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論文関連の(ほぼ)個人用メモ。
arXiv:1904.03679
Hromakina et al. (2019)
Long-term photometric monitoring of the dwarf planet (136472) Makemake
(準惑星マケマケの長期間測光モニタリング)
異なる望遠鏡を用いて,2006 年〜2017 年に測光観測を行った.大部分の観測は一般的な Johnson-Cousins photometric system の BVRI 広帯域フィルターで行われた.
その結果,マケマケは過去に報告されているよりもゆっくりと自転していることを見出した.光度曲線中にあると考えられる非対称性では,二重極大を示す 22.8266 時間の周期が示唆された.
R フィルターでの小さい頂点間の振幅は 0.032 等級であり,マケマケがほぼ球形をしているか,あるいは自転軸の極をこちらに向けているかのどちらかを示唆する結果となった.
また BVRI の色と,R フィルター位相角の傾きを測定し,マケマケの絶対等級を測定値を改訂した.マケマケの絶対等級は 2005 年の発見以来変化していない.
今回の測光データ中には,未発見の衛星の兆候は見られなかった.しかし,その他の大きな衛星が存在する可能性についても議論した.
マケマケの測光観測から,自転周期の測定が行われている.
最初の測定は Ortiz et al. (2007) によるものであり,11.24 時間とその 2 倍の 22.48 時間の 2 つの可能性が指摘された.
その後さらに詳細な観測データから,7.77 時間という自転周期が Heinze & de Lahunta (2009) で提案された.最終的に,Thirouin et al. (2010) が 7.7 時間の自転周期とそれに伴うエイリアスの 11.5 時間の周期性を報告し,自転周期としては前者の値がもっともらしいとした.
マケマケの光度曲線の振幅は 0.03 等級と小さいことから,光度曲線から自転周期を決定するのが難しい (Heinze & de Lahunta 2009).その後マケマケに衛星が発見されたことにより,さらなる測光観測が重要となった (Parker et al. 2016).マケマケに発見されたような衛星がマケマケの自転に伴う光度曲線に与える影響は小さいと考えられるが,さらなるハーモニクスが検出される可能性があり,これは衛星の物理的特性や軌道特性を制約するのに用いられる.
過去のマケマケの観測データでは,表面は自転する間にわたって非常に一様であることを示唆する結果が得られている (Perna et al. 2017).
天体の形状による光度曲線の非対称性は,表面の地形の特徴によって説明可能である.しかしマケマケのサイズと,氷/岩石の組成比を変えた場合にマケマケが取りうる密度の範囲を考慮すると,マケマケの表面に存在できる山は 10 km を超えないと予想される (Rambaux et al. 2017).このような比較的小さい地形の特徴では,光度曲線には 0.001 等級未満の違いしか生み出さない.
一方で観測では 0.01 等級に達する違いが検出されている.このことから,マケマケには双方の変動の要因が存在する可能性があると推定される.つまり,スペクトルの観測からは検出されなかった小さなアルベドの違いと,対称な形状からの小さなずれである.
マケマケの遅い自転周期は,衛星との潮汐効果によって引き起こされている可能性がある.連星を成している天体は,長い自転周期を持つ傾向がある (Thirouin et al. 2014).
しかし,発見された衛星はマケマケを現在の低速な自転周期に減速するほど十分な質量を持っていない.さらに,Parker et al. (2016) では,マケマケの衛星は Lim et al. (2010) の熱観測に合わせるためには部分的に暗い領域を持っている必要があることに言及.しかしそれは必要な暗い地形の 1% しか占めておらず,残りの領域はマケマケの表面か,もしくは未発見の大きな暗い衛星が持っている必要がある.
arXiv:1904.03679
Hromakina et al. (2019)
Long-term photometric monitoring of the dwarf planet (136472) Makemake
(準惑星マケマケの長期間測光モニタリング)
概要
準惑星マケマケの自転特性についての研究を行った.異なる望遠鏡を用いて,2006 年〜2017 年に測光観測を行った.大部分の観測は一般的な Johnson-Cousins photometric system の BVRI 広帯域フィルターで行われた.
その結果,マケマケは過去に報告されているよりもゆっくりと自転していることを見出した.光度曲線中にあると考えられる非対称性では,二重極大を示す 22.8266 時間の周期が示唆された.
