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論文関連の(ほぼ)個人用メモ。
arXiv:1701.05564
Robinson (2017)
A Theory of Exoplanet Transits with Light Scattering
(光の散乱を考慮した系外惑星トランジットの理論)
しかしトランジットの大気スペクトルモデルはしばしば単純化されていて,重要かもしれないプロセス,例えば大気での屈折や多重散乱などが無視されている.前者のプロセスは最近発展しているが,系外惑星のトランジットスペクトルにおける光の多重散乱の影響はこれまであまり注目されてこなかった.
ここでは,屈折や多重散乱を含んだ系外惑星のトランジット分光観測に関する詳細な理論を構築する.特に,惑星全体に広がった雲層での散乱の重要性について調べた.
この雲層において重要なパラメータは,斜め方向の散乱光学的深さ,散乱非対称パラメータ,そして中心星の角サイズである.後者は,観測者から見た時の,光子にとっての “ターゲット” のサイズを決める.
ここでの結果は,トランジットスペクトルに対する多重散乱の重要性を示唆するものになった.
惑星の軌道距離が恒星半径の 10 - 20 倍よりも小さい場合,散乱の非対称パラメータが 0.8 - 0.9 より大きいエアロゾルの多重散乱によるスペクトルへの影響は大きくなる.
ここで,ホットジュピターのトランジット透過光スペクトルへの,雲やヘイズによる多重散乱の影響の例を示す.前方散乱で一定量の散乱をする雲・ヘイズが存在する場合,多重散乱効果を考慮したことによるトランジット深さの違いは 200 ppm を超える.しかし,強いガスの吸収に対応する波長域では差はゼロに近づき,あるいは雲の斜めの光学的深さが数十を超える場合も同様の結果となる.
arXiv:1701.05564
Robinson (2017)
A Theory of Exoplanet Transits with Light Scattering
(光の散乱を考慮した系外惑星トランジットの理論)
概要
系外惑星のトランジット分光観測から,その惑星の特徴付けをすることが出来る.また将来的な NASA のジェームズ・ウェッブ宇宙望遠鏡では,トランジット分光観測から重要な結果が得られるだろう.しかしトランジットの大気スペクトルモデルはしばしば単純化されていて,重要かもしれないプロセス,例えば大気での屈折や多重散乱などが無視されている.前者のプロセスは最近発展しているが,系外惑星のトランジットスペクトルにおける光の多重散乱の影響はこれまであまり注目されてこなかった.
ここでは,屈折や多重散乱を含んだ系外惑星のトランジット分光観測に関する詳細な理論を構築する.特に,惑星全体に広がった雲層での散乱の重要性について調べた.
この雲層において重要なパラメータは,斜め方向の散乱光学的深さ,散乱非対称パラメータ,そして中心星の角サイズである.後者は,観測者から見た時の,光子にとっての “ターゲット” のサイズを決める.
ここでの結果は,トランジットスペクトルに対する多重散乱の重要性を示唆するものになった.
惑星の軌道距離が恒星半径の 10 - 20 倍よりも小さい場合,散乱の非対称パラメータが 0.8 - 0.9 より大きいエアロゾルの多重散乱によるスペクトルへの影響は大きくなる.
ここで,ホットジュピターのトランジット透過光スペクトルへの,雲やヘイズによる多重散乱の影響の例を示す.前方散乱で一定量の散乱をする雲・ヘイズが存在する場合,多重散乱効果を考慮したことによるトランジット深さの違いは 200 ppm を超える.しかし,強いガスの吸収に対応する波長域では差はゼロに近づき,あるいは雲の斜めの光学的深さが数十を超える場合も同様の結果となる.
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論文関連の(ほぼ)個人用メモ。
arXiv:1701.05594
Quillen et al. (2017)
Obliquity evolution of the minor satellites of Pluto and Charon
(冥王星とカロンの小衛星の傾斜角の進化)
また冥王星-カロンの軌道平面に対して,大きな自転軸傾斜角を持っていることも分かった (Weaver et al. 2016).
ここでは N 体シミュレーション中の dumped mass-spring model を用いて,これらの小衛星の自転と自転軸の進化を研究した.
