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論文関連の(ほぼ)個人用メモ。
arXiv:1703.04166
Lugar et al. (2017)
A terrestrial-sized exoplanet at the snow line of TRAPPIST-1
(TRAPPIST-1 のスノーライン上の地球サイズの系外惑星)
その後 TRAPPIST-1 はケプラー K2 ミッションの一環として観測された.その新しいデータを使って,これまではよく分かっていなかった最も外側の惑星 TRAPPIST-1h の軌道周期が 18.764 日と測定できたことを報告する.この値は,各惑星のラプラス関係による理論的に期待される値と一致した.この天体は,複雑な軌道共鳴連鎖の 7 番目にあることが確認された.
TRAPPIST-1h は 0.715 地球半径,平衡温度 169 K である,これはこの系スノーライン (水が気体になる距離と氷になる距離の境界) の位置に相当する.
また,中心星の自転周期を 3.3 日と決定した.さらに,活発な中程度の年齢の晩期 M 型星にありがちな数多くのフレアも検出された.
TRAPPIST-1h はこれまでトランジットが 1 回検出されたのみで,軌道周期が確定していなかった.理論的な観点からは,この惑星が TRAPPIST-1f と g との三体ラプラス共鳴に入っているとすると,いくつかの決まった周期が予測される.この予測値にはいくつかの値がありうるが,そのうちほとんどは,スピッツァー宇宙望遠鏡と地上望遠鏡での観測,およびトランジット時刻変動 (transit timing variation, TTV) からの制限によって排除される.
しかし,考えられる予測値のうち 18.765 日という値は,この周期でトランジットしている可能性があった別の時間帯は,過去のすべての観測でデータが存在していなかったため確認できていなかった.さらにこの値は,スピッツァー宇宙望遠鏡で検出された 1 回のトランジットの継続時間から推定された軌道周期 20 (+15, -6) 日と整合的である.
そのため,TRAPPIST-1h の軌道周期候補である 18.765 日が正しいと信じるに値する理由があった.これを立証するため,ケプラー K2 データを解析した.
3 体が以下の関係を満たす状態をラプラス共鳴と呼ぶ.
P_{2}^{-1}+qP_{3}^{-1}\approx0)
\lambda_{2}+q\lambda_{3}=\phi)
ここで p, q は整数,Pi と λi は i 番目の天体の軌道周期と平均視黄経.φ は三体角である.
TRAPPIST-1 系では,全ての隣接した 3 惑星が三体共鳴の条件を満たしている.
(p, q) = (1, 2) というのが古典的なラプラス共鳴である.(p, q) = (1, 2) と (2, 3) は,ケプラー223 系とケプラー80 系でそれぞれ発見されている.TRAPPIST-1 系の場合,TRAPPIST-1b, c, d は (p, q) = (2,3),TRAPPIST-1c, d, e は (p, q) = (1,2),TRAPPIST-1d, e, f は (p, q) = (2,3),TRAPPIST-1e, f, g は (p, q) = (1,2),TRAPPIST-1f, g, h は (p, q) = (1,1) を満たす.
このような系の共鳴構造は,惑星の形成過程における軌道移動の影響によって形成された可能性がある.惑星形成をしているガス円盤の中にある惑星は,質量が 1 火星質量程度を超えると密度擾乱を起こし,擾乱が惑星軌道にトルクを与えることで惑星の軌道移動を引き起こす.恒星の非常に近くにある低質量の惑星の起源は,火星から地球サイズの惑星の卵が,遠方から内側へと運ばれてきた考えるモデルも有る.円盤の内縁が軌道移動に対する障壁となり,内側に移動してきた複数の惑星が平均運動共鳴の連鎖に次々と捉えられることになる.
惑星の軌道進化には潮汐相互作用も重要であると考えられる.Mercury-T コードを用いた系の潮汐シミュレーションでは,数 Myr の間に各惑星の軌道離心率は 0.01 にまで減衰される事が示される.もちろん潮汐加熱の影響も大きい. TRAPPIST-1f と h 以外の惑星は,地球の合計の熱フラックスよりも大きい潮汐熱フラックスを持つと予測される.
