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論文関連の(ほぼ)個人用メモ。
arXiv:1511.07831
Abbot (2015)
A proposal for climate stability on H2-greenhouse planets
(H2温室効果惑星における気候安定性についての提案)
例えば、H2の起源が惑星内部に起因する場合、メタン細菌などの水素分子を消費する生命は気候の安定化に寄与することが出来る。平衡温度に正の温度擾乱が加えられた場合、生命による水素分子の消費量は増加し、それに伴って惑星を冷却する効果がある。これは平衡な気候が復元されるまで続く。このようなフィードバック機構の存在可能性は、水素大気の温室効果が働いている惑星も宇宙生物学 (astrobiology)的に興味深いターゲットとなり得ることを示す。
地球はおよそ 40億年もの間、その期間に太陽のフラックスは 50%程度増加しているにも関わらず気候は安定に保たれている(Sagan & Mullen 1972)。これはシリケイトの風化によるフィードバック機構が安定化に寄与しているからだと考えられている (Walker et al. 1981)。
標準的なハビタブルゾーンより遠方であっても、厚い水素大気を持つ惑星では、水素分子同士の衝突誘起吸収による温室効果によって表面で水を液体の状態で保持できることが最近指摘されている (Stevenson 1990, Pierrehumbert & Gaidos 2011)。これは近年発見が増えているスーパーアースでの居住可能性に重要である可能性がある。このようなタイプの惑星における生物の指標 (biosignature)に関する研究には、Seager et al. (2013)がある。しかしこのような惑星では気候の安定化に作用するフィードバック機構が存在せず、居住可能性は偶発的なものか、短い期間のものになる可能性が指摘されている (Wordswarth 2012)。
また、惑星は中心星から十分遠方であり、放射温度は 60 Kかそれ以下の状態を仮定する。この場合、放射している温度付近では水素分子は光学的に厚く、また二酸化炭素、メタン、水などの他の温室効果ガスは、蒸気圧が低すぎるためその大気圧では寄与しない (Pierrehumbert & Gaidos 2011)。そのためこれらの分子種は長波長での放射に寄与せず、水素分子のみが表面温度を決定する温室効果ガスとなる。
メタン菌は、
CO2 + 4H2 → CH4 + 2H2O
という反応で水素を消費する。
消費に必要な二酸化炭素は、同じく惑星内部からの脱ガスか、あるいは形成時の大気をそのまま保持しているなどといった起源が考えられる。とにかく、水素分子を消費するという生物学的機構が存在することが重要である。
アストロバイオロジー的な論文です。
地球の気候はウォーカーフィードバックのような気候の安定化作用が存在していますが、水素主体の大気の場合はそれが存在しない可能性が指摘されていました。ここでは、メタン菌のような水素を消費する生命体が存在した場合は、それが気候の安定化のためのフィードバック機構となり得るということが提案されています。
それにしても、生命が誕生・存続・進化するために必要な気候の安定化を、生命自身によるフィードバックによって実現するというのは、あり得る話なんでしょうか…。
arXiv:1511.07831
Abbot (2015)
A proposal for climate stability on H2-greenhouse planets
(H2温室効果惑星における気候安定性についての提案)
概要
標準的なハビタブルゾーンよりも遠方にある地球型惑星であっても、厚い H2大気を保持している場合は、水素分子同士の衝突誘起吸収 (collision-induced absorption, CIA)による温室効果によって表面で液体の水を保持するだけの温度を実現することが出来る。しかし気候フィードバックによる気候の安定化が存在しない場合は、惑星の居住可能性は偶然的かつ短い期間のものになってしまうと考えられる。ここでは、このような惑星におけて、生物学的機能のみを必要とする、気候の安定化にはたらくフィードバック機構を提案する。例えば、H2の起源が惑星内部に起因する場合、メタン細菌などの水素分子を消費する生命は気候の安定化に寄与することが出来る。平衡温度に正の温度擾乱が加えられた場合、生命による水素分子の消費量は増加し、それに伴って惑星を冷却する効果がある。これは平衡な気候が復元されるまで続く。このようなフィードバック機構の存在可能性は、水素大気の温室効果が働いている惑星も宇宙生物学 (astrobiology)的に興味深いターゲットとなり得ることを示す。
