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論文関連の(ほぼ)個人用メモ。



arXiv:1906.04742
Bell et al. (2019)
Mass Loss from the Exoplanet WASP-12b Inferred from Spitzer Phase Curves
(スピッツァーの位相曲線から示唆される系外惑星 WASP-12b からの質量散逸)

概要

WASP-12b は,近年発見個数が増えている,超高温の木星質量クラスの系外惑星のプロトタイプである.過去の理論モデルではこの惑星は質量を失っていることが予測されており,また近紫外線波長での観測ではその徴候が示されていた.

ここではスピッツァー宇宙望遠鏡の 3.6, 4.5 µm での位相曲線観測の解析を行い,惑星から剥ぎ取られたガスからの赤外線放射が明確に検出されたことを報告する.惑星から流出したガスは,直接観測者側へ,あるいは正反対の中心星の方向へ流れていると考えられる.

この降着を示す特徴は 4.5 µm でのみ見られ,3.6 µm では見られなかった.このことは,長波長での一酸化炭素 (CO) からの放射か,あるいは 600 K 程度以下の低温ガスからの黒体放射のいずれかであることを示唆している.

赤外線での質量放出の特徴を示すウルトラホットジュピターが WASP-12b のみである理由は不明だが,他の類似した系外惑星の軌道はより安定である一方で,WASP-12b の軌道は徐々に減衰している可能性があるとの主張がある.あるいは,中心星 WASP-12A からの高エネルギー輻射が他のウルトラホットジュピターの主星よりも強い可能性もある.

さらに,3.6 µm の波長で,位相曲線のずれの変動 (~46.2°) の証拠を 6.4σ の水準で検出した.

WASP-12b について

WASP-12b (Hebb et al. 2009) は最も熱い部類の系外惑星で,膨張した半径を持つ (1.900 木星半径,Collins et al. 2017).ウルトラホットジュピターと呼ばれる惑星のタイプのプロトタイプでもある.このタイプの系外惑星は,中心星から非常に強く輻射を受けているため,昼側の大気中の分子は熱的に解離している.また,夜側に近い場所で再結合していると考えられる.

この惑星は潮汐変形を起こしていると考えられる一方で,スピッツァー宇宙望遠鏡の Infrared Array Camera (IRAC) を用いた 2010 年の熱位相曲線の 4.5 µm での観測では,二次のサイン変動 (惑星軌道一周の間に 2 回の極大を示す) が検出されている.

この二次の変動の振幅は,理論的に予測されるよりも遥かに大きいものであった.もし観測された変動が全て潮汐変形された惑星の形状に由来するのであれば,惑星の恒星方向の軸が,夜明け-夕方方向の軸の 1.8 倍の長さになるほど変形している必要がある.さらに,この二次のサイン変動は 3.6 µm の位相曲線では見られなかった.

観測

スピッツァー宇宙望遠鏡の IRAC を用いて,3.6, 4.5 µm 波長で 2010 年と 2013 年に位相曲線が取得された.全ての 4 回の位相曲線において,WASP-12 系はほぼ連続的に 33 時間にわたって観測された (途中,望遠鏡の方向修正に伴い 1, 2 回の中断あり).

結果

観測の結果,4.5 µm 波長で強い継続的な二次のサイン変動が存在することを確認した.またこの変動は 3.6 µm では非検出であった.

さらに,3.6 µm 波長での位相曲線のずれを確認した.これは惑星の昼側半球でのホットスポットのずれに対応している.このずれは,2010 年の観測の際は恒星直下点から東向きにずれているが,2013 年の観測の際は西向きにずれていることが判明した.
しかしこれは興味深いことだが,4.5 µm での二次のサイン変動の位相のずれは見られなかった.

一次のサイン変動の位相変動が惑星表面の温度マップのみに由来するものだとすると,2013 年の観測での 3.6 µm の位相曲線は,ホットスポットが恒星直下点から 13.6° 西向きにずれていることを示唆している.このことは,東向きのホットスポットのずれはこれまでに信じられていたよりは普遍的ではないことを示すものであるかもしれない.

