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論文関連の(ほぼ)個人用メモ。



arXiv:1912.10792
Staab et al. (2019)
A compact multi-planet system around a bright nearby star from the Dispersed Matter Planet Project
(Dispersed Matter Planet Project での明るい近傍の恒星周りのコンパクトな複数惑星系)

概要

The Dispersed Matter Planet Project は,Ca II H&K 線での彩層放射が異常に低い恒星を観測対象としている.

高精度,高頻度の視線速度観測から,F8V 星の HD 38677 / DMPP-1 が 4 つの短周期惑星を持つことが明らかになった.中心星は \(\log\left(R’_{\rm HK}\right)=-5.16\) と低い値を示し,蒸発した高温惑星からの星周ガスが存在し,恒星からの放射を吸収していることを示唆している.

惑星は軌道周期が 2.9-19 日で,スーパーアース (~3 地球質量) から海王星質量 (~24 地球質量) までの惑星からなるコンパクトな配置の惑星系である.これらの輻射を受けている惑星は chthonian (クトニア惑星) である可能性がある.つまり,海王星砂漠を越える間に質量放出をした後の,巨大ガス惑星のコアの残骸である可能性がある.

パラメータ

DMPP-1
別名:HD 38677
スペクトル型:F8V
距離:62 pc
等級:V = 7.98
有効温度:6196 K
半径:1.26 太陽半径
質量:1.21 太陽質量
年齢:20.1 億歳
DMPP-1b
軌道周期:18.57 日
軌道離心率:0.083 未満
最小質量:24.27 地球質量
軌道長半径:0.1462 AU
DMPP-1c
軌道周期:6.584 日
軌道離心率:0.057 未満
最小質量:9.60 地球質量
軌道長半径:0.0733 AU
DMPP-1d
軌道周期:2.882 日
軌道離心率:0.070 未満
最小質量:3.35 地球質量
軌道長半径:0.0422 AU
DMPP-1e
軌道周期:5.516 日
軌道離心率:0.070 未満
最小質量:4.13 地球質量
軌道長半径:0.0651 AU

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論文関連の(ほぼ)個人用メモ。



arXiv:1912.10793
Barnes et al. (2019)
An ablating super-Earth in an eccentric binary from the Dispersed Matter Planet Project
(Dispersed Matter Planet Project での離心連星系にある蒸発するスーパーアース)

概要

地球質量の系外惑星は検出が難しい.Dispersed Matter Planet Project (DMPP) では,検出可能な低質量の系外惑星を持っていると思われる恒星を観測対象として選定している.

DMPP-3 (HD 42936) のスペクトルは星周物質による吸収の兆候が見られ,これは恒星に近接する蒸発する惑星からの質量放出を示唆するものである.ここでは,視線速度観測による,高軌道離心率を持つ軌道周期 507 日の連星天体と,中心星まわりを 6.67 日で公転する高温なスーパーアースの発見を報告する.

DMPP-3A は太陽型星だが,DMPP-3B は水素核融合を起こす質量よりわずかに大きい.連星の軌道長半径は 1.22 ± 0.22 AU であり,連星の片方のみを公転する惑星を持つ連星系としては,他の同様の系と比べて極めて近い距離にある.

この系のような軌道配置は希少であり,力学相互作用の存在を示唆している.しかしこの系の進化の歴史は明らかではない.

今回発見された惑星 DMPP-3Ab は巨大惑星の前駆体の残骸コアである可能性があり,恒星の周囲を覆う星周ガスの存在が示唆されていることと整合的である.

背景

これまでに発見されている系外惑星のうち,多重星系中に発見されているのはわずか 5% である.しかし,太陽系に最も近い系外惑星であるプロキシマ・ケンタウリb は三重星系であるアルファ・ケンタウリ星系にある.

さらに,多重星系中に発見されている惑星のうち,質量が測定されている惑星の 89% は海王星よりもずっと重いが,ケプラーによる観測の結果からは,サブアースからスーパーアースサイズの惑星が一般に最も多いことが示唆されている.そのため,多重星系の中には多数の未発見の低質量惑星が存在しているはずである.

しかしケプラーの統計によると,連星の軌道間隔が 47 AU 未満の系では,惑星の存在頻度は広い間隔を持つ連星や単独で存在する恒星の 1/3 になる.