研究背景
惑星の居住可能性 (ハビタビリティ、habitability)は、惑星の表面に水が液体で存在できるかどうかで決まっている。ある惑星が宇宙生物学的に興味深い対象であるためには、生物の大進化 (macroevolution)のタイムスケール、少なくとも数千万年もの間は気候が安定して居住可能性が維持されている必要性がある。地球はおよそ 40億年もの間、その期間に太陽のフラックスは 50%程度増加しているにも関わらず気候は安定に保たれている(Sagan & Mullen 1972)。これはシリケイトの風化によるフィードバック機構が安定化に寄与しているからだと考えられている (Walker et al. 1981)。
標準的なハビタブルゾーンより遠方であっても、厚い水素大気を持つ惑星では、水素分子同士の衝突誘起吸収による温室効果によって表面で水を液体の状態で保持できることが最近指摘されている (Stevenson 1990, Pierrehumbert & Gaidos 2011)。これは近年発見が増えているスーパーアースでの居住可能性に重要である可能性がある。このようなタイプの惑星における生物の指標 (biosignature)に関する研究には、Seager et al. (2013)がある。しかしこのような惑星では気候の安定化に作用するフィードバック機構が存在せず、居住可能性は偶発的なものか、短い期間のものになる可能性が指摘されている (Wordswarth 2012)。
モデルでの仮定
このモデルにおけるもっとも重要な仮定は、生物学的なプロセスは温度依存性があり、なおかつある温度でそのプロセスが最大になる (それより高温・低温では効率が減少する)というものである。地球の生体系もこのような傾向に従い、これに従わない現実的な系は考えづらい。また、惑星は中心星から十分遠方であり、放射温度は 60 Kかそれ以下の状態を仮定する。この場合、放射している温度付近では水素分子は光学的に厚く、また二酸化炭素、メタン、水などの他の温室効果ガスは、蒸気圧が低すぎるためその大気圧では寄与しない (Pierrehumbert & Gaidos 2011)。そのためこれらの分子種は長波長での放射に寄与せず、水素分子のみが表面温度を決定する温室効果ガスとなる。
安定化に寄与する生物学的な機構
大気の水素分子は惑星の内側から、直接脱ガスで供給されるか、あるいは蛇紋石化作用 (serpentinization)によって供給されるとする。大きな水素エンベロープを持った地球型惑星がその例である。仮にそのような惑星が表面で液体の水を保持出来るだけの水素大気を持てば、その惑星には生命が存在できる可能性がある。例えばメタン菌である。メタン菌は、
CO2 + 4H2 → CH4 + 2H2O
という反応で水素を消費する。
消費に必要な二酸化炭素は、同じく惑星内部からの脱ガスか、あるいは形成時の大気をそのまま保持しているなどといった起源が考えられる。とにかく、水素分子を消費するという生物学的機構が存在することが重要である。
アストロバイオロジー的な論文です。
地球の気候はウォーカーフィードバックのような気候の安定化作用が存在していますが、水素主体の大気の場合はそれが存在しない可能性が指摘されていました。ここでは、メタン菌のような水素を消費する生命体が存在した場合は、それが気候の安定化のためのフィードバック機構となり得るということが提案されています。
それにしても、生命が誕生・存続・進化するために必要な気候の安定化を、生命自身によるフィードバックによって実現するというのは、あり得る話なんでしょうか…。
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論文関連の(ほぼ)個人用メモ。
arXiv:1511.07854
Thorngren et al. (2015)
The Mass-Metallicity Relation for Giant Planets
(巨大惑星における質量-金属量の関係)
これらの惑星に対し、新しい熱的・構造進化のモデルを計算し、38個の惑星の特徴と比較して各惑星の重元素の質量を決定した。その結果、惑星の重元素の質量と惑星全体の質量の間には明確な相関が見られることが分かった。この相関は概ね、惑星の重元素質量 ∝ √(惑星質量) という関係で近似でき、これは惑星形成のコア集積モデルを整合的な関連性である。
