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論文関連の(ほぼ)個人用メモ。
arXiv:1903.02303
Kislyakova et al. (2019)
Transit Ly-α signatures of terrestrial planets in the habitable zones of M dwarfs
(M 矮星のハビタブルゾーン内の地球型惑星の Lyα トランジットの特徴)
系外地球型惑星の Lyα 波長でのトランジット深さを,3 つのタイプの大気を仮定して推定した.水素主体の大気,窒素主体の大気,および窒素主体で地球と同量の水素を含んでいる大気である.全てのタイプの大気で,恒星の Lyα 線中に生成するトランジット中の吸収を計算した.
また,これをハッブル宇宙望遠鏡で得られている GJ 436 のトランジット外の Lyα の観測に適用した.トランジットの特徴が検出可能かどうかを決定するために,観測の不定性を伴ったトランジット中の吸収を計算して比較を行った.さらにモデルを実証するため,このモデルを用いて GJ 436b のトランジットの最中に観測されている深い吸収の特徴をシミュレートし,観測を再現する能力があることを示した.
モデルでは,直接モンテカルロシミュレーション (direct simulation Monte Carlo, DSMC) を使用し,惑星の外気圏をモデル化した.計算コードはいくつかの分子種を含んでおり,中性粒子とイオンをトレースする.また,いくつかの電離機構を含む.例えば恒星風との電荷交換,光電子衝突の電離,電子衝突による電離,また粒子衝突をトレースできる.DSMC モデルの下端境界では,大気密度と温度,速度を,低層大気の流体力学モデルから得たもので与えている.
その結果,ハッブル宇宙望遠鏡に搭載されている Space Telescope Imaging Spectrograph (STIS) を用いた観測では,GJ 436 まわりのハビタブルゾーンを公転する小さい岩石地球類似惑星の場合,水素主体の大気のみが暫定的に検出可能であることが示された.純粋な窒素大気の場合も,窒素主体で地球類似の水素の高層大気への濃集がある大気を持つ惑星も,検出が出来ないことが判明した.
また GJ 436b の Lyα 観測は水素主体大気を仮定することでよく再現可能であり,これは Lyα 線の blue wing も red wing の両方共に再現可能である.このことは,温暖な海王星類似惑星は Lyα 観測に適した対象であることを示唆している.
一方で地球型惑星の場合,Lyα 波長での観測は,惑星が恒星に非常に近い軌道を公転しているか,数回の観測が行える場合のみ可能である.
arXiv:1903.02303
Kislyakova et al. (2019)
Transit Ly-α signatures of terrestrial planets in the habitable zones of M dwarfs
(M 矮星のハビタブルゾーン内の地球型惑星の Lyα トランジットの特徴)
概要
M 矮星 GJ 436 のハビタブルゾーン内を公転している可能性がある,仮説上の地球サイズ惑星の Lyα でのトランジットの特徴のモデル化を行った.系外地球型惑星の Lyα 波長でのトランジット深さを,3 つのタイプの大気を仮定して推定した.水素主体の大気,窒素主体の大気,および窒素主体で地球と同量の水素を含んでいる大気である.全てのタイプの大気で,恒星の Lyα 線中に生成するトランジット中の吸収を計算した.
また,これをハッブル宇宙望遠鏡で得られている GJ 436 のトランジット外の Lyα の観測に適用した.トランジットの特徴が検出可能かどうかを決定するために,観測の不定性を伴ったトランジット中の吸収を計算して比較を行った.さらにモデルを実証するため,このモデルを用いて GJ 436b のトランジットの最中に観測されている深い吸収の特徴をシミュレートし,観測を再現する能力があることを示した.
モデルでは,直接モンテカルロシミュレーション (direct simulation Monte Carlo, DSMC) を使用し,惑星の外気圏をモデル化した.計算コードはいくつかの分子種を含んでおり,中性粒子とイオンをトレースする.また,いくつかの電離機構を含む.例えば恒星風との電荷交換,光電子衝突の電離,電子衝突による電離,また粒子衝突をトレースできる.DSMC モデルの下端境界では,大気密度と温度,速度を,低層大気の流体力学モデルから得たもので与えている.
