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論文関連の(ほぼ)個人用メモ。



arXiv:1707.00740
Berardo & Cumming (2017)
Hot Start Giant Planets Form With Radiative Interiors
(輻射的な内部を伴って形成するホットスタート巨大惑星)

概要

巨大ガス惑星のホットスタートコア降着形成モデルでは,惑星の内部は通常は全対流状態であると仮定される.ここでは,ホットスタートの外側境界条件を仮定した惑星の,詳細な内部進化の計算を行い,そのような惑星は実際には半径方向に増加する内部エントロピー分布を形成し,その結果として内部は対流的ではなく放射的になることを示す.

熱い外側境界では,降着するエンベロープが内部に滑らかに一致しなくなるような内部の adiabat のエントロピーの最小値が存在する.しかし代わりに高いエントロピーを持った物質を,成長する内部に注入する.その結果,惑星の内部での,形成中に降着する微惑星によって供給される重元素の混合が一時的に抑制される.これによって作られる組成勾配は,降着後の冷却の間の対流を阻害する可能性があり.観測される惑星の冷却曲線を変える可能性がある.

しかし,均質な組成を持ち,対流が惑星の冷却に伴って内部に発達する場合でも,冷却タイムスケールにおける違いが直接撮像されるガス惑星の質量の推定値を変える可能性がある.

研究背景

巨大ガス惑星は,~ 10 地球質量のコアにガスが暴走的に降着するコア降着か,ガス円盤からの直接崩壊によって形成されると考えられる.

若く重い巨大惑星が直接撮像観測され,そのような惑星の,形成から ~ 107 年経過後の熱的状態や,大気の組成についてが明らかにされつつある.

一方,太陽系では木星探査機ジュノー (Juno) によって,木星の重力モーメントが詳細に測定されている (Bolton et al. 2017).これによると,木星の固体コアは希薄になっていて,木星半径の 0.3 倍程度の範囲まで広がっている事が示唆されている (Wahl et al. 2017).この事は,コアは進化の過程で上方に混合されうることや,あるいは形成時の重元素の分布について教えてくれる.

コア降着シナリオでの主要な不明点は,暴走的降着を起こしている最中に惑星表面で形成される衝撃波の効率である (Marley et al. 2007).落下する物質の重力エネルギーのどれだけが衝撃波部分で放射されるかに依存して,形成後の惑星の光度は桁で変化する.これによって,惑星質量の推定に不定性が生じる (Marley et al. 2007など).
降着時に衝撃波部分からの放射損失が大きい場合は形成直後の惑星は比較的低温であり,これはコールドスタート (cold start) に対応する.逆に放射損失が非効率的な場合は多くの熱を取り込めるため形成直後の惑星は比較的高温になり,これがホットスタート (hot start) に対応する.

最近の研究では,ホットスタートがコールドスタートよりも有り得そうだという事が示唆されている.
Marleau et al. (2017) では,衝撃波の 1 次元輻射流体シミュレーションを行い,重力エネルギーの大部分は放射で失われずに惑星に飲み込まれると示唆した.Berardo et al. (2017) では,衝撃波の温度を自由パラメータとして取り扱って巨大惑星の成長を研究した.その結果,Marley et al. (2007) でのコールドスタートは,円盤の温度に近い,非常に低い境界温度を必要とすることを指摘した.この温度は,惑星の光球面の温度よりも低い.

ここでは,ホットスタートを仮定した状況でのガス惑星の暴走的降着状態の間の成長モデルを提案する.ここでは,Modules for Experiments in Stellar Astrophysics (MESA) コード (Paxton et al. 2011, 2013, 2015) を使用して,ホットスタートの境界条件で内部構造を計算した.その結果,惑星は継続してエントロピーが増加する層を形成し,対流の発達を阻害し放射的 (エネルギー輸送が放射で行われる) な内部を持つことを示す.

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論文関連の(ほぼ)個人用メモ。



arXiv:1707.00779
Jones et al. (2017)
A hot Saturn on an eccentric orbit around the giant star EPIC228754001
(巨星 EPIC 228754001 周りの偏心軌道上のホットサターン)

概要

視線速度で検出された惑星の大部分は太陽型星を公転しているが,一部は巨星の周りでも発見されている.これらの惑星系は,太陽型星の周りの惑星と比べると異なる軌道の特徴を示す.特に,視線速度法のサーベイでは,巨星周りでの近接した軌道にある巨大惑星が欠乏していることが示されている.これは太陽型星を公転する,ホットジュピターとして知られる惑星のポピュレーションとは対照的である.