なお WASP-12b 以外では,輻射温度が 2200 - 3700 K の惑星で西向きのホットスポットのずれが検出されている (Dang et al. 2018,Zhang et al. 2018,Wong et al. 2016).

考察

観測結果の物理的起源

Cowan et al. (2012) で報告された位相曲線の二重ピークの説明としては,検出器の系統誤差によるものだというものが考えられてきたが,ここではこの仮説は強く否定される.

これまでに 23 の論文で 18 個の異なる系外惑星における新しいスピッツァー宇宙望遠鏡での位相曲線について発表されてきた.これらの数多くの観測のうち,1 回ではなく 2 回も二重ピークの位相曲線が検出されているのは WASP-12 のみである.

Cowan et al. (2012) では,もしこの結果が系統誤差ではなく実際に宇宙物理的現象によるものであるならば,惑星の潮汐変形か惑星からの質量放出のどちらか,あるいはその両方が,スピッツァー宇宙望遠鏡での観測を説明することを示唆している.

潮汐変形

位相曲線の二次のサイン変動を起こしうる原因としては,恒星の潮汐変形がある.これは HAT-P-7 (Welsh et al. 2010) と WASP-18 (Shporer et al. 2019) で,可視光線の波長で見られている現象である.しかし WASP-12 に対しては,恒星の潮汐変形は無視できると考えられている (Leconte et al. 2011).

恒星が楕円体に変形していることによる位相曲線の変動は,3.6 µm と 4.5 µm の両方の波長で同程度の振幅になることが予想されており,また今回観測された振幅よりも遥かに小さいものになるはずである.そのため,中心星の潮汐バルジによる変動では,観測された位相曲線の 4.5 µm での強い二次の変動を説明できないと結論付けた.

また,恒星ではなく惑星の潮汐変形による変動も発生し得る.しかし惑星の変形による変動の場合,3.6 µm で見られる二次のサイン変動の変動の上限値とは整合的だが,4.5 µm では観測値に比べて著しく過小評価してしまう.

4.5 µm での二次のサイン変動が惑星の潮汐変形による変動だと解釈するならば,4.5 µm 波長での惑星の光球は 3.6 µm よりもずっと高い所にある必要がある.しかし 4.5 µm での見かけの惑星半径が大きいというのは,3.6 µm でのトランジット深さよりも 4.5 µm でのトランジット深さが浅いという観測事実に反する.
そのため,惑星の潮汐変形も,4.5 µm での二次のサイン変動の原因にはならないと結論付けた.

また,恒星の変動と非一様性も,位相曲線の形状の原因とは考えられない.

質量放出

WASP-12b の近紫外線でのトランジット観測では,この惑星が質量放出を起こしており,バウショックが存在することを示す有意な観測的証拠が得られている (Fossati et al. 2010など).

4.5 µm での異常な位相曲線を説明する可能性として,惑星の周囲には惑星から剥ぎ取られたガスが存在し,それが 3.6 µm のバンドパスよりも 4.5 µm のバンドパスで強く放射をしているというものが考えられる.

今回の観測結果は,惑星から剥ぎ取られた濃いガスの流れが中心星に向かうか離れるかの方向に流れているか,あるいは恒星への降着ホットスポットのように,長軸が恒星-惑星を結ぶ軸と平行になっている細長い高温ガスの斑点が存在しているという考えを支持している.

二重ピークの光度曲線は,矮新星の激変星でも見られる.例えば WZ Sge (や座WZ星) などで同様の位相曲線が見られている (Skidmore et al. 1997).しかしこの特徴は,激変星では紫外線から赤外線までの広い波長にわたって見られる.激変星の場合.これらの変動は恒星の潮汐変形によるものか,光学的に薄い降着円盤における光学的に厚いホットスポットからの寄与である.

WASP-12 での 4.5 µm の変動を引き起こしている起源となる物質は,恒星-惑星を結ぶ軸に近い分布になっている必要がある.これは,WASP-12b がトランジットや二次食を起こしていない時には有意な掩蔽は検出されていないからである.