また気候シミュレーションによると,恒星からの日射が低すぎるため大気中の二酸化炭素の凝結が発生し,分厚い二酸化炭素大気を維持するのも難しい.特に,1 bar の窒素大気中を仮定した場合,大気中の二酸化炭素濃度は 100 ppm を超えないと予測される.
理論的には,初期大気もしくは継続的な脱ガスの結果として水素分子豊富な大気があった場合は,TRAPPIST-1h の表面に液体の水を持つことが出来る.水素大気,窒素-水素大気,二酸化炭素-水素大気の場合は,それぞれ低日射量の環境でも,内部の熱を逃がしにくくする効果および十分な温室効果を持つことが知られている.高高度の雲に阻害されない限り,ハッブル宇宙望遠鏡によるトランジット分光観測によって,水素豊富大気を検出もしくは否定できるかもしれない.
またその他にも,氷の層の下に液体の海が存在する可能がある.表面の氷の層の最小厚みは,内部からの熱フラックスに依存する.地球の現在の地熱フラックスを仮定すると,氷の層は 2.7 km になると推定される.
超低温矮星の spin-down 時間 (自転周期が減速される時間) は長いため,精密な gyrochronology からの年齢決定は難しい.TRAPPIST-1 の自転周期は,近傍の晩期 M 型星の自転周期分布のおおむね中間あたりに位置している.このことから,年齢は 3 - 8 Gyr の範囲であることが示唆される.この年齢は,この星の金属量が太陽と近いことなどと整合的である.
黒点の存在と,不定期に起きる弱い可視光フレアの様子は,低活動度の M8 星である事と整合的である.測光観測データからは,連続光でのピークフラックスが 1%を超えるフレアが 0.38回/日 の頻度で発生していることが分かった.これは活発な M6 - M9 矮星より 30 倍低頻度である.また,活動度が低いことは,この恒星が比較的年老いた系であるという予想を支持する.
なお,K2 キャンペーンの観測時期の終わり近くに,非常に高エネルギーのフレアが発生し,これもケプラーで観測された.このフレアのモデリングは後の論文で紹介する.
arXiv:1703.04166
Lugar et al. (2017)
A terrestrial-sized exoplanet at the snow line of TRAPPIST-1
(TRAPPIST-1 のスノーライン上の地球サイズの系外惑星)
概要
TRAPPIST-1 系は,超低温矮星 (ultra cool dwarf) の周りで初めて発見されたトランジット惑星系である.これまでの観測では,少なくとも 7 個の,半径と質量が地球に類似した惑星が発見されている.その後 TRAPPIST-1 はケプラー K2 ミッションの一環として観測された.その新しいデータを使って,これまではよく分かっていなかった最も外側の惑星 TRAPPIST-1h の軌道周期が 18.764 日と測定できたことを報告する.この値は,各惑星のラプラス関係による理論的に期待される値と一致した.この天体は,複雑な軌道共鳴連鎖の 7 番目にあることが確認された.
TRAPPIST-1h は 0.715 地球半径,平衡温度 169 K である,これはこの系スノーライン (水が気体になる距離と氷になる距離の境界) の位置に相当する.
また,中心星の自転周期を 3.3 日と決定した.さらに,活発な中程度の年齢の晩期 M 型星にありがちな数多くのフレアも検出された.
観測とその解析結果
TRAPPIST-1h の軌道周期
TRAPPIST-1 (ケプラー K2 のカタログでは EPIC 246199087 として識別) は,ケプラーの K2 ミッションの Campaign 12 (2016/12/15 - 2017/3/4) の間の 79 日間観測された.ケプラーは 2017/2/1 - 2017/2/6 にセーフモードにあったため,5 日間のデータは欠損している.これらのデータを注意深く解析した.主な目的は TRAPPIST-1h の軌道周期に制限を与えることである.TRAPPIST-1h はこれまでトランジットが 1 回検出されたのみで,軌道周期が確定していなかった.理論的な観点からは,この惑星が TRAPPIST-1f と g との三体ラプラス共鳴に入っているとすると,いくつかの決まった周期が予測される.この予測値にはいくつかの値がありうるが,そのうちほとんどは,スピッツァー宇宙望遠鏡と地上望遠鏡での観測,およびトランジット時刻変動 (transit timing variation, TTV) からの制限によって排除される.
