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論文関連の(ほぼ)個人用メモ。



arXiv:1712.04435
Jackson et al. (2017)
Ejection of rocky and icy material from binary star systems: Implications for the origin and composition of 1I/`Oumuamua
(連星系からの岩石と氷物質の放出:オウムアムアの起源と組成への応用)

概要

我々の太陽系のような一つの恒星のみが存在する星系では,星間空間に放出される天体の質量の大部分は彗星が占める.これは,彗星は遠方で形成され,重力に強く束縛されていないからである.

しかし,初めての恒星間天体として検出された 1I/`Oumuamua (オウムアムア) は,そのスペクトルと,検出可能な活動が見られないという特徴から,小惑星的な天体であると考えられる.

ここでは,オウムアムアのような恒星間天体の銀河系内での総量は,単一星系や大きな軌道間隔を持った連星系よりも,周連星系における惑星形成の過程で放出された微惑星物質が占めるという可能性について議論する.さらに,そのような連星系においては,岩石天体は氷天体と同程度放出されることを示す.

このことは,将来発見されるであろう更なる恒星間天体のうち,一定の割合は活発なコマを持つであろうことを示唆する.オウムアムアがその一員である岩石主体の天体群は,A 型星や晩期 B 型星の連星に主に起源を持つと考えられる.

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論文関連の(ほぼ)個人用メモ。



arXiv:1712.03241
Johnson et al. (2017)
KELT-21b: A Hot Jupiter Transiting the Rapidly-Rotating Metal-Poor Late-A Primary of a Likely Hierarchical Triple System
(KELT-21b:階層的三重星と思われる高速自転金属欠乏晩期 A 型主星をトランジットするホットジュピター)

概要

光度が V = 10.5 の A8V 星 HD 332124 をトランジットするホットジュピター KELT-21b の発見について報告する.

軌道周期は 3.6127647 日,半径は 1.586 木星半径であった.また,惑星質量の 3 σ の上限値は 3.91 木星質量であった.この質量の上限値と,ドップラートモグラフィー (Dopplar tomography) の観測から,トランジットしている天体が惑星であることを確認した.

また得られたデータからは,惑星の公転軸は恒星の自転軸と揃っていることも分かった,天球に射影した spin-orbit misalignment (惑星公転軸と恒星自転軸のずれ) は -5.6° と測定された.

恒星は有効温度が 7598 K,質量は 1.458 太陽質量,半径は 1.638 太陽半径である.
射影した自転速度は v sin I = 146 km s-1 であり,トランジットするホットジュピターを持つ恒星の中では,最も速い値である.

恒星は金属量がやや低く,アルファ元素を多く含む組成であった.金属量は [Fe/H] = -0.405,アルファ元素は [α/Fe] = 0.145 である.これらの存在度の値は独特ではあるが,KELT-21 のような薄い銀河円盤の動力学を持つ若い恒星にとっては,異常というほどではない.


高分解能撮像観測では,KELT-21 は恒星のペアからなる伴星を,1”.2 の距離に持っていることが判明した.これら 2 つの恒星は KELT-21 に物理的に伴っている可能性が高いが,現在のデータからは断定はできない.

もし物理的に伴っている連星であった場合,伴星 KELT-21B と C は ~ 0.12 太陽質量であり,天球上に射影された KELT-21B と C の間隔は ~ 20 AU である.また,KELT-21 から KELT-21B と C ペアまでの射影距離は ~ 500 AU である.

KELT-21b は,まだほんの一握りしか知られていない,階層的三重星 (hierarchical triple) の中にあるトランジット惑星のひとつかもしれない.

パラメータ

KELT-21
別名:HD 332124
質量:1.458 太陽質量
半径:1.638 太陽半径
光度:8.03 太陽光度
金属量:[Fe/H] = -0.405
有効温度:7598 K
KELT-21b
軌道周期:3.6127647 日
軌道長半径:0.05224 AU
質量:3.91 木星質量未満
半径:1.586 木星半径
平衡温度:2051 K

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論文関連の(ほぼ)個人用メモ。



arXiv:1712.03384
Bruno et al. (2017)
A comparative study of WASP-67b and HAT-P-38b from WFC3 data
(WFC3 データからの WASP-67b と HAT-P-38b の比較研究)

概要

惑星大気の温度と惑星の重力は,巨大系外惑星の大気中における雲の形成に影響を及ぼす,主要なパラメータだと考えられている.惑星大気中での雲の形成を理解するための最近の試みでは,平衡温度-重力パラメータ空間の広い範囲での研究が行われてきた.

ここでは,ほぼ等しい平衡温度 (~ 1050 K) と表面重力 (10 m s-1) を持つ,2 つの巨大惑星のケースを比較する.ハッブル宇宙望遠鏡の Cycle 23 観測で,WASP-67bHAT-P-38b の観測を行った.

HAT-P-38b は,0.42 木星質量,1.4 木星半径の惑星である.得られたスペクトルの解析の結果,明確な水の検出を伴う,比較的クリアな大気 (雲の少ない大気) であった.
また,今回の新しい観測で,この惑星の軌道周期の値を 4.6403294 日と改訂した.

