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論文関連の(ほぼ)個人用メモ。
arXiv:2001.01106
Lari et al. (2020)
Long-term evolution of the Galilean satellites: the capture of Callisto into resonance
(ガリレオ衛星の長期進化:カリストの共鳴への捕獲)
ここでは,太陽系年齢の間にわたるガリレオ衛星の振る舞いを特徴づけ,ラプラス共鳴の安定性を定量化した.潮汐散逸によって,現在の軌道共鳴から脱出したり,あるいは新しい共鳴に捕獲されたりすることが可能になり,各衛星の軌道要素に大きな変化をもたらす.
今回は特に,カリストが共鳴に捕獲されうるかについて調査を行った.
現在の半解析モデルの改善バージョンを用いて,数百の伝播計算を行った.
ガニメデが外側にむかって動くにつれ,ガニメデはカリストとの 2:1 共鳴の位置に近付き,衛星系の一時的なカオス的な運動を誘起する.そのため,共鳴遭遇の結果を統計的な描像として表した.
衛星系は 2 つの異なる状態に落ち着きうる.
A) イオ・エウロパ,エウロパ・ガニメデ,ガニメデ・カリストの 3 つの 2:1 の 2 体共鳴の鎖,あるいは,
B) イオ・エウロパの 2 体の 2:1 共鳴を含む共鳴鎖で,少なくとも 1 つの純粋な 4:2:1 の 3 体共鳴を含む状態.
最も多く実現されるパターンは,エウロパ・ガニメデ・カリストの 3 体の共鳴が発生するケースである.
ケース A はシミュレーションの 56% で見られ,ラプラス共鳴は常に保たれ,衛星の軌道離心率は 0.01 未満の低い値にとどまる.
ケース B は 44% で見られ,ラプラス共鳴は一般に破壊され,ガニメデとカリストの離心率は最大で 0.1 まで上昇する.この軌道配置は不安定であり,系は新しい共鳴状態に移ることになる.
全てのケースで,カリストは他の衛星の共鳴運動によって押されて外側に移動を開始する.
今回の結果から,カリストが将来的に共鳴に捕獲される可能性は極めて高く,シミュレーションでは 100% のケースでカリストの共鳴捕獲が発生した.共鳴に入る正確なタイミングは,衛星系でのエネルギー散逸率の精密な値に依存する.
イオと木星の間の散逸に関して最も新しい推定値を仮定すると,共鳴への遭遇は今からおよそ 15 億年後に起きる.そのため,現在知られているラプラス共鳴の安定性は,少なくとも 15 億年の間は保証されることになる.
1798 年の段階で既に,ラプラスがイオ・エウロパ・ガニメデが 4:2:1 軌道共鳴に入っていることを観測している.この軌道配置は,イオ・エウロパと,エウロパ・ガニメデの 2 つの 2:1 の 2 体の平均運動共鳴からなっている.
\(\lambda_{i}\) を \(i\) 番目の衛星の平均黄経,\(\varpi_{i}\) を近点経度とすると,これら 3 つの衛星の間には
\[
\lambda_{1}-2\lambda_{2}+\varpi_{1}\sim 0\\
\lambda_{1}-2\lambda_{2}+\varpi_{2}\sim \pi\\
\lambda_{2}-2\lambda_{3}+\varpi_{2}\sim 0
\]
という関係がある.ここで \(\sim\) は「この値の周囲の狭い範囲を振動する」という意味合いである.最後 2 つの式から,
\[
\lambda_{1}-3\lambda_{2}+2\lambda_{3}\sim\pi
\]
という,3 衛星の平均黄経が入った式が得られる.この関係は一般に「ラプラス共鳴」として知られる.
惑星と衛星との潮汐力は散逸効果をもたらし,長いタイムスケールでの衛星の動径方向への軌道移動を引き起こす.ガリレオ衛星における潮汐散逸は,イオの表層における火山活動や,エウロパの氷地殻の下にある (おそらくガニメデにも) 液体の水の海を保持するための熱源などの現象の源となっている.
衛星が共鳴軌道の配置にある原因は長らく謎であったが,Goldreich (1965) が潮汐散逸による移動を介して衛星が共鳴に捕獲されるというアイデアを提唱した.その後衛星系についての数々の研究が行われた.
ガリレオ衛星に関しては,Yoder (1979) と Yoder & Peale (1981) が,イオの軌道移動は常に他のガリレオ衛星の移動よりも速いことを示唆した.その結果として,イオは最初にエウロパとの平均運動共鳴に捕獲され,それによりエウロパの移動速度が加速され,ガニメデとの共鳴に捕獲される.
Tittemore (1990) は,3 衛星のラプラス共鳴が確立される前には,エウロパとガニメデの離心率が大幅に上昇するカオス期間があったことを示した.これは大きな潮汐摩擦を 2 つの天体に対して誘起するため,カオス期間を経験したガニメデと経験していないカリストが非常に異なる表面を持つ理由を説明可能である.
