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論文関連の(ほぼ)個人用メモ。



arXiv:1808.08055
Zarka et al. (2018)
Jupiter radio emission induced by Ganymede and consequences for the radio detection of exoplanets
(ガニメデに誘起される木星の電波放射と系外惑星の電波検出への影響)

概要

Nançay Decameter Array による 26 年間に渡る木星観測のデータベースの解析から,ガニメデ-木星の相互作用によって引き起こされる電波放射の存在を明確に特定した.これらの放射のエネルギー論について,放射の強度,期間,パワーの分布について調査し,イオ-木星系からの電波放射と比較した.

この解析により,木星からの平均の放射電波強度は,障害物 (この場合は衛星) によって捕獲された,回転する木星の磁気圏からのポインティングフラックスに比例することを実証することが可能となる.


また今回の結果を一般化し,電波と磁場のスケーリング則を導出した.これは,磁化された流れと,磁化された障害物および磁化されていない障害物双方との全てのプラズマ相互作用に適用することが出来ると考えられる.

得られたスケーリング則を,ホットジュピターに相当するパラメータ領域に外挿した.その結果,ホットジュピターからは大きな電波強度が得られることが予想される.この電波放射は,新世代の電波望遠鏡を用いて検出可能だと考えられる.


さらに,ガニメデ-木星系とイオ-木星系の電波放射イベントの期間の分布を比較した.
後者はイオによって励起された半永久的なアルフヴェン波から来ているが,前者に関してはおそらくガニメデと木星の磁場の間の突発的な繋ぎ変え (magnetic reconection) から来ていると考えられる.これは木星の磁場の配置によって制御され,その自転によって変調される.

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論文関連の(ほぼ)個人用メモ。



arXiv:1808.07055
Wong et al. (2018)
Comment on "Gravitational waves from ultra-short period exoplanets"
(『超短周期系外惑星からの重力波』へのコメント)

概要

最近 Cunha et al. (2018) により,系外惑星からの重力波の検出可能性について再考察が行われ,3 つの超短周期惑星系からの重力波は LISA で検出可能だという主張がされている.

ここでは彼らの解析を再考し,現在の既知の系外惑星系からの重力波は LISA によって検出可能では無いと結論付ける

LISA の観測時間として 4 年間を仮定した場合でも,観測可能な系として挙げられている 3 つの超短周期惑星系のうちの 1 つである GP Com b (かみのけ座GP星b) について,検出のためにはその系の特徴についてのより良い情報と,LISA の反応および銀河由来のノイズの両方のより慎重なモデリングが必要になるだろう.

とはいえ,LISA による系外惑星からの重力波検出の可能性は,電磁波での観測では制約するのが難しい力学的な特性 (例えば,質量,離心率,傾斜角と距離) を得ることが出来るため,今後の研究対象として十分興味深い.

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論文関連の(ほぼ)個人用メモ。



arXiv:1808.07010
Jensen et al. (2018)
Hydrogen and Sodium Absorption in the Optical Transmission Spectrum of WASP-12b
(WASP-12b の可視光透過スペクトル中の水素とナトリウム吸収)

概要

WASP-12 の中分散 (R ~ 15000) の分光観測を 10 時間以上に渡って行った.このうち ~ 2 時間は,惑星 WASP-12b がトランジットしている最中の観測である.この観測は Hobby-Eberly Telescope (HET) を用いて行われた.

得られた透過スペクトル中には,Hα と Na I (Na D 二重線) の,強く統計的に有意な吸収の特徴が見られた.透過スペクトルを位相の関数として調べた際に,Hα と Na I の両方のトランジット前と後の吸収についての示唆が得られた.

トランジット前に見られる吸収は,WASP-12b における金属吸収の過去の結果と概ね整合的であった,また Na I 吸収の水準は,過去の暫定的な検出と整合的な結果であった.なお,Ca I の吸収は見られなかった.

WASP-12b で見られた Hα 吸収シグナルが,周惑星物質起源かどうかについて特に議論を行った.これは,トランジット前と後の証拠によって裏付けられた解釈.

また HD 189733 系との違いについても議論し,その吸収の起源の物理的な理解への意味合いについても議論.

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論文関連の(ほぼ)個人用メモ。



arXiv:1808.05947
Rosenthal & Murray-Clay (2018)
Restrictions on the Growth of Gas Giant Cores via Pebble Accretion
(ペブル降着を介した巨大ガス惑星コアの成長への制限)

概要

ペブル降着 (pebble accretion) として知られる,ガスに補佐された惑星成長の一桁精度のモデルを乱流物質中に適用した.これを元にして,なぜいくつかの系では遠距離のガス惑星が存在し,その他ではそのような惑星が存在しないのかという疑問に対する答えを示唆した.