また,今回のスピッツァー宇宙望遠鏡での観測では,モデルの予測とは一致せず 4.5 µm での惑星半径は 3.6 µm での惑星半径よりも小さい.これは 4.5 µm 波長で光学的に厚い,巨大な外気圏のトランジットが発生していることを否定するものである.これは,惑星と恒星の軸に沿った方向に物質が存在するというモデルと整合的である.

しかし過去に行われた三次元磁気流体力学数値シミュレーションでは,惑星からのガスの流れは,惑星と恒星を結ぶ軸から大きく先行する方向に流れることが示されている (Matsakos et al. 2015).
実際に,L1 ラグランジュ点から流出した惑星からのガスの流れは,弾道軌道を描くと考えた場合,角運動量の保存により惑星から 53.4° 前方に伸びた形になる (Lai et al. 2010).

観測結果からの示唆では惑星からのガスの流れは 4.0° 後方に流れていると推定され,これは三次元シミュレーションとは 27σ もの差異がある.この乖離は,もし 4.5 µm の放射をしている領域がずっと惑星に近く,依然として恒星-惑星軸に沿っており,より薄く広がった状態で中心星に流れ込んでいる場合は説明が出来る可能性がある.

別の可能性として,恒星の影響によって流れ込む物質が直接恒星に向かう可能性もある,しかしこれは,過去の近紫外線トランジット観測結果とは整合しない.

別の過去の三次元磁気流体力学計算 (Matsakos et al. 2015) では,恒星-惑星の軸に直接沿ったガスの流れが存在できるモデルがある.これは,恒星の紫外線フラックスが強く,ガスが惑星から脱出する速度が遅く,惑星が中心星に近く,惑星の磁場が強い場合に発生し得る.このモデルでは,惑星はロッシュローブオーバーフローを起こしており,その流れは恒星風に比べると遅く,それが恒星-惑星軸に沿ったほぼ直線的な流れを形成し,また惑星背後に低密度の尾を形成する.
惑星後方に存在するガスが低密度であるか,あるいは低温であった場合,もしくはその両方の場合,惑星の背後の尾が検出されなかったことを説明できる可能性がある.

放射機構

黒体放射
3.6 µm と 4.5 µm での位相曲線の違いを説明する可能性としては 2 つが考えられる.

1 つ目は黒体輻射である.ガスが効率的に冷えていれば,4.5 µm では放射が強く,3.6 µm では弱い放射となる可能性がある.この場合,流出したガス温度の上限値は 619 K である.
CO 放射
別の説明は CO からの放射である.

CO からの放射がこの惑星から流出するガス中に存在することは,過去に予測されていた (Li et al. 2010,Deming et al. 2011).CO 分子は強い紫外線と X 線放射によって惑星の高層大気で解離し,近紫外線波長で見られる大気散逸を駆動する可能性がある.しかし,炭素原子と酸素原子は密度が高くなったガス流の中で再結合する可能性もある.

この場合,CO 放射は惑星の表面から ~0.1 惑星半径以内か,もしくは 2.5 惑星半径以遠で起きていると考えられる.

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論文関連の(ほぼ)個人用メモ。



arXiv:1906.05048
Persson et al. (2019)
Greening of the Brown Dwarf Desert. EPIC 212036875 b -- a 51 MJ object in a 5 day orbit around an F7 V star
(褐色矮星砂漠の緑化.EPIC 212036875b -- F7V 星の周りの 5 日軌道にある 51 木星質量天体)

概要

これまでに 2000 個以上の褐色矮星が主に直接撮像によって検出されているが,これらの特徴付けは難しい.これは褐色矮星が暗いことと,特徴付けにはモデル依存性があることが原因である.

しかし主星をトランジットする褐色矮星の場合は,高精度な観測を直接行うことが可能である.ここでの目的は,現在 20 個未満しか発見されていないトランジットする褐色矮星のサンプルに,質量や半径,バルク密度がよく特徴付けられた新しいサンプルを加えることで,褐色矮星の性質と形成を探査することである.

ケプラー K2 ミッションの Campaign 16 での観測視野内から,KESPRINT コンソーシアムにより褐色矮星候補天体が 1 つ検出された.K2 の測光データを,多色測光観測,撮像,視線速度測定結果とあわせ,この検出が偽陽性である可能性を否定し,この系の基本的な特性を決定した.

