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論文関連の(ほぼ)個人用メモ。



arXiv:1903.05623
Gandolfi et al. (2019)
The transiting system HD 15337: a pair of nearly equal-mass sub-Neptunes on opposite sides of the radius gap
(トランジット系 HD 15337:半径ギャップの反対側にあるほぼ等質量のサブネプチューンのペア)

概要

HD 15337 (TOI-402, TIC 120896927) をトランジットする 2 つの小さい惑星の発見について報告する.

中心星は明るい (V = 9) K1V 星であり,Transiting Exoplanet Survey Satellite (TESS) の Sector 3, 4 で観測された.TESS の測光観測結果を過去の HARPS で取得されたスペクトルと合わせ,トランジットシグナルが惑星由来であることを確認し,2 つのトランジット惑星の質量を導出した.

HD 15337b は軌道周期が 4.8 日,7.63 地球質量,1.585 地球半径であり,発見数が増えている岩石の地球型組成を持つことが知られている惑星の一員である.
HD 15337c は軌道周期が 17.2 日,7.37 地球質量,2.309 地球半径であり,厚い大気エンベロープに覆われているであろうことを示唆している.

2 つの惑星は実質的には同じ質量を持ち,発見されている系外惑星の半径ギャップ (発見数が少ないパラメータ) のそれぞれ反対側に位置しているため,惑星形成と進化の理論の検証を行う研究対象として優れている.

HD 15337c が水素主体のエンベロープを持つと仮定し,最近開発されたベイズフレームワークでの大気進化アルゴリズムを採用して,中心星の高エネルギー放射の歴史を推定した.その結果 1 億 5000 万年の時点で現在の太陽の 1.5 倍と 93 倍の間のエネルギー放射をしていたと結論付けた.

パラメータ

HD 15337
別名:TOI-402,TIC 120896927
等級:V = 9.184
質量:0.90 太陽質量
半径:0.856 太陽半径
有効温度:5125 K
金属量:[Fe/H] = 0.15
年齢:51 億年
HD 15337b
軌道周期:4.756216 日
質量:7.63 地球質量
半径:1.585 地球半径
密度:10.5 g cm-3
軌道長半径:0.0535 AU
平衡温度:989 K (アルベドゼロ,一様な熱の再分配を仮定した場合)
HD 15337c
軌道周期:17.17753 日
質量:7.37 地球質量
半径:2.309 地球半径
密度:3.3 g cm-3
軌道長半径:0.1261 AU
平衡温度:644 K (アルベドゼロ,一様な熱の再分配を仮定した場合)







arXiv:1903.05419
Dumusque et al. (2019)
A hot rocky and a warm puffy super-Earth orbiting TOI-402 (HD 15337)
(TOI-402 (HD 15337) を公転する高温の岩石スーパーアースと温暖なパフィースーパーアース)

概要

The Transiting Exoplanet Survey Satellite (TESS) は,Sector 3, 4 の期間中に TOI-402 (TIC-120896927) を観測した.この恒星は V = 9.1 の明るい K1 矮星であり,HD 15337 としても知られてりう.

この恒星に,2 つのトランジット惑星が発見された,それぞれ軌道周期 4.76 日で 1.90 地球半径,17.18 日で 2.21 地球半径である.この恒星は HARPS 分光器での惑星探査のための視線速度の一部で観測されており,85 回の詳細な視線速度測定が TESS の打ち上げの前から,14 年間にわたって行われてきた.

ここでは HARPS の視線速度の測定結果を解析し,TESS で検出された 2 つのトランジットシグナルが惑星由来のものであることを確認した.

この恒星は太陽に似た恒星活動水準であり,磁気サイクルによるシグナルが惑星と似た強度で存在しており,視線速度測定は恒星活動に影響を受ける.HARPS の視線速度中に見られるこの恒星活動のモデル化から,TOI-402.01 と 02 が惑星由来のトランジットシグナルであることを確認できた.また,視線速度のデータから 2 つの惑星の軌道要素の精密な推定を行った.

TOI-402.01 は軌道周期 4.75642 日,半径が 1.70 地球半径であり,この半径決定は 3.6% の精度である.
TOI-402.02 は軌道周期 17.1784 日,半径が 2.52 地球半径であり,こちらは 4.2% の精度である.