似たシナリオは Malhotra (1991) と Showman & Malhotra (1997) でも提唱されている.これらの説では,カオスフェーズはイオ・エウロパ・ガニメデの間の 3 体の平均運動共鳴の通過によって引き起こされた可能性が非常に高いとした.これは Tittemore (1990) での主張とは対照的である.
短いタイムスケールでは,ラプラス共鳴の安定性は Celletti et al. (2019) によって確認されている.しかし潮汐散逸の結果としての長いタイムスケールでの安定性は不明である.
平均運動共鳴の 1, 2 番目の式に基づくと,イオに働く強い散逸効果は,共鳴を介してエウロパとガニメデの間にも分配される.このことはこれらの衛星が現在も移動していることを示しており,過去に起きたような重要な現象が将来再び発生する可能性があることを意味している.特に,カリストは現在いかなる平均運動共鳴にも入っておらず,その他のガリレオ衛星との共鳴を通過するかどうかという疑問がある.
潮汐散逸はイオ・エウロパ・ガニメデの外向き移動を引き起こしているため,最初に起きうる重要な共鳴は,カリストとガニメデが 2:1 の尽数関係になった際に発生する.
ガニメデとカリストの関係は,
\[
\lambda_{3}-2\lamnda_{4}+\varpi_{3}\sim 0
\]
となる.
ガニメデとカリストは 2:1 共鳴の鎖を成し,一度共鳴に捕獲されるとカリストは外側へと移動を始める.これは,イオの軌道に働く散逸の効果はすべての衛星に波及しており,これがカリストにも届いたことを示している.
このような進化を経た結果として衛星の軌道離心率は異なる値に変化するが,0.01 未満の小さい値に保たれる.
理論的にはこの種類の共鳴は,イオ・エウロパ・ガニメデの 3 つか,エウロパ・ガニメデ・カリストの 3 つの組み合わせ,あるいはこの両方が発生するケースが考えられる.しかし純粋なイオ・エウロパ・ガニメデの共鳴は,シミュレーションでは一時的な状態としてしか出現しなかった.
1 パターンのシミュレーションのみで,イオ・エウロパ・ガニメデの純粋な共鳴の状態が実現された.統計的な確率が低いため,このパターンについては調査を行わず,残りの 273 シミュレーションをケース B として分類した,これは,エウロパ.ガニメデ・カリストが純粋な 3 体平均運動共鳴状態に入っているものである.
ケース A とは異なり,ガニメデとカリストは,2 体の 2:1 共鳴には少なくとも直ちには捕獲されない.しかし,エウロパとの純粋な 3 体の共鳴には入る.全てのシミュレーションでカリストの軌道長半径は移動を開始し,軌道共鳴に入ったことを示している.
arXiv:2001.01106
Lari et al. (2020)
Long-term evolution of the Galilean satellites: the capture of Callisto into resonance
(ガリレオ衛星の長期進化:カリストの共鳴への捕獲)
概要
ガリレオ衛星は,平均運動共鳴と系に働く潮汐力のため,非常に複雑な軌道力学を持つ.木星とイオの間にはたらく強い散逸の影響は,いわゆるラプラス共鳴に入っているすべての衛星 (イオ,エウロパ,ガニメデの 3 つ) に広がり,これらの衛星の軌道を移動させる.ここでは,太陽系年齢の間にわたるガリレオ衛星の振る舞いを特徴づけ,ラプラス共鳴の安定性を定量化した.潮汐散逸によって,現在の軌道共鳴から脱出したり,あるいは新しい共鳴に捕獲されたりすることが可能になり,各衛星の軌道要素に大きな変化をもたらす.
今回は特に,カリストが共鳴に捕獲されうるかについて調査を行った.
現在の半解析モデルの改善バージョンを用いて,数百の伝播計算を行った.
ガニメデが外側にむかって動くにつれ,ガニメデはカリストとの 2:1 共鳴の位置に近付き,衛星系の一時的なカオス的な運動を誘起する.そのため,共鳴遭遇の結果を統計的な描像として表した.
衛星系は 2 つの異なる状態に落ち着きうる.
A) イオ・エウロパ,エウロパ・ガニメデ,ガニメデ・カリストの 3 つの 2:1 の 2 体共鳴の鎖,あるいは,
B) イオ・エウロパの 2 体の 2:1 共鳴を含む共鳴鎖で,少なくとも 1 つの純粋な 4:2:1 の 3 体共鳴を含む状態.
最も多く実現されるパターンは,エウロパ・ガニメデ・カリストの 3 体の共鳴が発生するケースである.
ケース A はシミュレーションの 56% で見られ,ラプラス共鳴は常に保たれ,衛星の軌道離心率は 0.01 未満の低い値にとどまる.
ケース B は 44% で見られ,ラプラス共鳴は一般に破壊され,ガニメデとカリストの離心率は最大で 0.1 まで上昇する.この軌道配置は不安定であり,系は新しい共鳴状態に移ることになる.
全てのケースで,カリストは他の衛星の共鳴運動によって押されて外側に移動を開始する.
今回の結果から,カリストが将来的に共鳴に捕獲される可能性は極めて高く,シミュレーションでは 100% のケースでカリストの共鳴捕獲が発生した.共鳴に入る正確なタイミングは,衛星系でのエネルギー散逸率の精密な値に依存する.
