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論文関連の(ほぼ)個人用メモ。
arXiv:1906.04274
Waalkes et al. (2019)
Lyman-alpha in the GJ 1132 System: Stellar Emission and Planetary Atmospheric Evolution
(GJ 1132 系でのライマンアルファ:恒星放射と惑星大気進化)
この惑星は地球の 19 倍の輻射を受けているため,生命が居住可能な環境であるには高温過ぎるが,低温の恒星を公転する岩石惑星の大気中の揮発性物質の量についての情報を我々に与えてくれる.
ここでは,ハッブル宇宙望遠鏡の STIS を用いて得られたスペクトルを用いて,GJ 1132b の中性水素の Lyα 線 (ライマンアルファ線) でのトランジットを探査した.
もし Lyα 線での深いトランジットが検出された場合,この惑星から流出する中性水素エンベロープの存在が示唆される.一方で深い吸収が否定された場合は,この惑星は検出可能な量の水素の流出が発生していないことを示唆し,水素を散逸していないか,あるいは水素やその他の揮発性物質を寿命の初期の段階に失ってしまったのだと考えられる.
今回の観測では Lyα 線でのトランジットは検出されず,2σ の上限値として Lyα 線の red wing 側での有効エンベロープ半径に対して 0.36 恒星半径という値を与えた.これは星間物質による吸収の後に検出されるスペクトルのほんの一部分である.
また,Lyα のスペクトルと中心星 GJ 1132 の変動を解析した.この恒星は低速自転をする 0.18 太陽質量の M 型矮星であり,最大 41% の M 矮星の紫外線変動と整合的であった.中心星の紫外線の変動性が惑星の大気に及ぼす役割を理解することは,低温の岩石系外惑星の大気進化と居住可能性を評価するために重要である.
その結果.GJ 1132b からの中性水素原子の散逸率の上限は 0.86 × 109 g s-1 と推定された.
散逸する水素原子全てが水分子に由来すると仮定すると,水の量に換算すると 15.4 × 109 g s-1 に相当する.この散逸率の上限値が維持された場合,この惑星は 600 万年の間に地球の海に相当する量の水を失うことになる.
中心星ののスペクトルと合わせて考えると,大気散逸へとエネルギーが変換される効率が 100% であると仮定した場合,エネルギー律速による散逸率は 3.0 × 109 g s-1 となる.
もしこの惑星が散逸する中性水素の高層大気を持っていた場合,その高層大気のサイズは 0.36 恒星半径 (7.3 惑星半径) よりも小さい (red-shifted wing 側で測定した値).また,Lyα 線の青方偏移側で測定した高層大気のサイズの上限値は 0.62 恒星半径 (12.6 惑星半径) だが,これは非常に弱い制約である.
今回の観測から得られた大気散逸の上限値は,0.08 - 0.8 × 109 g s-1 である.
主な結果は以下の通り.
・GJ 1132b の実際の大気散逸率は,今回の観測から推定された上限値に匹敵する程度の値か,あるいはそれよりずっと小さい可能性がある.そのため,この惑星の大気と揮発性物質の詳細については未解決の問題が残る,いくらかの量の散逸はあるかもしれないが,今回の機器の検出限界を下回る.
・もしこの惑星の周りに中性水素からなるエンベロープが存在する場合,このスーパーアースは光化学破壊と水素のハイドロダイナミックエスケープによって活発に水を失っているはずである.残った大気は,例えば酸素分子や温室効果ガスである二酸化炭素など,酸素豊富の組成となる可能性がある.
・この惑星の大気は,金星的か火星的であると考えられる.つまり,遠い昔に水を失い,分厚い二酸化炭素と酸素の残存大気を持つか,あるいは大気を持たない.将来のジェームズ・ウェッブ宇宙望遠鏡 (JWST) による観測で,この惑星の大気組成についてさらなる情報が得られるだろう.