この軌道長半径の分布の特徴を引き起こす理由として,恒星の進化の結果とするもの,あるいは中間質量の恒星の周りでは惑星形成・進化プロセスが太陽型星と異なることが原因とするもの,あるいはその両方とするものが仮説として提案されている.

しかし,過去数年で,いくつかの短周期 (10 日未満) のトランジット惑星が,巨星の周りにも発見されている.これは,初期のケプラーミッションや,その後の two-wheels extension の K2 ミッションによって得られた精密な測光データによるものである.

ここでは,K2 ミッションの field 10 におけるトランジット惑星の独立した発見について報告する.この惑星は,Grunblatt et al. (2017) によっても最近発見が報告された.

中心星は最近巨星の段階に進化した恒星であり,有効温度 4878 K,金属量 [Fe/H] = -0.11 である.
惑星 EPIC 228754001b の主要なパラメータは,軌道周期 9.1708 日,軌道離心率 0.290,0.495 木星質量,1.089 木星半径である.

この惑星は,巨星の周りを 0.1 AU 未満の距離で公転する 5 つ目の惑星で,その中では最も軌道離心率が大きい.
※関連記事
天文・宇宙物理関連メモ vol.503 Grunblatt et al. (2017) RGB 星まわりでの膨張したガス惑星の発見と膨張機構の検証
今回の発見報告と同一の惑星について,この論文よりも先行して報告している論文.






系外惑星の観測はしばしば他のグループと競合することがありますが,これもその一例のようです.

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論文関連の(ほぼ)個人用メモ。



arXiv:1706.10017
Yoshida & Terai (2017)
Small Jupiter Trojans Survey with Subaru/Hyper Suprime-Cam
(すばるハイパー・シュプリーム・カムによる小型の木星トロヤ群天体サーベイ)

概要

2015年3月30日に,8.2 m すばる望遠鏡の Hyper Suprime-Cam (HSC) を使用して木星のラグランジュ点 L4 にあるトロヤ群小惑星を観測した.観測の検出限界は 24.4 mag であり,L4 に位置する木星トロヤ群天体を 631 個検出した.

このうち,絶対等級が H < 17.4 で,太陽中心距離が 5.5 AU より小さい 481 天体を,無バイアスサンプルとして選択し,それらの天体のサイズ分布を調べた.

天体の幾何学的アルベドを 0.07 と仮定 (Grav et al. 2012) すると,この無バイアスサンプル中のサイズの範囲は直径 2 - 20 km であった.

これらの天体の累積サイズ分布を,単一の傾きのべき乗でフィットした.その結果,N ∝ D-b とした場合,b = 1.84 ± 0.05 となった (N は個数,D は直径).これに対応する絶対等級分布のべき乗則は,N(H) ∝ 10αH とした場合,α = 0.37 ± 0.01 であった.この α の値は,Wong & Brown (2015) で指摘されているうちの,暗い側の天体の傾きと整合的であった.

このサーベイで得られたサイズ分布は,同じサイズ領域での過去のサーベイ (Yoshida & Nakamura 2005, 2008,Wong & Brown 2015) とはやや異なる結果となった.過去の研究では,累積サイズ分布として broken power-law もしくは二重のべき乗則が報告されている.今回の結果は,b = 1.84 のスロープは H = 14.0 から少なくとも H = 17.4 まで続くと主張する.

今回のサーベイは,木星の L4 トロヤ群天体の最も大きいサンプルを含み,Wong & Brown (2015) よりも 1 等級深い研究であるため,これまでの木星トロヤ群天体のサイズ分布で最も正確なものであると考えられる.カタログに掲載されている木星 L4 トロヤ群天体と今回のサーベイの結果を合わせ,トロヤ群天体全体のサイズ分布は H = 17.4 mag まで続いていることを示した.

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arXiv:1706.08781
von Boetticher et al. (2017)
The EBLM project III. A Saturn-size low-mass star at the hydrogen-burning limit
(EBLM プロジェクト III.水素燃焼限界にある土星サイズの低質量星)

概要

伴星と主星の質量比 q ~ 0.07 の食連星系の発見を報告する.WASP サーベイでの周期的な測光シグナルを同定した後,CORALIE 分光器を用いて視線速度観測をし,また Euler telescope と TRAPPIST telescope で光度曲線のフォローアップ観測を行った.

解析の結果,EBLM J0555-57 は,太陽に似た主星と,主星と食を起こす低質量の伴星からなる系であることが判明した,伴星は,やや軌道離心率のある 7.8 日周期の軌道であった.