R フィルターでの小さい頂点間の振幅は 0.032 等級であり,マケマケがほぼ球形をしているか,あるいは自転軸の極をこちらに向けているかのどちらかを示唆する結果となった.
また BVRI の色と,R フィルター位相角の傾きを測定し,マケマケの絶対等級を測定値を改訂した.マケマケの絶対等級は 2005 年の発見以来変化していない.
今回の測光データ中には,未発見の衛星の兆候は見られなかった.しかし,その他の大きな衛星が存在する可能性についても議論した.
マケマケの自転
準惑星マケマケは,既知の太陽系外縁天体の中でも最も大きく明るい天体のひとつである.マケマケの測光観測から,自転周期の測定が行われている.
最初の測定は Ortiz et al. (2007) によるものであり,11.24 時間とその 2 倍の 22.48 時間の 2 つの可能性が指摘された.
その後さらに詳細な観測データから,7.77 時間という自転周期が Heinze & de Lahunta (2009) で提案された.最終的に,Thirouin et al. (2010) が 7.7 時間の自転周期とそれに伴うエイリアスの 11.5 時間の周期性を報告し,自転周期としては前者の値がもっともらしいとした.
マケマケの光度曲線の振幅は 0.03 等級と小さいことから,光度曲線から自転周期を決定するのが難しい (Heinze & de Lahunta 2009).その後マケマケに衛星が発見されたことにより,さらなる測光観測が重要となった (Parker et al. 2016).マケマケに発見されたような衛星がマケマケの自転に伴う光度曲線に与える影響は小さいと考えられるが,さらなるハーモニクスが検出される可能性があり,これは衛星の物理的特性や軌道特性を制約するのに用いられる.
議論と結論
マケマケの光度曲線
マケマケの光度曲線中に見られる非対称性は,マケマケの形状が不規則であるか,表面のアルベドの模様が存在する,もしくはその両方が原因として考えられる.例えば準惑星ケレスの場合,振幅は 0.03 等級と小さく,非対称的な二重極大の光度曲線は,主に表面のアルベドの違いによって引き起こされている (Chamberlain et al. 2007,Reddy et al. 2015).過去のマケマケの観測データでは,表面は自転する間にわたって非常に一様であることを示唆する結果が得られている (Perna et al. 2017).
天体の形状による光度曲線の非対称性は,表面の地形の特徴によって説明可能である.しかしマケマケのサイズと,氷/岩石の組成比を変えた場合にマケマケが取りうる密度の範囲を考慮すると,マケマケの表面に存在できる山は 10 km を超えないと予想される (Rambaux et al. 2017).このような比較的小さい地形の特徴では,光度曲線には 0.001 等級未満の違いしか生み出さない.
一方で観測では 0.01 等級に達する違いが検出されている.このことから,マケマケには双方の変動の要因が存在する可能性があると推定される.つまり,スペクトルの観測からは検出されなかった小さなアルベドの違いと,対称な形状からの小さなずれである.
マケマケの衛星
Parker et al. (2016) によるマケマケの衛星の発見報告では,観測データが疎であり,衛星の軌道は確定していない,従って,マケマケと衛星の合計質量も不明である.主星と伴星の既知の等級の違いを用い,また太陽系内の天体の最も低くなりうるアルベド 4% を想定すると,衛星の直径の上限は ~100 km と推定される.このサイズの衛星は,マケマケの合計の輝度をおよそ 0.01 等級下げうる.今回のデータでは光度曲線中には衛星の影響は見られなかった.マケマケの遅い自転周期は,衛星との潮汐効果によって引き起こされている可能性がある.連星を成している天体は,長い自転周期を持つ傾向がある (Thirouin et al. 2014).
しかし,発見された衛星はマケマケを現在の低速な自転周期に減速するほど十分な質量を持っていない.さらに,Parker et al. (2016) では,マケマケの衛星は Lim et al. (2010) の熱観測に合わせるためには部分的に暗い領域を持っている必要があることに言及.しかしそれは必要な暗い地形の 1% しか占めておらず,残りの領域はマケマケの表面か,もしくは未発見の大きな暗い衛星が持っている必要がある.
