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論文関連の(ほぼ)個人用メモ。



arXiv:1706.06021
O’Gorman et al. (2017)
The inhomogeneous sub-millimeter atmosphere of Betelgeuse
(ベテルギウスの非均質なサブミリ波大気)

概要

スペクトル型が早期 M 型である超巨星の,大きく広がった大気を加熱している機構はあまり理解されていない.また,これらのタイプの恒星からの大量の質量放出を駆動する際の加熱の役割についても同じくあまり理解されていない.

ここでは,338 GHz (波長:0.89 mm) の周波数帯の ALMA の長基線 (~ 16 km) 電波観測を用いて,スペクトル型 M2 の超巨星ベテルギウスの,広がった大気中における自由-自由遷移放射の連続光観測を行った.空間分解能は 14 mas であり,ベテルギウスの大気を十分に空間分解することが出来た.

観測の結果,~ 1.3 恒星半径の場所でのベテルギウスの大気の平均温度は 2760 K であり,これは光球面の有効温度 3690 K および,~ 2 恒星半径の距離での温度の双方よりも低い値となった.これは,赤色超巨星の大気中には平均温度の逆転層が存在していることの明白な証拠である.

ベテルギウス大気からの放射は明らかに球対称ではなく,撮像と visibility で検出されている一様な円盤と比較すると,2 箇所の目立ったずれがあった.
最も主要な非対称性は,恒星の見かけの円盤面において北東方向の四分円に位置している.軸の比が 2.4 と細長い形状をしている様子が空間分解され,この非対称構造は天球面上に射影された恒星の円盤面のおよそ 5%を占める.
もう一つの主要な非対称性は恒星の円盤面の縁に位置しており,円盤中心からほぼ真東に存在する.この非対称構造は,射影された円盤面のおよそ 3%を占める.

この 2 箇所の放射の非対称性は,ベテルギウスの大気中で局所的な加熱が発生していることを示す明確な証拠である.今回検出された局所的な加熱は,大規模な光球での対流によって引き起こされた,ベテルギウスの磁気的活動に関係していると示唆される.

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論文関連の(ほぼ)個人用メモ。



arXiv:1706.05894
Vidotto & Bourrier (2017)
Exoplanets as probes of the winds of host stars: the case of the M dwarf GJ 436
(主星の恒星風のプローブとしての系外惑星:M 型矮星 GJ 436 の場合)

概要

低温の矮星からの恒星風は観測するのが難しい.これまでに M 型矮星のごく一部では観測的に導出された質量放出率が知られているが,これには数桁のばらつきがある.

中心星の近傍を公転する系外惑星は恒星風の内側の領域に位置している,従って,主星からの恒星風の,他の手法では観測できない局所的な特徴を調べるのに用いることが出来る.

ここでは,温暖な海王星型惑星 GJ 436b の大気の蒸発の研究において観測的に導かれている恒星風の局所的な特性を用いて,主星の M 型星からの恒星風のグローバルな特徴を導出した.等温風モデルを用いて,恒星風の温度を 0.36 - 0.43 MK と制約した,推定される質量放出率は 0.5 - 2.5 × 10-15 太陽質量/年 である.

恒星風と星間物質との間の圧力バランスを計算し,GJ 436 の恒星圏のサイズを計算した結果,25 AU となった.これは太陽圏のサイズと比べると著しく小さい.

また,透過光分光観測を惑星大気の蒸発モデルおよび恒星風モデルと組み合わせることで,惑星を持つ恒星の大規模な恒星風の構造へ制限を与える便利なツールとして使えることを示す.ここでの手法を将来の惑星系の発見に拡張することで,惑星の外気圏と低温の矮星の恒星風の双方の特徴付けが可能になると期待される.

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論文関連の(ほぼ)個人用メモ。



arXiv:1706.05393
Muñoz-Gutiérrez & Winter (2017)
Long-term Evolution and Stability of Saturnian Small Satellites: Aegaeon, Methone, Anthe, and Pallene
(土星の小型衛星の長期進化と安定性:アイガイオン,メトネ,アンテ,パレネ)

概要

アイガイオン (Aegaeon)メトネ (Methone)アンテ (Anthe)パレネ (Pallene) は土星の小さい衛星で,土星探査機カッシーニによって発見された.