しかし,考えられる予測値のうち 18.765 日という値は,この周期でトランジットしている可能性があった別の時間帯は,過去のすべての観測でデータが存在していなかったため確認できていなかった.さらにこの値は,スピッツァー宇宙望遠鏡で検出された 1 回のトランジットの継続時間から推定された軌道周期 20 (+15, -6) 日と整合的である.
そのため,TRAPPIST-1h の軌道周期候補である 18.765 日が正しいと信じるに値する理由があった.これを立証するため,ケプラー K2 データを解析した.
ラプラス共鳴
ラプラス共鳴は三体の軌道共鳴状態を指す.ラプラス共鳴の典型的な例は,木星の衛星に見られる.3 体が以下の関係を満たす状態をラプラス共鳴と呼ぶ.
ここで p, q は整数,Pi と λi は i 番目の天体の軌道周期と平均視黄経.φ は三体角である.
TRAPPIST-1 系では,全ての隣接した 3 惑星が三体共鳴の条件を満たしている.
(p, q) = (1, 2) というのが古典的なラプラス共鳴である.(p, q) = (1, 2) と (2, 3) は,ケプラー223 系とケプラー80 系でそれぞれ発見されている.TRAPPIST-1 系の場合,TRAPPIST-1b, c, d は (p, q) = (2,3),TRAPPIST-1c, d, e は (p, q) = (1,2),TRAPPIST-1d, e, f は (p, q) = (2,3),TRAPPIST-1e, f, g は (p, q) = (1,2),TRAPPIST-1f, g, h は (p, q) = (1,1) を満たす.
このような系の共鳴構造は,惑星の形成過程における軌道移動の影響によって形成された可能性がある.惑星形成をしているガス円盤の中にある惑星は,質量が 1 火星質量程度を超えると密度擾乱を起こし,擾乱が惑星軌道にトルクを与えることで惑星の軌道移動を引き起こす.恒星の非常に近くにある低質量の惑星の起源は,火星から地球サイズの惑星の卵が,遠方から内側へと運ばれてきた考えるモデルも有る.円盤の内縁が軌道移動に対する障壁となり,内側に移動してきた複数の惑星が平均運動共鳴の連鎖に次々と捉えられることになる.
惑星の軌道進化には潮汐相互作用も重要であると考えられる.Mercury-T コードを用いた系の潮汐シミュレーションでは,数 Myr の間に各惑星の軌道離心率は 0.01 にまで減衰される事が示される.もちろん潮汐加熱の影響も大きい. TRAPPIST-1f と h 以外の惑星は,地球の合計の熱フラックスよりも大きい潮汐熱フラックスを持つと予測される.
TRAPPIST-1h の表面環境推定
TRAPPIST-1h に入射するフラックスは 200 W m-2 であり,窒素-二酸化炭素 -酸素大気を持つ場合に表面に液体の水を維持するのに必要な 300 W m-2 よりも小さい.残りの 100 W m-2 を潮汐加熱で賄うためには大きな軌道離心率が必要だが,他の惑星の軌道を考えると,TRAPPIST-1h が大きな軌道離心率を持つのは極めて不整合である.また気候シミュレーションによると,恒星からの日射が低すぎるため大気中の二酸化炭素の凝結が発生し,分厚い二酸化炭素大気を維持するのも難しい.特に,1 bar の窒素大気中を仮定した場合,大気中の二酸化炭素濃度は 100 ppm を超えないと予測される.
理論的には,初期大気もしくは継続的な脱ガスの結果として水素分子豊富な大気があった場合は,TRAPPIST-1h の表面に液体の水を持つことが出来る.水素大気,窒素-水素大気,二酸化炭素-水素大気の場合は,それぞれ低日射量の環境でも,内部の熱を逃がしにくくする効果および十分な温室効果を持つことが知られている.高高度の雲に阻害されない限り,ハッブル宇宙望遠鏡によるトランジット分光観測によって,水素豊富大気を検出もしくは否定できるかもしれない.
