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論文関連の(ほぼ)個人用メモ。



arXiv:1706.08444
Zingales et al. (2017)
The ARIEL Mission Reference Sample
(ARIEL ミッションの参照サンプル)

概要

この論文の主目的は,ARIEL (Atmospheric Remote-sensing Exoplanet Large-survey) で観測できる対象の最適な候補天体リストを同定することである.ARIEL は,2026 年の打ち上げを目指す European Space Agency (欧州宇宙機関,ESA) の M4 ミッション候補 3 つのうちの 1 つである.

ここでは,ARIEL で観測可能な系外惑星の観測候補リストの推定について記述する,また,現実的なミッションシナリオを定義する.この観測候補には,既に存在が知られている系外惑星と,まだ発見されていないが発見が期待されるものの両方を含む.

現在の ARIEL の計画では,計画の寿命 4 年間の間に ~ 1000 個の系外惑星を観測可能と見積もられる.この観測対象候補の系外惑星のリストは,新しい系外惑星の発見に依存して今後増加することが期待される.

ARIEL 計画の概要

ARIEL は,ESA の M4 ミッションで打ち上げる候補となっている宇宙望遠鏡であり,現在 Phase A study の段階にある.

ARIEL は系外惑星の大量で多様なサンプルを観測し,その物理的・化学的特性について研究するためのミッションである.

現在までに 3500 を超える系外惑星が発見され,そのうち 1/3 以上がトランジット法での検出である.これらの中には地球型惑星やスーパーアース,海王星型惑星や巨大ガス惑星があり,多様なタイプの恒星の周りを公転している.

ケプラーは単独で 1000 個を超えるトランジット惑星を 2009 - 2015 年の間に発見し,まだ確定していない惑星候補天体も 3000 件以上ある.
現在,および将来の系外惑星探査ミッションには,宇宙空間から (K2,GAIA,TESS,CHEOPS,PLATO) と,多数の地上からの観測 (HAT-NET,HARPS,WASP,MEarth,NGTS,TRAPPIST,Espresso,Carmenesなど) があり,系外惑星の発見数は次の世代でも増加することが期待される.特にトランジット法での発見の増加が見込まれる.

ARIEL は 2026 年の打ち上げを目指しており,観測可能なリストはこれらによって将来発見されるであろう惑星も含む必要があると考えられる.ARIEL で観測可能なターゲットを,現在発見されている系外惑星および将来的に発見されるであろう惑星から選び,またミッション寿命中の現実的なミッションのシナリオを定義することがここでの目的である.

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論文関連の(ほぼ)個人用メモ。



arXiv:1706.07501
Saxena et al. (2017)
A Model of the Primordial Lunar Atmosphere
(初期の月大気のモデル)

概要

マグマオーシャンの固結モデルと組み合わせた,初期の月大気の初めての定量的なモデルを提案する.

形成直後の月の表面は,初期太陽からの放射,中期 M 型矮星に近い放射特性を持つ衝突後の高温な地球,全球的なマグマオーシャンの冷却の寄与を含む放射環境に晒された.この放射環境は,月に 104 - 102 Pa の地球サイズの大気をもたらした.この大気の組成は,重い揮発性物質 (Na と SiO) であった.

この大気は,表面が固結し地殻を形成する間存在し,また中間的な揮発性を持つ物質のかなりの量を輸送し,また超音速風を持っていた可能性がある.この超音速風はマグマオーシャンに波を生成したかもしれない.

そのためこの大気の存在は,いくらかの中間的な揮発性を持つ物質の分布に影響を及ぼした可能性があり,さらにマグマオーシャンの流れと冷却に影響された温度の非対称性を形成した可能性がある.このような非対称性は,若く,潮汐的に固定されている岩石天体で,全球的にマグマオーシャンを持ち強い輻射に晒されている天体を特徴づける可能性がある.

結論

月形成の標準的なモデルでは,月形成後に月表面が晒された放射環境においては,斜長石の地殻形成に先立って短寿命の金属大気が存在した可能性があることが分かった.

このような大気は気圧が 104 - 102 Pa の範囲で,地球より低い温度 (2000 K 以上) であり,月の裏側に向かう超音速の風を持っていた.