イオと木星の間の散逸に関して最も新しい推定値を仮定すると,共鳴への遭遇は今からおよそ 15 億年後に起きる.そのため,現在知られているラプラス共鳴の安定性は,少なくとも 15 億年の間は保証されることになる.
ガリレオ衛星の進化
ラプラス共鳴
ガリレオ衛星は木星の 4 つの大きな衛星で,1610 年にガリレオ・ガリレイによって発見された.木星から近い順に,イオ (1),エウロパ (2),ガニメデ (3),カリスト (4) の順に並んでいる.1798 年の段階で既に,ラプラスがイオ・エウロパ・ガニメデが 4:2:1 軌道共鳴に入っていることを観測している.この軌道配置は,イオ・エウロパと,エウロパ・ガニメデの 2 つの 2:1 の 2 体の平均運動共鳴からなっている.
\(\lambda_{i}\) を \(i\) 番目の衛星の平均黄経,\(\varpi_{i}\) を近点経度とすると,これら 3 つの衛星の間には
\[
\lambda_{1}-2\lambda_{2}+\varpi_{1}\sim 0\\
\lambda_{1}-2\lambda_{2}+\varpi_{2}\sim \pi\\
\lambda_{2}-2\lambda_{3}+\varpi_{2}\sim 0
\]
という関係がある.ここで \(\sim\) は「この値の周囲の狭い範囲を振動する」という意味合いである.最後 2 つの式から,
\[
\lambda_{1}-3\lambda_{2}+2\lambda_{3}\sim\pi
\]
という,3 衛星の平均黄経が入った式が得られる.この関係は一般に「ラプラス共鳴」として知られる.
軌道進化と共鳴捕獲
太陽系内の規則衛星の軌道は,一般に数十億年にわたる力学的進化が発生した結果である.惑星と衛星との潮汐力は散逸効果をもたらし,長いタイムスケールでの衛星の動径方向への軌道移動を引き起こす.ガリレオ衛星における潮汐散逸は,イオの表層における火山活動や,エウロパの氷地殻の下にある (おそらくガニメデにも) 液体の水の海を保持するための熱源などの現象の源となっている.
衛星が共鳴軌道の配置にある原因は長らく謎であったが,Goldreich (1965) が潮汐散逸による移動を介して衛星が共鳴に捕獲されるというアイデアを提唱した.その後衛星系についての数々の研究が行われた.
ガリレオ衛星に関しては,Yoder (1979) と Yoder & Peale (1981) が,イオの軌道移動は常に他のガリレオ衛星の移動よりも速いことを示唆した.その結果として,イオは最初にエウロパとの平均運動共鳴に捕獲され,それによりエウロパの移動速度が加速され,ガニメデとの共鳴に捕獲される.
Tittemore (1990) は,3 衛星のラプラス共鳴が確立される前には,エウロパとガニメデの離心率が大幅に上昇するカオス期間があったことを示した.これは大きな潮汐摩擦を 2 つの天体に対して誘起するため,カオス期間を経験したガニメデと経験していないカリストが非常に異なる表面を持つ理由を説明可能である.
似たシナリオは Malhotra (1991) と Showman & Malhotra (1997) でも提唱されている.これらの説では,カオスフェーズはイオ・エウロパ・ガニメデの間の 3 体の平均運動共鳴の通過によって引き起こされた可能性が非常に高いとした.これは Tittemore (1990) での主張とは対照的である.
ガリレオ衛星の将来的な進化
ガリレオ衛星が将来的にどう進化するかについてはあまり研究されていない.短いタイムスケールでは,ラプラス共鳴の安定性は Celletti et al. (2019) によって確認されている.しかし潮汐散逸の結果としての長いタイムスケールでの安定性は不明である.
平均運動共鳴の 1, 2 番目の式に基づくと,イオに働く強い散逸効果は,共鳴を介してエウロパとガニメデの間にも分配される.このことはこれらの衛星が現在も移動していることを示しており,過去に起きたような重要な現象が将来再び発生する可能性があることを意味している.特に,カリストは現在いかなる平均運動共鳴にも入っておらず,その他のガリレオ衛星との共鳴を通過するかどうかという疑問がある.
潮汐散逸はイオ・エウロパ・ガニメデの外向き移動を引き起こしているため,最初に起きうる重要な共鳴は,カリストとガニメデが 2:1 の尽数関係になった際に発生する.
結果
ケース A
ガリレオ衛星の進化計算では,628 パターンのシミュレーション中,354 パターンでケース A の状態へ進化した.これはガニメデとカリストが 2:1 共鳴に入る一方で,現在のイオ・エウロパ・ガニメデの共鳴,およびラプラス共鳴は保存されるというものである.ガニメデとカリストの関係は,
\[
\lambda_{3}-2\lamnda_{4}+\varpi_{3}\sim 0
\]
となる.
ガニメデとカリストは 2:1 共鳴の鎖を成し,一度共鳴に捕獲されるとカリストは外側へと移動を始める.これは,イオの軌道に働く散逸の効果はすべての衛星に波及しており,これがカリストにも届いたことを示している.