恒星モデルから主星の質量の推定を行い,観測結果と合わせると,伴星の質量は 85 木星質量 (0.081 太陽質量) で,半径が 0.84 木星半径 (0.084 太陽半径) と推定される,この半径は土星の半径と同程度である.

伴星 EBLM J0555-57Ab は表面重力が log g = 5.50 であり,恒星の残骸以外の天体 (※白色矮星や中性子星・ブラックホール以外の天体) の中では,これまで知られている中で最も高密度な天体の一つである.解析から得られた質量や半径等の測定値は,低質量の天体のモデルと整合的であった.

パラメータ

J0555-57A
有効温度:6461 K
金属量:[Fe/H] = -0.24
距離:193.8 pc
質量:1.13 太陽質量
半径:0.99 太陽半径
EBLM J0555-57Ab
軌道周期:7.757676 日
質量:85.2 木星質量
半径:0.84木星半径
平均密度:188 g cm-3
軌道長半径:0.0817 AU
軌道離心率:0.0894

EBLM J0555-57Ab の性質

伴星である EBLM J0555-57Ab の表面重力は,最近発見が報告された褐色矮星 EPIC 201702477b (Bayliss et al. 2017) と同程度である.

EBLM J0555-57Ab は,恒星と準恒星天体を分ける目安である,水素燃焼質量限界のすぐ上に位置していると結論付けた.この境界は,金属量 [M/H] = -0.5 の天体に対しては ~ 83 木星質量である (Baraffe et al. 1998).

EBLM J0555-57Ab は半径膨張を示す兆候は見られなかった.半径膨張は,例えば低質量星における磁場によるものなどが報告されている (Lopez-Morales 2007).

この天体は TRAPPIST-1A と同程度の質量を持つ (Gillon et al. 2016, 2017).この伴星の半径は,低質量星である 2MASS J0523-1403 (Dieterich et al. 2014) と類似しており,低質量の星のサイズには分散があることを示している.
※注釈
EBLM は "Eclipsing Binaries with Low Mass" の略であり,低質量の食連星のサーベイ観測の名称である.また,このサーベイによって発見された系のカタログの名称でもある.

EBLM 自体は,系外惑星のトランジットサーベイ観測の WASP のスピンオフ的なサーベイである (Triaud et al. 2013, Gómez Maqueo Chew et al. 2014).

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論文関連の(ほぼ)個人用メモ。



arXiv:1706.07807
Dong et al. (2017)
LAMOST Reveals Neptune-size Cousins of hot Jupiters, preferentially in "(metal-)rich" and "one-child" Kepler families
(LAMOST により明らかになった,金属豊富で単一のケプラー惑星に優先的に存在する海王星サイズのホットジュピター類似惑星)

概要

ホットジュピターとの類似点を持つ,短周期の海王星サイズの新しい惑星のポピュレーション (集団) を見出した.この新しいポピュレーションに属する惑星とホットジュピターは,どちらも金属豊富な恒星を主星に持ち,またどちらもケプラーで検出された系において,単一のトランジット惑星として発見されている (複数惑星系ではない).

ここでは,精密な LAMOST DR4 の主系列星の恒星パラメータを用い,短周期 (1 〜 10 日) のケプラーで発見された惑星の分布を,中心星の金属量の関数として研究した.

金属豊富な恒星の周りでの惑星の半径分布は,金属欠乏星まわりの惑星の半径に比べてより “puffed up” している (膨らんでいる) ことが分かった.

2 つの軌道周期-半径レジームにおいて,惑星は金属豊富な恒星の周りに優先的に存在するが,一方で金属欠乏星の周りでは惑星の存在頻度は小さい.この 2 つのレジームの一つは,よく知られているホットジュピターであり,もう一つのレジームは,海王星サイズ (2 - 6 地球半径) の新しいポピュレーションであり,ここではそれらを “Hoptunes” と呼ぶことにする.

ホットジュピターと同様に,Hoptunes は複数のトランジット惑星を持つ系よりも,単一のトランジット惑星を持つ系でよく見られる.
太陽型星のうちおよそ 1%が Hoptunes を持ち,Hoptunes とホットジュピターの存在頻度は,一貫して中心星の金属量 [Fe/H] の増加関数であった.すなわち,恒星の金属量が多いほど,ホットジュピターも Hoptunes も存在頻度が大きくなる.

惑星半径の分布を見ると,ホットジュピターと Hoptunes は,おおよそ土星サイズの惑星 (6 - 10 地球半径) に相当する場所にある “valley” によって隔てられている.そしてこの “hot-Saturn valley” の領域における惑星の存在頻度は,ホットジュピターや Hoptunes の存在頻度と比べるとおおよそ 1 桁程度小さい.