この大気は,月のマグマオーシャンの冷却には大きな影響を及ぼさなかった思われるものの,強い風によってマグマオーシャンに表面波は立てたと考えられる.ただし,斜長石フロートの風駆動の移流は起きなかったと考えられる.

さらに,このような大気は.ナトリウムやその他の中間的な揮発性を持つ物質を輸送して失わせ,それらの元素の不均質と欠乏の原因となる可能性が示された.これらの不均質と欠乏は,月形成の詳細な過程を制約するヒントになるかもしれない.

また,初期の月大気は,中心星に非常に近接して存在し,強く加熱されている岩石系外惑星のいくつかに期待される大気と類似している可能性がある.

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論文関連の(ほぼ)個人用メモ。



arXiv:1706.07605
Komacek & Youdin (2017)
Structure and Evolution of Internally Heated Hot Jupiters
(内部加熱を受けているホットジュピターの構造と進化)

概要

ホットジュピターは強い恒星の輻射を受け,表面の平衡温度は 1000 - 2500 K と高くなる.入射する輻射は惑星の薄い外層,気圧にすると 0.1 bar 程度の深さまでを直接加熱する.輻射を受けているホットジュピターの標準的な進化モデルでは,予測されるトランジット半径は実際の観測よりもかなり小さいことが分かっている.

過去の研究では,大気の深い位置での加熱によって観測される半径を説明できるとしてきた.この場合,必要な加熱率は,惑星が中心星の輻射から受けている加熱率のうち小さい割合で良いとされる,

ここでは,HD 209458b の進化モデルの一式を提案する.このモデルでは,惑星大気内部での加熱の深さと強度の両方を,現状では不明確である加熱機構を特定はせず,系統的に変化させた.このモデルは,高温で高エントロピーの惑星の状態からスタートさせ,対流する内部が冷えるに連れて半径が小さくなる.この時,惑星内部で与えた加熱が,この惑星の冷却を抑制する.

その結果,圧力が 1 - 10 bar の領域の非常に薄い範囲での加熱は,合計の加熱率が恒星の入射エネルギーの 10%程度より大きい場合を除いては,冷却を大きく抑制出来ないことが判明した.また,100 bar のより深い場所での加熱があった場合は,冷却開始から 5 Gyr 経過した後に,観測されているトランジット半径である 1.4 木星半径という値を説明するために必要なエネルギーは,恒星輻射の 1%でよいことも分かった.

一般的には,深い位置でより大きい加熱がある場合は,より大きなホットジュピターの半径を説明できる.驚くべきことに,104 bar の深さにエネルギーが注入される場合 (これは惑星の質量で言うと,中心から外側までの 99%の質量に該当),惑星の中心に加熱源がある場合と同じくらい効率的に冷却を抑制することが出来る.

結論として,多くのホットジュピターの半径を説明するためには,比較的浅い領域での加熱が必要であることを発見した.ただしこれは,この加熱が惑星進化の初期の段階から発生しており,その進化期間を通じて存在し続ける場合の話である.

研究背景

発見されているホットジュピターの中には,高エントロピーの初期状態から冷却のみを考慮した進化をした場合に期待される半径よりも大きいものが多数発見されている.おおよそ半数程度のホットジュピターが,進化モデルから期待されるものよりも大きな半径を持つことが分かっている.

中心星からの輻射を考慮することによって,惑星内部の輻射層が深くなり,これが放射対流境界 (radiative-convective boundary, RCB) を高圧の内部へ押し下げる効果がある.そのため惑星の冷却率を下げる方向に働くが,これは惑星半径に 20%以下の影響しか与えない (Guillot et al. 1996など).

また惑星の半径は,惑星の平衡温度の上昇に伴って大きくなるという傾向も見られている (Laughlin et al. 2011).その後の解析では,惑星の平衡温度が 1000 K 以下の場合は,冷却のみを考慮した進化モデルと一致することが分かっている (Demory & Seager 2011など).

さらに,再膨張したホットジュピターの存在が,恒星の輻射が半径の膨張を駆動している証拠になるという説が提案されている (Lopez & Fortney 2016).主系列段階を過ぎた恒星を公転する,膨張半径を持つホットジュピターの検出も増えている (Grunblatt et al. 2016など).そのため,大きな半径を持つホットジュピターの原因となる機構は,入射する恒星のフラックスといくらかの相関があると考えられる.