またその他にも,氷の層の下に液体の海が存在する可能がある.表面の氷の層の最小厚みは,内部からの熱フラックスに依存する.地球の現在の地熱フラックスを仮定すると,氷の層は 2.7 km になると推定される.
恒星の自転周期
K2 の観測データのフーリエ解析から,TRAPPIST-1 の表面にある黒点による変動を検出した.この変動周期より,中心星 TRAPPIST-1 の自転周期を ~ 3.3 日と決定した.これは,この恒星の自転角運動量が太陽の 1%であることを意味する.超低温矮星の spin-down 時間 (自転周期が減速される時間) は長いため,精密な gyrochronology からの年齢決定は難しい.TRAPPIST-1 の自転周期は,近傍の晩期 M 型星の自転周期分布のおおむね中間あたりに位置している.このことから,年齢は 3 - 8 Gyr の範囲であることが示唆される.この年齢は,この星の金属量が太陽と近いことなどと整合的である.
黒点の存在と,不定期に起きる弱い可視光フレアの様子は,低活動度の M8 星である事と整合的である.測光観測データからは,連続光でのピークフラックスが 1%を超えるフレアが 0.38回/日 の頻度で発生していることが分かった.これは活発な M6 - M9 矮星より 30 倍低頻度である.また,活動度が低いことは,この恒星が比較的年老いた系であるという予想を支持する.
なお,K2 キャンペーンの観測時期の終わり近くに,非常に高エネルギーのフレアが発生し,これもケプラーで観測された.このフレアのモデリングは後の論文で紹介する.
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論文関連の(ほぼ)個人用メモ。
arXiv:1703.04296
Brucalassi et al. (2017)
Search for giant planets in M67 IV: survey results
(M67 での巨大惑星の探査 iV:サーベイの結果)
このサーベイの主な目的は,散在星 (field star) と比較した時の,星団内での巨大惑星の存在頻度について調べることである.また,ここで観測したサンプルは,巨大惑星を持つ恒星と持たない恒星の化学組成の比較を長期間に渡って詳細に行うのに適している.
観測は,European Southern Observatory (La Silla) の HARPS 分光器,Observatoire de Haute-Provence (France) のSOPHIE 分光器,Hobby Eberly Telescope (Texas) の HRS 分光器,Telescopio Nazionale Galileo (La Palma) の HARPS-N で行われた.また,追加の視線速度データは,Euler Swiss Telescope (La Silla) の CORALIE 分光器から得られた.
これらの視線速度サーベイの中で,巨大惑星の存在頻度を推定するためにモンテカルロシミュレーションを行った.シミュレーションでは,軌道周期が 1.0 - 1000 日で,惑星質量が 0.2 - 10.0 木星質量のものを考慮した.観測的な検出効率を,それぞれの星の惑星の存在頻度を決定するための尺度として用いた.
ここでは,この視線速度キャンペーンでこれまでに報告されている全ての惑星の性質をまとめる.これまでに発見されているのは,主系列星 YBP1194,YBP1514,YBP401 のまわりの 3 つのホットジュピターと,進化した恒星 S364 の周りの 1 つの巨大惑星である.
さらに,YBP778 と S978 のまわりの 2 つの惑星候補シグナルについても解析した.後者の 2 天体については,長周期の視線速度のトレンドを解析した結果,これまで発見されていなかった伴星か準恒星天体と思われる.これにより,このキャンペーンで検出された連星候補 (伴星は恒星・褐色矮星・惑星を含む) の合計は 14 個に増えた.