今回見出された Hoptunes とホットジュピターの観測的な “近縁関係” は,これらの惑星が現在の状態に至るまでの共通のプロセス (惑星移動過程か形成過程,あるいはその両方) を持つことを示唆する.

LAMOST のデータとサンプル抽出

LAMOST-Kepler プロジェクト

ケプラーの観測対象を観測するためのプロジェクトとして,4 m 望遠鏡 Large Sky Area Multi-Object Fiber Spectroscopic Telescope (LAMOST, あるいは Guo Shoujing Telescope) (※郭守敬,元の時代の天文学者から名前が取られている) を用いた,”LAMOST-Kepler project” というものがある (De Cat et al. 2015など).

この観測プロジェクトでは,恒星の分光観測を行い,有効温度,表面重力,金属量を高精度で測定している.LAMOST の第四次データリリース (DR4) では,60000 個の AFGK 型の恒星のデータを公開し,この中には多数のケプラーで観測された恒星を含んでいる.これ,全てのケプラーターゲットのおよそ 30%に相当する.

サンプル選定

恒星のサンプル中から,有効温度が 4700 - 6500 K の範囲であり,表面重力が log g > 4.0 のものを抽出した.抽出したサンプル数は 30727 個であった.また,恒星質量と半径は,等時線 (isochrone) のフィッティングから推定した (Xie et al. 2016).

その後,ケプラーの惑星候補カタログと交差試験をして,偽陽性 (惑星由来のシグナルではないと判定されたイベント) のものと,大きな偽陽性確率を持つものを除去した.

LAMOST から得られた恒星のパラメータは,惑星の半径を導出するのに使用した,このパラメータの典型的なエラーは 15%である.

さらに,惑星のうち軌道周期が 1 - 10 日で,半径が 1 - 20 地球半径のものを抽出した.その結果,惑星のサンプルは 256 個の惑星系の 295 個となった.このうち 151 個の惑星は,ケプラーで惑星が一つだけ発見されている系であり,残りの 144 個は複数惑星系中に存在し,系内の他のトランジット惑星は上記の抽出条件を必ずしも満たさないものである.

解析・結果

中心星の金属量による分布の違い

恒星のサンプルを,金属量で 2 つのグループに分類した.金属量 [Fe/H] ≧ 0 であるものと,[Fe/H] < 0 のものの 2 つに分割した.

金属量が少ない恒星については,いくつかの天体を除けば,ほとんどすべての惑星は軌道周期-半径平面では底の方に位置している.軌道周期が 1 - 3 日のものは,惑星半径は ~ 2 地球半径より小さい.一方で,軌道周期が 3 - 10 日のものは,惑星半径の上限値は軌道周期が大きくなるに従って 2 地球半径から 4 地球半径に上昇する傾向がある.
軌道周期が 3 日より長い領域では,この上限値の境界線は,Mazeh et al. (2016) で言及されている “desert” 領域 (惑星欠乏領域) の下側境界に近い.

一方,金属量が豊富な恒星の周りでは,全体の 3/4 の惑星が,上記の境界線の下側に集中していることが分かった.また,残りのおよそ 1/4 の惑星は,金属量が少ない恒星の周りでは惑星が欠乏していた領域に存在している.

このような,金属量豊富な恒星の周りにある ~ 10 地球半径よりも大きい惑星のポピュレーションには,ホットジュピターがある.
もうひとつは,ここで指摘している,金属豊富な恒星周りに存在し,半径が ~ 6 地球半径よりも小さく,一方で先述の下限値よりも大きい半径を持つものである.これらのサイズは 2 - 6 地球半径で,海王星の 4 地球半径に近い.しかし,これらの惑星の全てが物理的に海王星と類似しているかは不明である.これらの物理状態には,海王星型か,スーパーアース的か,ミニネプチューン的か,あるいはさらにその他の可能性といった不定性がある.そのため,ここではこのポピュレーションに属する惑星を “Hoptunes” と呼ぶことにする.

新しいポピュレーションとホットジュピターの類似性

次に,Hptunes とホットジュピターの間にある 2 つの目立った類似性を含む,惑星分布の 3 つの主要な特徴について議論する.また,これらの半径分布を隔てている明瞭な “valley” (惑星存在頻度が低いパラメータ領域) についても議論する.
1) Hoptunes とホットジュピターは金属豊富星まわりに優先的に存在し,どちらのポピュレーションも惑星の存在頻度は中心星の [Fe/H] と相関する
金属量が豊富な恒星の周りには,ホットジュピターと Hoptunes はそれぞれ 17 個と 24 個存在した.サンプル中での存在頻度はそれぞれ 9.1 (+2.8, -2.2)%と 12.9 (+3.2, -2.6)%である.