・大気散逸を計算する EVE シミュレーションコードに基づくと,この惑星の周りには中性水素からなる巨大な雲が存在する可能性がある.しかしこれは星間物質による吸収の影響で検出できない.しかしもし大気中にその他の揮発性物質がある場合,これはその他のトレーサー粒子によって検出可能だと考えられる.例えば,ハッブル宇宙望遠鏡を用いた遠紫外線での観測では炭素や酸素,地上の高分散赤外分光観測や JWST による観測ではヘリウムを用いて観測できる可能性がある.
arXiv:1906.04274
Waalkes et al. (2019)
Lyman-alpha in the GJ 1132 System: Stellar Emission and Planetary Atmospheric Evolution
(GJ 1132 系でのライマンアルファ:恒星放射と惑星大気進化)
概要
GJ 1132b は,M 型矮星を公転している,地球サイズであることが知られている数少ない系外惑星の一つである.太陽系から 12 pc の距離にあり,最も近くにある既知のトランジット惑星のひとつでもある.この惑星は地球の 19 倍の輻射を受けているため,生命が居住可能な環境であるには高温過ぎるが,低温の恒星を公転する岩石惑星の大気中の揮発性物質の量についての情報を我々に与えてくれる.
ここでは,ハッブル宇宙望遠鏡の STIS を用いて得られたスペクトルを用いて,GJ 1132b の中性水素の Lyα 線 (ライマンアルファ線) でのトランジットを探査した.
もし Lyα 線での深いトランジットが検出された場合,この惑星から流出する中性水素エンベロープの存在が示唆される.一方で深い吸収が否定された場合は,この惑星は検出可能な量の水素の流出が発生していないことを示唆し,水素を散逸していないか,あるいは水素やその他の揮発性物質を寿命の初期の段階に失ってしまったのだと考えられる.
今回の観測では Lyα 線でのトランジットは検出されず,2σ の上限値として Lyα 線の red wing 側での有効エンベロープ半径に対して 0.36 恒星半径という値を与えた.これは星間物質による吸収の後に検出されるスペクトルのほんの一部分である.
また,Lyα のスペクトルと中心星 GJ 1132 の変動を解析した.この恒星は低速自転をする 0.18 太陽質量の M 型矮星であり,最大 41% の M 矮星の紫外線変動と整合的であった.中心星の紫外線の変動性が惑星の大気に及ぼす役割を理解することは,低温の岩石系外惑星の大気進化と居住可能性を評価するために重要である.
大気散逸の上限値
惑星周囲にあるエンベロープが球対称の構造であることを仮定して,Lyα 線トランジット観測の上限値から,中性水素の散逸率の上限値を推定した.大気が散逸する速度の範囲は,惑星からの脱出速度である 10 km s-1 から,恒星からの脱出速度である 100 km s-1 までの範囲を仮定した.その結果.GJ 1132b からの中性水素原子の散逸率の上限は 0.86 × 109 g s-1 と推定された.
散逸する水素原子全てが水分子に由来すると仮定すると,水の量に換算すると 15.4 × 109 g s-1 に相当する.この散逸率の上限値が維持された場合,この惑星は 600 万年の間に地球の海に相当する量の水を失うことになる.
中心星ののスペクトルと合わせて考えると,大気散逸へとエネルギーが変換される効率が 100% であると仮定した場合,エネルギー律速による散逸率は 3.0 × 109 g s-1 となる.
結論
今回の研究は,GJ 1132b の外気圏の初めての特徴付けを行ったものである.LUVOIR のような望遠鏡が使用可能になるまでは,この惑星系に対して可能な最も詳細な Lyα 線での特徴付けである.もしこの惑星が散逸する中性水素の高層大気を持っていた場合,その高層大気のサイズは 0.36 恒星半径 (7.3 惑星半径) よりも小さい (red-shifted wing 側で測定した値).また,Lyα 線の青方偏移側で測定した高層大気のサイズの上限値は 0.62 恒星半径 (12.6 惑星半径) だが,これは非常に弱い制約である.
今回の観測から得られた大気散逸の上限値は,0.08 - 0.8 × 109 g s-1 である.
主な結果は以下の通り.
・GJ 1132b の実際の大気散逸率は,今回の観測から推定された上限値に匹敵する程度の値か,あるいはそれよりずっと小さい可能性がある.そのため,この惑星の大気と揮発性物質の詳細については未解決の問題が残る,いくらかの量の散逸はあるかもしれないが,今回の機器の検出限界を下回る.