HARPS の視線速度測定の解析から,これらの惑星はスーパーアースであり,それぞれ 7.20 地球質量と 8.79 地球質量 (11.3%,19.0% の精度) で,2σ の信頼度で 0 と整合的な小さい離心率を持つ.

この 2 つの惑星は同程度の質量を持っているが半径は非常に異なり,半径ギャップの反対側に位置する.地球への輻射量と比較すると,.01 は 160 倍である一方で .02 は 29 倍に過ぎず,この半径の違いは光蒸発に起因する可能性がある.

この 2 惑星は同じ惑星系にあり,従って同じ輻射環境であったと考えられる.そのため,光蒸発による半径ギャップを超えた比較系外惑星の研究を行うのに非常に重要な対象であり,それにより半径ギャップの形成を担う機構を制限できるだろう.

パラメータ

TOI-402 (HD 15337)
距離:44.86 pc
等級:V = 9.09
スペクトル型:K1V
有効温度:5131 K
金属量:[Fe/H] = 0.03
質量:0.851 太陽質量
半径:0.839 太陽半径
光度:0.472 太陽光度
年齢:75 億歳
自転周期:36.55 日
TOI-402.01 (HD 15337b)
軌道周期:4.75642 日
半径:1.699 地球半径
軌道長半径:0.05254 AU
平衡温度:1006 K
質量:7.20 地球質量
軌道離心率:0.17
TOI-402.02 (HD 15337c)
軌道周期:17.1784 日
半径:2.522 地球半径
軌道長半径:0.1235 AU
平衡温度:656.1 K
質量:8.79 地球質量
軌道離心率:0.19

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論文関連の(ほぼ)個人用メモ。



arXiv:1903.04723
Seligman et al. (2019)
On the Anomalous Acceleration of 1I/2017 U1 `Oumuamua
(1I/2017 U1 オウムアムアの異常な加速について)

概要

恒星間天体オウムアムアで観測されている 8 時間という測光周期と,位置天文学的に測定された非重力的な加速 \(A_{\rm ngsim 2.5\times 10^{-4}\,{\rm cm\,s^{-2}}\) は,オウムアムアからの揮発性物質のノズル状の噴出と,その天体表面での位置の太陽直下点を追うような移動によって説明できることを示す.

オウムアムアが a × b × c の細長い楕円体の形状であると仮定すると,このモデルは振り子のような自転を再現し,長軸は \(a\sim 5 A_{\rm ng}P^{2}/4\pi^{2}\sim 260 \, {\rm m}\) であることを示唆する.これはアルベドを 0.1 と仮定した明るさの測定からの,独立したオウムアムアのサイズ推定と一致する.

光線追跡法を用いて,太陽直下のトルクと太陽-地球-オウムアムアの配置の時間変化する幾何学的配置の両方の物理的に整合的な楕円体の光度曲線を生成.このモデルで合成した光度曲線は,測光周期の著しい永年変化を回避しつつ,観測と整合的なカオス的なタンブリングと,照らされる断面積の変化による変動を示す.もしこのモデルが正しい場合,オウムアムアは内部太陽系での近接遭遇の ~ 100 日の期間中に全質量の 10% 程度を失ったと考えられ,また組成は氷が主体で [C/O] ≲ 0.003 と非常に低い.

オウムアムアの挙動のこのモデルでの解釈は,微惑星円盤の外側領域から海王星程度の質量の惑星との遭遇によって放出されたか,系外オールトの雲から放出されたという仮説 (Jewitt et al. 2017) と整合的である.

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論文関連の(ほぼ)個人用メモ。



arXiv:1903.04808
Perger et al. (2019)
Gliese 49: Activity evolution and detection of a super-Earth
(グリーゼ49:活動進化とスーパーアースの検出)

概要

低質量星の周りの小さい惑星は,しばしばその中心星の周りの温暖な領域に相当する範囲の軌道周期を持つため,惑星探査の主要な対象である.一方で,黒点や白斑等の表面現象は視線速度や観測的な活動トレーサーに周期的なシグナルを形成するため,惑星によるシグナルを模擬したりあるいは隠したりする.

ここでは,惑星の存在に対応するドップラー信号を検出し,それらの最も可能性が高い軌道配置を決定し,そして恒星活動とそれが異なるデータセットに対して与える影響について理解することを目指す.