周連星軌道における,単一自転の,丸い形状を持たない天体について.潮汐散逸のみを考慮したシミュレーションでは,小衛星の大きな自転軸の多様性は見られなかった.しかし,潮汐的に進化するステュクスは,間欠的な自転軸変動および回転の様相を示した.
過去のカロンが冥王星から離れていく時期では,小さい衛星は平均軌道共鳴にとらわれる可能性がある.外向きに移動するカロンは,ニクスとステュクスの自転軸に大きな変動を誘起する.これの原因は,平均運動共鳴周波数と回転体の自転歳差率の間の尽数関係に起因する.
小さい衛星が平均運動共鳴に近い状態にある場合,このメカニズムは 4 つの小さい衛星全ての自転軸傾斜角を大きくした可能性がある.もしそうであれば,冥王星とカロンの周りの小さい衛星の持つ大きな自転軸傾斜角は,この系がかつて軌道移動を経験し,全ての衛星はどこかの段階で平均運動共鳴に捕らわれたことを示唆する.
arXiv:1701.05594
Quillen et al. (2017)
Obliquity evolution of the minor satellites of Pluto and Charon
(冥王星とカロンの小衛星の傾斜角の進化)
概要
冥王星探査機ニューホライズンズの観測からは,冥王星-カロン系にある小さい衛星のステュクス,ニクス,ケルベロス,ヒドラは,公転周期との同期回転状態にまで自転が潮汐的に減速されていないことが分かっている.また冥王星-カロンの軌道平面に対して,大きな自転軸傾斜角を持っていることも分かった (Weaver et al. 2016).
ここでは N 体シミュレーション中の dumped mass-spring model を用いて,これらの小衛星の自転と自転軸の進化を研究した.
周連星軌道における,単一自転の,丸い形状を持たない天体について.潮汐散逸のみを考慮したシミュレーションでは,小衛星の大きな自転軸の多様性は見られなかった.しかし,潮汐的に進化するステュクスは,間欠的な自転軸変動および回転の様相を示した.
過去のカロンが冥王星から離れていく時期では,小さい衛星は平均軌道共鳴にとらわれる可能性がある.外向きに移動するカロンは,ニクスとステュクスの自転軸に大きな変動を誘起する.これの原因は,平均運動共鳴周波数と回転体の自転歳差率の間の尽数関係に起因する.
小さい衛星が平均運動共鳴に近い状態にある場合,このメカニズムは 4 つの小さい衛星全ての自転軸傾斜角を大きくした可能性がある.もしそうであれば,冥王星とカロンの周りの小さい衛星の持つ大きな自転軸傾斜角は,この系がかつて軌道移動を経験し,全ての衛星はどこかの段階で平均運動共鳴に捕らわれたことを示唆する.
論文関連の(ほぼ)個人用メモ。
arXiv:1701.05211
Nasiroglu et al. (2017)
Is there a circumbinary planet around NSVS 14256825?
(NSVS 14256825 のまわりに周連星惑星は存在するか?)
ここで,NSVS 1425682583 の食の時刻の観測を新たに行った.この観測により,過去に報告されていた観測結果の観測の空白期間を埋めるだけではなく,これまでに得られている O-C ダイアグラムの期間を 3 年延ばした.過去の観測データと今回の観測で得られた新しいデータの合計は 17 年間分に渡る.これらのデータを合わせて再解析した.
その結果得られた,O-C ダイアグラムの変動に対して,2 つの考えられるシナリオについて考察した.
1 つ目は,不可視の天体が連星周りを離れた軌道で公転していると考えるものである.2 つ目は,恒星の磁気的サイクルによるもので,これは Applegate effect や Lanza–Rodono ́ effect と呼ばれる効果である.
解析の結果,後者のメカニズムは O-C ダイアグラムの変動の説明にはならないことが判明した.これは,伴星の M 型星のエネルギーでは観測された変動を説明するには不十分であることが原因である.
前者のメカニズム,つまり 3 体目の天体が存在するという枠組みの中で,その仮説上の天体の軌道パラメータと質量に対して観測結果から制限を与えた.