ホットジュピターの半径の異常を説明するための説には,大きく分けて 3 つのクラスがある.潮汐的機構,ホットジュピターの微細物理の理解の改善,および入射する恒星のフラックス駆動によるものである (Weiss et al. 2013など).

潮汐散逸は,多くのホットジュピターが持つ大きな半径を説明する機構として最初に提案されたものである (Bodenheimer et al. 2001).しかし,潮汐散逸が有効に働くためには,惑星の離心率が外部の伴星によって上昇させられている必要がある.これは,潮汐散逸は惑星の離心率を減衰させるからである.

Arraas & Socrates (2010) は,惑星自身の大気中の熱潮汐が惑星を同期回転状態から外し,惑星の内部が恒星の潮汐力と結合して潮汐散逸を可能にするというモデルを提案し,潮汐散逸機構の適用可能性を大きくした.

2 番目のクラスの機構は,内部加熱源を必要としないものである.これには,enhanced opacities (大きな大気不透明度) を含むもの (Burrows et al. 2007),そして惑星内部の熱輸送が二重拡散対流によって低下すると考えるものである (Chabrier & Baraffe 2007).

ガス惑星の内部構造の理解はたしかに重要であるが,これらの半径を大きくする微細物理の機構が,入射フラックスと相関するかどうかは不明確である.

3 番目のクラスは,中心星の輻射を受けている高エントロピーの領域から,惑星の内部へ熱を輸送し,そこで散逸を起こすことで内部のエントロピーを変化させるというものである.このクラスに分類される仮説は全て,ホットジュピターの大気中の強い大気循環と関連している.この大気循環は,大気の大きな昼夜間の温度差によって ~ km/s の東西風が駆動されるというものである (Showman & Guillot 2002など).

このクラスは,さらに 2 つのクラスに分割することが出来る.流体力学的なものと,磁気流体力学的なものである.後者はオーム散逸として知られており,惑星の双極子磁場中で部分的に電離した大気によって駆動される電流が加熱源となるものである.この電流が,惑星内部で非理想的な散逸を起こす.この機構は Batygin & Stevenson (2010) で提案された.

その後多くの研究が行われ,それらの中にはオーム散逸仮説を支持するものもあれば,否定するものもある.

よりシンプルな流体力学的な散逸機構であっても,詳細は未だによく理解されていない.このクラスに属する機構で最初に提案されたのは,大気中での下向きの運動エネルギーの輸送 (Guillot & Showman 2002など) である.これは,ホットジュピター大気中での ~ 10 - 100 m/s の垂直方向の風が,エネルギーを大気下部へ輸送するというものでえある.大気株へ輸送されたエネルギーはその後,RCB 付近のシア層で,例えばケルビン・ヘルムホルツ不安定性などで散逸する.

その他の有り得る機構としては “Mechanical Greenhouse” (Youfdin & Mitchell 2010) がある.これは惑星の外部放射領域での強制された乱流混合によって,熱を下部に輸送するというものである.このモデルを踏まえ,Tremblin et al. (2017) は 2 次元の定常状態力学モデルを用い,大きいスケールの循環そのものによって下向きのエントロピー輸送を生み出すことができ,HD 209458b の半径を説明しうることを示した.

しかし,散逸が内部エントロピーに強く影響するような深さでの,3 次元大気循環を定量的に評価するようなホットジュピターの時間依存シミュレーションはこれまでに存在しない.



ホットジュピターの半径異常を説明するために,これまでにたくさんの機構が提案されているが,ホットジュピターのサンプル全体を説明出来るような議論は存在しない.そのため,ここでは特定の機構に注目することはせず,どんな強さ,どんな場所での内部加熱が,ホットジュピターの進化と構造に影響を与えるかに注目した.

Spiegel & Burrows (2013) では,ホットジュピター大気へのエネルギーの注入は,深い場所であるほど半径の膨張に対して効果的であることを示した.また,トランジット半径と散逸の聞いている圧力には明確に非線形の関係がある.さらに,惑星の中心部での加熱は半径が平衡に落ち着くまでのタイムスケールを長くする事ができると指摘し,これは加熱が大気のみに適用された場合は不可能であることも指摘した.
しかし彼らの研究は,ホットジュピターの構造進化に対する一定の圧力での加熱の影響については調べていなかった,これは,彼らの数値モデルでは放射的な大気の進化と惑星の対流的な内部は結びつけていなかったからである.