その結果,ハッブル宇宙望遠鏡に搭載されている Space Telescope Imaging Spectrograph (STIS) を用いた観測では,GJ 436 まわりのハビタブルゾーンを公転する小さい岩石地球類似惑星の場合,水素主体の大気のみが暫定的に検出可能であることが示された.純粋な窒素大気の場合も,窒素主体で地球類似の水素の高層大気への濃集がある大気を持つ惑星も,検出が出来ないことが判明した.
また GJ 436b の Lyα 観測は水素主体大気を仮定することでよく再現可能であり,これは Lyα 線の blue wing も red wing の両方共に再現可能である.このことは,温暖な海王星類似惑星は Lyα 観測に適した対象であることを示唆している.
一方で地球型惑星の場合,Lyα 波長での観測は,惑星が恒星に非常に近い軌道を公転しているか,数回の観測が行える場合のみ可能である.
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論文関連の(ほぼ)個人用メモ。
arXiv:1903.01478
Dalba & Tamburo (2019)
Spitzer Detection of the Transiting Jupiter-analog Exoplanet Kepler-167e
(トランジットする木星類似系外惑星ケプラー167e のスピッツァーによる検出)
スピッツァー宇宙望遠鏡で観測されたトランジットの時刻は,ケプラーで過去に観測された 2 回のトランジットからの天体暦と整合的である.
スピッツァー宇宙望遠鏡の観測では,他の長周期の系外惑星では存在することが知られている,数時間から数日のオーダーのトランジットタイミング変化 (transit timing variation, TTV) の存在は否定された.
このような TTV が存在する場合,トランジットを検出するためには長い観測時間が必要であり,またトランジット非検出のリスクが高いことから,トランジットのフォローアップ観測を難しいものにする.しかしこの惑星の場合は TTV の存在が検出されなかったため,将来のトランジットの時刻を予測することができ,ジェームズ・ウェッブ宇宙望遠鏡での観測が行われる時代でのトランジット時刻を 6 分未満の不定性で予測可能である.
TTV が検出されなかったことから,この系は外側に重い別の天体を持っていないか,あるいは他の天体との重力的相互作用が我々の検出の閾値を下回っていたかのどちらかであると考えられる.
また 3.6 µm 波長でのトランジット深さを測定し,系外惑星と太陽系のモデルを用いて,その透過スペクトルの予測を行った.
この惑星がトランジットを起こすということと,木星に類似しているという点から,将来の大気特徴付けを行うための独特な良い対象と言える.この惑星はトランジット系外惑星の中では非常に希少なカテゴリに属し,トランジットの天体暦が精密に制約されているため,系外惑星と太陽系の間の比較研究のベンチマークとなる.
この惑星のサイズや,軌道離心率が小さいこと,木星に似た量の恒星の輻射を受けていることから,木星に類似した「ジュピターアナログ」(Jupiter analog) だとみなされている.
ケプラーの観測では,この惑星のトランジットは 2 回しか検出されなかった.そのため TTV は検出できなかった.ケプラーで発見されている長周期のトランジット系外惑星とその候補天体のうち 50% は,少なくとも 2-40 時間の TTV を示すことが分かっている (Wang et al. 2015).このような変動はたった数回のトランジット観測では特徴付けすることが難しく,多くの場合,将来のトランジットの時刻の予測に回避不可能な不定性を残す.
arXiv:1903.01478
Dalba & Tamburo (2019)
Spitzer Detection of the Transiting Jupiter-analog Exoplanet Kepler-167e
(トランジットする木星類似系外惑星ケプラー167e のスピッツァーによる検出)
概要
ケプラー167e の部分的なトランジットの観測結果について報告する.この惑星は軌道周期が 1071 日の木星に類似た系外惑星であり,水のスノーラインよりも十分外側を公転している.観測はスピッツァー宇宙望遠鏡を用いて行われた.スピッツァー宇宙望遠鏡で観測されたトランジットの時刻は,ケプラーで過去に観測された 2 回のトランジットからの天体暦と整合的である.