・もしこの惑星の周りに中性水素からなるエンベロープが存在する場合,このスーパーアースは光化学破壊と水素のハイドロダイナミックエスケープによって活発に水を失っているはずである.残った大気は,例えば酸素分子や温室効果ガスである二酸化炭素など,酸素豊富の組成となる可能性がある.
・この惑星の大気は,金星的か火星的であると考えられる.つまり,遠い昔に水を失い,分厚い二酸化炭素と酸素の残存大気を持つか,あるいは大気を持たない.将来のジェームズ・ウェッブ宇宙望遠鏡 (JWST) による観測で,この惑星の大気組成についてさらなる情報が得られるだろう.
・大気散逸を計算する EVE シミュレーションコードに基づくと,この惑星の周りには中性水素からなる巨大な雲が存在する可能性がある.しかしこれは星間物質による吸収の影響で検出できない.しかしもし大気中にその他の揮発性物質がある場合,これはその他のトレーサー粒子によって検出可能だと考えられる.例えば,ハッブル宇宙望遠鏡を用いた遠紫外線での観測では炭素や酸素,地上の高分散赤外分光観測や JWST による観測ではヘリウムを用いて観測できる可能性がある.
PR
論文関連の(ほぼ)個人用メモ。
arXiv:1906.02860
Flagg et al. (2019)
CO Detected in CI Tau b: Hot Start Implied by Planet Mass and MK
(Cl Tau b での CO の検出:惑星質量と MK で示唆されるホットスタート)
この観測で,惑星大気中の一酸化炭素の直接検出をもって惑星の存在を確認した.また,視線速度変動の振幅から,惑星質量は 11.6 木星質量と計算された.
中心星と惑星のフラックスのコントラストを推定し,K バンドでの惑星の絶対等級を 8.17 と推定した.この等級は,惑星 CI Tau b は “hot start” な形成過程で形成されたことを示唆するものである.
今回の発見により,おうし座CI星b (CI Tau b) は存在が確認された中では最も若い系外惑星であることが分かった.またおうし座T型星の周りの惑星としては,モデルに依存しない,直接測定された力学的質量が分かっている初めての系外惑星である.
巨大惑星の形成モデルでは,巨大惑星は形成の初期段階では大きく異なる温度で形成されることが示唆されている.具体的には,重力不安定を介して形成された場合は高温の惑星が,コア降着を介して形成された場合は比較的低温で暗い惑星が形成されると考えられる (Marley et al. 2007).
しかし実際には,どちらのモデルでも広い温度範囲の惑星を形成可能であることが指摘されている (Helled et al. 2014).これらのモデルをよりよく識別するためには,モデルに依存しない若い惑星の質量に関する情報が必要である.
これまでにいくつかの惑星が直接撮像によって前主系列星の周りに発見されており,その中にはおうし座T型星の周りで発見されているものもある.これらの惑星の等級の測定結果は,惑星形成理論を評価するのに使われている.
しかしこれらの系では,恒星と惑星の質量比が大きいことと,恒星と惑星との距離が大きく離れているために恒星の運動を測定するのが一般に不可能であり,そのため惑星質量はモデル依存にならざるを得ない.がか座ベータ星b の例外を除くと,これらの天体が惑星質量程度であることを確認するのは依然として不可能である.
若い恒星は主系列星よりずっと活発であり,これは惑星によるシグナルを隠し,視線速度法とトランジット法のどちらでも惑星の検出を難しくする.しかし過去数年の間に,視線速度を用いて前主系列星の回りに惑星候補が発見されている.例えば CI Tau b (Johns-Krull et al. 2016),V830 Tau b (Donati et al. 2016),Tap 26 b (Yu et al. 2017) である.
過去の研究では,視線速度法によって最小質量が 8.08 木星質量,軌道周期 8.989 日の惑星候補天体が検出されている.恒星周囲の円盤の撮像観測から,円盤の傾斜角は ~44° と推定されており (Guilloteau et al. 2014),この傾斜角を元にすると真の質量は ~11 木星質量と推定される.