ベストフィットモデルでは,最小質量が 15 木星質量の褐色矮星の存在によって O-C ダイアグラムの変動が説明できる.軌道離心率はやや大きめの e ~ 0.175 で,軌道周期は ~ 10 年である.
今回のの解析では,過去に提案されていた 2 惑星モデルは排除された.
Wilson et al. (2007) では,この星は食連星であり,V = 13.22-14.03 の変動を持っていると報告された.また,Wilson et al. (2007) は変動の光度曲線と関連する物理パラメータについても初めて報告し,この連星は 0.110374230 日周期であるとした.
この天体はおとめ座HW星 (HW Vir) の仲間であり,post-common-envelope binary (PCEB) である.
連星間の距離は 0.80 太陽半径である.これは測光観測及び分光観測から得られた結果である (Almeida et al. 2012).
食の時刻の測定は Wils et al. (2007) などによって行われている.Beuermann et al. (2012) では,食の周期の変動の存在と,その原因として ~ 12 木星質量,20 年周期周連星惑星の存在を示唆した.Almeida et al. (2013) ではさらに観測データを増やし,周期が 3.5 年と 6.7 年の,それぞれ ~ 3 木星質量と ~ 8.0 木星質量の 2 つの周連星惑星の存在を示唆した.なおこの周連星の 2 惑星の配置の軌道安定性に関しては,1000 年に満たないタイムスケールで軌道が不安定になると指摘されている (Wyttenmyer et al. 2013).
arXiv:1701.05211
Nasiroglu et al. (2017)
Is there a circumbinary planet around NSVS 14256825?
(NSVS 14256825 のまわりに周連星惑星は存在するか?)
概要
NSVS 14256825 の食のタイミングの O-C residual の振る舞いから,この連星系は 1 つか 2 つの木星型の周連星惑星を持つと考えられてきた.この連星系は,sdB 星 (subdwarf B star, B型準矮星) と M 型星の連星 (食連星) である.ここで,NSVS 1425682583 の食の時刻の観測を新たに行った.この観測により,過去に報告されていた観測結果の観測の空白期間を埋めるだけではなく,これまでに得られている O-C ダイアグラムの期間を 3 年延ばした.過去の観測データと今回の観測で得られた新しいデータの合計は 17 年間分に渡る.これらのデータを合わせて再解析した.
その結果得られた,O-C ダイアグラムの変動に対して,2 つの考えられるシナリオについて考察した.
1 つ目は,不可視の天体が連星周りを離れた軌道で公転していると考えるものである.2 つ目は,恒星の磁気的サイクルによるもので,これは Applegate effect や Lanza–Rodono ́ effect と呼ばれる効果である.
解析の結果,後者のメカニズムは O-C ダイアグラムの変動の説明にはならないことが判明した.これは,伴星の M 型星のエネルギーでは観測された変動を説明するには不十分であることが原因である.
前者のメカニズム,つまり 3 体目の天体が存在するという枠組みの中で,その仮説上の天体の軌道パラメータと質量に対して観測結果から制限を与えた.
ベストフィットモデルでは,最小質量が 15 木星質量の褐色矮星の存在によって O-C ダイアグラムの変動が説明できる.軌道離心率はやや大きめの e ~ 0.175 で,軌道周期は ~ 10 年である.
今回のの解析では,過去に提案されていた 2 惑星モデルは排除された.
NSVS 14256825 について
この天体は,Northern Sky Variability Survey (NSVS) によって発見された (Woz ́niak et al. 2004).Wilson et al. (2007) では,この星は食連星であり,V = 13.22-14.03 の変動を持っていると報告された.また,Wilson et al. (2007) は変動の光度曲線と関連する物理パラメータについても初めて報告し,この連星は 0.110374230 日周期であるとした.
この天体はおとめ座HW星 (HW Vir) の仲間であり,post-common-envelope binary (PCEB) である.
連星間の距離は 0.80 太陽半径である.これは測光観測及び分光観測から得られた結果である (Almeida et al. 2012).