これらの衛星の軌道の特徴付けは多くの先行研究でされてきたが,これらの衛星の長期的な進化はこれまでに詳細には研究されてこなかった.ここでは,土星や,土星が持つ 5 つの最も大きい衛星,ヤヌス,エピメテウス,ミマス,エンケラドス,テチスによって作られる重力系での最大 105 年までの長期的な安定性を数値的に調査した.

数値計算の結果を頻度分析を用いて,小さい衛星の軌道の安定性を調査した.また,軌道長半径と軌道離心率の位相空間での広い範囲での力学的な振る舞いを diffusion map を用いた特徴づけを行った.これらの diffusion map は,ミマスに近い位置にいた小天体の可能な初期の数を明らかにできる.また,小型の衛星の力学的な起源のより良い理解に繋がる.

解析の結果,これらの 4 つの小型の衛星は長期的に安定であり,またカオス的な振る舞いは見せないことが分かった.アイガイオン,メトネ,アンテの 3 つは,少なくとも ~ 0.5 Myr の間は,現在の系の軌道配置の状況では軌道は変わらない.

これらの衛星はミマスとの共回転離心率共鳴に捕獲されており,これらは現在秤動を起こしている.しかし,近傍の共鳴からの擾乱,例えばミマスとのリンドブラッド離心率共鳴などは,メトネとアンテで見られるような,最も大きな変動の原因であるように思われる.

パレネは非共鳴軌道に留まり,上記の 3 衛星よりさらに安定である.少なくとも 64 Myr の間は安定であることが示された.とは言え,この衛星の軌道要素はミマスとの準共鳴に影響される.この影響の中には,衛星軌道の離心率と傾斜角の長周期の振動を含む.

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論文関連の(ほぼ)個人用メモ。



arXiv:1706.05865
Grunblatt et al. (2017)
Seeing double with K2: Testing re-inflation with two remarkably similar planets around red giant branch stars
(Seeing double with K2:赤色巨星分枝星まわりの 2 つの極めて類似した惑星での再膨張の検証)

概要

系外惑星の半径が初めて測定されて以降,強く輻射を受けている系外惑星の異常に大きな半径を引き起こすメカニズムは謎のままである.ここでは,NASA のケプラー K2 ミッションで発見された,膨張した半径を持つ惑星について報告する.

今回新たに発見された惑星は,EPIC228754001.01 である.またこれに加えて,過去に発見されていた膨張ガス惑星 K2-97b の質量の数値をアップデートした.これらの惑星は軌道周期 ~ 9 日と,中心星からやや離れた軌道を公転している.また中心星は最近赤色巨星に進化したものである.

星震学,Keck/HIRES 分光器での観測と視線速度測定から決定したパラメータを用いて,これらの系での中心星の輻射の時間進化に制約を与えた.その結果,両惑星は中心星が主系列星である間,半径の膨張を起こす閾値付近の輻射を受けていたと考えられる.また,これらの惑星が現在受けている輻射は,同様の半径を持つその他の系外惑星が受けている輻射の典型的な値と近いことも判明した.

しかしこれらの惑星が中心星が主系列星だった頃に受けていた輻射は,同程度まで膨張した半径をもつ惑星が受けている値とは違って小さい値である.今回の観測と解析によるこれらの系の恒星と惑星の質量と半径への詳細な制約から,惑星の加熱効率は日射量の 0.03% (+0.03, -0.02) と推定される.

これらの結果は,ガス惑星が再膨張するというシナリオと整合的である.しかし惑星の再膨張の効率は,過去の理論に比べるとかなり低いことを示唆する結果でもある.

最後に,両惑星系の類似性 (恒星の質量,半径,惑星の質量,半径,軌道周期が 10%以内にあること) について議論し,これは進化した恒星周りでの惑星探査における選択バイアスによるものだろうと推測した.