もし惑星がいくつかの「ホットスタート」機構によって形成されたと考えると,理論モデルによると中心星とのフラックスのコントラスト比は 10-3 程度になることが期待される (Spiegel & Burrows 2012).このコントラスト比は分光観測で直接検出可能な値である.しかし,もし惑星が「コールドスタート」機構を介して形成された場合,コントラスト比は最大でも 10-5 に留まると予想され,これは現在の技術では検出できない.
また,惑星の大気から一酸化炭素を直接検出した.
この惑星は,存在が確認された系外惑星の中では最も若く,またおうし座T型星まわりでモデルに依存しない質量が測定された唯一の系外惑星である.
若い巨大系外惑星の理論モデルに基づくと,10 木星質量程度の天体が今回観測された明るさになるためには,この惑星は「ホットスタート」機構で形成されている必要がある.
さらに Spiegel & Burrows (2012) によると,200 万歳の段階での 10 木星質量の惑星の半径は ~2 木星質量であると推定され,また惑星の有効温度は ~2300 K と推定される.この明るさは他の若い恒星周りの惑星質量天体と整合的である.ただし,がか座ベータ星b と今回の CI Tau b を除くと,他の若い惑星は質量の推定値にモデル依存性が存在する.
arXiv:1906.02860
Flagg et al. (2019)
CO Detected in CI Tau b: Hot Start Implied by Planet Mass and MK
(Cl Tau b での CO の検出:惑星質量と MK で示唆されるホットスタート)
概要
おうし座CI星 (CI Tau) の赤外線での高分散スペクトルを取得した.この天体は.スペクトルを直接検出するのに適した若い惑星候補天体を複数持っている.この観測で,惑星大気中の一酸化炭素の直接検出をもって惑星の存在を確認した.また,視線速度変動の振幅から,惑星質量は 11.6 木星質量と計算された.
中心星と惑星のフラックスのコントラストを推定し,K バンドでの惑星の絶対等級を 8.17 と推定した.この等級は,惑星 CI Tau b は “hot start” な形成過程で形成されたことを示唆するものである.
今回の発見により,おうし座CI星b (CI Tau b) は存在が確認された中では最も若い系外惑星であることが分かった.またおうし座T型星の周りの惑星としては,モデルに依存しない,直接測定された力学的質量が分かっている初めての系外惑星である.
背景
若い系外惑星と惑星形成モデル
若い系外惑星の観測は,惑星形成を理解する上で重要である.巨大惑星の形成モデルでは,巨大惑星は形成の初期段階では大きく異なる温度で形成されることが示唆されている.具体的には,重力不安定を介して形成された場合は高温の惑星が,コア降着を介して形成された場合は比較的低温で暗い惑星が形成されると考えられる (Marley et al. 2007).
しかし実際には,どちらのモデルでも広い温度範囲の惑星を形成可能であることが指摘されている (Helled et al. 2014).これらのモデルをよりよく識別するためには,モデルに依存しない若い惑星の質量に関する情報が必要である.
これまでにいくつかの惑星が直接撮像によって前主系列星の周りに発見されており,その中にはおうし座T型星の周りで発見されているものもある.これらの惑星の等級の測定結果は,惑星形成理論を評価するのに使われている.
しかしこれらの系では,恒星と惑星の質量比が大きいことと,恒星と惑星との距離が大きく離れているために恒星の運動を測定するのが一般に不可能であり,そのため惑星質量はモデル依存にならざるを得ない.がか座ベータ星b の例外を除くと,これらの天体が惑星質量程度であることを確認するのは依然として不可能である.
若い恒星は主系列星よりずっと活発であり,これは惑星によるシグナルを隠し,視線速度法とトランジット法のどちらでも惑星の検出を難しくする.しかし過去数年の間に,視線速度を用いて前主系列星の回りに惑星候補が発見されている.例えば CI Tau b (Johns-Krull et al. 2016),V830 Tau b (Donati et al. 2016),Tap 26 b (Yu et al. 2017) である.
おうし座CI星
おうし座CI星 (CI Tau) は,年齢が 200 万〜 300 万歳,スペクトル型が K7 の,古典的おうし座T型星である.過去の研究では,視線速度法によって最小質量が 8.08 木星質量,軌道周期 8.989 日の惑星候補天体が検出されている.恒星周囲の円盤の撮像観測から,円盤の傾斜角は ~44° と推定されており (Guilloteau et al. 2014),この傾斜角を元にすると真の質量は ~11 木星質量と推定される.