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論文関連の(ほぼ)個人用メモ。
arXiv:1904.04170
Guilluy et al. (2019)
Exoplanet atmospheres with GIANO II. Detection of molecular absorption in the dayside spectrum of HD 102195b
(GIANO での系外惑星大気 II.HD 102195b の昼側スペクトル中の分子吸収の検出)
現在のところ,大気の特徴付けの解析はトランジット惑星において行われている.しかし一部の明るい恒星に関しては,高分散分光観測を用いて,トランジットしていない惑星での観測も行われている.これは主に地上の 8-10 m 級の望遠鏡を使用した観測である.
ここでの目的は,Telescopio Nazionale Galileo (TNG) の GIANO 分光器を用いてトランジットしていない惑星 HD 102195b の昼側スペクトルの研究を行い,4 m 級望遠鏡を用いた高分散分光でのトランジットしていない惑星での大気の特徴付けの測定と分子の検出の可能性を実証することである.
ここでのデータ解析技術は,観測の最中に惑星からのシグナルは数 km s-1 のオーダーでドップラー偏位するのに対し,地球大気由来の吸収は波長が一定であるという事実を利用したものである.これにより,GIANO で得られたスペクトル中から系外惑星のスペクトルの特徴を保持しつつ,地球由来のスペクトルの混入を効率的に除去することが出来る.系外惑星大気からの放射シグナルが,惑星大気のモデルと GIANO スペクトルの残差との相互相関によって抽出される.
ここでは,4.4σ の水準の統計的有意度で,HD 102195b の大気中から水蒸気の吸収を検出した.また,メタンが存在する兆候も 4.1σ で検出した.これは高分散分光でのメタンの初検出例である.
2 つの分子は合計の有意性 5.3σ で検出され,惑星の視線速度の半振幅は 128 km s-1 であった.これにより,惑星の真の質量は 0.46 木星質量と推定され,また軌道傾斜角の範囲を 72.5° - 84.79° の範囲に制約した.
解析では,惑星大気は温度逆転層を持たないことが示唆され,比較的低い温度の惑星に期待される結果と整合的であった.これは低温の惑星では光の吸収源である TiO/VO をガス相に効率的に保っておけないからである.
さらに,理論モデルの予想との比較はメタンの検出を裏付けるものであり,また過去に報告されている化学モデル予測との矛盾は,検出されたメタンと水の特徴がこの惑星の低い C/O 比と整合的である可能性を示唆している.
最後に,この恒星はこれまでに 8 m 級望遠鏡で研究された非トランジット系よりも K バンドで 1-3 等級暗く,今回の研究はより大きな系外惑星のサンプルで大気の特徴付けを行う第一歩となるものである.
arXiv:1904.04170
Guilluy et al. (2019)
Exoplanet atmospheres with GIANO II. Detection of molecular absorption in the dayside spectrum of HD 102195b
(GIANO での系外惑星大気 II.HD 102195b の昼側スペクトル中の分子吸収の検出)
概要
系外惑星大気の研究は,物理的・化学的・力学的な過程における違いを理解する上で重要である.現在のところ,大気の特徴付けの解析はトランジット惑星において行われている.しかし一部の明るい恒星に関しては,高分散分光観測を用いて,トランジットしていない惑星での観測も行われている.これは主に地上の 8-10 m 級の望遠鏡を使用した観測である.
ここでの目的は,Telescopio Nazionale Galileo (TNG) の GIANO 分光器を用いてトランジットしていない惑星 HD 102195b の昼側スペクトルの研究を行い,4 m 級望遠鏡を用いた高分散分光でのトランジットしていない惑星での大気の特徴付けの測定と分子の検出の可能性を実証することである.
ここでのデータ解析技術は,観測の最中に惑星からのシグナルは数 km s-1 のオーダーでドップラー偏位するのに対し,地球大気由来の吸収は波長が一定であるという事実を利用したものである.これにより,GIANO で得られたスペクトル中から系外惑星のスペクトルの特徴を保持しつつ,地球由来のスペクトルの混入を効率的に除去することが出来る.系外惑星大気からの放射シグナルが,惑星大気のモデルと GIANO スペクトルの残差との相互相関によって抽出される.