食の時刻の測定は Wils et al. (2007) などによって行われている.Beuermann et al. (2012) では,食の周期の変動の存在と,その原因として ~ 12 木星質量,20 年周期周連星惑星の存在を示唆した.Almeida et al. (2013) ではさらに観測データを増やし,周期が 3.5 年と 6.7 年の,それぞれ ~ 3 木星質量と ~ 8.0 木星質量の 2 つの周連星惑星の存在を示唆した.なおこの周連星の 2 惑星の配置の軌道安定性に関しては,1000 年に満たないタイムスケールで軌道が不安定になると指摘されている (Wyttenmyer et al. 2013).
天文・宇宙物理関連メモ vol.366 Rodriguez et al. (2017) および Crossfield et al. (2017) HD 106315 まわりの複数トランジット惑星系の発見
論文関連の(ほぼ)個人用メモ。
arXiv:1701.03807
Rodriguez et al. (2017)
A Multi-Planet System Transiting the V = 9 Rapidly Rotating F-Star HD 106315
(V = 9 の高速自転する F 型星 HD 106315 をトランジットする複数惑星系)
この恒星はは高速で自転する星であり,中期 F 型星である.ケプラー K2 ミッションでのデータを解析することで惑星を検出した.
発見された惑星は,半径が 2.51 地球半径で 9.5 日周期のスーパーアースと,4.31 地球半径で 21 日周期のスーパーネプチューンである.
中心星の射影した自転速度は 14.6 km/s であり,惑星質量の詳細な測定は難しいだろうと考えられる.しかし射影した惑星の軌道傾斜角は,外側の惑星でドップラートモグラフィー (Dopplar tomography) を介して測定できるだろう.
両方の惑星の軌道離心率は 0 と整合的な結果であった.これは,GAIA の距離と力学的な議論を含んだグローバルモデリングより得られた結果である.
この系は,惑星の軌道傾斜角が測定可能である,数少ない海王星サイズ惑星とスーパーアースの複数惑星系のひとつ.そのためこの系は,温かい海王星的惑星の形成メカニズムを検証するのに良い研究対象と言える.
また中心星の明るさから考えて,外側の惑星は将来的なトランジット透過光観測の対象と言える.
金属量:[m/H] = -0.27
有効温度:6251 K
距離:107.3 pc
スペクトル型:F5V
質量:1.027 太陽質量
半径:1.291 太陽半径
年齢:5.91 Gyr
光度:2.27 太陽光度
半径:2.51 地球半径
軌道長半径:0.0889 AU
平衡温度:1149 K
半径:4.31 地球半径
軌道長半径:0.1500 AU
平衡温度:860 K
arXiv:1701.03811
Crossfield et al. (2017)
Two Small Transiting Planets and a Third Body Orbiting HD 106315
(HD 106315 を公転する 2 つの小さいトランジット惑星と 3 体目の天体)
2 つの小さいトランジット惑星は,半径が 2.23 地球半径と 3.95 地球半径で,軌道周期はそれぞれ 9.55 日と 21.06 日であった.
視線速度のトレンド 3.55 m s-1 d-1 から,この恒星の周りを公転する 3 体目の存在が示唆される.3 体目の天体の軌道周期は 80 日以上,質量は木星質量以上と推定される.
この天体によるトランジットは深さが ~ 1%になるはずであり,観測結果よりトランジットしている可能性は排除された.
中心星の射影自転速度は 13.2 km s-1 だが,6.4 m s-1 の短いタイムスケールでの視線速度の変動を持ち,内側の 2 つの惑星の質量と密度,外側の天体の軌道と質量を視線速度法で測定する良いターゲットである.
さらに,視線速度変動と中程度の視線速度の値の組み合わせから,この天体はロシター効果を通した内側の 2 つの惑星の spin-orbit alignment (中心星の自転軸と惑星の公転軸の間の角度) の測定の対象として適していると考えられる.また,2 つのトランジット惑星のトランジットと二次食 (secondary eclipse) 時の分光観測による,宇宙空間からの大気の特徴付けも実現可能であると考えられる.