また、恒星の金属量 [Fe/H]の値が、惑星の金属濃縮 (metal enrichment)に影響するかについても調べた。その結果、過去に行われた惑星のサンプル数が少ない場合での結果 (Miller & Fortney 2011)よりも弱い相関が得られた。Miller & Fortney (2011)では 14惑星のみで調査を行っており、全体としての傾向は似ているものの、相関は今回の結果のほうが弱い。
これらの結果は。大きな重元素質量を持つ惑星は、金属量の多い恒星の周りでは一般的である事を示唆する。しかしそれのみで関係が決まるわけではない。
また惑星の金属量と恒星の金属量の比率と、惑星質量の間には強い相関があることも確認した。しかし、惑星の金属量と恒星の金属量の比率と惑星の軌道要素・恒星質量との間には相関は見られなかった。
連星周りの惑星 (周連星惑星、circumbinary planet)では、同程度の質量の単独の恒星-惑星系と比較して重元素の質量が大きい傾向にあることも分かった。しかしサンプル数が 4例であるため、周連星惑星であることによる効果ははっきりとはしていない。
多くの惑星で大きな重元素質量 (> 50地球質量)を示すという結果は、重元素はコアよりも水素・ヘリウムエンベロープ中に多く存在することを示唆する。そのため、重元素に富んだ大気を持つ巨大ガス惑星が標準的であろうと考えられる。
arXiv:1511.07854
Thorngren et al. (2015)
The Mass-Metallicity Relation for Giant Planets
(巨大惑星における質量-金属量の関係)
概要
現在は系外惑星が多数発見されており、巨大ガス惑星の全体の組成に関する研究も進んでいる。ここでは、38個のトランジット惑星を同定して調査を行った。選定したのは 20地球質量 - 20木星質量の質量範囲にあり、かつ日射量が十分低いもの (< 2 × 108 erg s-1 cm-2、あるいは有効温度 < 1000 K)をピックアップした。これは、ホットジュピターの異常膨張のメカニズムの影響を受けていない程度の日射量と考えられるものである。これらの惑星に対し、新しい熱的・構造進化のモデルを計算し、38個の惑星の特徴と比較して各惑星の重元素の質量を決定した。その結果、惑星の重元素の質量と惑星全体の質量の間には明確な相関が見られることが分かった。この相関は概ね、惑星の重元素質量 ∝ √(惑星質量) という関係で近似でき、これは惑星形成のコア集積モデルを整合的な関連性である。
また、恒星の金属量 [Fe/H]の値が、惑星の金属濃縮 (metal enrichment)に影響するかについても調べた。その結果、過去に行われた惑星のサンプル数が少ない場合での結果 (Miller & Fortney 2011)よりも弱い相関が得られた。Miller & Fortney (2011)では 14惑星のみで調査を行っており、全体としての傾向は似ているものの、相関は今回の結果のほうが弱い。
これらの結果は。大きな重元素質量を持つ惑星は、金属量の多い恒星の周りでは一般的である事を示唆する。しかしそれのみで関係が決まるわけではない。
また惑星の金属量と恒星の金属量の比率と、惑星質量の間には強い相関があることも確認した。しかし、惑星の金属量と恒星の金属量の比率と惑星の軌道要素・恒星質量との間には相関は見られなかった。
連星周りの惑星 (周連星惑星、circumbinary planet)では、同程度の質量の単独の恒星-惑星系と比較して重元素の質量が大きい傾向にあることも分かった。しかしサンプル数が 4例であるため、周連星惑星であることによる効果ははっきりとはしていない。
多くの惑星で大きな重元素質量 (> 50地球質量)を示すという結果は、重元素はコアよりも水素・ヘリウムエンベロープ中に多く存在することを示唆する。そのため、重元素に富んだ大気を持つ巨大ガス惑星が標準的であろうと考えられる。
論文関連の(ほぼ)個人用メモ。
arXiv:1511.06762
Banzatti et al. (2015)
Direct imaging of the water snow line at the time of planet formation using two ALMA continuum bands