このサーベイでドップラー法で発見された惑星を元にすると,選択された周期-質量の範囲の中では,巨大惑星の存在頻度は ~ 18.0 (+12.0, -8.0)%となった.この頻度は散在星での値よりも僅かに大きいが,誤算の範囲内で整合的である.しかし,ホットジュピターの存在頻度 ~ 5.7 (+5.5, -3.0)%は,散在星での値よりも十分に大きい.
arXiv:1703.04296
Brucalassi et al. (2017)
Search for giant planets in M67 IV: survey results
(M67 での巨大惑星の探査 iV:サーベイの結果)
概要
散開星団 M67 の中にある,太陽と同年代で太陽と同程度の金属量を持つ恒星における木星質量惑星の検出を目的とした,星団中の 88 個の主系列星および進化した恒星のサンプルの,7 年間に渡る視線速度サーベイの結果を報告する.このサーベイの主な目的は,散在星 (field star) と比較した時の,星団内での巨大惑星の存在頻度について調べることである.また,ここで観測したサンプルは,巨大惑星を持つ恒星と持たない恒星の化学組成の比較を長期間に渡って詳細に行うのに適している.
観測は,European Southern Observatory (La Silla) の HARPS 分光器,Observatoire de Haute-Provence (France) のSOPHIE 分光器,Hobby Eberly Telescope (Texas) の HRS 分光器,Telescopio Nazionale Galileo (La Palma) の HARPS-N で行われた.また,追加の視線速度データは,Euler Swiss Telescope (La Silla) の CORALIE 分光器から得られた.
これらの視線速度サーベイの中で,巨大惑星の存在頻度を推定するためにモンテカルロシミュレーションを行った.シミュレーションでは,軌道周期が 1.0 - 1000 日で,惑星質量が 0.2 - 10.0 木星質量のものを考慮した.観測的な検出効率を,それぞれの星の惑星の存在頻度を決定するための尺度として用いた.
ここでは,この視線速度キャンペーンでこれまでに報告されている全ての惑星の性質をまとめる.これまでに発見されているのは,主系列星 YBP1194,YBP1514,YBP401 のまわりの 3 つのホットジュピターと,進化した恒星 S364 の周りの 1 つの巨大惑星である.
さらに,YBP778 と S978 のまわりの 2 つの惑星候補シグナルについても解析した.後者の 2 天体については,長周期の視線速度のトレンドを解析した結果,これまで発見されていなかった伴星か準恒星天体と思われる.これにより,このキャンペーンで検出された連星候補 (伴星は恒星・褐色矮星・惑星を含む) の合計は 14 個に増えた.
このサーベイでドップラー法で発見された惑星を元にすると,選択された周期-質量の範囲の中では,巨大惑星の存在頻度は ~ 18.0 (+12.0, -8.0)%となった.この頻度は散在星での値よりも僅かに大きいが,誤算の範囲内で整合的である.しかし,ホットジュピターの存在頻度 ~ 5.7 (+5.5, -3.0)%は,散在星での値よりも十分に大きい.
論文関連の(ほぼ)個人用メモ。
arXiv:1703.03622
Vidotto & Donati (2017)
Predicting radio emission from the newborn hot Jupiter V830 Tau and its host star
(若いホットジュピター V830 Tau とその主星からの電波放射の予言)
このモデルでは,再構築された恒星の表面磁場を考慮に入れた 3 次元磁気流体シミュレーションを用いて主星の恒星風をモデル化した.このシミュレーション結果から,V830 Tau b 周辺環境の局所的なコンディションに制限を与えることが出来る.その後,惑星周辺環境からの電波放射について計算した.
計算の結果,期待される電波放射密度は 6 - 24 mJy の範囲である.この値の大きさは惑星の半径の見積もり (1 - 2 木星半径) に依存する.またこの電波フラックスは惑星が軌道を動く間一定ではない.極大値は平均値より最大で 2 倍程度になると予測される.
このフラックスは,極での推定される惑星磁場の値 (10 - 100 G) に弱く依存する (変化の大きさはファクター 1.8) ことが分かった.反対に,放射の最大周波数は 18 - 240 MHz まで変化する.
また,恒星風からの熱的電波放射の強度も推定した.