ここでは,4.4σ の水準の統計的有意度で,HD 102195b の大気中から水蒸気の吸収を検出した.また,メタンが存在する兆候も 4.1σ で検出した.これは高分散分光でのメタンの初検出例である.
2 つの分子は合計の有意性 5.3σ で検出され,惑星の視線速度の半振幅は 128 km s-1 であった.これにより,惑星の真の質量は 0.46 木星質量と推定され,また軌道傾斜角の範囲を 72.5° - 84.79° の範囲に制約した.
解析では,惑星大気は温度逆転層を持たないことが示唆され,比較的低い温度の惑星に期待される結果と整合的であった.これは低温の惑星では光の吸収源である TiO/VO をガス相に効率的に保っておけないからである.
さらに,理論モデルの予想との比較はメタンの検出を裏付けるものであり,また過去に報告されている化学モデル予測との矛盾は,検出されたメタンと水の特徴がこの惑星の低い C/O 比と整合的である可能性を示唆している.
最後に,この恒星はこれまでに 8 m 級望遠鏡で研究された非トランジット系よりも K バンドで 1-3 等級暗く,今回の研究はより大きな系外惑星のサンプルで大気の特徴付けを行う第一歩となるものである.
論文関連の(ほぼ)個人用メモ。
arXiv:1904.02733
Dorval et al. (2019)
MASCARA-4 b/bRing-1b - A retrograde hot Jupiter around the bright A3V star HD 85628
(MASCARA-4 b/bRing-1b - 明るい A3V 星 HD 85628 まわりの逆行ホットジュピター)
ここでは,MASCARA と bRing を組み合わせた南天でのトランジット惑星候補の特徴付けについて報告する.
惑星が発見されたのは HD 85628 のの周囲であり,この恒星はスペクトル型が A3V,等級が V = 8.2,距離が 172 pc で,フォローアップ観測で惑星を持っていることが確認された.
この惑星候補は,元々は MASCARA と bRing 双方のジョイント観測で得られたデータで検出されたものである.その後さらに 0.7 m CHAT での測光観測,ESO 1.0 m 望遠鏡の FIDEOS での視線速度測定が実施された.さらに SMARTS 1.0 m 望遠鏡での CHIRON で,トランジット最中の高分散スペクトルも取得し,惑星候補のドップラーシャドーの探査も行われた.その結果,ホットジュピターの存在を確認し,MASCARA-4b および bRing-1b と命名した.
MASCARA- b/bRing-1b は軌道周期が 2.824 日,1.53 木星半径,3.1 木星質量と惑星の範囲のパラメータを持つ.
CHAT の観測では,部分的なトランジットが検出された,これにより,トランジットが暗い背景星の周りで発生している可能性を低減した.
CHIRON のデータでは惑星のトランジットによる明確なドップラーシャドーが検出され,トランジットする天体は逆行軌道を持ち,247.5° 傾斜した軌道面であることを示唆した.
惑星の軌道長半径は 0.047 AU で,アルベドをゼロとした場合の平衡温度は 2100 Kである.
さらに,主星はこれまでに報告されていなかった伴星を持つことが判明した.これは Gaia DR2 でのデータの解析から明らかになったものである.伴星は主星と固有運動を共有しており,4.3” の角距離で,射影距離 ~740 AU に相当する距離にある.絶対等級からはスペクトル型 K/M の主系列星と推定される.
MASCARA-4b/bRing-1b は,逆行軌道でトランジットするホットジュピターを持つ系としては最も明るい主星を持つ.極軌道や逆行軌道を持つ惑星は,早期型星の周りではより一般的であるというこれまでの傾向を補強する結果となった.
見かけの光度が大きいことと周期が短いことから,将来の大気の特徴付けに特に適した観測対象である.
距離:171.54 pc
等級:V = 8.19
有効温度:7800 K
光度:12.23 太陽光度
金属量:[Fe/H] ~ 0
年齢:~8 億歳
質量:1.75 太陽質量
半径:1.92 太陽半径
質量:3.1 木星質量
平衡温度:2100 K
軌道周期:2.82406 日
軌道長半径:0.047 AU
射影した軌道傾斜角:247.5°
これまでに,MASCARA-1b (Talens et al. 2018),MASCARA-2b (Talens et al. 2018),MASCARA-3b (Hjorth et al. 2019) を発見している.