(ALMAの2つの連続バンドを用いた惑星形成時の水スノーラインの直接撮像)
ここで考慮する円盤の物理モデルには、ダストの合体成長、破壊、移動、乾燥したシリケイトと氷微粒子の間のファクター 10程度の破壊速度の変化を含んでいる。衝突破壊速度の違いは、実験室実験に基づくものである。
その結果、水スノーラインは、ダストの放射スペクトルの指数 αmmの動径方向の鋭い不連続として現れることが分かった。これは、破壊による小さい微粒子の供給があることに起因する。この特徴が、ALMAの2つの連続バンドで空間分解して観測することが出来るかどうか、ALMA simulatorを用いて調べた。
円盤の年生によるモデル依存性について調査した結果、広い領域における条件で観測可能だということが分かった。円盤の粘性が低い (αvisc < 10-3)の場合、光学的に厚いレジームでは αmm ~ 2のリング上の構造として水スノーラインが観測できる。これは HL Tauの最も内側の領域に ALMAで観測されたものと似たものであるかも知れない。
arXiv:1511.06762
Banzatti et al. (2015)
Direct imaging of the water snow line at the time of planet formation using two ALMA continuum bands
(ALMAの2つの連続バンドを用いた惑星形成時の水スノーラインの直接撮像)
概要
原始惑星系円盤内での分子のスノーライン (※揮発性分子が凝結する境界)は、惑星の構造や組成の理解に重要であり、長い間理論的な研究が行われてきた。水のスノーラインは、 10 AU以下の惑星形成領域にあり、その場所は空間分解しない分光観測からの間接的な推定のみが行われてきた。ここでは、水のスノーラインにおける局所的なダストの物理的・化学的特性を通じた、原始惑星系円盤内での水スノーラインの直接撮像に向けたコンセプトを提案する。ここで考慮する円盤の物理モデルには、ダストの合体成長、破壊、移動、乾燥したシリケイトと氷微粒子の間のファクター 10程度の破壊速度の変化を含んでいる。衝突破壊速度の違いは、実験室実験に基づくものである。
その結果、水スノーラインは、ダストの放射スペクトルの指数 αmmの動径方向の鋭い不連続として現れることが分かった。これは、破壊による小さい微粒子の供給があることに起因する。この特徴が、ALMAの2つの連続バンドで空間分解して観測することが出来るかどうか、ALMA simulatorを用いて調べた。
円盤の年生によるモデル依存性について調査した結果、広い領域における条件で観測可能だということが分かった。円盤の粘性が低い (αvisc < 10-3)の場合、光学的に厚いレジームでは αmm ~ 2のリング上の構造として水スノーラインが観測できる。これは HL Tauの最も内側の領域に ALMAで観測されたものと似たものであるかも知れない。
論文関連の(ほぼ)個人用メモ。
arXiv:1511.07385
Owen & Morton (2015)
The initial physical conditions of Kepler-36 b & c
(ケプラー36b, cの初期の物理条件)
しかしこの 2惑星は、誕生直後の時期であれば大量の大気散逸が発生するほどの小さな軌道長半径を持っている。そこで、ここでは現在の惑星質量・半径を束縛条件とした惑星大気の蒸発のモデルを用い、惑星のコア質量、コア組成、初期のエンベロープの質量、また初期の惑星大気の冷却時間への制限を与えた。惑星質量・半径はケプラーの測光観測と、トランジット時刻変動 (transit timing variation TTV)を用いた。
その結果、内側の惑星は大気の蒸発によって剥ぎ取られたコアであり、外側の惑星は大きいコア質量のため初期のエンベロープの一部を現在も保持している状態であることを示した。従って、両惑星は共に同様の形成過程を辿ったと考えられる。内側の惑星は初期のエンベロープ質量の全体に対する割合は 10%以下、コア質量は ~ 4.4地球質量、外側の惑星はそれぞれ 15 - 30%、~ 7.3地球質量と推定される。
この結果は、外側の惑星の初期の冷却時間は 30 Myr以上と長いことを示唆する。これは、単純なタイムスケールに関する議論から導かれる値 (~ 10 Myr未満)よりも長いものである。この初期の長い冷却時間は、例えば "boil-off" プロセスのような、初期の大規模な冷却イベントが発生したことの証拠であるかも知れない。