連星系における惑星は,2 つのカテゴリに分類される.連星 2 つの周囲を公転する周連星惑星 (P-type) と,連星の中の片方 1 つの恒星を公転する S-type 惑星である.後者のタイプの惑星は長周期連星系で発見されており,この場合の連星の軌道長半径は 10 - 28000 AU である.これは,連星が近接している場合,原始惑星系円盤の潮汐切り取りが発生し,また連星からの力学的擾乱によって微惑星の相対速度が上昇して惑星形成に不利に働くことを考えると,驚くべきことではない.

今回発見された惑星系は独特な存在である.
スーパーアースが S-type の惑星として存在しており,連星系は離心率が大きく,軌道長半径はわずか 1.22 ± 0.22 AU しかない.そのためこの系は力学的な進化,例えば Kozai-Lidov 機構などの影響を調べる上で良い対象である..

Dispersed Matter Planet Project について

このプロジェクトは,惑星を持つ中心星のうちのいくつかが,異常に減衰された彩層放射を持つという観測事実が動機となっている.

活動領域を持たない低温な恒星の場合,Ca II H&K 線のコア放射は彩層での非輻射加熱によって生み出される.この活動指標の基礎レベルとして \(\log\left(R’_{\rm HK}\right)=-5.1\) という値が用いられる.基礎レベルより低い値であることは,星周物質によって恒星からの放射が吸収されていることを示唆する.例えば,近接して公転する惑星から蒸発したガスなどによる吸収である.

今回観測対象とした主星 DMPP-3 は,低速自転の金属量が豊富な明るい恒星である.活動度は -5.14 で,年老いた不活発な主系列星に予想される値をわずかに下回る.そのため DMPP の観測対象として選定された.

パラメータ

DMPP-3A
別名:HD 42936
等級:V = 9.09
スペクトル型:K0V
距離:48.9 pc
有効温度:5138 K
金属量:[Fe/H] = 0.18
半径:0.91 太陽半径
質量:0.87 太陽質量
年齢:109 億歳
DMPP-3Ab
軌道周期:6.6732 日
軌道離心率:0.140
最小質量:2.58 地球質量
軌道長半径:0.0662 AU
DMPP-3B
軌道周期:506.844 日
軌道離心率:0.594
質量:79.9 木星質量
軌道長半径:1.221 AU

伴星について

伴星である DMPP-3B の最小質量は 79.9 木星質量 (0.076 太陽質量) であり,水素燃焼に必要な質量 (0.075 太陽質量,78.6 木星質量) をわずかに上回る.そのため,この天体は水素燃焼を維持している L 型矮星だろうと考えられる.

惑星のトランジット確率

軌道周期からは,軌道配置がランダムだとするとトランジット確率は 6.4% と推定される.しかし角運動量を考慮すると,惑星から蒸発した物質は惑星の軌道平面に濃集して残ると考えられる.そのため,ランダム配置を元にして推定した値よりもトランジット確率は高いと思われる.

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論文関連の(ほぼ)個人用メモ。



arXiv:1912.10874
Haswell et al. (2019)
Dispersed Matter Planet Project Discoveries of Ablating Planets Orbiting Nearby Bright Stars
(Dispersed Matter Planet Project での近傍の明るい恒星を公転する蒸発する惑星の発見)

概要

強く輻射を受けているいくつかの近接系外惑星は,異常に低い恒星彩層放射を示す恒星を公転している.ここでは,炙られている惑星からの質量放出によって供給されている星周ガスが異常の原因であると解釈し,この仮説を実証する統計を報告する.

近傍の明るい主系列星 ~3000 個のうち ~40 個が,質量を失いつつある未発見の惑星の存在を示唆する,抑制された彩層放射を持つ.The Dispersed Matter Planet Project では,高精度の高頻度視線速度測定を用いてこれらの惑星を検出することを目的としている.

ここでは,2 つの惑星系 DMPP-1,DMPP-3 の観測結果のまとめと,DMPP-2 の全観測結果について報告する.

DMPP-2 系は,かじき座ガンマ型変光星 (γ-Doradus pulsator) である HD 11231 が中心星である.惑星は最小質量が 0.469 木星質量,軌道周期は 5.207 日である.60 回を超える視線速度観測からこの短周期惑星が検出された.