このような進化を経た結果として衛星の軌道離心率は異なる値に変化するが,0.01 未満の小さい値に保たれる.
ケース B
残りの 274 パターンのシミュレーションでは,ケース A よりも複雑な進化をたどり,4:2:1 の純粋な 3 体平均運動共鳴を含むものとなった.理論的にはこの種類の共鳴は,イオ・エウロパ・ガニメデの 3 つか,エウロパ・ガニメデ・カリストの 3 つの組み合わせ,あるいはこの両方が発生するケースが考えられる.しかし純粋なイオ・エウロパ・ガニメデの共鳴は,シミュレーションでは一時的な状態としてしか出現しなかった.
1 パターンのシミュレーションのみで,イオ・エウロパ・ガニメデの純粋な共鳴の状態が実現された.統計的な確率が低いため,このパターンについては調査を行わず,残りの 273 シミュレーションをケース B として分類した,これは,エウロパ.ガニメデ・カリストが純粋な 3 体平均運動共鳴状態に入っているものである.
ケース A とは異なり,ガニメデとカリストは,2 体の 2:1 共鳴には少なくとも直ちには捕獲されない.しかし,エウロパとの純粋な 3 体の共鳴には入る.全てのシミュレーションでカリストの軌道長半径は移動を開始し,軌道共鳴に入ったことを示している.
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論文関連の(ほぼ)個人用メモ。
arXiv:2001.00055
Gao & Zhang (2020)
Deflating Super-Puffs: Impact of Photochemical Hazes on the Observed Mass-Radius Relationship of Low Mass Planets
(スーパーパフを収縮させる:低質量惑星の観測された質量-半径関係における光化学ヘイズの影響)
ここでは,惑星大気中の高高度の光化学ヘイズが低質量惑星の半径の観測値を増加させ,これによりスーパーパフの性質を説明できるという説を提案する.
放射対流平衡にあるモデル大気を構築し,大気散逸とヘイズ分布の割合を計算した.計算には,ヘイズの凝結,沈降と拡散,惑星から流出する風による移流を考慮した.
大気の寿命とヘイズによる不透明度の影響を考慮した系外惑星の質量-半径図を開発した.
ヘイズによる不透明度は惑星からのアウトフローによって増幅され,若い (~1-10 億歳),温暖な (平衡温度 500 K 程度以上),低質量 (4 地球質量未満) の惑星は,大気中のヘイズによって最も顕著な半径の増加が発生しうることを示し,これは 3 倍程度の半径に相当する.これは,最も極端なスーパーパフの密度と年齢を再現可能なものである.
ケプラー51b の場合,ヘイズの影響を含めることで示唆されるガスの質量割合を 10% 未満にまで減少する.この値は,サプネプチューンの半径ギャップの大きな半径側にいる惑星と同程度の値である.このことは,ケプラー51b はこのポピュレーションに向かって進化している最中の惑星であることを示唆し,またいくつかの温暖なサブネプチューンはスーパーパフから進化したものである可能性を示唆している.
大気中のヘイズはスーパーパフとサプネプチューンの透過スペクトルを特徴に欠けたものにするが,これは最近の観測と整合的である.
この仮説は,スーパーパフの将来の中間赤外線波長での透過スペクトルの観測によって検証できる.この波長域では,惑星の半径は近赤外線の波長域で観測されたものの半分になると予測されるため,ヘイズの影響の有無を識別できると考えられる.
arXiv:2001.00055
Gao & Zhang (2020)
Deflating Super-Puffs: Impact of Photochemical Hazes on the Observed Mass-Radius Relationship of Low Mass Planets
(スーパーパフを収縮させる:低質量惑星の観測された質量-半径関係における光化学ヘイズの影響)
概要
最近の,低質量で大きな半径の惑星 (スーパーパフ) の発見は,既存の惑星形成と大気散逸の理論に対して疑問を投げかけるものである.これは,これらの天体に示唆されている大量のガス質量は,暴走降着とハイドロダイナミックエスケープに対して脆弱になるからである.ここでは,惑星大気中の高高度の光化学ヘイズが低質量惑星の半径の観測値を増加させ,これによりスーパーパフの性質を説明できるという説を提案する.
放射対流平衡にあるモデル大気を構築し,大気散逸とヘイズ分布の割合を計算した.計算には,ヘイズの凝結,沈降と拡散,惑星から流出する風による移流を考慮した.
大気の寿命とヘイズによる不透明度の影響を考慮した系外惑星の質量-半径図を開発した.
ヘイズによる不透明度は惑星からのアウトフローによって増幅され,若い (~1-10 億歳),温暖な (平衡温度 500 K 程度以上),低質量 (4 地球質量未満) の惑星は,大気中のヘイズによって最も顕著な半径の増加が発生しうることを示し,これは 3 倍程度の半径に相当する.これは,最も極端なスーパーパフの密度と年齢を再現可能なものである.