研究背景

膨張半径を持つガス惑星とその機構

高い平衡温度を持つ巨大ガス惑星は,理論モデルで予測されているよりも大きな半径を持つことが分かっている (Burrows et al. 1997など).さらに,惑星に入射する恒星のフラックスと惑星の半径膨張との間には相関があることも分かっている (Burrows et al. 2000, Laughlin et al. 2011など).

この巨大惑星の膨張を説明するために提案された理論はたくさんあるが,全ての膨張機構の説は大きく 2 つの分類に分けられる.一つは,恒星からの輻射が惑星の深部に直接注入され,惑星内部が加熱されることによって半径が膨張するというもの (Class I, Bodenheimer et al. 2001,Batygin & Stevenson 2010など) であり,もう一つは,惑星の深部にはエネルギーは注入されておらず,半径膨張機構は単に惑星大気の輻射冷却を遅くすることによって,惑星から熱が失われるのを阻害し,それによって形成初期の膨張した半径を保っているというものである (Class II, Chabrier & Baraffe 2007, Wu & Lithwick 2013など).

これらの機構は,中心星が主系列星である段階においては惑星が膨張半径を持つための経験的な閾値を下回る輻射しか受けていなかったが,現在は進化した恒星の周りを公転し,経験的な輻射の閾値を超える水準の輻射を受けている惑星の半径を測定することによって識別することが出来ると考えられる (Demory & Seager 2011).

もし,進化した恒星の周りで閾値以上の日射を受けている惑星が現在膨張していた場合は,輻射による熱は惑星の内部に直接注入されており,class I 機構が働いていることを示す.その一方で,これらの惑星が膨張していなかった場合は,惑星の表面から内部へはエネルギーは輸送されておらず,惑星の膨張半径は class II 機構によるものであることを示唆することになる.このように,進化した中心星の周りを公転する膨張惑星への熱輸送の効率を制限することで,膨張機構として提案されている説の 2 つのクラスを識別することが出来る.また,その機構の効率を評価することが出来る (Lopez & Fortney 2016).

再膨張惑星候補のサーベイ

進化した恒星の周りにおける巨大惑星の膨張の様子を調べるため,低光度の赤色巨星分枝 (low luminosity red giant branch, LLRGB) のまわりをトランジットする巨大惑星のサーベイを始めた.これは,NASA のケプラー K2 ミッションで取得されたデータの解析を元にしている.

これらの系における近接惑星は,中心星の進化に伴って著しく大きな日射量の時間変化を経験している.このサーベイで最初に発見されたのは,K2-97b (Grunblatt et al. 2016) である.星震学,トランジット解析と視線速度のフォローアップ測定により,Grunblatt et al. (2016) ではこの惑星を 1.10 木星質量,1.31 木星半径と測定した.これは,K2-97 による K2-97b の直接加熱効率を 0.1 - 0.5% であることを示唆する結果であり.惑星半径が中心星の進化に伴う日射量の増加に直接影響を受けていることを示す結果であった.

ここでは,さらなる視線速度データによって K2-97 系の質量を再評価するとともに,このサーベイでの 2 番目の惑星である EPIC 228754001.01 の検出を報告する.

パラメータ

K2-97 系

K2-97
有効温度:4790 K
金属量:[Fe/H] = 0.42
質量:1.16 太陽質量
半径:4.20 太陽半径
年齢:7.6 Gyr
K2-97b
半径:1.31 木星半径
質量:0.48 木星質量
軌道周期:8.4061 日

EPIC 228754001 系

EPIC 228754001
有効温度:4840 K
金属量:[Fe/H] = -0.01
質量:1.08 太陽質量
半径:3.85 太陽半径
年齢:8.5 Gyr
EPIC 228754001.01
半径:1.27 木星半径
質量:0.49 木星質量
軌道周期:9.1751 日

惑星膨張シナリオへの制約

軌道周期が 30 日未満の惑星は,100 Myr より長い期間に渡って,典型的なホットジュピターと同程度の水準の日射を受ける.そのため,中心星が主系列星を離れるのに従って惑星が受ける日射が増加する.これに対する惑星半径の反応を調べることによって,膨張機構をテストすることが出来る.