今回の炙られている惑星は,海王星砂漠 (短周期の中間質量の惑星が欠乏しているパラメータ領域) に関係する,短寿命のフェーズに存在している可能性がある.惑星から放出された星周ガスを観測することで,惑星の組成の解析が可能となる.そのため,蒸発する岩石惑星における観測的な系外地質学の研究を行うことが可能となる.

背景

初めて発見された系外惑星は短周期軌道の重い惑星だったが,低質量の惑星は初発見から 20 年近くの間よく分かっていなかった.しかし最近のケプラーによる観測結果では,低質量の超短周期惑星 (ultra-short period planet, USP planet) が複数発見されており,G 型主系列星のうち 0.51% が軌道周期 1 日未満の USP 惑星を持つ.これらの大部分は 2 地球半径より小さいサイズを持つ.

ケプラーの観測視野は狭く,さらにケプラーが発見する惑星は一般に遠方に存在しているため,詳細な研究が難しい.ケプラーが発見した USP 惑星に似たものは地球近傍にも存在するはずであるが,存在頻度が 0.5% であることを考えると,明るい近傍の天体を視線速度法での観測ターゲットとして USP 発見するためには多大な努力が必要である.

The Dispersed Matter Planet Project (DMPP) では,過去の恒星のスペクトル情報を元にして,短周期惑星を持っていることが期待される天体を観測対象に選出している.
この論文では,(i) トランジットするホットジュピターの観測からの推論を用いて発展させた,DMPP での観測対象の選定基準の動機と,その基礎となる仮説を説明し,(ii) その背後にある仮説を検証するために今回の初めて検出された 3 惑星の統計を用い,(iii) また DMPP-2 の発見と視線速度サーベイの方法論について説明する.

異常に活動度の低い恒星

惑星からの質量放出と恒星活動度指標

ホットジュピター HD 209458b を取り囲む水素の外気圏が発見されて以降,高温な巨大惑星では質量損失は普遍的な現象であることを示唆する証拠が発見されている.特に高温なホットジュピターで軌道周期が 1.09 日の WASP-12b は,惑星のロッシュローブを満たす外気圏に囲まれていることが分かっている.この事は,強く輻射を受けるこの惑星が質量を失っていることを示唆している.

WASP-12b からの質量放出は,WASP-12 の周囲に薄い星周ガスを供給している.WASP-12 のスペクトルにおける Mg II h & k のスペクトル線のコア部分は,フラックスがゼロであることが観測されている.これは,この恒星の彩層放射が異常に完全に欠乏しているか,もしくは放射が何らかの物質によって吸収されているかのどちらかであると考えられる.WASP-12 の周りには質量を放出し続けている惑星 WASP-12b が存在しているため,後者の説明がより自然である.

また Ca II H & K 線のコアフラックスも異常に低く,視線方向の星間物質の柱密度は,観測された恒星の彩層活動による放射の少なさを説明するには不十分である.そのため,惑星から散逸した物質が恒星の周囲にトーラス状に存在している可能性が示唆される.

The Dispersed Matter Planet Project でのターゲット選定

FGK 型星の恒星活動は一般に \(\log R’_{\rm HK}\) でパラメータ化することができる.これはカルシウムの Ca II H&K 線の彩層放射と,全体のボロメトリック放射との比から導出される数値である.主系列星の値はほぼ不変で,-5.1 以上の値を示す.これは活動的ではない太陽型星が示す基準レベルの数値であり,静穏な時期の太陽の値に相当する.

WASP-12 は,\(\log R’_{\rm HK}\) が測定されている恒星の分布からは異常に逸脱しており,-5.5 という値を示す.また,後の研究では近接系外惑星を持つ恒星では 1/4 が基準を下回る値を示すことが分かっている.

興味深いことに,散在星の主系列星のうち 1.5% は基準値よりも下にある.ここでは,これらの基準値より低い値を示す恒星は,未発見の炙られている近接惑星を持っているという仮説を提唱する.この仮説を検証するため,DMPP プロジェクトにおいて,\(\log R’_{\rm HK}<-5.1\) を示す明るい主系列星を観測対象として抽出して視線速度観測を行った.