もし金属欠乏星の周りでも存在頻度が上記と同じであれば,今回のサンプル中にはそれぞれ 10 個程度のホットジュピター,14 個程度の Hoptunes が存在することが期待される.しかし実際には,ホットジュピター 1 個と Hoptunes 2 個のみであった.

横軸に中心星の金属量 [Fe/H],縦軸に惑星の累積個数比 (cumulative fraction) をとった場合の分布を見ると,ホットジュピターと Hoptune は類似した分布をしている.この図上において,中心星の金属量が [Fe/H] < 0 の領域では,ホットジュピターと Hoptunes の存在数が少ないため,累積個数の推移は横ばいになり,[Fe/H] が 0 を超えた辺りからは存在個数が多くなるため,推移が急激に増加するという振る舞いを見せる.

一方で,ホットジュピターでも Hoptunes でもないその他の高温の惑星についてはやや分布が異なり,中心星の金属量が [Fe/H] = 0 より小さい領域でも,累積個数比の推移が増加している.
コルモゴロフ・スミルノフ検定を行うと,「ホットジュピターを持つ恒星」と,「恒星全体のサンプル」,および「その他の高温惑星を持つ恒星」の累積個数比の分布は異なった推移を持ち,p 値 (p-value) は「ホットジュピターを持つ恒星」と「恒星全体のサンプル」の間では 0.003%,「ホットジュピターを持つ恒星」と「その他の高温惑星を持つ恒星」の間では 0.032%であった.

「Hoptunes を持つ恒星」での累積個数比の推移も,「恒星全体のサンプル」と「その他の高温惑星を持つ恒星」とは非整合であり,p 値はそれぞれ 0.0004%と 0.026%であった.

一方,「ホットジュピターを持つ恒星」と「Hoptunes を持つ恒星」の間の p 値は 45%であった.

その他の高温惑星 (1 - 2 地球半径の地球サイズ惑星が多い) の分布も,恒星全体のサンプルと比べると急な傾斜であった.ただしその度合は,ホットジュピターや Hoptunes のそれらよりずっと小さい.「恒星全体のサンプル」と「その他の高温惑星を持つ恒星」の間の p 値は 0.2%であった.これは Mulders et al. (2016) の結論である,金属豊富な恒星周りに高温な地球型惑星が多い傾向があるという指摘と定性的に整合する.
2) Hoptunes とホットジュピターは,どちらもケプラーの単一トランジット惑星系に多く見られる
ホットジュピターの特徴的な点は,ホットジュピターに近い軌道には他の惑星を持たない傾向にあるという点である (Steffen et al. 2012).

ここで解析しているホットジュピターは全て,ただ一つの惑星のみが発見されている系であり,Hoptunes の大部分もケプラーの観測では単一惑星系である (73%が単一惑星系に存在する).

対照的に,軌道周期-惑星半径の分布図上で.金属欠乏星に見られる惑星欠乏領域の上限ラインよりも小さい半径を持つ惑星の場合,半分よりやや少ない惑星 (45%) が単一の惑星を持つ系であった.

また注目すべき点として,単一の惑星系である割合は,金属欠乏星と金属豊富星の間で同じであり,今回のサンプル中では,金属欠乏星では 46%,金属豊富性では 43%が単一惑星系であった.そのため,Hoptunes もホットジュピターと同様に,その他の高温惑星のグループと比べると惑星系に単独で存在している傾向にあると言える.

2 項分布に基づいた尤度解析を用いると,Hoptunes が単一惑星系である割合は,ホットジュピターのそれよりも 2.9 σ と統計的に有意に小さいことも分かった.
3) Hoptunes とホットジュピターは “hot-Saturn valley” で分割されている
今回解析したサンプル中では,土星サイズ (およそ 6 - 10 地球半径) の惑星は存在頻度が小さい.これは,惑星半径の分布で見ると Hoptunes とホットジュピターの間に当たる領域である.この欠乏を “hot-Saturn Valley” と呼ぶことにする.

この傾向は惑星の累積個数分布にも明確に見られ, ~ 6.5 地球半径と ~ 10 地球半径に明確な分布の折れ曲がりがある.この 2 つの折れ曲がりの間では,惑星の存在頻度が両サイドの領域よりも大幅に少ない.

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