スピッツァー宇宙望遠鏡の観測では,他の長周期の系外惑星では存在することが知られている,数時間から数日のオーダーのトランジットタイミング変化 (transit timing variation, TTV) の存在は否定された.
このような TTV が存在する場合,トランジットを検出するためには長い観測時間が必要であり,またトランジット非検出のリスクが高いことから,トランジットのフォローアップ観測を難しいものにする.しかしこの惑星の場合は TTV の存在が検出されなかったため,将来のトランジットの時刻を予測することができ,ジェームズ・ウェッブ宇宙望遠鏡での観測が行われる時代でのトランジット時刻を 6 分未満の不定性で予測可能である.
TTV が検出されなかったことから,この系は外側に重い別の天体を持っていないか,あるいは他の天体との重力的相互作用が我々の検出の閾値を下回っていたかのどちらかであると考えられる.
また 3.6 µm 波長でのトランジット深さを測定し,系外惑星と太陽系のモデルを用いて,その透過スペクトルの予測を行った.
この惑星がトランジットを起こすということと,木星に類似しているという点から,将来の大気特徴付けを行うための独特な良い対象と言える.この惑星はトランジット系外惑星の中では非常に希少なカテゴリに属し,トランジットの天体暦が精密に制約されているため,系外惑星と太陽系の間の比較研究のベンチマークとなる.
ケプラー167e について
この惑星は 0.9 木星半径で,K 型矮星の主星を 1071 日ごとにトランジットする (Kipping et al. 2016).ケプラーの 4 年という長い観測期間が,この長周期の系外惑星の検出を可能にした.この惑星のサイズや,軌道離心率が小さいこと,木星に似た量の恒星の輻射を受けていることから,木星に類似した「ジュピターアナログ」(Jupiter analog) だとみなされている.
ケプラーの観測では,この惑星のトランジットは 2 回しか検出されなかった.そのため TTV は検出できなかった.ケプラーで発見されている長周期のトランジット系外惑星とその候補天体のうち 50% は,少なくとも 2-40 時間の TTV を示すことが分かっている (Wang et al. 2015).このような変動はたった数回のトランジット観測では特徴付けすることが難しく,多くの場合,将来のトランジットの時刻の予測に回避不可能な不定性を残す.
論文関連の(ほぼ)個人用メモ。
arXiv:1903.01591
Chontos et al. (2019)
The Curious Case of KOI 4: Confirming Kepler's First Exoplanet
(KOI 4 の興味深い事例:ケプラーの最初の系外惑星の確認)
これらの中で最も奇妙な例のひとつが KOI 4.01 で,これはケプラーが初めて検出した惑星候補であった.なお,1-3 番目にあたる KOI 1.01,KOI 2.01,KOI 3.01 はケプラー打ち上げの前から存在が知られている系外惑星であった.
ここでは,この KOI 4.01 の確認と特徴付けを行った.KOI 4.01 が惑星であると確認された後に与えられた名称はケプラー1658b である.惑星の確認には,星震学と視線速度測定が用いられた.
ケプラー1658 は重く進化した準巨星であり,重いホットジュピターケプラー1658b を持つ.軌道周期は 3.85 日である.
この系は短周期 (100 日以下) の惑星を持つ進化した段階の恒星という数少ないサンプルのひとつであり,この惑星は軌道周期という観点から見ると,これまでに知られている中で進化した恒星に最も近い惑星である.
この系の独特さと短い軌道周期という性質から,ケプラー1658 は潮汐散逸とホットジュピター形成理論を検証するための新しいベンチマークとなる.
ケプラーの 4 年間の全ての観測データを用い,惑星の軌道崩壊率を \(\dot{P}\leq -0.42 {\rm s\,yr^{-1}}\) と制約した.またこの値から,潮汐の Q 値に強い制限を与えた.Q 値の下限値は (\(Q’_{*} \geq 4.826\times10^{3}\)) である.