今回検出されたのは,トランジットする褐色矮星 EPIC 212036875b である.軌道周期は 5.17 日で,離心軌道にある天体である.やや進化した F7V 星 EPIC 212036875 を公転しており.この恒星は 1.15 太陽質量,1.41 太陽半径,年齢は 51 億歳である.

伴星である褐色矮星 EPIC 212036875b は,51 木星質量,0.83 木星半径であり,天体の平均密度は 108 g cm-3 である.EPIC 212036875b は,褐色矮星砂漠 (brown dwarf desert) の中に存在する希少な天体である.

惑星・褐色矮星・恒星の質量-密度図上では,全ての巨大惑星と褐色矮星は ~ 0.3 木星質量から 73 木星質量程度の水素燃焼のターンオーバーに至るまで,同じ傾向に従うことを発見した.この天体は内部モデルおよび経験的なフィッティングから決定されるように,この図中での水素・ヘリウム主体の天体の理論モデルに近い.


また,この天体が円盤の外側領域における円盤の重力不安定を介して形成され,その後内側へ急速な移動をしたという形成過程の可能性について議論する.軌道の潮汐円軌道化は,まだ褐色矮星の半径が大きかった初期の早い段階に短い期間で発生したと思われる.
恒星の自転周期と褐色矮星の軌道周期の同期が見られないことから,恒星の散逸係数は弱い (Q’* > 108) と考えられ,円軌道化のタイムスケールは 230 億年以上であることを示唆する.あるいは,恒星と褐色矮星の間に磁気的な力および潮汐力の相互作用が存在することを示唆する.

背景

巨大ガス惑星と褐色矮星の境界

巨大ガス惑星と褐色矮星の区別は未だ不明瞭である.これは,この質量範囲にあるよく特徴付けられた天体が少ないことに起因する.

褐色矮星は,伝統的には大きい惑星と低質量の恒星の間に位置する天体とされてきた.これらの質量は 13 - 80 木星質量とされ (Burrows et al. 2001),典型的には 10 万年ほど継続する重水素燃焼が維持され,しかし水素燃焼を起こす限界の 75-80 木星質量よりは低質量である.また 65 木星質量よりも重い天体ではリチウム燃焼も発生する.正確な限界質量は,理論モデルと内部化学組成に依存する (Dieterich et al. 2014など).

巨大ガス惑星と褐色矮星のその他の区別は,その形成過程に基づくものである.褐色矮星は,星間物質と同じ化学組成を持ち,力学的タイムスケールで重力不安定によって恒星のように形成されたものだと考えられる.一方で,巨大惑星はコア降着によってより長いタイムスケールで形成し,中心星と比較すると大きな金属存在度を持つ (Chabrier et al. 2014).
この定義では,褐色矮星の最小質量はおよそ 3 木星質量で,惑星の最大質量は数十木星質量になりうるため,両者の質量領域はオーバーラップすることになる.

その他の意見としては,褐色矮星は惑星よりも恒星に類似しているとして,水素燃焼を起こす恒星とは区別されるべきでないとするものもある (Whiteorth 2018).

一方で Hatzes & Rauer (2015) では,天体の質量-密度関係に基づき,褐色矮星は独立した一つの分類としてではなく,むしろ巨大惑星に分類されるべきだという意見もある.彼らは,質量が 0.3- 60 木星質量の範囲の天体は,恒星の主系列 (main sequence) のアナロジーとして,ガス惑星系列 (gaseous planet sequence) として定義し,この限界より軽い天体は低質量惑星,重い天体は低質量恒星と分類されるべきだとしている.ただし,この分類の上限は 80 木星質量である.
この意見は,褐色矮星は最大で 80 木星質量に至るまで,質量-半径図において巨大惑星と同じ傾向に従うという,Chen & Kipping (2017) によって発見された関係によって補強される.

褐色矮星砂漠

これまでに 2000 個以上の褐色矮星が,主に大規模な直接撮像サーベイによって検出されているが (Skrzypek et al. 2016),検出された褐色矮星の大部分は他の天体に重力的に束縛されず自由浮遊しており,およそ 400 個のみが,主星から大きく離れた距離で重力的に束縛されている.