ケプラー51b の場合,ヘイズの影響を含めることで示唆されるガスの質量割合を 10% 未満にまで減少する.この値は,サプネプチューンの半径ギャップの大きな半径側にいる惑星と同程度の値である.このことは,ケプラー51b はこのポピュレーションに向かって進化している最中の惑星であることを示唆し,またいくつかの温暖なサブネプチューンはスーパーパフから進化したものである可能性を示唆している.
大気中のヘイズはスーパーパフとサプネプチューンの透過スペクトルを特徴に欠けたものにするが,これは最近の観測と整合的である.
この仮説は,スーパーパフの将来の中間赤外線波長での透過スペクトルの観測によって検証できる.この波長域では,惑星の半径は近赤外線の波長域で観測されたものの半分になると予測されるため,ヘイズの影響の有無を識別できると考えられる.
論文関連の(ほぼ)個人用メモ。
arXiv:1912.12305
Loyd et al. (2019)
Current Population Statistics Do Not Favor Photoevaporation over Core-Powered Mass Loss as the Dominant Cause of the Exoplanet Radius Gap
(現在の惑星統計は系外惑星半径ギャップの主要な原因としてコア駆動質量放出よりも光蒸発を好まない)
半径ギャップの原因が光蒸発であるなら,半径ギャップは惑星を持つ恒星の初期の高エネルギー放射と関連しているはずである.代わりに,もし原因がコア駆動質量損失であるなら,そのような傾向は存在しないはずである.
重要な点としては,半径ギャップと恒星が持つ特性の間の疑わしい傾向は,潜在的な恒星の輻射との相関から生じる.この潜在的な相関を考慮すると,半径ギャップと恒星の質量の間,あるいは近紫外線放射として測定された現在の恒星活動との間に見られる傾向は残らないことを示す.
恒星の現在の近紫外線放射は寿命初期の高エネルギー放射を示しているとは考えにくいため,ここでは半径ギャップと近紫外線放射との傾向が存在しないことは棄却されるが,一般的な利用目的として GALEX による近紫外線と遠紫外線の放射測定のカタログを提供する.
質量依存性を考慮した恒星の高エネルギー放射の進化を伴った惑星大気の光蒸発のシミュレーションから,恒星質量と半径ギャップの間に依存性が見られなかったことの解釈を行った.シミュレーションによると,現実的な誤差の原因の元では,半径ギャップと恒星質量の間には検出できない程度の依存性が生成される.
この解析やその他の文献から,系外惑星の半径ギャップの主要な原因として,光蒸発かコア駆動質量損失かのどちらも明確に支持する証拠は現時点では存在しないと結論付けた.しかし,よく特徴づけられた 4 地球半径未満の惑星の数が概ね 2 倍になった段階でこの解析を再び行うことで,光蒸発シナリオを確認するか否定することができるだろう.
4 地球半径未満の惑星で,半径測定の精度が 10% かそれより良いものの数は 1700 個に到達し,半径ギャップの存在はより明確になっている.
半径ギャップは,形成初期の厚い水素・ヘリウムエンベロープを保持している惑星と,それらを失ってしまったか,もしくは厚いエンベロープが形成されなかった惑星を隔てる明確な境界であると考えられる (Owen & Wu 2013など).
初期の大気を引き剥がすいくつかのメカニズムが提唱されている.
XUV 蒸発シナリオでは,恒星の極端紫外線と X 線 (XUV,波長 912 Å 未満) が,惑星大気の大部分を初期の 1 億年の間に失わせるとしている (Owen & Jackson 2012など).別の説として,コア駆動質量放出理論では,惑星のコアに残っている降着熱が,十億年かそれ以上の間にわたって大気損失を駆動すると考える (Ginzburg et al. 2016).
一方で系外惑星の統計は,原始惑星系円盤の散逸と巨大衝突に大きな違いを引き起こす理論は支持していない (Fulton & Petigura 2018).
XUV 蒸発とコア駆動質量放出理論の間には重要な違いがある.XUV 蒸発は中心の恒星の活動に依存する一方,コア駆動質量放出は恒星活動による違いが生じない.ここでは,半径ギャップを引き起こす原因をよりよく理解するために,その違いを使用する.
惑星半径-軌道周期平面上での半径ギャップの傾きは -0.08 ± 0.01 で,過去の -0.09 (+0.02, -0.04) (Van Eylen et al. 2018),-0.11 ± 0.02 (Martinez et al. 2019) と近い.
今回の研究で重要なのは,惑星への輻射に対する依存性である.惑星半径と惑星への日射量平面上では,正の傾き 0.10 を得た.半径ギャップは惑星に対する近紫外線の超過放射と遠紫外線の超過放射において正の依存性を示す.
半径ギャップは,惑星への異なる輻射の影響を考慮した後には,恒星質量との間の統計的に有意な傾向も見られなかった.この考慮は,系外惑星のサンプルにおける日射量と恒星質量の間の潜在的な相関の影響を取り除くために重要である.
XUV 蒸発にさらされた惑星の種族のシミュレーションによる検証では,理想的な環境下では,現在の系外惑星の統計で半径ギャップと恒星質量の間の逆相関が検出可能であることが示唆された.しかし個々の恒星の XUV 放射の測定値の分散を考慮し,現実的な測定誤差も考慮すると,予測された恒星質量の依存性は弱められる.