中心星の有効温度は 6200 K 程度であり,spin-orbit misalignment の境界の 6250 K に近い.そのため,惑星の軌道傾斜角を制約するフォローアップ観測を行う良い対象であり,ホットジュピターの形成と移動の理論への洞察を与えるだろう.
Kepler Input Catalog (KIC) での KOI 4 のデータは,1.1 太陽半径の主系列星で有効温度は 6240 K とされていた.検出されたトランジット深さは 0.13% で,海王星サイズの惑星が公転していることを示唆していた.しかし深い二次食が観測されたため,KOI 4.01 は初期のケプラー KOI カタログ中では偽陽性と判断された.これは,主系列星を公転する海王星サイズの惑星の場合は二次食は小さすぎて観測できないとされたからである.
NASA Exoplanet Archive には,ケプラーの初めての系外惑星候補の複雑な経緯がより詳細に記録されている.
KOI 4.01 は最初の KOI カタログには惑星候補としては掲載されていなかったが,第二版のカタログには ‘moderate probability candidate’ として掲載され,中心星は高速自転星であることも付記された.第三版でも惑星候補として掲載されていたが,第四版では再び偽陽性に戻されていた.これは深い二次食が検出された影響と思われる.
第五版と第六版のカタログでは,特定のパラメータ空間内に KOI を配置しなかった.第七版のカタログは Robovetter パイプラインを用いた初めての完全に一様なカタログであり,過去に偽陽性とされた 237 個の KOI が,更新された恒星のパラメータを用いて惑星候補に戻された.この中には KOI 4 も含まれている,最後の版のカタログでも,Robovetter はこの系を惑星候補としている.
現在に至るまで,ケプラーが初めて発見した惑星候補は,本当の惑星検出だと確認されるのを待っている状態であった.
金属量:[m/H] = -0.18
質量:1.447 太陽質量
半径:2.891 太陽半径
軌道長半径:0.0546 AU
半径:1.04 木星半径
軌道離心率:0.0585
質量:5.88 木星質量
密度:7.00 g cm-3
・ケプラー1658b はホットジュピターであり,1.07 木星半径,5.73 木星質量,軌道周期は 3.85 日である.進化した恒星 (2.5 太陽半径以上,\(\log g \lesssim 3.7\)) を短周期 (100 日以下,0.5 AU 以下) で公転する数少ない惑星のひとつである.軌道距離はわずか 0.05 AU であり,この惑星は進化した恒星の周りの惑星としては最も中心星に近い.離心率がやや大きいという暫定的な証拠を検出した (e = 0.06 ± 0.02).これは,潮汐進化の研究では進化した恒星の周りの短周期惑星はやや軌道離心率を持つことが示唆されていることと整合的である.
・ケプラーによる 4 年間の観測によるトランジット時刻から,軌道崩壊率に強い上限値を与えた.軌道崩壊率は -0.42 秒/年 以下である.これより潮汐の Q 値に 4.826 × 103 以上という制約を与えた.この測定結果は,準巨星の潮汐の Q 値の初めての観測的な制約であり,過去に理論的に示唆されてきた 2 桁程度の Q 値を否定するものである.
・恒星の有効温度は 6250 K の spin-orbit misalignment の境界に近い.自転周期,射影した自転速度 \( v \sin i\) と恒星半径の組み合わせからは,惑星の傾斜角は大きいという暫定的な結論しか得られていない (16.50° - 163.50°).恒星の自転軸と惑星の公転軸の角度の測定は,将来的なロシター効果の分光観測が必要である.
arXiv:1903.01591
Chontos et al. (2019)
The Curious Case of KOI 4: Confirming Kepler's First Exoplanet
(KOI 4 の興味深い事例:ケプラーの最初の系外惑星の確認)
概要
ケプラーによる数千もの惑星系の発見は,惑星は普遍的な存在であることを示した.しかしケプラーの惑星候補の確認作業は大きな障壁であり,検出された多くの惑星候補は確認を待っている状態にある.これらの中で最も奇妙な例のひとつが KOI 4.01 で,これはケプラーが初めて検出した惑星候補であった.なお,1-3 番目にあたる KOI 1.01,KOI 2.01,KOI 3.01 はケプラー打ち上げの前から存在が知られている系外惑星であった.