M1.5V 型の恒星 グリーゼ 49 (Gl 49,BD+61 195) の 22 年間の視線速度の観測データを解析した.これらの観測は,HARPS-N と CARMENES を使用したものである.

観測されたスペクトルから恒星の活動指標を計算し,恒星の活動の変動が視線速度のデータセットにどう痕跡を残すかを調査した.また,得られた視線速度シグナルの性質を調査し,マルコフ連鎖モンテカルロ法を用いた尤度関数の最大化を用いてベストフィットを決定した.

その結果,最小質量が 5.6 地球質量のスーパーアース グリーゼ49b が検出された.
この惑星は 13.85 日周期で公転しており,軌道長半径は 0.090 au である.また平衡温度は 350 K と計算される.この惑星がトランジットを起こす確率は 2.0% である.

黒点が占める中心星からの異なるデータセットへの寄与は複雑であり,恒星の自転 18.86 日からのシグナルも含み,活動現象の進化タイムスケールは 40 - 80 日 である,また,少なくとも 4 年周期の長周期の変動も検出された.

パラメータ

グリーゼ49
距離:9.856 pc
質量:0.515 太陽質量
半径:0.511 太陽半径
有効温度:3805 K
光度:0.04938 太陽光度
金属量:[Fe/H] = 0.13
等級:V = 9.56
自転周期:18.4 or 19.9 日

ハビタブルゾーンの範囲は 0.18 - 0.49 au (軌道周期 39 - 172 日に対応)
グリーゼ49b
軌道周期:13.8508 日
軌道離心率:0.363
最小質量:5.63 地球質量
軌道長半径:0.0905 au

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arXiv:1903.04817
Szabó & Kálmán (2019)
The sub-Jovian desert of exoplanets: parameter dependent boundaries and implications on planet formation
(系外惑星のサブジュピター砂漠:パラメータ依存する境界と惑星形成への示唆)

概要

系外惑星の軌道周期-質量分布と軌道周期-半径分布には,惑星の存在個数が少ない「砂漠」領域が存在することが知られている.非常に高温な (軌道周期 3 日未満) スーパーアースとホットジュピターの存在がよく知られているのとは異なり,1-2 日程度の短周期軌道にあるスーパーアースとサブジュピターの間の惑星は知られていない.

ここでは,この砂漠領域の軌道周期の境界は,恒星のパラメータ (重要な順に,有効温度,金属量,表面重力) に依存することを示す.恒星からの入射量には決定的な依存性があり,また恒星質量への依存性は恒星の有効温度が 5600 K 未満のまわりの惑星にのみ働く.

中心星に最も近接した軌道での非常に膨張した惑星には著しい欠乏があることも発見した.

なお,惑星に現在働いている潮汐力,惑星の表面重力,あるいは現在のロッシュローブの充填率への明確な依存性は見られなかった.これらの分布は,砂漠の形成には光蒸発が主要な役割を果たすというモデルと整合的である.

解析手法

砂漠領域の境界に近い惑星の存在頻度について調査を行った.
軌道周期,惑星半径と質量,中心星の有効温度が分かっている系外惑星に絞った結果,607 個の惑星を抽出した.このうち 550 個の惑星では中心星の金属量 [M/H] が測定されており,406 個は恒星質量と軌道長半径が分かっている.

これらのサンプルにおいて,恒星の有効温度,恒星質量,恒星の \(\log g\),金属量 [M/H],惑星の平衡温度,惑星の平均密度の木星に対する比,ロッシュローブの充填率,現在の惑星への潮汐力をスケールする因子 \(M_{*}/a_{\rm p}^{3}\) の比較を行った.サンプルをおおむねパラメータの中央値付近で分け,惑星の周期分布を低い値・高い値と比較した.定量的に評価するため,コルモゴロフ・スミルノフ検定 (K-S 検定) を行って 2 つのサンプルが異なる分布かどうかを判定した.

結果

恒星の温度への依存性

砂漠の境界は,恒星の有効温度に最も強く依存する.K-S 検定の値は p=0.0002 である.各分布の中央値で,中心星の温度が低い方/高い方で軌道周期の値は 9 日と 21 日である.