パラメータ

DMPP-2
別名:HD 11231
スペクトル型:F5V
距離:134 pc
等級:V = 8.4
有効温度:6500 K
質量:1.44 太陽質量
半径:1.78 太陽半径
光度:1.27 太陽光度
年齢:20 億歳

HD 11231 は γ-Doradus (かじき座ガンマ型変光星) である.
DMPP-2b
軌道周期:5.2072 日
最小質量:0.457 木星質量
軌道長半径:0.0664 AU

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arXiv:1912.08820
Howe et al. (2019)
Survival of Primordial Planetary Atmospheres: Photodissociation Driven Mass Loss
(初期惑星大気の存続:光解離駆動の質量放出)

概要

太陽系外惑星からの質量損失における最も研究されたメカニズムは,XUV による電離を介した光蒸発であり,特に強く輻射を受ける惑星においてよく研究されている.

しかし,水素分子の遠紫外線 (FUV) 解離の低エネルギー領域も,理論的には低質量の惑星の大気の蒸発を駆動し得る.これは,水素の解離エネルギーは,地球サイズの惑星の重力井戸からの陽子 1 個あたりの脱出エネルギーよりも一桁大きいからである.

初期地球のような温暖な惑星では,従来の微惑星降着モデルでは天体の衝突による大気浸食が大気散逸過程において支配的であると予想される.しかしこの効果は惑星形成のペブル集積シナリオでは大きく減少するため,その他の質量損失過程が主要な寄与をすることになる.

ここでは,この FUV による光解離メカニズムに従来の光電離と同じ記述を適用し,ペブル集積シナリオでの質量損失を推定した.
その結果,エネルギー律速の光解離は,初期の地球類似天体の水素大気を,地球の歴史の初期のような短い間だけではなく,数十億年の長期間にわたって散逸させうることを見出した.

天体衝突による大気浸食は,もし惑星質量の 1% が微惑星の集積によって形成される場合,圧力にして ~2300 bar に相当する量の水素を取り除く.この量は,その他の機構による質量放出を上回る.

同じ結果をスーパーアースとミニネプチューンに対して適用した.これらの天体は地球類似惑星よりわずかに大きな散逸エネルギーを持つ.その結果,このメカニズムは惑星の初期大気から水素を選択的に除去し得ることを見出し.またそ従来の乾燥した形成モデルに比べて多くの量の初期の水を残す.

これらの結果の,地球形成を含む岩石惑星形成モデルへの応用について議論を行った.また,観測されている系外惑星からの質量放出に対してこの解析を応用できる可能性についても議論する.

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論文関連の(ほぼ)個人用メモ。



arXiv:1912.09192
Hedman et al. (2019)
Photometric analyses of Saturn's small moons: Aegaeon, Methone and Pallene are dark; Helene and Calypso are bright
(土星の小衛星の測光解析:アイガイオン,メトネとパレネは暗く,ヘレネとカリプソは明るい)

概要

衛星の細長い形状を明示的に考慮し,異なる衛星の間の比較を容易にする測光モデルを用いて,土星の小型の衛星の表面輝度の調査を行った.
このモデルを用いた土星探査機カッシーニの撮像データの解析から,アイガイオン,メトネ,パレネは,近傍の中間サイズの衛星のこれまでの観測から与えられている傾向から予測されるよりも暗いことが判明した.一方で,トロヤ衛星のカリプソとヘレネは,軌道を共有する衛星テティスとディオネに比べてずっと明るい表面を持っていることが分かった.

これらの観測は,土星衛星の表面輝度は E 環の粒子の局所的な流束によって左右されているという理論とは非整合的であり,その他の現象が表面組成に影響を及ぼしていることを強く示唆するものである.

アイガイオン,メトネ,パレネの暗さは,高エネルギーの陽子の存在と相関しており,高エネルギー放射が小さい衛星を暗化させる原因となっていることを示唆している.一方で,プロメテウスとパンドラは近傍のチリの多い F 環との相互作用によって表面が明るくなっているように思われる.

またカリプソとヘレネの輝度が予測より明るいことの説明としては,増加したダストのフラックスが原因である可能性がある.しかし,E 環にはこれらの 2 衛星を選択的に明るくするような明確な構造は見られない.そのため,E 環の粒子の軌道要素に関連する,流束の非対称性につながる微妙な原因があるか,あるいは最近これらの衛星の輝度を一時的に増加させる何かが発生しているかしている必要がある.