ここでは,この KOI 4.01 の確認と特徴付けを行った.KOI 4.01 が惑星であると確認された後に与えられた名称はケプラー1658b である.惑星の確認には,星震学と視線速度測定が用いられた.
ケプラー1658 は重く進化した準巨星であり,重いホットジュピターケプラー1658b を持つ.軌道周期は 3.85 日である.
この系は短周期 (100 日以下) の惑星を持つ進化した段階の恒星という数少ないサンプルのひとつであり,この惑星は軌道周期という観点から見ると,これまでに知られている中で進化した恒星に最も近い惑星である.
この系の独特さと短い軌道周期という性質から,ケプラー1658 は潮汐散逸とホットジュピター形成理論を検証するための新しいベンチマークとなる.
ケプラーの 4 年間の全ての観測データを用い,惑星の軌道崩壊率を \(\dot{P}\leq -0.42 {\rm s\,yr^{-1}}\) と制約した.またこの値から,潮汐の Q 値に強い制限を与えた.Q 値の下限値は (\(Q’_{*} \geq 4.826\times10^{3}\)) である.
中心星の有効温度は 6200 K 程度であり,spin-orbit misalignment の境界の 6250 K に近い.そのため,惑星の軌道傾斜角を制約するフォローアップ観測を行う良い対象であり,ホットジュピターの形成と移動の理論への洞察を与えるだろう.
ケプラーが初めて発見した系外惑星候補の経緯
ケプラーが 2009 年 3 月に打ち上げられた段階で,ケプラーの観測視野内には地上観測を元にして 3 つの系外惑星の存在が既に知られていた.これらのターゲットには 3 つの KOI (Kepler Object of Interest) 番号が割り振られた.そのため,KOI 4 に付随する KOI 4.01 がケプラーによって初めて検出された惑星候補となる.Kepler Input Catalog (KIC) での KOI 4 のデータは,1.1 太陽半径の主系列星で有効温度は 6240 K とされていた.検出されたトランジット深さは 0.13% で,海王星サイズの惑星が公転していることを示唆していた.しかし深い二次食が観測されたため,KOI 4.01 は初期のケプラー KOI カタログ中では偽陽性と判断された.これは,主系列星を公転する海王星サイズの惑星の場合は二次食は小さすぎて観測できないとされたからである.
NASA Exoplanet Archive には,ケプラーの初めての系外惑星候補の複雑な経緯がより詳細に記録されている.
KOI 4.01 は最初の KOI カタログには惑星候補としては掲載されていなかったが,第二版のカタログには ‘moderate probability candidate’ として掲載され,中心星は高速自転星であることも付記された.第三版でも惑星候補として掲載されていたが,第四版では再び偽陽性に戻されていた.これは深い二次食が検出された影響と思われる.
第五版と第六版のカタログでは,特定のパラメータ空間内に KOI を配置しなかった.第七版のカタログは Robovetter パイプラインを用いた初めての完全に一様なカタログであり,過去に偽陽性とされた 237 個の KOI が,更新された恒星のパラメータを用いて惑星候補に戻された.この中には KOI 4 も含まれている,最後の版のカタログでも,Robovetter はこの系を惑星候補としている.
現在に至るまで,ケプラーが初めて発見した惑星候補は,本当の惑星検出だと確認されるのを待っている状態であった.