(Boil-offプロセスは、円盤のガスが腫れ上がった直後に大規模な質量散逸と冷却を起こすというモデルのこと (Owen & Wu 2015))
内側のケプラー36bは、~ 4.3地球質量、軌道長半径は 0.115 AUで、平均密度は ~ 6.8 g cm-3である。
外側のケプラー36cは、~ 7.7地球質量、軌道長半径は 0.128 AUで、平均密度は ~ 0.8 g cm-3である。
そのため、ケプラー36bは固体の岩石惑星、ケプラー36cは水素・ヘリウムエンベロープを含む惑星であると考えられる。このような、非常に近接した惑星の構造が大きく異なる系は、通常の惑星形成理論では作るのが難しい。
arXiv:1511.07385
Owen & Morton (2015)
The initial physical conditions of Kepler-36 b & c
(ケプラー36b, cの初期の物理条件)
概要
ケプラー36系は 2つの惑星を持ち、それらの軌道間隔は非常に狭く (0.115 AU, 0.128 AU)、また両者の密度は大きく異なる。内側の惑星は地球の組成と同程度の密度と整合的な値であるが、外側の惑星は非常に低密度であり、大量の水素・ヘリウムエンベロープを保持するはずである。もし現在の平均密度がそれぞれの惑星の形成時の組成を繁栄しているのであれば、この 2惑星は全ての惑星形成理論に対して問題を投げかけることになる。しかしこの 2惑星は、誕生直後の時期であれば大量の大気散逸が発生するほどの小さな軌道長半径を持っている。そこで、ここでは現在の惑星質量・半径を束縛条件とした惑星大気の蒸発のモデルを用い、惑星のコア質量、コア組成、初期のエンベロープの質量、また初期の惑星大気の冷却時間への制限を与えた。惑星質量・半径はケプラーの測光観測と、トランジット時刻変動 (transit timing variation TTV)を用いた。
その結果、内側の惑星は大気の蒸発によって剥ぎ取られたコアであり、外側の惑星は大きいコア質量のため初期のエンベロープの一部を現在も保持している状態であることを示した。従って、両惑星は共に同様の形成過程を辿ったと考えられる。内側の惑星は初期のエンベロープ質量の全体に対する割合は 10%以下、コア質量は ~ 4.4地球質量、外側の惑星はそれぞれ 15 - 30%、~ 7.3地球質量と推定される。
この結果は、外側の惑星の初期の冷却時間は 30 Myr以上と長いことを示唆する。これは、単純なタイムスケールに関する議論から導かれる値 (~ 10 Myr未満)よりも長いものである。この初期の長い冷却時間は、例えば "boil-off" プロセスのような、初期の大規模な冷却イベントが発生したことの証拠であるかも知れない。
(Boil-offプロセスは、円盤のガスが腫れ上がった直後に大規模な質量散逸と冷却を起こすというモデルのこと (Owen & Wu 2015))
ケプラー36系について
ケプラー36の周囲には2つの惑星が発見されている (Carter et al. 2012)。二つ (ケプラー36b, c)は近接した軌道で、7:6の平均運動共鳴に入っている。内側のケプラー36bは、~ 4.3地球質量、軌道長半径は 0.115 AUで、平均密度は ~ 6.8 g cm-3である。
外側のケプラー36cは、~ 7.7地球質量、軌道長半径は 0.128 AUで、平均密度は ~ 0.8 g cm-3である。
そのため、ケプラー36bは固体の岩石惑星、ケプラー36cは水素・ヘリウムエンベロープを含む惑星であると考えられる。このような、非常に近接した惑星の構造が大きく異なる系は、通常の惑星形成理論では作るのが難しい。
計算モデル
ここでは、惑星の進化モデルとしては、Owen & Wu (2013, 2015)と、恒星進化を計算するためのオープンコード MESA (Paxton et al. 2011, 2013)を用いている。大気の蒸発率は Owen & Jackson (2012)の物を用いている。また、恒星の放射等級とその進化は、Paxton et al. (2013)、Owen & Wu (2015)を用いた。論文関連の(ほぼ)個人用メモ。
arXiv:1511.06471
Gaidos et al. (2015)
The Enigmatic and Ephemeral M Dwarf System KOI 6705: Cheshire Cat or Wild Goose?