過去のいくつかの研究で報告された,半径ギャップと恒星質量の間の正の相関は,惑星の日射量と恒星質量の間の潜在的な相関によって説明されることを見出した.これは Gupta & Schlichting (2019) で示された解釈を確認するものであり,独立した発見である.
arXiv:1912.12305
Loyd et al. (2019)
Current Population Statistics Do Not Favor Photoevaporation over Core-Powered Mass Loss as the Dominant Cause of the Exoplanet Radius Gap
(現在の惑星統計は系外惑星半径ギャップの主要な原因としてコア駆動質量放出よりも光蒸発を好まない)
概要
系外惑星の半径ギャップの原因について調査を行った.半径ギャップとは,半径が 1.8 地球半径程度の惑星の個数が少ないというものである.半径ギャップの原因が光蒸発であるなら,半径ギャップは惑星を持つ恒星の初期の高エネルギー放射と関連しているはずである.代わりに,もし原因がコア駆動質量損失であるなら,そのような傾向は存在しないはずである.
重要な点としては,半径ギャップと恒星が持つ特性の間の疑わしい傾向は,潜在的な恒星の輻射との相関から生じる.この潜在的な相関を考慮すると,半径ギャップと恒星の質量の間,あるいは近紫外線放射として測定された現在の恒星活動との間に見られる傾向は残らないことを示す.
恒星の現在の近紫外線放射は寿命初期の高エネルギー放射を示しているとは考えにくいため,ここでは半径ギャップと近紫外線放射との傾向が存在しないことは棄却されるが,一般的な利用目的として GALEX による近紫外線と遠紫外線の放射測定のカタログを提供する.
質量依存性を考慮した恒星の高エネルギー放射の進化を伴った惑星大気の光蒸発のシミュレーションから,恒星質量と半径ギャップの間に依存性が見られなかったことの解釈を行った.シミュレーションによると,現実的な誤差の原因の元では,半径ギャップと恒星質量の間には検出できない程度の依存性が生成される.
この解析やその他の文献から,系外惑星の半径ギャップの主要な原因として,光蒸発かコア駆動質量損失かのどちらも明確に支持する証拠は現時点では存在しないと結論付けた.しかし,よく特徴づけられた 4 地球半径未満の惑星の数が概ね 2 倍になった段階でこの解析を再び行うことで,光蒸発シナリオを確認するか否定することができるだろう.
半径ギャップとその特徴
4 地球半径未満の系外惑星は 2 つの異なるグループに分類できる.この 2 つのグループは,1.8 地球半径周辺における惑星の存在頻度の急激な減少によって分割される (Fulton et al. 2017),これはしばしば,半径ギャップ (radius gap) と呼ばれる.4 地球半径未満の惑星で,半径測定の精度が 10% かそれより良いものの数は 1700 個に到達し,半径ギャップの存在はより明確になっている.
半径ギャップは,形成初期の厚い水素・ヘリウムエンベロープを保持している惑星と,それらを失ってしまったか,もしくは厚いエンベロープが形成されなかった惑星を隔てる明確な境界であると考えられる (Owen & Wu 2013など).
初期の大気を引き剥がすいくつかのメカニズムが提唱されている.
XUV 蒸発シナリオでは,恒星の極端紫外線と X 線 (XUV,波長 912 Å 未満) が,惑星大気の大部分を初期の 1 億年の間に失わせるとしている (Owen & Jackson 2012など).別の説として,コア駆動質量放出理論では,惑星のコアに残っている降着熱が,十億年かそれ以上の間にわたって大気損失を駆動すると考える (Ginzburg et al. 2016).
一方で系外惑星の統計は,原始惑星系円盤の散逸と巨大衝突に大きな違いを引き起こす理論は支持していない (Fulton & Petigura 2018).
XUV 蒸発とコア駆動質量放出理論の間には重要な違いがある.XUV 蒸発は中心の恒星の活動に依存する一方,コア駆動質量放出は恒星活動による違いが生じない.ここでは,半径ギャップを引き起こす原因をよりよく理解するために,その違いを使用する.
データ解析
解析に用いた惑星データは,以下の基準で抽出した.- 中心星の重力が 4-5 cm s-2 のものを抽出した.これは進化した恒星を除去するため.
- 4 地球半径未満の惑星.
- 惑星トランジットの衝突径数が 0.9 未満のもの.これは惑星半径と衝突径数の不定性の間に存在する強い相関を回避するため.
- 軌道周期が 100 日未満のもの.これは恒星からの輻射が半径ギャップを形成するのに不十分なほど弱い惑星を取り除くため.
- 惑星半径の測定精度が \(\sigma_{\rm P}/R_{\rm P}<0.1\) のもの,
結果
今回の解析で得られた半径ギャップのフィットは,過去の研究での報告と整合的であった.惑星半径-軌道周期平面上での半径ギャップの傾きは -0.08 ± 0.01 で,過去の -0.09 (+0.02, -0.04) (Van Eylen et al. 2018),-0.11 ± 0.02 (Martinez et al. 2019) と近い.