MASCARA のプロジェクトは,後述の bRing network (Stuik et al. 2017) と協働している.
bRing サーベイは,V = 4-8 の明るい恒星が観測対象である.がか座ベータ星の系外惑星とデブリ円盤の観測や,その他の明るい恒星周りでの系外惑星の探査を目的としている.
名前の通り,2017-2018 年にがか座ベータ星b のヒル球が中心星の前をトランジットするイベントを観測するために設計されたサーベイである.望遠鏡は 2 つあり,1 つは南アフリカのケープタウンのサザーランド・南アフリカ天文台に設置されている.こちらの建設はライデン大学が担当している.もう 1 つはオーストラリア・ニューサウスウェールズのサイディング・スプリング天文台にあり,こちらはロチェスター大学が建設を担当した.
arXiv:1904.02733
Dorval et al. (2019)
MASCARA-4 b/bRing-1b - A retrograde hot Jupiter around the bright A3V star HD 85628
(MASCARA-4 b/bRing-1b - 明るい A3V 星 HD 85628 まわりの逆行ホットジュピター)
概要
MASCARA と bRing は,空の局所的な領域の明るい恒星の変動をモニターするための,広角レンズを用いた CCD による複数の地上観測装置である.MASCARA は既に北天で複数の惑星を発見しており,トランジットするホットジュピター系の中で最も明るいもののひとつを発見している.ここでは,MASCARA と bRing を組み合わせた南天でのトランジット惑星候補の特徴付けについて報告する.
惑星が発見されたのは HD 85628 のの周囲であり,この恒星はスペクトル型が A3V,等級が V = 8.2,距離が 172 pc で,フォローアップ観測で惑星を持っていることが確認された.
この惑星候補は,元々は MASCARA と bRing 双方のジョイント観測で得られたデータで検出されたものである.その後さらに 0.7 m CHAT での測光観測,ESO 1.0 m 望遠鏡の FIDEOS での視線速度測定が実施された.さらに SMARTS 1.0 m 望遠鏡での CHIRON で,トランジット最中の高分散スペクトルも取得し,惑星候補のドップラーシャドーの探査も行われた.その結果,ホットジュピターの存在を確認し,MASCARA-4b および bRing-1b と命名した.
MASCARA- b/bRing-1b は軌道周期が 2.824 日,1.53 木星半径,3.1 木星質量と惑星の範囲のパラメータを持つ.
CHAT の観測では,部分的なトランジットが検出された,これにより,トランジットが暗い背景星の周りで発生している可能性を低減した.
CHIRON のデータでは惑星のトランジットによる明確なドップラーシャドーが検出され,トランジットする天体は逆行軌道を持ち,247.5° 傾斜した軌道面であることを示唆した.
惑星の軌道長半径は 0.047 AU で,アルベドをゼロとした場合の平衡温度は 2100 Kである.
さらに,主星はこれまでに報告されていなかった伴星を持つことが判明した.これは Gaia DR2 でのデータの解析から明らかになったものである.伴星は主星と固有運動を共有しており,4.3” の角距離で,射影距離 ~740 AU に相当する距離にある.絶対等級からはスペクトル型 K/M の主系列星と推定される.
MASCARA-4b/bRing-1b は,逆行軌道でトランジットするホットジュピターを持つ系としては最も明るい主星を持つ.極軌道や逆行軌道を持つ惑星は,早期型星の周りではより一般的であるというこれまでの傾向を補強する結果となった.
見かけの光度が大きいことと周期が短いことから,将来の大気の特徴付けに特に適した観測対象である.
パラメータ
HD 85628 A
スペクトル型:A3V距離:171.54 pc
等級:V = 8.19
有効温度:7800 K
光度:12.23 太陽光度
金属量:[Fe/H] ~ 0
年齢:~8 億歳
質量:1.75 太陽質量
半径:1.92 太陽半径
MASCARA- b/bRing-1b
半径:1.53 木星半径質量:3.1 木星質量
平衡温度:2100 K
軌道周期:2.82406 日
軌道長半径:0.047 AU
射影した軌道傾斜角:247.5°
各観測プロジェクトについて
MASCARA
MASCARA は The Multi-Site All-Sky CAmeRA の略称である (Snellen et al. 2012,Talens et al. 2017).明るい恒星をトランジットするホットジュピターの発見を目的としたサーベイプログラムである.これまでに,MASCARA-1b (Talens et al. 2018),MASCARA-2b (Talens et al. 2018),MASCARA-3b (Hjorth et al. 2019) を発見している.