もし惑星がいくつかの「ホットスタート」機構によって形成されたと考えると,理論モデルによると中心星とのフラックスのコントラスト比は 10-3 程度になることが期待される (Spiegel & Burrows 2012).このコントラスト比は分光観測で直接検出可能な値である.しかし,もし惑星が「コールドスタート」機構を介して形成された場合,コントラスト比は最大でも 10-5 に留まると予想され,これは現在の技術では検出できない.
結論
K バンドでの観測で,惑星の存在を強く支持する証拠を発見した.質量は 11.6 木星質量である.また,惑星の大気から一酸化炭素を直接検出した.
この惑星は,存在が確認された系外惑星の中では最も若く,またおうし座T型星まわりでモデルに依存しない質量が測定された唯一の系外惑星である.
若い巨大系外惑星の理論モデルに基づくと,10 木星質量程度の天体が今回観測された明るさになるためには,この惑星は「ホットスタート」機構で形成されている必要がある.
さらに Spiegel & Burrows (2012) によると,200 万歳の段階での 10 木星質量の惑星の半径は ~2 木星質量であると推定され,また惑星の有効温度は ~2300 K と推定される.この明るさは他の若い恒星周りの惑星質量天体と整合的である.ただし,がか座ベータ星b と今回の CI Tau b を除くと,他の若い惑星は質量の推定値にモデル依存性が存在する.
論文関連の(ほぼ)個人用メモ。
arXiv:1906.02395
Rampalli et al. (2019)
A Hot Saturn Near (but unassociated with) the Open Cluster NGC 1817
(散開星団 NGC 1817 に近い (しかい付随していない) ホットサターン)
Gaia DR2 でこの恒星の位置天文データが公開されるのに先立ち,この惑星候補の研究を行っていた.それは,この恒星が 10 億歳の散開星団である NGC 1817 のメンバーであると考えられていたためである.過去の研究では,この恒星が散開星団のメンバーである可能性は 90% 以上と推定されていた.これは恒星の運動学と測光距離に基づくものである.
ここでは,Seeing-limited 測光から,K2 の測光アパーチャ内の 3 つの恒星から中心星を同定した.また,補償光学を用いた撮像観測と視線速度観測から,トランジットのシグナルが偽陽性である可能性を否定した.偽陽性確率は 0.01% と計算され,惑星 EPIC 246865365b の存在が統計的に実証された.
しかし,Gaia DR2 による新しい運動学的測定と,系の視線速度の測定を用いたところ,この天体は散開星団 NGC 1817 に付随していないことも示された.従って,散開星団中の巨大トランジット惑星の長期間にわたる探査は,依然として結果が出ていないことになる.
最後に,seeing-limited 測光は,特に恒星が混み合って存在する領域では,TESS の惑星候補をフォローアップするために既に使用されている類似技術の良いデモンストレーションであることを示す.
半径:1.24 太陽半径
金属量:[Fe/H] = -0.10
有効温度:6100 K
半径:9.916 地球半径 (0.884 木星半径)
arXiv:1906.02395
Rampalli et al. (2019)
A Hot Saturn Near (but unassociated with) the Open Cluster NGC 1817
(散開星団 NGC 1817 に近い (しかい付随していない) ホットサターン)
概要
ケプラー K2 ミッションの Campaign 13 の期間中の観測から,晩期 F 型星 EPIC 246865365 の周りに高温の土星サイズの惑星を発見したことを報告する.惑星の半径は 9.916 地球半径である.Gaia DR2 でこの恒星の位置天文データが公開されるのに先立ち,この惑星候補の研究を行っていた.それは,この恒星が 10 億歳の散開星団である NGC 1817 のメンバーであると考えられていたためである.過去の研究では,この恒星が散開星団のメンバーである可能性は 90% 以上と推定されていた.これは恒星の運動学と測光距離に基づくものである.
ここでは,Seeing-limited 測光から,K2 の測光アパーチャ内の 3 つの恒星から中心星を同定した.また,補償光学を用いた撮像観測と視線速度観測から,トランジットのシグナルが偽陽性である可能性を否定した.偽陽性確率は 0.01% と計算され,惑星 EPIC 246865365b の存在が統計的に実証された.