距離:107.3 pc
年齢:4 Gyr
スペクトル型:F5V
金属量:[Fe/H] = -0.24
有効温度:6290 K
質量:1.07 太陽質量
半径:1.18 太陽半径
光度:1.95 太陽光度
半径:2.23 地球半径
軌道長半径:0.09012 AU
半径:3.95 地球半径
軌道長半径:0.1526 AU
同じ恒星 HD 106315 まわりに複数の惑星を発見したという発見報告論文が,同じタイミングで投稿されています.どちらも,一般に公開されているケプラーによる K2 ミッションのデータを解析した結果です.
後者の論文の方は,さらに視線速度観測から 3 体目のトランジットしていない天体の存在を指摘しています.
arXiv:1701.03807
Rodriguez et al. (2017)
A Multi-Planet System Transiting the V = 9 Rapidly Rotating F-Star HD 106315
(V = 9 の高速自転する F 型星 HD 106315 をトランジットする複数惑星系)
概要
HD 106315 の周りの複数惑星系の発見を報告する.この恒星はは高速で自転する星であり,中期 F 型星である.ケプラー K2 ミッションでのデータを解析することで惑星を検出した.
発見された惑星は,半径が 2.51 地球半径で 9.5 日周期のスーパーアースと,4.31 地球半径で 21 日周期のスーパーネプチューンである.
中心星の射影した自転速度は 14.6 km/s であり,惑星質量の詳細な測定は難しいだろうと考えられる.しかし射影した惑星の軌道傾斜角は,外側の惑星でドップラートモグラフィー (Dopplar tomography) を介して測定できるだろう.
両方の惑星の軌道離心率は 0 と整合的な結果であった.これは,GAIA の距離と力学的な議論を含んだグローバルモデリングより得られた結果である.
この系は,惑星の軌道傾斜角が測定可能である,数少ない海王星サイズ惑星とスーパーアースの複数惑星系のひとつ.そのためこの系は,温かい海王星的惑星の形成メカニズムを検証するのに良い研究対象と言える.
また中心星の明るさから考えて,外側の惑星は将来的なトランジット透過光観測の対象と言える.
パラメータ
HD 106315
等級:9 等金属量:[m/H] = -0.27
有効温度:6251 K
距離:107.3 pc
スペクトル型:F5V
質量:1.027 太陽質量
半径:1.291 太陽半径
年齢:5.91 Gyr
光度:2.27 太陽光度
HD 106315b
軌道周期:9.55385 日半径:2.51 地球半径
軌道長半径:0.0889 AU
平衡温度:1149 K
HD 106315c
軌道周期:21.0580 日半径:4.31 地球半径
軌道長半径:0.1500 AU
平衡温度:860 K
arXiv:1701.03811
Crossfield et al. (2017)
Two Small Transiting Planets and a Third Body Orbiting HD 106315
(HD 106315 を公転する 2 つの小さいトランジット惑星と 3 体目の天体)
概要
HD 106315 を公転する 3 つの天体の発見を報告する.この星は明るい F5 主系列星で,トランジット系外惑星のためのケプラー K2 サーベイのターゲットである.2 つの小さいトランジット惑星は,半径が 2.23 地球半径と 3.95 地球半径で,軌道周期はそれぞれ 9.55 日と 21.06 日であった.
視線速度のトレンド 3.55 m s-1 d-1 から,この恒星の周りを公転する 3 体目の存在が示唆される.3 体目の天体の軌道周期は 80 日以上,質量は木星質量以上と推定される.
この天体によるトランジットは深さが ~ 1%になるはずであり,観測結果よりトランジットしている可能性は排除された.
中心星の射影自転速度は 13.2 km s-1 だが,6.4 m s-1 の短いタイムスケールでの視線速度の変動を持ち,内側の 2 つの惑星の質量と密度,外側の天体の軌道と質量を視線速度法で測定する良いターゲットである.
さらに,視線速度変動と中程度の視線速度の値の組み合わせから,この天体はロシター効果を通した内側の 2 つの惑星の spin-orbit alignment (中心星の自転軸と惑星の公転軸の間の角度) の測定の対象として適していると考えられる.また,2 つのトランジット惑星のトランジットと二次食 (secondary eclipse) 時の分光観測による,宇宙空間からの大気の特徴付けも実現可能であると考えられる.