この計算結果を,Karl G. Jansky Very Large Array と Very Long Baseline Array でのこの系の観測と比較した.そこから,恒星の質量放出率は 3 × 10-9 太陽質量/年 以下であると推定した.具体的な値は,おそらく ~ 10-12 - 10-10 太陽質量/年 の範囲である.
これらの値から,電波放射している恒星風の広がりは,275 - 50 MHz の範囲で ~ 3 - 30 恒星半径まで広がっていると推定される.このことは,中心星から 6.1 恒星半径の場所に位置する V830 Tau b は,中心星の恒星風が電波の波長に対して光学的に厚いが,そこまで深くない領域の中にあることを示唆する.
また惑星からの電波放射は,サイクロトロン放射の周波数が恒星風のプラズマ周波数を上回ったときのみ,恒星風の中を伝播できるということを指摘する.言い換えれば,惑星からの電波放射が中心星の恒星風の中を伝播するためには,惑星の磁場は ~ 1.3 - 13 G より大きい必要がある.
ここでの電波放射の計算は太陽系内惑星のアナロジーを元にしているため,この計算はあくまで推定として考慮されるべきものである.とは言え,V830 Tau 系は惑星と中心星の恒星風の両方からの電波放射観測を計画する対象として,非常に興味深い.
arXiv:1703.03622
Vidotto & Donati (2017)
Predicting radio emission from the newborn hot Jupiter V830 Tau and its host star
(若いホットジュピター V830 Tau とその主星からの電波放射の予言)
概要
磁場を持った系外惑星は,地球と木星のオーロラ電波放射と同様に,電波の周波数での放射を持つことが期待される.ここでは,これまでに発見されている中で最も若い (~ 2 Myr) 系外惑星である V830 Tau b (おうし座V830星b) からの電波放射を理論的に予測する.このモデルでは,再構築された恒星の表面磁場を考慮に入れた 3 次元磁気流体シミュレーションを用いて主星の恒星風をモデル化した.このシミュレーション結果から,V830 Tau b 周辺環境の局所的なコンディションに制限を与えることが出来る.その後,惑星周辺環境からの電波放射について計算した.
計算の結果,期待される電波放射密度は 6 - 24 mJy の範囲である.この値の大きさは惑星の半径の見積もり (1 - 2 木星半径) に依存する.またこの電波フラックスは惑星が軌道を動く間一定ではない.極大値は平均値より最大で 2 倍程度になると予測される.
このフラックスは,極での推定される惑星磁場の値 (10 - 100 G) に弱く依存する (変化の大きさはファクター 1.8) ことが分かった.反対に,放射の最大周波数は 18 - 240 MHz まで変化する.
また,恒星風からの熱的電波放射の強度も推定した.
この計算結果を,Karl G. Jansky Very Large Array と Very Long Baseline Array でのこの系の観測と比較した.そこから,恒星の質量放出率は 3 × 10-9 太陽質量/年 以下であると推定した.具体的な値は,おそらく ~ 10-12 - 10-10 太陽質量/年 の範囲である.
これらの値から,電波放射している恒星風の広がりは,275 - 50 MHz の範囲で ~ 3 - 30 恒星半径まで広がっていると推定される.このことは,中心星から 6.1 恒星半径の場所に位置する V830 Tau b は,中心星の恒星風が電波の波長に対して光学的に厚いが,そこまで深くない領域の中にあることを示唆する.
また惑星からの電波放射は,サイクロトロン放射の周波数が恒星風のプラズマ周波数を上回ったときのみ,恒星風の中を伝播できるということを指摘する.言い換えれば,惑星からの電波放射が中心星の恒星風の中を伝播するためには,惑星の磁場は ~ 1.3 - 13 G より大きい必要がある.
ここでの電波放射の計算は太陽系内惑星のアナロジーを元にしているため,この計算はあくまで推定として考慮されるべきものである.とは言え,V830 Tau 系は惑星と中心星の恒星風の両方からの電波放射観測を計画する対象として,非常に興味深い.