(不可解かつ儚いM型矮星系 KOI 6705:チェシャ猫か野生のガンか?)
この系の中心星は、可視光線と赤外線でのスペクトル観測から、M型主系列星 (矮星)で、有効温度 3327 K、金属量が [Fe/H] = -0.08、0.31太陽半径、0.28太陽質量である。また太陽系からの距離は 70 pcである。この恒星の空間運動の様子、自転周期、Hα線での放射の欠乏から、銀河の "薄い円盤 (thin disk)" の一員であると考えられる。
その一方で、赤外線領域に赤外超過が確認されており、これは非常に若い恒星の周りによく存在するダスト円盤を持っている可能性を示唆している。
仮にこの恒星で検出された KOI 6705.01のシグナルが惑星によるものであるとすると、トランジット深さが 60 ppmであるということから、惑星の半径は 0.26地球半径となり、月と同程度の大きさの天体となる。しかしトランジットの継続時間 (3時間よりも長い程度)と、トランジット時刻の変動は異常な数値を示す。観測期間の初めの 2年間はシグナルは検出されず、後半の 2年間でシグナルが増加するという経緯を辿っている。これらの特徴は、信じがたいような惑星の軌道と組成の特徴を必要とする。
従って、このシグナルが惑星によるものという説明は除外される。ただし、ダスト雲によるものであるという可能性についてはこの限りではない。
この得意なシグナルの原因について、背景星の混入、天球面上での近隣の星の散乱光、検出器の読出チャネル間の電子的なクロストークによるものなど、幾つかの原因が引き起こす偽陽性 (false positive)の可能性について検討したが、これらの可能性も除外された。
KOI 6705.01のシグナルに対するもっともらしい説明は、KIC 6423922からの光を受けている検出器のカラムでの電荷輸送の非効率による擬陽性と、1.99日周期の食連星の両方による効果だというものである。シグナルが徐々に強くなったのは、CCDが放射によってダメージを受けたからだという可能性がある。
謎の光度曲線の解析の結果、機器に起因する偽陽性 (誤検出)であるだろう、という内容。論文のサブタイトルがなかなか謎で、「チェシャ猫か野生のガンか? (Cheshire Cat or Wild Goose?)」というサブタイトルが付けられています。
チェシャ猫はご存知、「不思議の国のアリス」に登場する猫 (あるいはその元ネタとなった架空の猫)で、ニヤニヤ笑いを残して姿を消してしまう猫のことです。
一方の野生のガンというのは今ひとつピンときませんが、英語では "wild goose chase" という語句で、「無駄なこと」とか「骨折り損」という意味になるようです。例えば、"go on a wild-goose" という表現で「無駄な探索をする」という意味になります。野生のガンは捕らえるのが難しく、なおかつ捕らえた所で価値はあまり高くないということから、このような表現が使われるようです。
これらの内容を踏まえると、チェシャ猫というのはこの謎のシグナルが正体不明のまま掴みどころもなく消えてしまう様を、野生のガンというのは謎のシグナルの正体を追い求めるのは大変だが、正体を掴んでも得られるものは少ない、という事を表現したのだろうと推測できます。
実際にこのシグナルは解析の結果惑星ではなさそうであり、検出器の不具合によって生み出された偽陽性でしかなかったということのようなので、まさしくサブタイトル通りの結果になってしまったと言えます。
arXiv:1511.06471
Gaidos et al. (2015)
The Enigmatic and Ephemeral M Dwarf System KOI 6705: Cheshire Cat or Wild Goose?