Ginzburg & Sari (2015) の自己相似解析モデルで示されているように,強い加熱によって大気の外側で対流領域が発生することは可能である.彼らの解析的なモデルによると,外側での対流領域の有無は,注入される熱の強さおよび深さの組み合わせと,入射する恒星のフラックスによって決まる.
この解析モデルでは加熱強度と深さにおける遷移の存在も予言している.これは,外側の対流領域における加熱が,トランジット半径への影響に大きな効果を及ぼすようになるかどうかという遷移である.

ここでは,この予言について,詳細な数値的進化モデルを用いて検証を行った.ここで用いたのは,恒星と惑星の構造のコード MESA (Paxton et al. 2011, 2013, 2015) である.またこのモデルでは,加熱が内側の放射対流境界よりも深いところで起きるようなレジームについて考慮することも可能にした.このレジームは Ginzburg & Sari (2015) では直接考慮されていなかった.
新たに考慮したその他の可能性としては,惑星内部のある構造的な場所,例えば時間によって一定の圧力領域に固定されていない,輻射対流境界における散逸の効果である.

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arXiv:1706.07219
Mahapatra et al. (2017)
Cloud formation in metal-rich atmospheres of hot super-Earths like 55 Cnc e and CoRot7b
(かに座55番星e と CoRoT-7b のようなホットスーパーアースの金属豊富大気中での雲形成)

概要

惑星大気内での雲の特性は,大気の局所的な熱力学的状態と化学的状態によって左右される.惑星大気中での組成の存在度を理解するためには,変化する化学的条件のもとでの雲形成機構の理解が必要である.

ここでは,金属量が豊富な大気中での雲形成を理解するため,CoRoT-7b や 55 Cnc e (かに座55番星e) のような,大気が蒸発している系外惑星での雲の可能性について調べた.また,大気が一般的な太陽組成を持つ場合と,金属豊富な組成を持つガス惑星 HD 149026b の場合と比較した.

大気ガス層の化学反応過程における,金属豊富で太陽組成でない元素組成が雲形成に及ぼす影響について調べた.また,運動学的な非平衡雲形成モデルを適用して,形成され得る雲の構造とそれらの詳細について研究した.様々な大気中の岩石成分の存在度において,物質の組成,最大粒子形成率,平均雲粒子サイズの観点から,全体的な雲の特性について述べる.

今回の結果から,かに座55番星e と HD 149026b のような大気の状況では,大気中で鉱物成分の雲が形成されることが示唆された.また,いくつかの高温の岩石スーパーアースの高温環境 (CoRoT-7b の昼側など) においては,大気のガスがイオン化され,それによって気体成分の凝縮が阻害されるため,そのような惑星の昼側においては雲形成は起こらないと考えられる

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arXiv:1706.06602
Millholland & Laughlin (2017)
Supervised Learning Detection of Sixty Non-Transiting Hot Jupiter Candidates
(60 個のトランジットしないホットジュピター候補の教師あり学習での検出)

概要

短周期惑星の可視光での測光観測での変動は,惑星の大気の組成や力学についての情報を与えてくれる.可視光での位相曲線は多くの系外惑星で検出されているが,現在のところ,それらを集合的に取り扱うことが出来るほど多くが観測されているわけではない.そのため,位相曲線の観測をトランジット惑星だけでなく,トランジットしない惑星へも広げるというモチベーションがある.

ここでは,ケプラーでの測光観測データから,トランジットしない短周期巨大惑星を検出するためのアルゴリズムについて提案する.このプロシージャは,位相曲線そのものを,惑星が存在する証拠として用いる.教師あり学習アルゴリズムを使用し,合成した位相曲線の時間依存した特性を認識し,これらの特性にマッチするシグナルの検出を行う.

まずはこのアルゴリズムの可能性について示した後,142630 個の F・G・K 型 のケプラーで観測された恒星の位相曲線をクラス分けした.これらは,確認された惑星や KOI (Kepler Object of Interest,トランジットシグナルと思われる変動が見られた場合に与えられる番号) を持たないものである.