有効温度が 5600 K より低温な恒星を公転する惑星の 60% 以上は 10 日よりも短い周期を持つが,5600 K 以上では 10% のみであった.この影響は砂漠の境界のみに位置しており,より小さい惑星では周期分布に違いは見られなかった (p=0.6).

短周期の惑星は発見しやすいため,10 日の軌道周期未満の惑星が欠乏していることに関しては,sub-Jupiter desert の境界の周期に恒星の有効温度が影響を与えている以外の説明は考えづらい.

金属量への依存性

2 番目に重要な依存性は中心星の金属量である.金属量 [M/H] = 0.05 の中央値で 2 つのグループに分割することが出来る.

高金属量のグループでは,75% の惑星が軌道周期 10-11 日未満であったが,低金属量のグループでは 20% 未満であった.しかし,より小さい惑星ではこのような相関は見られなかった (p=0.3).
この相関は Dong et al. (2017) と Petigura et al. (2018) でも発見されており,金属量依存性を持つ惑星の光蒸発 (Owen & Lai 2018) とも整合的である.

恒星の表面重力への依存性

恒星の表面重力 \(\log g\) への依存性も見られる.高い \(\log g\) の恒星を公転している惑星の場合は,砂漠の深い領域に存在できる.

最も大きな違いは,軌道周期 10 日程度のところに見られる.10 日より短い軌道周期を持つ惑星の割合は,低い \(\log g\) のグループでは 10% であったのに対し,高い \(\log g\) では 60% であった.

しかし,組み合わせたパラメータ依存性は幾分か縮退している.
砂漠の深い領域に存在できる惑星 (つまり最小軌道周期境界が低い) は,中心星が低温で高い \(\log g\) を持つ.しかし主系列では,低い有効温度を持つ恒星は高い \(\log g\) を持つ性質がある (Gazzano et al. 2013など).そのため有効温度と \(\log g\) へのパラメータ依存性はお互いを説明可能である.

周期の境界の \(\log g\) への依存性が温度への依存性の結果であるか,あるいは元々存在している相関を強化する力学的な過程と関連しているかどうかは不明である.

中心星質量への依存性

周期の境界の恒星質量への依存性は p=0.11 である.

より重い恒星周りの惑星の最小周期は小さくなり,砂漠領域の深いところまで入り込むことができることを意味する.
この発見は有効温度への依存性の結果と矛盾するように見える.そのためサンプルを有効温度 5600 K で分割した.低温の恒星の場合,恒星質量は選択性があると認識される (p=0.07).しかし 5600 K より高温の恒星では,この依存性は完全に消失する.

そのため,恒星質量は砂漠の境界に対して恒星の有効温度が 5600 K 未満の場合にのみ影響を及ぼすと結論付けた.

惑星パラメータへの依存性

惑星のパラメータ,および現在の軌道に影響を及ぼす惑星と恒星の相互作用を記述するパラメータへの,周期の境界の明確な依存性は発見できなかった.ここでは,ロッシュローブのサイズ,恒星の表面への実際の潮汐力 (\(M_{*}r_{\rm p}/a^{3}\) で記述) を調査した.

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論文関連の(ほぼ)個人用メモ。



arXiv:1903.02576
Oklopčić (2019)
Helium Absorption at 1083 nm from Extended Exoplanet Atmospheres: Dependence on Stellar Radiation
(広がった系外惑星大気による 1083 nm でのヘリウム吸収:恒星放射への依存性)

概要

ヘリウムの 1083 nm の強い吸収特徴は,最近いくつかの近接系外惑星の透過スペクトル中に検出されている.この吸収は,励起された準安定な 23S 状態の中性ヘリウムに起因するものである.

この準安定な励起状態にあるヘリウム原子の数は,恒星のスペクトルの形状と,惑星大気に入射する輻射場の強度によって決まる.どの様な種類の恒星環境が,広がった惑星大気の中で準安定な状態のヘリウムを生み出すのに最も適しているかを調査した.

その結果,晩期型星,特に K 型星に近接した軌道で公転している惑星が,この波長でのトランジット吸収シグナルの最も確実な候補であることが示唆された.この結果は観測からも支持され,ヘリウムの検出が現在報告されている 4 つの全ての系外惑星は K 型星のまわりを公転している.