(不可解かつ儚いM型矮星系 KOI 6705:チェシャ猫か野生のガンか?)
概要
ケプラー宇宙望遠鏡の光度曲線から、KIC 6423922に 0.995日周期の惑星的なシグナルの存在を確認した (KOI 6705.01)。この系の中心星は、可視光線と赤外線でのスペクトル観測から、M型主系列星 (矮星)で、有効温度 3327 K、金属量が [Fe/H] = -0.08、0.31太陽半径、0.28太陽質量である。また太陽系からの距離は 70 pcである。この恒星の空間運動の様子、自転周期、Hα線での放射の欠乏から、銀河の "薄い円盤 (thin disk)" の一員であると考えられる。
その一方で、赤外線領域に赤外超過が確認されており、これは非常に若い恒星の周りによく存在するダスト円盤を持っている可能性を示唆している。
仮にこの恒星で検出された KOI 6705.01のシグナルが惑星によるものであるとすると、トランジット深さが 60 ppmであるということから、惑星の半径は 0.26地球半径となり、月と同程度の大きさの天体となる。しかしトランジットの継続時間 (3時間よりも長い程度)と、トランジット時刻の変動は異常な数値を示す。観測期間の初めの 2年間はシグナルは検出されず、後半の 2年間でシグナルが増加するという経緯を辿っている。これらの特徴は、信じがたいような惑星の軌道と組成の特徴を必要とする。
従って、このシグナルが惑星によるものという説明は除外される。ただし、ダスト雲によるものであるという可能性についてはこの限りではない。
この得意なシグナルの原因について、背景星の混入、天球面上での近隣の星の散乱光、検出器の読出チャネル間の電子的なクロストークによるものなど、幾つかの原因が引き起こす偽陽性 (false positive)の可能性について検討したが、これらの可能性も除外された。
KOI 6705.01のシグナルに対するもっともらしい説明は、KIC 6423922からの光を受けている検出器のカラムでの電荷輸送の非効率による擬陽性と、1.99日周期の食連星の両方による効果だというものである。シグナルが徐々に強くなったのは、CCDが放射によってダメージを受けたからだという可能性がある。
謎の光度曲線の解析の結果、機器に起因する偽陽性 (誤検出)であるだろう、という内容。論文のサブタイトルがなかなか謎で、「チェシャ猫か野生のガンか? (Cheshire Cat or Wild Goose?)」というサブタイトルが付けられています。
チェシャ猫はご存知、「不思議の国のアリス」に登場する猫 (あるいはその元ネタとなった架空の猫)で、ニヤニヤ笑いを残して姿を消してしまう猫のことです。
一方の野生のガンというのは今ひとつピンときませんが、英語では "wild goose chase" という語句で、「無駄なこと」とか「骨折り損」という意味になるようです。例えば、"go on a wild-goose" という表現で「無駄な探索をする」という意味になります。野生のガンは捕らえるのが難しく、なおかつ捕らえた所で価値はあまり高くないということから、このような表現が使われるようです。
これらの内容を踏まえると、チェシャ猫というのはこの謎のシグナルが正体不明のまま掴みどころもなく消えてしまう様を、野生のガンというのは謎のシグナルの正体を追い求めるのは大変だが、正体を掴んでも得られるものは少ない、という事を表現したのだろうと推測できます。
実際にこのシグナルは解析の結果惑星ではなさそうであり、検出器の不具合によって生み出された偽陽性でしかなかったということのようなので、まさしくサブタイトル通りの結果になってしまったと言えます。