もし惑星半径の膨張機構が直接加熱を必要とする Class I である場合,惑星の半径は中心星が主系列段階から進化した際に再膨張状態に入る.しかし,もし膨張機構が Class II の場合,つまり惑星の冷却が遅いというものであれば,中心星が赤色巨星の段階に入って日射量が増加してもも惑星半径への影響はなく,再膨張は発生しない.K2-97 系と EPIC 228754001 系は,これをテストするための良い対象である,また,熱輸送の機構と惑星内部での散逸に制約を与えることも出来る (Tremblin et al. 2017など).

両惑星が受けた日射量の時間変化を調べるために,恒星の進化経路のモデル (Bressan et al. 2012) を使用した.その結果,両方の系において恒星による惑星へのフラックスの推移は類似していることが分かった.これは,これら 2 つの系の恒星と惑星のパラメータからすると予想通りの結果である.
EPIC 228754001 の質量は小さいにも関わらず,この恒星の金属量が低いことと,それによって主系列段階での有効温度が高くなることによって,結果として惑星 EPIC 228754001.01 への平均的な入射フラックスは大きくなった.

主系列段階での平均の入射フラックスは,どちらの系でも地球が現在受けているフラックスの ~ 100 - 350 倍であり,これはガス惑星が膨張半径を持つための日射量の閾値に近い値である.しかしこの値は,その他の膨張半径を持つガス惑星のうち,半径が 1.3 木星半径程度の物が受けているフラックス (地球の受ける日射量の 600 - 2000 倍) よりも有意に低い値である.なお,この 600 - 2000 倍という範囲は,2 惑星が現在受けている入射フラックスと非常に整合的である.

これらの 2 惑星の半径進化を,惑星内部の加熱効率をパラメータとして計算したところ,k2-97b での加熱効率は 0.033% (+0.037, -0.021), EPIC 228754001.01 での加熱効率は 0.023% (+0.23, -0.12) と推定された.加熱効率の計算における不定性は,両惑星の半径と質量を 1 標準偏差分増減させた場合の進化モデルから導出している.

これらの 2 惑星において,中心星が進化した後のの巨大ガス惑星の加熱効率は比較的小さい.また,2 惑星での値はお互いの不定性の間に入る程度に似た値である.
加熱効率の推定値は,Grunblatt et al. (2016) での 0.1 - 0.5%という過去の見積もりとは一致しない.この不一致は,過去の研究では K2-97b の質量を過大評価していたことによるものである.より低密度の惑星の半径は,高い密度の惑星の半径よりも加熱と冷却の効果に対して敏感に反応する.そのため,1.1 木星質量の惑星を 1.3 木星半径まで膨張させるのに必要な加熱量は,0.5 木星質量の惑星を同じサイズにまで膨張させるのに必要な加熱よりもずっと大きくなる.

これらの惑星の加熱効率の新しい見積もりは,これらの系では惑星の再膨張が発生したことを暫定的に示唆するものである.しかしその過程は,過去の研究で示唆されたほど効率的ではないことも判明した.

今回の結果では,惑星の冷却の遅れによる半径膨張という機構 (class II) は,これらの惑星の大きな半径を説明する説として完全に排除はされない.これは,これらの惑星の半径は,前主系列段階での惑星形成時における半径よりは大きくないからである.しかしこの場合,オーム加熱効率として ≧ 1%が必要と考えられる (Wu & Lithwick 2013).

選択効果と惑星パラメータの類似性

今回報告したこの 2 つの惑星 K2-97b と EPIC 228754001.01 はパラメータが非常に類似している.恒星の半径,質量,惑星半径,質量,軌道周期の値の違いは 10%以内である.

この事は,以下のような疑問を提起する.これらの系が非常に似ているのは単なる偶然なのか?それともこれは惑星の進化における大きな傾向を示すものなのか?あるいはこれはサーベイのバイアスおよび選択効果によるものか?
ここでは最後の可能性について調査を行った.

惑星の質量,半径,軌道周期の関数としての本来の惑星の存在頻度は,2 つの効果によって影響を受け,その結果として進化した恒星でのサーベイにおいて観測される,見かけの惑星の存在頻度を作り出す.その効果とは,トランジットによる惑星の検出の効率と,大きく低密度な中心星の潮汐による軌道崩壊に対する惑星の寿命の 2 つである.