しかし,Gaia DR2 による新しい運動学的測定と,系の視線速度の測定を用いたところ,この天体は散開星団 NGC 1817 に付随していないことも示された.従って,散開星団中の巨大トランジット惑星の長期間にわたる探査は,依然として結果が出ていないことになる.
最後に,seeing-limited 測光は,特に恒星が混み合って存在する領域では,TESS の惑星候補をフォローアップするために既に使用されている類似技術の良いデモンストレーションであることを示す.
パラメータ
EPIC 246865365
質量:1.09 太陽質量半径:1.24 太陽半径
金属量:[Fe/H] = -0.10
有効温度:6100 K
EPIC 246865365b
軌道周期:3.38628 日半径:9.916 地球半径 (0.884 木星半径)
論文関連の(ほぼ)個人用メモ。
arXiv:1906.01486
Haffert et al. (2019)
Two accreting protoplanets around the young star PDS 70
(若い恒星 PDS 70 のまわりの 2 つの降着する原始惑星)
最近,おうし座T型星 PDS 70 の遷移円盤のギャップの中に惑星が発見された.ここでは,この系の 2 つの異なる場所からの強い Hα 放射が検出されたことを報告する.
一つは過去に発見が報告されている PDS 70b に対応しており,過去の Hα での検出報告を確認するものである.もう一つはギャップの外縁に近い場所にあり,過去に同定された円盤中の明るいダストのスポットと,分子輝線のリング中の小さい開口部分と一致した.これは,この系における 2 番目の原始惑星 PDS 70c と同定された.
双方の原始惑星から検出された Hα 輝線の存在は,原始惑星へ降着が進行していることを示唆している.また PDS 70b と c は 2:1 平均運動共鳴に近い軌道にあるように思われる.
今回の観測は,補償光学を用い,中間分解能で,MUSE による面分光を用いて惑星への降着の特徴を観測ターゲットにするのは,遷移円盤中での異なる進化の段階における進行中の惑星形成をトレースするための強力な手段であることを示した.
平均運動共鳴に入っている若い惑星系をさらに発見することで,太陽系の初期形成段階の間に木星と土星は共鳴状態で移動したというグランドタック仮説に信頼性を与えるものになる.
PDS 70 の周囲の原始惑星系円盤は,スペクトルエネルギー分布 (spectral energy distribution, SED) のモデリングから初めて発見された.後に近赤外とサブミリ波での直接撮像も行われた.
SED モデリングと直接撮像の双方で,この天体は遷移円盤を持っており,半径が 20 - 40 AU の範囲にダストが排除された領域が存在することが示されている.このことは,おそらくは円盤中の動径方向の圧力勾配によって生成されたダスト粒子の蓄積が起きていることを示唆している.このような圧力極大を形成する可能性のあるメカニズムは,円盤中に惑星質量の天体が存在することによる,円盤物質の力学的な掃き出しである.
PDS 70b の質量は 4-17 木星質量と推定され,中心星との射影距離は 22 AU である.
その後のマゼラン 6.5 m 望遠鏡での撮像観測では,4σ の信頼度で水素の Hα 線の放射シグナルが検出されている.Hα シグナルは一般には天体への降着に伴って発生するものであり,この惑星がまだ形成中であることを示唆している.
arXiv:1906.01486
Haffert et al. (2019)
Two accreting protoplanets around the young star PDS 70
(若い恒星 PDS 70 のまわりの 2 つの降着する原始惑星)
概要
新しく形成される原始惑星は若いガス豊富な原始惑星系円盤に空洞やサブ構造を形成すると考えられているが,これらの構造は進化した画像解析技術によって円盤の特徴と混同されうるため,検出することが難しい.最近,おうし座T型星 PDS 70 の遷移円盤のギャップの中に惑星が発見された.ここでは,この系の 2 つの異なる場所からの強い Hα 放射が検出されたことを報告する.
一つは過去に発見が報告されている PDS 70b に対応しており,過去の Hα での検出報告を確認するものである.もう一つはギャップの外縁に近い場所にあり,過去に同定された円盤中の明るいダストのスポットと,分子輝線のリング中の小さい開口部分と一致した.これは,この系における 2 番目の原始惑星 PDS 70c と同定された.