主系列星に近接した軌道を持つ褐色矮星伴星は非常に希少な存在である.いくつかのサーベイでは,中心星に近接した軌道 (3 AU 未満) を持ち主系列の FGKM 型星を公転する褐色矮星の存在頻度は,巨大惑星と近接連星のものよりもずっと低いことが示されている (Marcy & Butler 2000,Sahlmann et al. 2011など).これは一般に褐色矮星砂漠 (brown dwarf desert) と呼ばれており,軽い褐色矮星と重い褐色矮星の形成メカニズムに違いがある結果生じているものである可能性がある.

質量が 35-55 木星質量で軌道周期が 100 日未満の領域が,この「砂漠」で最も乾いた (存在密度が低い) 領域である (Ma & Ge 2014).0.2 AU 未満の非常に近接した軌道にある天体では,3-13 木星質量の低質量側の天体が欠乏していることが分かっている (Triaud et al. 2017).

結論

EPIC 212036875b という新しい褐色矮星を発見した.

中心星である EPIC 212036875 は赤道をこちらに見せている配置に近いため,今後のさらなる 8-10 m 級望遠鏡による観測で,三次元的な自転軸と公転軸の角度がロシター効果で測定できる可能性がある.

質量-密度図上において,褐色矮星と巨大惑星の間には違いが無いことを発見した.これは過去の Hatzes & Rauer (2015) の示唆を支持する結果であり,また Chen & Kipping (2017) の結果によっても支持される.つまり,褐色矮星は単に巨大惑星の大質量側の末端であり,成熟した褐色矮星と巨大惑星は観測的な違いが無いことを示唆している

褐色矮星砂漠は,おそらくはコア降着によって形成される巨大惑星の分布の大質量側の末端に向かって数が減っていくことと,重力不安定で形成される恒星の低質量側の末端に向かって数が減っていくことを反映している可能性がある.

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arXiv:1906.05254
Hjorth et al. (2019)
MASCARA-3b: A hot Jupiter transiting a bright F7 star in an aligned orbit
(MASCARA-3b:揃った軌道で明るい F7 星をトランジットするホットジュピター)

概要

MASCARA-3b の発見について報告する.この惑星は,F 型の中心星を 5.55149 日周期で公転するホットジュピターで,軌道はほぼ円軌道である.

Multi-site All-Sky CAmeRA (MASCARA) によって発見された 4 番目の系外惑星で,晩期型星周りのものとしてはこのプロジェクトで初めての発見例である.

フォローアップの分光測定を Hertzsprung SONG telescope を用いて行った.MASCARA の測光と SONG の視線速度測定から,惑星は 1.35 木星半径,4.2 木星質量と推定される.

さらに,SONG を用いた分光トランジット観測が 2 つの別々の夜で測定された.
トランジット外の観測結果から,恒星の自転速度は v sin i = 20.4 km s-1 と測定された.さらにロシター効果の探査を行い,射影した惑星の公転軸の傾斜角は 10.5° と測定され,恒星の自転軸と揃った軌道面を持つ配置と整合的であった.

パラメータ

HD 93148 (MASCARA-3)
スペクトル型:F7
距離:97 pc
有効温度:6415 K
金属量:[Fe/H] = 0.09
年齢:28 億歳
質量:1.30 太陽質量
半径:1.52 太陽半径
MASCARA-3b
軌道周期:5.55149 日
軌道離心率:0.085
軌道長半径:0.067 au
質量:4.2 木星質量
半径:1.35 木星半径
平衡温度:1473 K

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arXiv:1906.03276
Rodriguez et al. (2019)
KELT-24b: A 5MJ Planet on a 5.6 day Well-Aligned Orbit around the Young V=8.3 F-star HD 93148
(KELT-24b:若い V=8.3 F 型星 HD 93148 周りの 5.6 日のよく揃った軌道にある 5 木星質量惑星)

概要

明るく (V = 8.3 mag,K = 7.2 mag) 若い F 型星を 5.6 日で公転する重いホットジュピター KELT-24b の発見を報告する.