論文関連の(ほぼ)個人用メモ。
arXiv:1703.03417
Mills et al. (2017)
Mass, Density, and Formation Constraints in the Compact, Sub-Earth Kepler-444 System including Two Mars-Mass Planets
(2 つの火星質量惑星を持っているコンパクトなサブアース系ケプラー444 の質量・密度・形成への制限)
ここで,ケプラーのデータセットからトランジットのタイミングの解析を行い,各惑星の質量を推定した.
ケプラー444d とケプラー444e は,トランジット時刻変動を作る共鳴の配置により,質量を検出した.それぞれ,0.036 (+0.065, -0.020) 地球質量,0.034 (+0.059, -0.019) 地球質量と推定される.
これらの惑星の質量比と,恒星と惑星の間に起こり得る潮汐効果の大きさを考慮すると,この系の現在観測されている軌道配置は,惑星形成後の大きな変動がない場合は,遠方からのスムーズな円盤内惑星移動では説明できないと推測される.
arXiv:1703.03417
Mills et al. (2017)
Mass, Density, and Formation Constraints in the Compact, Sub-Earth Kepler-444 System including Two Mars-Mass Planets
(2 つの火星質量惑星を持っているコンパクトなサブアース系ケプラー444 の質量・密度・形成への制限)
概要
ケプラー444 はおよそ 110 億歳の恒星であり,5 つの惑星を持つことが分かっている.5 つのトランジット惑星はどれも地球より小さい半径を持ち,軌道周期は 3 - 10 日の範囲というコンパクトな軌道配置をしている.ここで,ケプラーのデータセットからトランジットのタイミングの解析を行い,各惑星の質量を推定した.
ケプラー444d とケプラー444e は,トランジット時刻変動を作る共鳴の配置により,質量を検出した.それぞれ,0.036 (+0.065, -0.020) 地球質量,0.034 (+0.059, -0.019) 地球質量と推定される.
これらの惑星の質量比と,恒星と惑星の間に起こり得る潮汐効果の大きさを考慮すると,この系の現在観測されている軌道配置は,惑星形成後の大きな変動がない場合は,遠方からのスムーズな円盤内惑星移動では説明できないと推測される.
論文関連の(ほぼ)個人用メモ。
arXiv:1703.03518
Getley et al. (2017)
Evidence for a planetary mass third body orbiting the binary star KIC 5095269
(連星 KIC 5095269 を公転する惑星質量の 3 体目の証拠)
連星の光度曲線と周期的な食のタイミングの変動から, eclipse timing variaion によって連星の周りを 237.7 日で公転する 7.70 木星質量の天体を検出した.この連星系は主星が 1.2 太陽質量であり,0.51 太陽質量の伴星が周期 18.6 日で公転している.
力学計算からは, 107 年はこの軌道配置で安定であると示唆される.この連星と惑星質量天体の性質を確定させるために,今後の視線速度観測が望まれる.
連星の公転周期 18.61196 日
軌道離心率 0.246
軌道周期:237.70817 日
軌道離心率:0.0604
arXiv:1703.03518
Getley et al. (2017)
Evidence for a planetary mass third body orbiting the binary star KIC 5095269
(連星 KIC 5095269 を公転する惑星質量の 3 体目の証拠)
概要
近接連星 KIC 5095269 を公転する惑星質量天体の検出について報告する.この検出はケプラーの観測データによるものである.連星の光度曲線と周期的な食のタイミングの変動から, eclipse timing variaion によって連星の周りを 237.7 日で公転する 7.70 木星質量の天体を検出した.この連星系は主星が 1.2 太陽質量であり,0.51 太陽質量の伴星が周期 18.6 日で公転している.
力学計算からは, 107 年はこの軌道配置で安定であると示唆される.この連星と惑星質量天体の性質を確定させるために,今後の視線速度観測が望まれる.
パラメータ
KIC 5095269 (連星)
主星は 1.21 太陽質量,伴星が 0.51 太陽質量連星の公転周期 18.61196 日
軌道離心率 0.246
KIC 5095269b
質量:7.698 木星質量軌道周期:237.70817 日
軌道離心率:0.0604
天文・宇宙物理関連メモ vol.389 Gillon et al. (2017) TRAPPIST-1 まわりの 7 つの惑星の発見