Quintana et al. 2014など).
ケプラーの拡張ミッションである K2 ミッションでは,メインのミッションより一桁多い M 型矮星を観測している (主要ミッションでは ~3000 個の M 型星が観測された).K2 ミッションでは低質量星が多く観測され,複数のハビタブルゾーン内の小型のトランジット惑星が発見された.例として,K2-3d,K2-18b,K2-9b,K2-72e,K2-288Bb が挙げられる.これらのうち,おそらく岩石質の惑星だと言えるほど十分小さいものは,1.3 地球半径を持つ K2-72e のみである (Rogers 2015).
ケプラーと K2 ミッションでは多数の小型の惑星が発見されたが,ターゲット選定の戦略と限られた観測期間の影響で,大部分の天体は詳細なフォローアップ観測をするには暗すぎるものとなっている.
地上からの測光観測でのトランジット,および分光観測での視線速度測定でも,M 型星まわりの惑星の観測が進行している.例えば,GJ 1214b,GJ 1132b,LHS 1140b, c が MEarth プログラムで発見されている.また,プロキシマ・ケンタウリb や,7 つの地球型惑星を持つ非常に晩期の M 型星 TRAPPIST-1 も発見されている.
LHS 1140b は特に興味深い対象で,岩石質であることが示唆される質量を持つスーパーアースである (Ment et al. 2019).TRAPPIST-1 の惑星もハビタブルゾーン内に位置しており,トランジット時刻変化から質量が測定されている.その結果,岩石質のものから,より揮発性物質が豊富な地球サイズ惑星までと多様性があることが分かっている.
パラメータ
TOI-700
別名:TIC 150428135距離:31.127 pc
スペクトル型:M2V
有効温度:3480 K
金属量:[Fe/H] = -0.07
質量:0.416 太陽質量
半径:0.420 太陽半径
光度:0.0233 太陽光度
自転周期:54.0 日
TOI-700b
軌道周期:9.97701 日半径:1.010 地球半径
日射量:地球の 5.0 倍
軌道長半径:0.0637 AU
TOI-700c
軌道周期:16.051098 日半径:2.63 地球半径
日射量:地球の 2.66 倍
軌道長半径:0.0925 AU
TOI-700d
軌道周期:37.4260 日半径:1.19 地球半径
日射量:地球の 0.86 倍
軌道長半径:0.163 AU
他の複数惑星系との比較と形成過程
今回発見された TOI-700 系は,2 つの地球サイズ惑星と,1 つのより大きい (2.6 地球半径) 惑星からなる.この惑星系は,他のハビタブルゾーン内の小さい惑星を持つ複数惑星系と比較すると構造が変わっている.ケプラーで発見された複数惑星系では,惑星はどれも似たサイズを持ち,規則的な軌道間隔で,円軌道で (傾斜角が測定できているものは) 同一平面上にある.しかし TOI-700 系はこの傾向に合わない.TOI-700 系の考えられる形成シナリオとしては,内側 2 つの惑星は早期に形成されて大量のガスを降着したが,外側の惑星はよりゆっくりと形成され,ガスをあまり降着しなかったというものがある.大気の光蒸発は惑星の恒星からの距離に非常に敏感であるため,最も内側の惑星はそのエンベロープを光蒸発によって失ったと考えられる.
別の可能性として,大きな軌道移動は惑星のフィーディングゾーンに大きな多様性をもたらしうるため,結果として形成される惑星の組成も異なるというものが挙げられる.TOI-700c は円盤外側から内側へ移動してきて,惑星 TOI-700b と d に比べて異なる環境 (そしておそらくはより速い形成) を経験した可能性がある.しかし質量が類似していることから,なぜ 1 つの惑星だけが内側へ移動し,残りはしなかったのかを理解するのは難しい.
この 2 番目のシナリオは,もし将来的な研究で TOI-700c の質量が b と d よりもずっと大きいことが示唆された場合は,もっともらしい候補になるだろう.
arXiv:2001.00954
Rodriguez et al. (2020)
The First Habitable Zone Earth-Sized Planet From TESS II: Spitzer Confirms TOI-700 d
(TESS による初めてのハビタブルゾーンの地球サイズ惑星 II.スピッツァーによる TOI-700d の確認)
概要
スピッツァー宇宙望遠鏡を用いて TOI-700d のトランジットを 4.5 µm 波長での観測を行った.この惑星は,ハビタブルゾーン内にある地球サイズの惑星である.半径は 1.220 地球半径で,37.42 日周期,中心星の保守的なハビタブルゾーンの中にあり,平衡温度は ~269 K と推定される.この系は内側にさらに 2 つの惑星を持つ.スピッツァー宇宙望遠鏡の観測で TESS による TOI-700d の発見を確認し,トランジットシグナルは本物の惑星によるものであることが示された.
視線速度の半振幅はとして期待される値は ~ 80 cm/s であり,最新の視線速度測定装置を用いて TOI-700d を検出することは可能である.
arXiv:2001.00955
Suissa et al. (2020)
The First Habitable Zone Earth-sized Planet from TESS. III: Climate States and Characterization Prospects for TOI-700 d
(TESS による初めてのハビタブルゾーンの地球サイズ惑星 III.TOI-700d の気候状態と特徴付けの可能性)
概要
新しく発見されたハビタブルゾーン内の地球サイズ惑星 TOI-700d の,可能な気候状態の自己無撞着 3 次元気候シミュレーションを行った.惑星の大気組成,圧力,自転状態を変化させ,海で覆われた状態と完全に乾燥した惑星の両方で,惑星の居住可能性について評価した.20 パターンのシミュレーションにおいて,気候モデルから透過スペクトル,組み合わされた光のスペクトル,積分した広帯域位相曲線を合成した.これらの気候学に基づいた観測可能量は,この惑星の将来的な特徴付けに必要な技術的な能力をコミュニティが評価するのを助けるだけではなく,将来的に高感度のスペクトル観測を得た場合に,その気候状態を識別するのに役立つだろう.
結果として,TOI-700d はハビタブルな惑星の手堅い候補であり,大気組成の広い範囲において温暖な表層環境を保持する可能性があることを見出した.
残念ながら,結果として合成した透過スペクトルのスペクトル特徴の深さと,ピークフラックス,および合成した位相曲線は 10 ppm を超えない.そのためジェイムズ・ウェッブ宇宙望遠鏡による大気の特徴付けを行うのは難しいだろうと予想される.