MASCARA のプロジェクトは,後述の bRing network (Stuik et al. 2017) と協働している.
bRing
bRing (Beta Pic b Ring) プロジェクトの主要な目的は,がか座ベータ星b のヒル球のトランジットを研究することである (Mellon et al. 2019,Kalas et al. 2019).また bRing は系外惑星のトランジット研究 (この研究) と,変光星の特徴付けにも用いられている.bRing サーベイは,V = 4-8 の明るい恒星が観測対象である.がか座ベータ星の系外惑星とデブリ円盤の観測や,その他の明るい恒星周りでの系外惑星の探査を目的としている.
名前の通り,2017-2018 年にがか座ベータ星b のヒル球が中心星の前をトランジットするイベントを観測するために設計されたサーベイである.望遠鏡は 2 つあり,1 つは南アフリカのケープタウンのサザーランド・南アフリカ天文台に設置されている.こちらの建設はライデン大学が担当している.もう 1 つはオーストラリア・ニューサウスウェールズのサイディング・スプリング天文台にあり,こちらはロチェスター大学が建設を担当した.
論文関連の(ほぼ)個人用メモ。
arXiv:1904.02218
Katz et al. (2019)
Evidence against non-gravitational acceleration of 1I/2017 U1 `Oumuamua
(1I/2017 U1 オウムアムアの非重力的加速への反証)
Meech et al. (2017) では,オウムアムアからのダストの流出の上限値は 1.7 × 10-3 kg/s と報告しており,彗星というよりは小惑星状の天体であるとした.しかし Micheli et al. (2018) では,太陽から逆二乗則の依存性での非重力的な加速度が存在している可能性が報告された.これは太陽からの放射加熱の影響下でのオウムアムアからの脱ガスの影響と考えられた.そこでは,脱ガス率は 3.6 kg/s と示唆され,アウトフロー中のガスに対するダストの割合は 0.5 × 10-3 未満と推定された.
Micheli et al. (2018) で主張された脱ガス率は,オウムアムアはいかなる既知の太陽系の彗星天体とも異なり,異常にきれいな氷でできていることを示唆している.このことが,報告された非重力的な加速の存在に対する疑義の理由である.
Micheli et al. (2018) では,オウムアムアからのガス流は比較的大きな粒子を含んでおり,これは光の散乱が非効率的であるため,ガスに対する固体の割合を太陽系の彗星天体と同程度にする一方で,彗星のようなコマがオウムアムアには見られないという状態を説明できると示唆した.
これを経験的に否定することは出来ないが,現象論的な違いはガスに対する微細なダストの比率にある.これらのより大きな粒子が存在した場合でも,オウムアムアでのガスに対する微細な粒子の割合は依然として太陽系の天体と異なる.このような大きな粒子の可能性は赤外線観測で制約が与えられている (Trilling et al. 2018).
さらなる疑義の理由は Micheli et al. (2018) の図 2 での,軌道のフィット結果での分散についてである.Micheli et al. (2018) では 6 個のパラメータ (重力のみ) で観測結果の軌道フィッティングが行われている.7 つめのパラメータとして非重力的な力の強度を追加することで,この分散は少なくともファクター 3 小さくなる.非重力的な力が正しかったとしてもこの結果は予想されない.なぜならこれらは滑らかに変化する時間の関数だからである.
オウムアムアの柱密度が 0.1-1 g/cm2 程度であれば,非重力的な加速が説明可能である.
Bialy & Loeb (2018) はオウムアムアが薄い人工的な構造である可能性を示唆したが,示唆された柱密度は光学的なソーラーセイルより一桁大きいものである.
また,Moro-Martin (2019) ではオウムアムアが空隙の多いフラクタル構造で密度が 10-5 g/cm3 であれば説明できるとした,しかしこのような天体は非常に壊れやすく,太陽系で観測されている微視的なフラクタル構造の集合体よりも低密度である.