一般に,ヘリウム原子を励起するためにはより小さい軌道間隔であることが好ましく,ヘリウムの基底状態を電離するような高い水準の極端紫外線フラックスがあり,準安定状態にあるヘリウムを電離するような中間紫外線フラックスの水準が低いほうが好ましい.

大気散逸の観測

紫外線波長での観測

これまでの系外惑星からの大気散逸の観測は,主に紫外線波長域で行われてきた.特に中性水素の Lyα 波長で行われており,ホットジュピターの HD 209458b と HD 189733b,ウォームネプチューン GJ 436b と GJ 3470b で広がった水素エンベロープが検出されている.

しかし観測的な困難さがあるため,紫外線波長で観測された散逸する系外惑星大気の検出例は少数に留まる.

近赤外線波長での観測

最近の理論的研究では,ヘリウムの 1083 nm 波長で大気散逸を観測可能であることが指摘されている (Oklopˇci ́c & Hirata 2018).

系外惑星大気中でのヘリウム吸収の初めての証拠は,ハッブル宇宙望遠鏡の Wide Field Camera 3 (WFC3) を用いて,WASP-107b で報告された (Spale et al. 2018).この観測ではヘリウム 1083 nm を含むチャンネルで超過吸収が検出されている.

その後,地上観測でスペクトル分解されたヘリウムの吸収が検出されている.HAT-P-11b (Allart et al. 2018),WASP-69b (Nortmann et al. 2018),HD 189733b (Salz et al. 2018),WASP-107b (Allart et al. 2019) での報告がある.
また Mansfield et al. (2018) では,HAT-P-11b でハッブル宇宙望遠鏡の WFC3 を用いてヘリウムの超過吸収が存在することを報告している.

系外惑星大気中でのヘリウムの検出報告は最近増加している.この波長の Lyα 波長に対する優位性は,

(1) 星間物質に大きな影響を受けない (Indriolo et al. 2009)
(2) 地上から多数の中規模・大規模望遠鏡の高分散分光器を用いて観測できる

という点である.

準安定ヘリウムの特徴

1083 nm の吸収は,励起された 23S 状態にある中性ヘリウムに起因する.この準位は,基底状態から輻射的に分離している.そのため,準安定な準位である.

準安定ヘリウム順位の個数レベルと,それに伴う 1083 nm での吸収シグナルの強度は,惑星大気の特性だけではなく,入射する恒星輻射場の強度とスペクトルの形状にも依存する.興味深いことに,これまでにヘリウムが検出されている惑星の中心星 4 つはどれも活発な K 型星であり,軌道距離は 0.031- 0.055 AU と近い位置を公転している

結論

系外惑星大気中の準安定状態のヘリウムが検出されるのに適しているのは,惑星が近接軌道 (0.05 AU 未満) にあり,中心星が K 型星で,特に活動レベルが大きいという状況である.
この理論的な予測は観測と整合的であり,現時点でヘリウムが検出されている惑星の中心星は全てこれに当てはまる.

これまでにヘリウムの非検出報告があった惑星は,より高温な恒星 (A, G 型) と,低温な恒星 (M 型) の両方である.

M 型矮星はスペクトルの形状が最もハードであるが,惑星の恒星からの距離を同一とした状態での極端紫外線のフラックス水準が,K 型星周りの場合よりも少なくとも 1 桁小さくなる.そのため,準安定状態のヘリウムが生成されるためには,惑星は K 型星周りの場合と比較してずっと近くを公転している必要がある.

今回の解析では,準安定な三重項状態にあるヘリウム原子の割合を 1083 nm での吸収シグナルの強度の代用として使用した.しかし吸収シグナルの強度,例えば 1083 nm でのトランジット深さは,観測される惑星とその中心星の相対サイズにも依存することを強調しておく必要があるだろう.従って,あるサイズの惑星を考えた場合,より低温の主系列星の周りを公転する場合,三重項状態にいるヘリウムがより高い割合であることと,惑星-恒星の半径比が大きくなるという二重の利点を有することになる.

なお,A 型星まわりでは 1083 nm の明確な吸収は期待できないことが予想される.これらの恒星の周りでは中間紫外線の放射水準が高く,準安定ヘリウムが直接光電離されるのを介して,惑星大気中の準安定ヘリウムが短いタイムスケールで容易に減少してしまうことが原因である.

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