進化した恒星に近い軌道を持つ惑星の個数が欠乏していること (Kunitomo et al. 2011) に加え,いくつかの赤色巨星分枝星に見られる奇妙な特徴 (高速な自転,磁場,リチウム存在度の異常など) は,惑星の軌道崩壊と中心星による巨大惑星の飲み込みによって説明される (Carlberg et al. 2009など).

バイアス効果の影響を考慮した結果,サーベイバイアス因子が最も高くなるのは,惑星質量が 0.4 木星質量の場合であった.これより軽い惑星は検出が難しく,一方で重い惑星は進化した恒星の周りでは長期間生き残れない.

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論文関連の(ほぼ)個人用メモ。



arXiv:1706.05049
Luszcz-Cook et al. (2017)
Retrieving Neptune's aerosol properties from Keck OSIRIS observations. I. Dark regions
(Keck OSIRIS 観測による海王星エアロゾル特性の復元 I.暗い領域)

概要

海王星の integral-field spectrograph (面分光器) による 3 次元データの解析結果について報告する.観測は,口径 10 m の W. M. Keck II telescope の OSIRIS を用い,2009 年 7 月 26 日から取得したデータの解析を行った.データの空間分解能は 0.035”/ピクセル,スペクトル分解能は H バンド (1.47 - 1.80 µm) と K バンド (1.97 - 2.38 µm) で R ~ 3800 である.

今回の分析は,海王星大気中の近赤外線で暗い領域 (離散的な明るい雲の特徴を示さない領域) に注目した.マルコフ過程モンテカルロアルゴリズムを使用したフォワードモデリングを用いて,近赤外で暗い領域の,気圧が ~ 4 bar よりも上の高度における,海王星のエアロゾルの構造とメタンの分布の復元を試みた.

解析の結果,この波長における海王星の雲の不透明度は,雲の底部が 3 bar 程度に位置している,コンパクトで光学的に厚い雲層によって占められることを発見した.輻射輸送に pyDISORT アルゴリズムを使用し,Henyey-Greenstein 位相関数を仮定すると,この雲は低いアルベドで構成されること (単一散乱アルベド 0.45 (+0.01, -0.01)),強い前方散乱をする粒子であること (非対称パラメータ 0.50 (+0.02, -0.02)),特徴的なサイズの推定値は ~ 1 µm であることが分かった.

この雲層の上では,観測の再現のためにはより小さい粒子サイズ (~ 0.1 µm) を持つ,垂直方向に広がったヘイズによるエアロゾル層が必要と考えられる.この層は対流圏上部 (0.59 (+0.04, -0.03) bar) から成層圏に入る辺りまで広がっている.このヘイズ中の粒子は深い位置の雲の中の粒子に比べて明るく (単一散乱アルベド 0.91 (+0.06, -0.05)),また,より等方散乱をする粒子である (非対称パラメータ 0.21 (+0.02, -0.03)).


ここで用いた解析を,海王星の北緯 20 度から南緯 87 度に位置する,18 箇所の雲無し領域に適用した.その結果,0.5 bar より上空でのエアロゾルの光学的深さは,低緯度と比較すると,中緯度と南半球の高緯度ではファクターで 2 - 3 もしくはそれ以上減少する様子が見られた.

また,海王星のメタン分布についても調べた.ここで用いた復元手法からは,メタンが凝縮すると期待される気圧においてメタンの相対湿度が低い事が強く示唆される,メタンの凝縮圧力よりも低い圧力におけるメタンの欠乏を解析のパラメータに含めたところ,ほとんどの場所におけるもっともらしい解は,メタンの欠乏は 2.0 - 2.5 bar まで続き,なおかつ対流圏界面付近でのメタンの相対湿度が 10%以下であるという結果であった.

中緯度と南半球の高緯度では,2.5 bar より上の領域ではメタンが少ないという傾向を暫定的に同定した.これは Karkoschka & Tomasko (2011) で見られる傾向と定性的に整合する.また,これは天王星で観測されている傾向と似ているが,それよりは弱い.

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