ここでの議論は Rafikov (2018) のものとは独立しているが,同じ結論に到達した.オウムアムアは Micheli et al. (2018) で報告されたほどの大きな非重力的な力を持っていないだろうと結論付ける.
arXiv:1904.02218
Katz et al. (2019)
Evidence against non-gravitational acceleration of 1I/2017 U1 `Oumuamua
(1I/2017 U1 オウムアムアの非重力的加速への反証)
概要
Micheli et al. (2018) では,オウムアムアの軌道の 7 個のパラメータでのフィットから,太陽とは反対方向への非重力的加速の存在が指摘され,これは彗星のような脱ガスに原因があるという可能性が示唆されている.ここで示唆された,ガスに対するダストの比率は,太陽系の既知の彗星よりも 100 倍大きいものである.軌道のフィットに非重力項を含めることで,ほぼ同時期の座標の残差が潰れるという報告は理解しにくいものである.Meech et al. (2017) では,オウムアムアからのダストの流出の上限値は 1.7 × 10-3 kg/s と報告しており,彗星というよりは小惑星状の天体であるとした.しかし Micheli et al. (2018) では,太陽から逆二乗則の依存性での非重力的な加速度が存在している可能性が報告された.これは太陽からの放射加熱の影響下でのオウムアムアからの脱ガスの影響と考えられた.そこでは,脱ガス率は 3.6 kg/s と示唆され,アウトフロー中のガスに対するダストの割合は 0.5 × 10-3 未満と推定された.
Micheli et al. (2018) で主張された脱ガス率は,オウムアムアはいかなる既知の太陽系の彗星天体とも異なり,異常にきれいな氷でできていることを示唆している.このことが,報告された非重力的な加速の存在に対する疑義の理由である.
Micheli et al. (2018) では,オウムアムアからのガス流は比較的大きな粒子を含んでおり,これは光の散乱が非効率的であるため,ガスに対する固体の割合を太陽系の彗星天体と同程度にする一方で,彗星のようなコマがオウムアムアには見られないという状態を説明できると示唆した.
これを経験的に否定することは出来ないが,現象論的な違いはガスに対する微細なダストの比率にある.これらのより大きな粒子が存在した場合でも,オウムアムアでのガスに対する微細な粒子の割合は依然として太陽系の天体と異なる.このような大きな粒子の可能性は赤外線観測で制約が与えられている (Trilling et al. 2018).
さらなる疑義の理由は Micheli et al. (2018) の図 2 での,軌道のフィット結果での分散についてである.Micheli et al. (2018) では 6 個のパラメータ (重力のみ) で観測結果の軌道フィッティングが行われている.7 つめのパラメータとして非重力的な力の強度を追加することで,この分散は少なくともファクター 3 小さくなる.非重力的な力が正しかったとしてもこの結果は予想されない.なぜならこれらは滑らかに変化する時間の関数だからである.
オウムアムアの柱密度が 0.1-1 g/cm2 程度であれば,非重力的な加速が説明可能である.
Bialy & Loeb (2018) はオウムアムアが薄い人工的な構造である可能性を示唆したが,示唆された柱密度は光学的なソーラーセイルより一桁大きいものである.
また,Moro-Martin (2019) ではオウムアムアが空隙の多いフラクタル構造で密度が 10-5 g/cm3 であれば説明できるとした,しかしこのような天体は非常に壊れやすく,太陽系で観測されている微視的なフラクタル構造の集合体よりも低密度である.
ここでの議論は Rafikov (2018) のものとは独立しているが,同じ結論に到達した.オウムアムアは Micheli et al. (2018) で報告されたほどの大きな非重力的な力を持っていないだろうと結論付ける.
論文関連の(ほぼ)個人用メモ。
arXiv:1904.01591
Benatti et al. (2019)
A possibly inflated planet around the bright, young star DS Tuc A
(明るい若い恒星きょしちょう座DA星A の周囲にある可能性のある膨張した惑星)
若い恒星周りの統計的に大量の惑星のサンプルがあれば惑星形成と進化の初期段階の研究を行うことが出来るが,これまでの観測ではそのような惑星は少数しか知られていない.この観点から,NASA の TESS は現在全天のおよそ 85% の範囲で短周期のトランジット惑星の探査を行っており,この研究に重要な寄与をすることが期待されている.