上記のサンプルそれぞれに対して,トランジットしていない惑星が存在することによって位相曲線の変動が起きている可能性を計算した.ここでは,トランジットしないホットジュピターを持つ可能性が高い候補 60 個を同定した.また,これらの候補において,惑星のアルベドと,位相曲線の極大のオフセットへの制限を与えた.

研究背景

恒星-惑星系の位相曲線

可視光での位相曲線は,赤外線での位相曲線とともに,惑星大気に関する空間積分された時間依存性のある情報を与える.位相曲線からは,惑星大気の組成 (Rowe et al. 2006など),昼夜間の温度差と熱の再分配 (Knutson et al. 2007など),雲の存在と反射率 (Demory et al. 2013など),大気の天候の変動 (Armstrong et al. 2016),磁場強度 (Rogers 2017) などの情報を得ることが出来る.

系外惑星の可視光での位相曲線は,4 つの独立した要素の重ね合わせとして現れる.惑星表面での恒星光の反射,惑星自体の熱放射,惑星の潮汐力によって恒星が楕円形に変形することによる光度の変動 (ellipsoidal variation),ドップラービーミング/ブースト (Faigler & Mazeh 2011) の 4 つである.

Ellipsoidal variation は,恒星の潮汐変形に伴う光度の変化 (Morris 1985) である.また,ドップラービーミングは,惑星の公転運動に伴って恒星が観測者に近づいたり遠ざかったりすることによる相対論的な効果である (Hills & Dale 1974など).

潮汐変形による変動とドップラービーミングによる変動の大きさは,公転する惑星の質量に敏感に依存する.これにより,測光学的に惑星質量へ制約を与えることが出来る (Lillo-Box et al. 2016).

平均的なホットジュピター (軌道周期 3 日,1.3 木星半径,1 木星質量) が太陽型星を公転する場合,惑星表面での反射光の要素は,典型的には他の要素よりも 1 桁程度大きい.


ケプラーによって,多数の可視光での光度曲線が得られている.加えて,惑星の位相曲線と二次食の包括的な探査も行われている.しかし,ケプラーのトランジット惑星で測光的な変動が検出可能なもののサンプル数 (~ 15 例) は,惑星大気の性質を統計的,または集団的に取り扱うには少ない.そのため,このような観測をトランジットしない惑星へも拡張することが望ましい.このような惑星の視線速度の半振幅は大きい値が期待できるため,ドップラー速度測定で惑星の存在を確認できるだろう.

トランジットしない惑星を,測光変動から検出することについては過去に研究がある.その例が,The Beaming, Ellipsoidal, and Reflection/heating (BEER) モデル (Faigler & Mazer 2011) などである.これまでに,BEER モデルはトランジットしない伴星天体の検出に成功し (Faigler et al. 2012),検出可能な位相曲線変動を示すトランジット惑星の特徴づけにも成功している (Faigler et al. 2013など).

BEER モデルの機械学習による検出

Placek et al. (2014) では,光度曲線中での反射光,熱放射,潮汐変形による変光,ドップラービーミングの位相曲線成分の存在を調べるためのベイズモデルを提案した.さらに Milliholland et al. (2016) では,ケプラーの光度曲線中における,トランジットしないホットジュピターの検出可能性について考察している.

これらの手法の主要な困難点は,木星サイズの惑星がある場合,潮汐変形による変光とドップラービーミングの要素は,典型的には反射光よりも小さいことである.そのため測光観測で得られるシグナルは正弦曲線的になり,恒星や機器の変動によるものと区別するのが難しい.


ここでは,トランジットしない惑星の兆候を位相曲線から検出する手法について提案する.既知のトランジットするケプラー惑星の位相曲線の特徴と,合成によって生成されたデータセットを訓練セットとして使用し,教師あり学習を用いてクラス分けするという手法を用いる.

未知のパラメータは,軌道周期,惑星質量,惑星半径,軌道傾斜角,平均幾何学的アルベド,アルベドの共分散振幅,平均の peak offset,offset の共分散振幅,コヒーレンスタイムスケールである.共分散振幅とコヒーレンスタイムスケールは,惑星は表面特徴の時間変化を持ち,その空間依存した反射率が時間によって変化し,観測される位相曲線の形状と振幅に影響を与える可能性を考慮して導入したパラメータである.

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