今回の研究で重要なのは,惑星への輻射に対する依存性である.惑星半径と惑星への日射量平面上では,正の傾き 0.10 を得た.半径ギャップは惑星に対する近紫外線の超過放射と遠紫外線の超過放射において正の依存性を示す.
結論
半径ギャップは,恒星の光度のうちの近紫外線光度の割合 (\(L_{\rm NUV_{\rm e}}/L_{\rm bol}\)) への依存性を示さなかった.このことは単に,恒星の現在における活動水準は,それらの初期の活動度との相関に乏しいことを示唆するものであり,半径ギャップの原因として XUV 蒸発を否定するものではない.半径ギャップは,惑星への異なる輻射の影響を考慮した後には,恒星質量との間の統計的に有意な傾向も見られなかった.この考慮は,系外惑星のサンプルにおける日射量と恒星質量の間の潜在的な相関の影響を取り除くために重要である.
XUV 蒸発にさらされた惑星の種族のシミュレーションによる検証では,理想的な環境下では,現在の系外惑星の統計で半径ギャップと恒星質量の間の逆相関が検出可能であることが示唆された.しかし個々の恒星の XUV 放射の測定値の分散を考慮し,現実的な測定誤差も考慮すると,予測された恒星質量の依存性は弱められる.
過去のいくつかの研究で報告された,半径ギャップと恒星質量の間の正の相関は,惑星の日射量と恒星質量の間の潜在的な相関によって説明されることを見出した.これは Gupta & Schlichting (2019) で示された解釈を確認するものであり,独立した発見である.
論文関連の(ほぼ)個人用メモ。
arXiv:1912.11406
Inderbitzi et al. (2019)
Formation of satellites in circumplanetary discs generated by disc instability
(円盤不安定性で生成された周惑星円盤での衛星の形成)
それぞれの計算で,ダスト・ガス比,散逸と再供給のタイムスケール,embryo の数とその移動開始位置を,ありうる範囲内でランダムに設定した.また円盤の構造は,大局的な円盤の 3 次元 SPH シミュレーションの結果から引用した.さらに,結果として形成される衛星系に対する惑星の軌道長半径の影響も調査し,惑星の軌道長半径として 50 AU を基準のケースとした.
基準ケースでは,形成される大部分の衛星は質量がガリレオ衛星に近いものになり,最大値は 3 地球質量程度で,典型的には散逸のタイムスケールと同程度のタイムスケールで衛星が形成される.また,およそ 10 地球質量相当の衛星が惑星に向かって移動て落下し,金属で惑星を汚染する.
惑星の軌道長半径の違いは,主に形成される円盤のサイズに影響を与える.惑星が恒星に近い場合は形成される衛星は軽くなり,形成のタイムスケールは長くなり,またより多くの衛星が惑星へと落下して失われる.これは,円盤が小さい場合は重い衛星がより容易に移動できるためである.
形成された衛星を検出できる期待値は,例えば E-ELT のような今後の強力な望遠鏡であっても,3% 以下と非常に低い.
arXiv:1912.11406
Inderbitzi et al. (2019)
Formation of satellites in circumplanetary discs generated by disc instability
(円盤不安定性で生成された周惑星円盤での衛星の形成)
概要
重力不安定性によって形成された,10 木星質量の巨大ガス惑星の周りの広がった低温な周惑星円盤における,衛星系の形成と進化について調査した.種族合成のアプローチを用い,衛星の胚子 (embryo) を持った円盤を用意し,それを移動され質量を降着させ,衝突させ,円盤が散逸するまでに生成された衛星について調べる.それぞれの計算で,ダスト・ガス比,散逸と再供給のタイムスケール,embryo の数とその移動開始位置を,ありうる範囲内でランダムに設定した.また円盤の構造は,大局的な円盤の 3 次元 SPH シミュレーションの結果から引用した.さらに,結果として形成される衛星系に対する惑星の軌道長半径の影響も調査し,惑星の軌道長半径として 50 AU を基準のケースとした.
基準ケースでは,形成される大部分の衛星は質量がガリレオ衛星に近いものになり,最大値は 3 地球質量程度で,典型的には散逸のタイムスケールと同程度のタイムスケールで衛星が形成される.また,およそ 10 地球質量相当の衛星が惑星に向かって移動て落下し,金属で惑星を汚染する.
惑星の軌道長半径の違いは,主に形成される円盤のサイズに影響を与える.惑星が恒星に近い場合は形成される衛星は軽くなり,形成のタイムスケールは長くなり,またより多くの衛星が惑星へと落下して失われる.これは,円盤が小さい場合は重い衛星がより容易に移動できるためである.
形成された衛星を検出できる期待値は,例えば E-ELT のような今後の強力な望遠鏡であっても,3% 以下と非常に低い.