TESS の最初の一ヶ月の観測で,若い恒星の集まりであるきょしちょう座・ とけい座アソシエーション (Tuc-Hor association,~4000 万歳) のメンバーの周りに,8.14 日周期の惑星候補天体を発見した.これは DS Tuc (きょしちょう座DS星) の連星系の主星である G6V 星の周りに発見されたものである.惑星であると確認されれば,視線速度や大気の特徴付けに適した若い恒星の周りの初めてのトランジット惑星ということになる.
ここでは,この候補天体が惑星であることを実証し,軌道と物理パラメータを決定することを目的とした解析を行った.TESS の光度曲線の独立した処理を改善した恒星のパラメータで行い,また連星の伴星から引き起こされる影響も考慮した.
高精度の視線速度観測のアーカイブデータの解析から,惑星質量に 0.94 木星質量という上限値を与えた.また補償光学を用いた撮像観測から,軌道長半径が 40 au を超える外側の伴星の存在を排除した.
結果として,きょしちょう座DS星A の周りに若い巨大惑星を確認した,この惑星は 0.5 木星半径であり,理論的な質量は 20 地球質量より軽く,おそらくは膨張した半径を持つ.
スペクトル型:G6V
有効温度:5542 K
金属量:[Fe/H] = -0.08
自転周期:2.8515 日
質量:0.959 太陽質量
半径:0.872 太陽半径
年齢:4000 万歳
半径:0.50 木星半径
スペクトル型:K3Ve
有効温度:4653 K
質量:0.782 太陽質量
半径:0.769 太陽半径
arXiv:1904.01591
Benatti et al. (2019)
A possibly inflated planet around the bright, young star DS Tuc A
(明るい若い恒星きょしちょう座DA星A の周囲にある可能性のある膨張した惑星)
概要
系外惑星の研究の主要なトピックの一つは,観測されている惑星系の構造の多様性の起源である.若い恒星周りの統計的に大量の惑星のサンプルがあれば惑星形成と進化の初期段階の研究を行うことが出来るが,これまでの観測ではそのような惑星は少数しか知られていない.この観点から,NASA の TESS は現在全天のおよそ 85% の範囲で短周期のトランジット惑星の探査を行っており,この研究に重要な寄与をすることが期待されている.
TESS の最初の一ヶ月の観測で,若い恒星の集まりであるきょしちょう座・ とけい座アソシエーション (Tuc-Hor association,~4000 万歳) のメンバーの周りに,8.14 日周期の惑星候補天体を発見した.これは DS Tuc (きょしちょう座DS星) の連星系の主星である G6V 星の周りに発見されたものである.惑星であると確認されれば,視線速度や大気の特徴付けに適した若い恒星の周りの初めてのトランジット惑星ということになる.
ここでは,この候補天体が惑星であることを実証し,軌道と物理パラメータを決定することを目的とした解析を行った.TESS の光度曲線の独立した処理を改善した恒星のパラメータで行い,また連星の伴星から引き起こされる影響も考慮した.
高精度の視線速度観測のアーカイブデータの解析から,惑星質量に 0.94 木星質量という上限値を与えた.また補償光学を用いた撮像観測から,軌道長半径が 40 au を超える外側の伴星の存在を排除した.
結果として,きょしちょう座DS星A の周りに若い巨大惑星を確認した,この惑星は 0.5 木星半径であり,理論的な質量は 20 地球質量より軽く,おそらくは膨張した半径を持つ.
パラメータ
きょしちょう座DS星A
等級:V = 8.469スペクトル型:G6V
有効温度:5542 K
金属量:[Fe/H] = -0.08
自転周期:2.8515 日
質量:0.959 太陽質量
半径:0.872 太陽半径
年齢:4000 万歳
きょしちょう座DS星Ab (DS Tuc b)
軌道周期:8.1387 日半径:0.50 木星半径
きょしちょう座DS星B
等級:V = 9.84スペクトル型:K3Ve
有効温度:4653 K
質量:0.782 太陽質量
半径:0.769 太陽半径
天文・宇宙物理関連メモ vol.241 Parker et al. (2016) 準惑星マケマケに衛星を発見