パラメータ
ケプラー1658
有効温度:6126 K金属量:[m/H] = -0.18
質量:1.447 太陽質量
半径:2.891 太陽半径
ケプラー1658b
軌道周期:3.8494 日軌道長半径:0.0546 AU
半径:1.04 木星半径
軌道離心率:0.0585
質量:5.88 木星質量
密度:7.00 g cm-3
結論
・ケプラー1658 は準巨星で,有効温度 6216 K,2.89 太陽半径,1.45 太陽質量である.準巨星であるため,現在恒星進化の急速な段階にある.同様の進化状態にある恒星で系外惑星を持っているのは,この天体を含めて 9 個のみである (統計的に実証された惑星 15 個を含む).・ケプラー1658b はホットジュピターであり,1.07 木星半径,5.73 木星質量,軌道周期は 3.85 日である.進化した恒星 (2.5 太陽半径以上,\(\log g \lesssim 3.7\)) を短周期 (100 日以下,0.5 AU 以下) で公転する数少ない惑星のひとつである.軌道距離はわずか 0.05 AU であり,この惑星は進化した恒星の周りの惑星としては最も中心星に近い.離心率がやや大きいという暫定的な証拠を検出した (e = 0.06 ± 0.02).これは,潮汐進化の研究では進化した恒星の周りの短周期惑星はやや軌道離心率を持つことが示唆されていることと整合的である.
・ケプラーによる 4 年間の観測によるトランジット時刻から,軌道崩壊率に強い上限値を与えた.軌道崩壊率は -0.42 秒/年 以下である.これより潮汐の Q 値に 4.826 × 103 以上という制約を与えた.この測定結果は,準巨星の潮汐の Q 値の初めての観測的な制約であり,過去に理論的に示唆されてきた 2 桁程度の Q 値を否定するものである.
・恒星の有効温度は 6250 K の spin-orbit misalignment の境界に近い.自転周期,射影した自転速度 \( v \sin i\) と恒星半径の組み合わせからは,惑星の傾斜角は大きいという暫定的な結論しか得られていない (16.50° - 163.50°).恒星の自転軸と惑星の公転軸の角度の測定は,将来的なロシター効果の分光観測が必要である.
論文関連の(ほぼ)個人用メモ。
arXiv:1903.00031
Johns et al. (2019)
KELT-23b: A Hot Jupiter Transiting a Near-Solar Twin Close to the TESS and JWST Continuous Viewing Zones
(KELT-23b:TESS と JWST で継続的に観測する領域付近の近傍のソーラーツインをトランジットするホットジュピター)
惑星が受ける輻射は強く,半径は膨張していると考えられる.強い潮汐相互作用により,惑星はおおよそ数十億年のタイムスケールで中心星に落下していると考えられる.
この系は,これまでに知られているトランジット惑星を持つ恒星の中で最も大きい黄緯を持っており,Transiting Exoplanet Survey Satellite (TESS) と ジェームズ・ウェッブ宇宙望遠鏡が継続的に観測する領域に近い範囲にある.そのため,これらの観測機器を用いた長期間のモニタリングとフォローアップ観測に非常に適した対象であると期待される.
年齢:63 億歳
距離:127.1 pc
スペクトル型:G2V
質量:0.945 太陽質量
半径:0.995 太陽半径
光度:1.082 太陽光度
有効温度:5900 K
金属量:[Fe/H] =-0.105
半径:1.322 木星半径
軌道長半径:0.03303 AU
平衡温度:1561 K
質量:0.938 木星質量
密度:0.504 g cm-3
arXiv:1903.00031
Johns et al. (2019)
KELT-23b: A Hot Jupiter Transiting a Near-Solar Twin Close to the TESS and JWST Continuous Viewing Zones
(KELT-23b:TESS と JWST で継続的に観測する領域付近の近傍のソーラーツインをトランジットするホットジュピター)
概要
新しい系外惑星 KELT-23b の発見について報告する.この惑星は,比較的明るい恒星 (V = 10.3) BD+66 911 (TYC 4187-996-1) をトランジットするホットジュピターである.また,フォローアップ測光と分光観測で系の特徴付けを行った.惑星が受ける輻射は強く,半径は膨張していると考えられる.強い潮汐相互作用により,惑星はおおよそ数十億年のタイムスケールで中心星に落下していると考えられる.