論文関連の(ほぼ)個人用メモ。
arXiv:1912.10186
Davis et al. (2019)
TOI 564 b and TOI 905 b: Grazing and Fully Transiting Hot Jupiters Discovered by TESS
(TOI 564b と TIO 905b:TESS で発見されたかすめるようなトランジットと完全なトランジットをするホットジュピター)
今回発見されたのは,TOI 564b と TOI 905b である.これら 2 つの惑星のトランジットはまず TESS による観測で発見され,軌道周期はそれぞれ 1.651 日と 3.739 日であった.その後それぞれの系のフォローアップ観測を実施した.複数の波長フィルターでの測光観測,スペックル干渉計を用いた観測,および視線速度測定を含む.
TOI 564b は,データのフィッティングの結果,典型的なホットジュピターで質量は 1.463 木星質量,半径は 1.02 木星半径である.
TOI 905b も同様に典型的なホットジュピターで,0.667 木星質量,1.171 木星半径である.
どちらも太陽類似星のやや明るい (V~11) 中期 G 型星を公転している.
TOI 905b は恒星を完全にトランジットしているが,TOI 564b はトランジットの衝突径数が 0.994 と非常に大きく,grazing transit (かすめるようなトランジット) を起こしている.Grazing transit を起こしている惑星の検出例はわずか 20 個程度であり,それらの中では非常に明るいもののひとつである.そのため TOI 654b は,数年の時間スケールでの傾斜角とトランジット継続時間の小さな変化に対する grazing transit の感度を活用することによって,さらなる小さい非トランジット惑星を探査するための非常に魅力的な系のひとつである.
半径:1.088 太陽半径
光度:1.078 太陽光度
有効温度:5640 K
金属量:[Fe/H] = 0.143
年齢:73 億歳
距離:197.4 pc
半径:1.02 木星半径
質量:1.463 木星質量
密度:1.7 g cm-3
軌道長半径:0.02734 AU
軌道離心率:0.072
平衡温度:1714 K
半径:0.918 太陽半径
光度:0.730 太陽光度
有効温度:5570 K
金属量:[Fe/H] = 0.14
年齢:34 億歳
距離:150.2 pc
半径:1.171 木星半径
質量:0.667 木星質量
密度:0.515 g cm-3
軌道長半径:0.04666 AU
軌道離心率:0.024
平衡温度:1192 K
arXiv:1912.10186
Davis et al. (2019)
TOI 564 b and TOI 905 b: Grazing and Fully Transiting Hot Jupiters Discovered by TESS
(TOI 564b と TIO 905b:TESS で発見されたかすめるようなトランジットと完全なトランジットをするホットジュピター)
概要
Transiting Exoplanet Survey Satellite (TESS) による 2 つの新しいホットジュピターの発見と確認について報告する.今回発見されたのは,TOI 564b と TOI 905b である.これら 2 つの惑星のトランジットはまず TESS による観測で発見され,軌道周期はそれぞれ 1.651 日と 3.739 日であった.その後それぞれの系のフォローアップ観測を実施した.複数の波長フィルターでの測光観測,スペックル干渉計を用いた観測,および視線速度測定を含む.
TOI 564b は,データのフィッティングの結果,典型的なホットジュピターで質量は 1.463 木星質量,半径は 1.02 木星半径である.
TOI 905b も同様に典型的なホットジュピターで,0.667 木星質量,1.171 木星半径である.
どちらも太陽類似星のやや明るい (V~11) 中期 G 型星を公転している.
TOI 905b は恒星を完全にトランジットしているが,TOI 564b はトランジットの衝突径数が 0.994 と非常に大きく,grazing transit (かすめるようなトランジット) を起こしている.Grazing transit を起こしている惑星の検出例はわずか 20 個程度であり,それらの中では非常に明るいもののひとつである.そのため TOI 654b は,数年の時間スケールでの傾斜角とトランジット継続時間の小さな変化に対する grazing transit の感度を活用することによって,さらなる小さい非トランジット惑星を探査するための非常に魅力的な系のひとつである.
パラメータ
TOI 564 系
TOI 564
質量:0.998 太陽質量半径:1.088 太陽半径
光度:1.078 太陽光度
有効温度:5640 K
金属量:[Fe/H] = 0.143
年齢:73 億歳
距離:197.4 pc
TOI 564b
軌道周期:1.651144 日半径:1.02 木星半径
質量:1.463 木星質量
密度:1.7 g cm-3
軌道長半径:0.02734 AU
軌道離心率:0.072
平衡温度:1714 K
TOI 905 系
TOI 905
質量:0.968 太陽質量半径:0.918 太陽半径
光度:0.730 太陽光度
有効温度:5570 K
金属量:[Fe/H] = 0.14
年齢:34 億歳
距離:150.2 pc
TOI 905b
軌道周期:3.739494 日半径:1.171 木星半径
質量:0.667 木星質量
密度:0.515 g cm-3
軌道長半径:0.04666 AU
軌道離心率:0.024
平衡温度:1192 K
天文・宇宙物理関連メモ vol.550 Ginzburg et al. (2017) コア駆動型の質量放出による小型惑星分布の谷の説明
天文・宇宙物理関連メモ vol.888 Fulton & Petigura (2018) Gaia の最新データを用いた惑星半径ギャップの恒星質量依存性