WASP-67b は,0.27 木星質量,0.83 木星半径の惑星である,HAT-P-38b に比べると水の吸収の兆候は弱かった.これは,大気の高い高度に雲の層が存在しているか,あるいはより金属量豊富な組成の大気を持っていることを示唆している.

これらの惑星のスペクトルにおける違いは,巨大系外惑星の大気はそれらの形成の歴史の痕跡を持っているという仮説を裏付けるものである.惑星大気中のエアロゾルの特性を探査し,これらの惑星の進化のシナリオへの制約を与えるためには,可視光と中間赤外線での将来的な観測が必要である.

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論文関連の(ほぼ)個人用メモ。



arXiv:1712.03746
Biller et al. (2017)
Simultaneous, Multi-Wavelength Variability Characterization of the Free-Floating Planetary Mass Object PSO J318.5-22
(自由浮遊惑星質量天体 PSO J318.5-22 の同時多波長変動性特性評価)

概要

ハッブル宇宙望遠鏡の WFC3 とスピッツァー宇宙望遠鏡の IRAC を用いて,大きく変動する若い (~ 2000 万歳) の惑星質量天体 PSO J318.5-22 の同時モニタリングを行った.

スピッツァー宇宙望遠鏡ではこの天体の自転周期 2 回分程度,ハッブル宇宙望遠鏡では 1 回の自転周期の大部分をカバーした.スピッツァー宇宙望遠鏡で得られた光度曲線から,自転周期は 8.6 ± 0.1 時間と測定された.

この天体の \(v \sin i\) の値と,得られた自転周期を組み合わせた結果,視線方向の自転軸の傾斜は 56.2 ± 8.1° と推定される.

変動のピーク値とトラフ値の変動の大きさは,スピッツァー宇宙望遠鏡の Channel 2 では 3.4%,近赤外バンド (1.07 - 1.67 µm) では 4.4 - 5.8% であった.この天体の中間赤外線での変動の大きさは,他の褐色矮星や惑星質量天体の中間赤外での変動の中では最も大きい部類に入る.


さらに,200 - 210° の間を変化する位相のズレを検出した.これは,合成された近赤外線での光度曲線と,スピッツァーでの中間赤外線の光度曲線の間に見られる位相のずれである.
これはこの天体の大気中の深さに依存する,経度方向の大気構造を示唆しているものと考えられる.吸収特性と比較して幅広いスペクトル帯における同様の変動の検出は,変動の原因は大気中の不均一な雲である可能性があることを示唆している.おそらくは,厚い雲の上の部分的なヘイズ層が原因だろうと考えられる.
※注釈:
PSO は Pan-STARRS Object の略称である.Pan-STARRS 望遠鏡で空の広範囲を網羅的にサーベイしている観測プロジェクトであり,地球近傍天体の検出なども行っている.最近検出された恒星間天体オウムアムアの検出も,Pan-STARRS サーベイによるもの.PSO のカタログに登録されている天体は,1010 個程度に達している.

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論文関連の(ほぼ)個人用メモ。



arXiv:1712.03216
Alsubai et al. (2017)
Qatar Exoplanet Survey: Qatar-6b -- a grazing transiting hot Jupiter
(Qatar Exoplanet Survey:Qatar-6b かすめるトランジットをするホットジュピター)

概要

Qatar Exoplanet Survey (QES) で同定された新しいトランジット惑星 Qatar-6b の発見について報告する.

中心星 Qatar-6 は,比較的明るい (V = 11.33) 早期 K 型主系列星である.
近紫外線から中間赤外線までの多バンド測光観測と SED フィッティングから,天体までの距離は 101 ± 6 pc と推定される.

惑星の Qatar-6b は,軌道周期が 3.506 日である.フォローアップの測光観測と分光観測から,惑星の質量と半径はそれぞれ 0.67 木星質量,1.06 木星半径と推定される.

多色測光光度曲線から,この惑星はトランジットは grazing transit,つまり惑星が恒星をかすめるような位置関係でトランジットしている事が判明した..

Qatar Exoplanet Survey について

Qatar Exoplanet Survey (QES) は,アメリカのニューメキシコ州 Mayhill にある New Mexico Skies Observatory で行われている,系外惑星サーベイの名称である (Alsubai et al. 2013, 2017).

パラメータ

Qatar-6
等級:V = 11.438
スペクトル型:K2V
自転周期:12.75 日
年齢:1.02 Gyr (10.2 億年)
距離:101.5 pc
質量:0.822 太陽質量
半径:0.722 太陽半径
光度:0.306 太陽光度
有効温度:5052 K
金属量:[Fe/H] = -0.025,
Qatar-6b
軌道周期:3.506189 日
軌道長半径:0.0423 AU
質量:0.668 木星質量
半径:1.062 木星半径
平均密度:0.68 g/cm3
平衡温度:1006 K
トランジットインパクトパラメータ:0.878 (かすめるようなトランジット)

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