パラメータ
HD 106315
等級:8.97 等距離:107.3 pc
年齢:4 Gyr
スペクトル型:F5V
金属量:[Fe/H] = -0.24
有効温度:6290 K
質量:1.07 太陽質量
半径:1.18 太陽半径
光度:1.95 太陽光度
HD 106315b
軌道周期:9.5521 日半径:2.23 地球半径
軌道長半径:0.09012 AU
HD 106315c
軌道周期:21.0576 日半径:3.95 地球半径
軌道長半径:0.1526 AU
同じ恒星 HD 106315 まわりに複数の惑星を発見したという発見報告論文が,同じタイミングで投稿されています.どちらも,一般に公開されているケプラーによる K2 ミッションのデータを解析した結果です.
後者の論文の方は,さらに視線速度観測から 3 体目のトランジットしていない天体の存在を指摘しています.
論文関連の(ほぼ)個人用メモ。
arXiv:1701.03776
Anderson et al. (2017)
The discoveries of WASP-91b, WASP-105b and WASP-107b: two warm Jupiters and a planet in the transition region between ice giants and gas giants
(WASP-91b,WASP-105b,WASP-107b の発見:2 つの温暖な木星型惑星と1つの巨大氷惑星と巨大ガス惑星の遷移領域にいる惑星)
WASP-91b は温かい木星型惑星 (warm Jupiter) で,金属豊富な K3 星の周りを 2.8 日周期で公転している.
WASP-105b は温かい木星型惑星で,金属豊富な K2 星の周りを 7.9 日で公転している.
WASP-107b は温かい大型海王星型惑星あるいは小型の土星的な惑星で,太陽組成の K6 星の周りを 5.7 日で公転している.
金属量が高い星および質量が大きい星の周りでは巨大惑星はより一般的であるように思われるという点を考慮すると,これらの惑星を持つ主星は全て金属量が豊富で,晩期型の星であるという点は特筆すべき点である.
WASP-105b と WASP-107b は惑星の軌道長半径から考えると弱い潮汐の状態にある.そのため,中心星の自転軸と惑星の公転軸の間の角度の測定から,短周期の巨大惑星の内側移動についての理解が得られるかもしれない.
WASP-107b の質量 (2.2 海王星質量 = 0.40 土星質量 = 0.12 木星質量) は,太陽系における巨大氷惑星と巨大ガス惑星の間の遷移領域に位置する.この惑星の半径は 0.94 木星半径であり,この惑星が H/He を主要な組成とする低質量のガス惑星であることを示唆している.そのためこの惑星は,原始惑星がガス惑星進化する途中で,大量のガスエンベロープを自身に降着し維持する時の下限質量が 2.2 海王星質量であることを示している.
WASP-107b が巨大氷惑星と巨大ガス惑星のどちらにより近いかは,透過光分光観測を介した大気の金属量の測定から分かる可能性があり,この惑星はその観測の非常に良いターゲットである.
スペクトル型:K3
有効温度:4920 K
金属量:[Fe/H] = +0.19
質量:0.84 太陽質量
半径:0.86 太陽半径
質量:1.34 木星質量
半径:1.03 木星半径
平均密度:木星の平均密度の 1.3 倍
軌道長半径:0.037 AU
平衡温度:1160 K
軌道離心率は 0 を仮定 (2 σ で < 0.07)
スペクトル型:K2
有効温度:5070 K
金属量:[Fe/H] = +0.28
質量:0.89 太陽質量
半径:0.90 太陽半径
質量:1.8 木星質量
半径:0.96 木星半径
平均密度:木星の平均密度の 2.0 倍
軌道長半径:0.075 AU
平衡温度:900 K
軌道離心率は 0 を仮定 (2 σ で < 0.04)
スペクトル型:K6
有効温度:4430 K
金属量:[Fe/H] = +0.02
質量:0.69 太陽質量
半径:0.66 太陽半径
質量:0.12 木星質量
半径:0.94 木星半径
平均密度:木星の平均密度の 0.14 倍
軌道長半径:0.055 AU
平衡温度:1770 K
離心率は 0 を仮定 (2 σ で < 0.4)
arXiv:1701.03776
Anderson et al. (2017)
The discoveries of WASP-91b, WASP-105b and WASP-107b: two warm Jupiters and a planet in the transition region between ice giants and gas giants
(WASP-91b,WASP-105b,WASP-107b の発見:2 つの温暖な木星型惑星と1つの巨大氷惑星と巨大ガス惑星の遷移領域にいる惑星)
概要
3 つのトランジット系外惑星の発見を報告する.WASP-91b は温かい木星型惑星 (warm Jupiter) で,金属豊富な K3 星の周りを 2.8 日周期で公転している.