中心星の KELT-24 (HD 93148) は有効温度が 6508 K で,1.461 太陽質量,1.506 太陽半径,年齢は 7.7 億歳である.惑星は 1.272 木星半径,5.18 木星質量で,ドップラートモグラフィーの観測からは,惑星の軌道は中心星の射影した自転軸とよく揃っていると推定される (両者の角度は 2.6°).

中心星の推定年齢が若いことから,この恒星はほんの最近になってゼロ年齢主系列から進化を始めたことが示唆される.この恒星は,軌道周期が 5-10 日の範囲のトランジット巨大惑星を持つ恒星としては,これまでで最も明るい.

惑星軌道の円軌道化のタイムスケールはこの系の年齢よりもずっと長いが,力学的な惑星移動モデルから期待される大きな軌道離心率や有意な軌道面のずれは検出されなかった.

中心星が明るいことと惑星の表面重力は中間的であることから,この惑星は分光放射光測定を介した大気の詳細な特徴付けを行うための興味深いターゲットである.特にこの惑星は,低質量のホットジュピターと,発見数が少ない褐色矮星との間を橋渡しする存在であることから重要である.

パラメータ

KELT-24
別名:HD 93148
距離:96.025 pc
質量:1.461 太陽質量
半径:1.506 太陽半径
光度:3.66 太陽光度
有効温度:6508 K
金属量:[Fe/H] = 0.188
年齢:7.7 億歳
KELT-24b
軌道周期:5.5514926 日
半径:1.272 木星半径
軌道長半径:0.06971 AU
軌道離心率:0.077
平衡温度:1458 K
質量:5.18 木星質量

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arXiv:1906.02787
Janson et al. (2019)
The B-Star Exoplanet Abundance Study: a co-moving 16-25 Mjup companion to the young binary system HIP 79098
(B 型星系外惑星存在度の研究:若い連星系 HIP 79098 と共動する 16-25 木星質量伴星)

概要

大きな軌道間隔を持つ,恒星質量未満の低質量の伴星は,低質量星の周りでは非常に希少な存在であることが知られているが,恒星質量が大きくなるほどその存在は普遍的であると考えられている.しかし,太陽からおよそ 150 pc 以内に存在する恒星の中では最も重い恒星である B 型星では,この観点からの調査が AFGKM 型星と同様には行われていない.

この問題に取り組むため,研究プロジェクト B-star Exoplanet Abundance Study (BEAST) が立ち上げられ,現在進行している.これは,Scorpius-Centaurus (Sco-Cen) アソシエーション (さそり座-ケンタウルス座アソシエーション) 内にある B 型星回りでの惑星・褐色矮星および円盤の存在頻度とその特性を調査するプロジェクトである.また,Sco-Cen アソシエーション内の B 型星のアーカイブデータの解析も行った.

この解析過程の最中に,B9 型分光連星 HIP 79098AB に,亜恒星質量の伴星候補が付随していることを同定した (HIP 79098 (AB)b).

この候補天体の存在は過去にも報告されていたが,その特徴的な色から,無関係の背景天体が混入したものだと考えられてきた.ここでは,HIP 79098 (AB)b の色は最近発見されているいくつかの若く低質量の褐色矮星と整合的であることを示す.その中には,Sco-Cen アソシエーション内の恒星に付随する伴星も含んでいる.

さらに,15 年以上にわたる観測から,HIP 79098 (AB)b は明確な共通の固有運動を示し,が B9 型恒星の連星から射影距離 345 ± 6 AU にある恒星質量未満の周連星伴星であることを示す.

HIP 79098 (AB)b の質量はモデル依存性があるが 16-25 木星質量と推定され,中心星との質量比は 1% 未満である.今回の発見により,この天体は近年発見個数が増えている,重い恒星周りで惑星のような質量比を持った亜恒星天体の一員となった.

今回の観測は,発見された天体が主星に物理的に付随しているかどうかを識別するためには共通の固有運動解析を行うことが重要であることを強調するものである.また,さらなる伴星天体が純粋に測光サーベイのアーカイブデータの中に埋もれたままである可能性を示唆するものである.

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