土星の小型衛星について

土星の規則衛星は非常に多様なスペクトルおよび測光特性を持つ.

エンケラドゥスは非常に明るく氷が豊富な表面を持ち,イアペトゥスの後行半球は土星の不規則衛星に由来するデブリの層で覆われた極めて暗い表面を持つ.タイタンと環の間を公転する中間サイズの衛星 (ミマス,エンケラドゥス,テティス,ディオネ,レア) は,観測されたスペクトルと測光データに基づくと,多くは E 環との相互作用と関係していると考えられる.

この広く薄い E 環は,ダスト程度の大きさの氷豊富な粒子から出来ており,エンケラドゥスの地質学的活動によって生成され,それぞれの衛星表面にそれぞれの割合で衝突している.E 環の明るさと密度は,これらの衛星の可視光と電波での幾何学的アルベドと強く相関している (Verbiscer et al. 2007,Ostro et al. 2010など).またスペクトルの特徴は水氷の吸収バンドの深さに似ている.さらにこれらの衛星の先行半球と後行半球には明るさの非対称性があり,衛星表面への E 環粒子の流束の違いに起因すると思われる.

しかし,E 環内を公転するいくつかの小さい衛星には,表面の散乱特性が大きい衛星に観測されている傾向とは乖離しているものがある.非常に小さい 4 衛星 (アイガイオン,アンテ,メトネ,パレネ) は E 環のすぐ内側に発見されている.

アイガイオンは G 環の中のヤヌスとミマスの間に位置しており,一方でメトネ,アンテ,パレネはミマスとエンケラドゥスの間を公転している.そのため,これらの衛星はヤヌス,ミマス,エンケラドゥスと同じ傾向に従うことが期待されるが,実際にはその傾向が予測するよりもいくらか暗い (Thomas et al. 2018,Verbiscer et al. 2018).一方で,テレストとカリプソはテティスと軌道を共有する小さい衛星であり,ヘレネとポリデウセスはディオネの軌道を共有している.しかしこれらは,軌道を共有する大きい衛星と同じ分光・測光学的特徴を持っているようには見えない.

これらの天体の輝度を推定する上での主要な困難点は,これらの天体の多くはかなり細長い形状であり,明るさが観測者と太陽との相対的な配置に大きく依存して変化することである.そのため,任意の位相角での積分した輝度の推定には大きな分散を生じる.

幸いにもこれらの天体は自転が同期しており,太陽と探査機に対する衛星の配置は確実に予測することができる.さらにこれらの衛星のほとんど全ては,形状を決定できるほどの十分な分解能で観測されており,アイガイオン,メトネ,パレネは特に完全な楕円体に非常に近いことが観測されている.そのため,形状に関連した明るさの変動をモデル化することが可能である.

まとめ

  • プロメテウスとパンドラは,それらの内側と外側を公転する衛星に比べて明るく,F 環からのダストがこれらの衛星の表面を明るくしていることを示唆している.
  • ヤヌスとエピメテウスは先行半球が後行半球よりも明るく,E 環の粒子の衝突から期待される表面のパターンと整合的である.
  • アイガイオン,メトネ,パレネは全て,E 環の中のそれらの位置から予測されるよりも暗い表面を持っている.これは高エネルギーフラックスの強い流束に起因するものである可能性が高い.
  • アイガイオンとメトネのスペクトルデータは,これらの衛星を暗くしている何らかの物質は,広い範囲の波長に渡ってこの衛星の明るさを減少させ,明確なスペクトル特徴を持たないことを示唆している.
  • 測光データからは,アンテの形状はおそらくメトネと類似していると考えられる.
  • パレネの先行側は後行側よりもわずかに暗い.
  • テレストとポリデウセスの表面輝度は,これらと軌道を共有している大きい天体 (それぞれ,テティスとディオネ) と類似している.
  • カリプソはテティスとテレストよりもずっと明るく,一方でヘレネはディオネとポリデウセスよりずっと明るい.これらの現象は,E 環の粒子の非対称性か,最近の大きな衝突体との衝突によるものである可能性がある.

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