WASP-105b は温かい木星型惑星で,金属豊富な K2 星の周りを 7.9 日で公転している.
WASP-107b は温かい大型海王星型惑星あるいは小型の土星的な惑星で,太陽組成の K6 星の周りを 5.7 日で公転している.
金属量が高い星および質量が大きい星の周りでは巨大惑星はより一般的であるように思われるという点を考慮すると,これらの惑星を持つ主星は全て金属量が豊富で,晩期型の星であるという点は特筆すべき点である.
WASP-105b と WASP-107b は惑星の軌道長半径から考えると弱い潮汐の状態にある.そのため,中心星の自転軸と惑星の公転軸の間の角度の測定から,短周期の巨大惑星の内側移動についての理解が得られるかもしれない.
WASP-107b の質量 (2.2 海王星質量 = 0.40 土星質量 = 0.12 木星質量) は,太陽系における巨大氷惑星と巨大ガス惑星の間の遷移領域に位置する.この惑星の半径は 0.94 木星半径であり,この惑星が H/He を主要な組成とする低質量のガス惑星であることを示唆している.そのためこの惑星は,原始惑星がガス惑星進化する途中で,大量のガスエンベロープを自身に降着し維持する時の下限質量が 2.2 海王星質量であることを示している.
WASP-107b が巨大氷惑星と巨大ガス惑星のどちらにより近いかは,透過光分光観測を介した大気の金属量の測定から分かる可能性があり,この惑星はその観測の非常に良いターゲットである.
パラメータ
WASP-91系
WASP-91
等級:12.0 等スペクトル型:K3
有効温度:4920 K
金属量:[Fe/H] = +0.19
質量:0.84 太陽質量
半径:0.86 太陽半径
WASP-91b
軌道周期:2.798581 日質量:1.34 木星質量
半径:1.03 木星半径
平均密度:木星の平均密度の 1.3 倍
軌道長半径:0.037 AU
平衡温度:1160 K
軌道離心率は 0 を仮定 (2 σ で < 0.07)
WASP-105系
WASP-105
等級:12.1 等スペクトル型:K2
有効温度:5070 K
金属量:[Fe/H] = +0.28
質量:0.89 太陽質量
半径:0.90 太陽半径
WASP-105b
軌道周期:7.87288 日質量:1.8 木星質量
半径:0.96 木星半径
平均密度:木星の平均密度の 2.0 倍
軌道長半径:0.075 AU
平衡温度:900 K
軌道離心率は 0 を仮定 (2 σ で < 0.04)
WASP-107系
WASP-107
等級:11.6 等スペクトル型:K6
有効温度:4430 K
金属量:[Fe/H] = +0.02
質量:0.69 太陽質量
半径:0.66 太陽半径
WASP-107b
軌道周期:5.721490 日質量:0.12 木星質量
半径:0.94 木星半径
平均密度:木星の平均密度の 0.14 倍
軌道長半径:0.055 AU
平衡温度:1770 K
離心率は 0 を仮定 (2 σ で < 0.4)
近接連星が膨張して共通外層 (common envelope, CE) を持つようになったものを,共通外層連星 (common envelope binary) と呼ぶ.
その後膨張した恒星がコンパクト星に進化して共通外層を持つ時期が終わったものを,post common envelope binary (PCEB) と呼ぶ.定まった日本語訳があるかは不明.