この系は,これまでに知られているトランジット惑星を持つ恒星の中で最も大きい黄緯を持っており,Transiting Exoplanet Survey Satellite (TESS) と ジェームズ・ウェッブ宇宙望遠鏡が継続的に観測する領域に近い範囲にある.そのため,これらの観測機器を用いた長期間のモニタリングとフォローアップ観測に非常に適した対象であると期待される.
パラメータ
KELT-23
別名:BD+66 911,TYC 4187-996-1年齢:63 億歳
距離:127.1 pc
スペクトル型:G2V
質量:0.945 太陽質量
半径:0.995 太陽半径
光度:1.082 太陽光度
有効温度:5900 K
金属量:[Fe/H] =-0.105
KELT-23b
軌道周期:2.255353 日半径:1.322 木星半径
軌道長半径:0.03303 AU
平衡温度:1561 K
質量:0.938 木星質量
密度:0.504 g cm-3
論文関連の(ほぼ)個人用メモ。
arXiv:1902.09670
David et al. (2019)
A warm Jupiter-sized planet transiting the pre-main sequence star V1298 Tau
(前主系列星おうし座V1298星をトランジットする温暖な木星サイズ惑星)
若い恒星の周りでのホットジュピターは過去に報告されているが,それらはトランジットを起こさない惑星であり,近い将来での惑星大気の特徴付けを行える可能性は低い.
惑星のトランジット深さが 0.5% であり,中心星が明るく (Ks = 8.1),中心星の自転が速いこと (\(v\sin i = 23 {\rm km s-1}\)) から,この系は透過光分光観測とドップラートモグラフィーによるフォローアップ観測の良い対象である.
この惑星は木星サイズだが,視線速度のばらつきの振幅が大きいため現時点では質量は不明である.しかし,この惑星は少なくとも 1 つのクラスのウォームジュピターの形成シナリオに制限を与える一助になり,巨大惑星の内部と大気の進化を調べる良い対象となるだろう.
スペクトル型:K0 - K1.5
質量:1.10 太陽質量
半径:1.305 太陽半径
有効温度:4970 K
光度:0.934 太陽光度
自転周期:2.851 日
年齢:2300 万歳
軌道離心率:0.087
半径:0.904 木星半径
質量:8.3 木星質量未満
軌道長半径:0.1688 AU
平衡温度:601 K
arXiv:1902.09670
David et al. (2019)
A warm Jupiter-sized planet transiting the pre-main sequence star V1298 Tau
(前主系列星おうし座V1298星をトランジットする温暖な木星サイズ惑星)
概要
新しい系外惑星おうし座V1298星b (V1298 Tau b) の検出について報告する.これは温かい木星サイズの惑星で,推定年齢 2300 万歳の若いソーラーアナログの前主系列星をトランジットしている.観測は,ケプラーの K2 ミッションの Campaign 4 の期間に行われた.若い恒星の周りでのホットジュピターは過去に報告されているが,それらはトランジットを起こさない惑星であり,近い将来での惑星大気の特徴付けを行える可能性は低い.
惑星のトランジット深さが 0.5% であり,中心星が明るく (Ks = 8.1),中心星の自転が速いこと (\(v\sin i = 23 {\rm km s-1}\)) から,この系は透過光分光観測とドップラートモグラフィーによるフォローアップ観測の良い対象である.
この惑星は木星サイズだが,視線速度のばらつきの振幅が大きいため現時点では質量は不明である.しかし,この惑星は少なくとも 1 つのクラスのウォームジュピターの形成シナリオに制限を与える一助になり,巨大惑星の内部と大気の進化を調べる良い対象となるだろう.
パラメータ
おうし座V1298星
距離:108.5 pcスペクトル型:K0 - K1.5
質量:1.10 太陽質量
半径:1.305 太陽半径
有効温度:4970 K
光度:0.934 太陽光度
自転周期:2.851 日
年齢:2300 万歳
おうし座V1298星b
軌道周期:24.13889 日軌道離心率:0.087
半径:0.904 木星半径
質量:8.3 木星質量未満
軌道長半径:0.1688 AU
平衡温度:601 K