双方の原始惑星から検出された Hα 輝線の存在は,原始惑星へ降着が進行していることを示唆している.また PDS 70b と c は 2:1 平均運動共鳴に近い軌道にあるように思われる.
今回の観測は,補償光学を用い,中間分解能で,MUSE による面分光を用いて惑星への降着の特徴を観測ターゲットにするのは,遷移円盤中での異なる進化の段階における進行中の惑星形成をトレースするための強力な手段であることを示した.
平均運動共鳴に入っている若い惑星系をさらに発見することで,太陽系の初期形成段階の間に木星と土星は共鳴状態で移動したというグランドタック仮説に信頼性を与えるものになる.
PDS 70 について
PDS 70 は,若いおうし座T型星 (T Tauri star) である.距離は 113.43 pc で,分光学的な年齢推定からは 540 万歳と推定される.PDS 70 の周囲の原始惑星系円盤は,スペクトルエネルギー分布 (spectral energy distribution, SED) のモデリングから初めて発見された.後に近赤外とサブミリ波での直接撮像も行われた.
SED モデリングと直接撮像の双方で,この天体は遷移円盤を持っており,半径が 20 - 40 AU の範囲にダストが排除された領域が存在することが示されている.このことは,おそらくは円盤中の動径方向の圧力勾配によって生成されたダスト粒子の蓄積が起きていることを示唆している.このような圧力極大を形成する可能性のあるメカニズムは,円盤中に惑星質量の天体が存在することによる,円盤物質の力学的な掃き出しである.
PDS 70b の質量は 4-17 木星質量と推定され,中心星との射影距離は 22 AU である.
その後のマゼラン 6.5 m 望遠鏡での撮像観測では,4σ の信頼度で水素の Hα 線の放射シグナルが検出されている.Hα シグナルは一般には天体への降着に伴って発生するものであり,この惑星がまだ形成中であることを示唆している.
論文関連の(ほぼ)個人用メモ。
arXiv:1906.00462
Zhou et al. (2019)
Two new HATNet hot Jupiters around A stars, and the first glimpse at the occurrence rate of hot Jupiters from TESS
(A 型星まわりの 2 つの新しい HATNet ホットジュピターと,TESS によるホット・ジュピターの存在頻度への第一歩)
ここでは,HAT-P-69b (TOI 625.01) と HAT-P-70b (TOI 624.01) の 2 つのホットジュピターの発見について報告する.
A 型星の周りでの発見であり,HATNet によってトランジット法を用いて発見され,Transiting Exoplanet Survey Satellite (TESS) でも観測された.
HAT-P-69b は,3.73 木星質量,1.626 木星半径であり,順行軌道で 4.79 日周期で公転している.中心星の HAT-P-69 は,1.698 太陽質量,1.854 太陽半径である.
HAT-P-70b は,1.87 木星半径,質量は 6.78 木星質量未満であり.逆行軌道で 2.74 日周期で公転している.中心星の HAT-P-70 は 1.890 太陽質量,1.858 太陽半径である.
これらの比較的重い恒星周りでの惑星の発見を,ホットジュピターの存在頻度を恒星質量の関数として調査する機会として用いた.
Tmag = 10 よりも明るい 47126 個の主系列星のサンプルを抽出し,このうち 31 個が巨大惑星候補天体を持っている.うち 18 個は惑星であることが確認済みであり,3 個は惑星候補,10 個は偽陽性である.
このサンプル中でのホットジュピターの存在頻度は 0.45 ± 0.10% である.これはケプラーが FGK 星まわりのホットジュピターに対して測定した存在頻度と整合的である.
この存在頻度を恒星質量ごとに分割すると,G 型星では 0.71 ± 0.31%,F 型星では 0.43 ± 0.15%,A 型星では 0.32 ± 0.12% である.したがって現段階では,恒星質量に伴うホットジュピターの頻度において統計的に有意な傾向を識別することは出来ない.
金属量:[Fe/H] = -0.061
質量:1.698 太陽質量
半径:1.854 太陽半径
光度:10.98 太陽光度
年齢:12.7 億歳
距離:343.9 pc
質量:3.73 木星質量
半径:1.626 木星半径
密度:1.17 g cm-3
軌道長半径:0.06629 AU
平衡温度:1990 K (アルベド 0,完全な熱再分配を仮定した場合)
射影した spin-orbit angle は 30.3° (順行軌道)
金属量:[Fe/H] = -0.059
質量:1.890 太陽質量
半径:1.858 太陽半径
光度:16.7 太陽光度
年齢:6 億歳
距離:329.0 pc
質量:6.78 木星質量未満
半径:1.87 木星半径
密度:1.54 g cm-3 未満
軌道長半径:0.04739 AU
平衡温度:2562 K (アルベド 0,完全な熱再分配を仮定した場合)
射影した spin-orbit angle は 113.1° (逆行軌道)
arXiv:1906.00462
Zhou et al. (2019)
Two new HATNet hot Jupiters around A stars, and the first glimpse at the occurrence rate of hot Jupiters from TESS
(A 型星まわりの 2 つの新しい HATNet ホットジュピターと,TESS によるホット・ジュピターの存在頻度への第一歩)
概要
トランジット惑星の広視野サーベイは多様な恒星のポピュレーションを調べるのに適しており,これにより惑星とその中心星の特性の間の繋がりをより良く理解することを可能とする.ここでは,HAT-P-69b (TOI 625.01) と HAT-P-70b (TOI 624.01) の 2 つのホットジュピターの発見について報告する.
A 型星の周りでの発見であり,HATNet によってトランジット法を用いて発見され,Transiting Exoplanet Survey Satellite (TESS) でも観測された.
HAT-P-69b は,3.73 木星質量,1.626 木星半径であり,順行軌道で 4.79 日周期で公転している.中心星の HAT-P-69 は,1.698 太陽質量,1.854 太陽半径である.
HAT-P-70b は,1.87 木星半径,質量は 6.78 木星質量未満であり.逆行軌道で 2.74 日周期で公転している.中心星の HAT-P-70 は 1.890 太陽質量,1.858 太陽半径である.
これらの比較的重い恒星周りでの惑星の発見を,ホットジュピターの存在頻度を恒星質量の関数として調査する機会として用いた.
Tmag = 10 よりも明るい 47126 個の主系列星のサンプルを抽出し,このうち 31 個が巨大惑星候補天体を持っている.うち 18 個は惑星であることが確認済みであり,3 個は惑星候補,10 個は偽陽性である.
このサンプル中でのホットジュピターの存在頻度は 0.45 ± 0.10% である.これはケプラーが FGK 星まわりのホットジュピターに対して測定した存在頻度と整合的である.
この存在頻度を恒星質量ごとに分割すると,G 型星では 0.71 ± 0.31%,F 型星では 0.43 ± 0.15%,A 型星では 0.32 ± 0.12% である.したがって現段階では,恒星質量に伴うホットジュピターの頻度において統計的に有意な傾向を識別することは出来ない.
パラメータ
HAT-P-69 系
HAT-P-69
有効温度:7724 K金属量:[Fe/H] = -0.061
質量:1.698 太陽質量
半径:1.854 太陽半径
光度:10.98 太陽光度
年齢:12.7 億歳
距離:343.9 pc
HAT-P-69b
軌道周期:4.7869467 日質量:3.73 木星質量
半径:1.626 木星半径
密度:1.17 g cm-3
軌道長半径:0.06629 AU
平衡温度:1990 K (アルベド 0,完全な熱再分配を仮定した場合)
射影した spin-orbit angle は 30.3° (順行軌道)
HAT-P-70 系
HAT-P-70
有効温度:8450 K金属量:[Fe/H] = -0.059
質量:1.890 太陽質量
半径:1.858 太陽半径
光度:16.7 太陽光度
年齢:6 億歳
距離:329.0 pc
HAT-P-70b
軌道周期:2.74432452 日質量:6.78 木星質量未満
半径:1.87 木星半径
密度:1.54 g cm-3 未満
軌道長半径:0.04739 AU
平衡温度:2562 K (アルベド 0,完全な熱再分配を仮定した場合)
射影した spin-orbit angle は 113.1° (逆行軌道)