微惑星との弾道衝突による古典的な惑星の成長とは対照的に,ペブル降着による惑星の成長は,最も大きなコア質量では必ずしも doubling time によって律速されない.特に円盤ガスの乱流は,より低いコア質量で成長のボトルネックになる可能性がある.
ここでは,微惑星による成長とペブル降着による成長の組み合わせが,ガス惑星が形成される最大軌道長半径をどの様に制限するか調査した.

基準円盤パラメータを用いた場合,強い乱流 (α ≳ 10-2) が存在する場合は,巨大ガス惑星のコアが形成される範囲は中心星から 40 AU 以内に制限される,一方で,弱い乱流の条件ではガス惑星は 70 AU の距離まで形成可能である.

乱流強度を示す α と惑星の軌道長半径の対応性は,成長に可能な小さい天体のサイズに依存する.乱流と小さい天体のサイズ分布に対するこの依存性は,大きく離れた軌道間隔を持つ巨大惑星が少ないことを説明する可能性がある.

また,乱流が低い水準 (α が 10-4 以下) である場合は円盤の遠方で巨大ガス惑星が形成できる一方で,形成されるこれらのガス惑星は 1 木星質量程度以下の低質量になることが予想される.
これらの軽い惑星は,現在の世代の直接撮像サーベイで検出できるほど明るくはならない.そのため,大きく離れた軌道を持つガス惑星は現在のところ A 型星の周りでしか発見されていないという事実を説明できる可能性がある.

遠方軌道でのガス惑星形成

コア降着モデル

古典的なコア降着モデル (core accretion) では,惑星の成長はボトムアップ的に発生すると考えられている.

惑星はその成長を岩石のコア,あるいは原始惑星として開始する.もしこれらの原始惑星がガス円盤の寿命の間に十分なサイズに成長した場合,これらは暴走ガス降着を引き起こし,ガス惑星に成長する (Pollack et al. 1996).

この暴走降着は,原始惑星周りの大気の質量が,コア質量と同程度になった段階で発生する.暴走降着が発生する限界のコア質量として臨界コア質量 (critical core mass) という概念があり,これはしばしば 10 地球質量程度とされている.しかし実際の臨界コア質量は円盤のパラメータよって変わり.特に円盤の不透明度と固体コアへの質量降着率に依存する (Rafikov 2006, Piso et al. 2015など).

円盤の寿命の間に原始惑星が臨界コア質量に達しない場合は,ガス惑星は形成されない.円盤の寿命は,G 型星のまわりでは 250 万年程度と考えられている (Mamajek 2009,Ribas et al. 2014),

古典的なモデルでは,原始惑星への天体の衝突の有効半径の増加は,重力フォーカシングに頼ってきた.この微惑星降着モデルでは,臨界コア質量への成長タイムスケールは 10 AU 程度以内の範囲であれば十分早いが,この距離以遠では円盤消失のタイムスケールよりも長くなってしまうという問題点がある.

コア降着モデルの問題点とその他の可能性

近年,この古典的な形成モデルは困難に直面している,特に,遠方軌道を公転するガス惑星が発見されているという問題点がある.
例えば HR 8799 では,4 つのガス惑星が 14, 24, 38, 68 AU の大きな軌道に存在している (Marois et al. 2008,Marois et al. 2010).このような遠方では,円盤が消失するまでの間に原始惑星が臨界コア質量に到達できないという重大な問題点がある.

原始惑星の成長を促進する追加の効果として,惑星の大気によるガス摩擦 (Inaba & Ikoma 2003) や,円盤ガスによる微惑星のランダム運動の減衰 (Rafikov 2004) などが,原始惑星への衝突の断面積をさらに増加させる効果として提案されている.しかしこれらの効果のいずれも,70 AU での巨大ガス惑星のその場形成を可能にするほど十分ではない.

遠方惑星を形成するためのその他の機構としては,重力不安定がある.これは原始惑星系円盤のガス成分が不安定になって重力崩壊を起こし,その断片が現在観測されているようなガス惑星になるというものである (Boss 1997など).

しかしこのモデルにも,生成した断片が惑星ではなく,褐色矮星や,場合によっては M 型星になってしまという困難がある.

遠方のガス惑星は,内側で形成された後に外側に飛ばされたという可能性もある.しかし N 体シミュレーションでは,HR 8799 の複数惑星系のような系を軌道散乱で形成するのは困難であることが指摘されている (Dodson-Robinson et al. 2009).

ペブル降着による惑星形成モデル

最近は,惑星形成に関して第三の可能性が提案されている.これは従来のコア降着理論の修正版であり,ペブル降着 (pebble accretion) と呼ばれるものである.あるいは gas-assisted growth とも呼ばれる (Ormel & Klahr 2010など).

ペブル降着モデルでは,原始惑星の成長率を決定する際に,固体天体とガス円盤の相互作用が詳細に考慮されている.特に,ガス摩擦が小さい天体からエネルギーを取り除くことによって,原始惑星の成長率を増加される.

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論文関連の(ほぼ)個人用メモ。



arXiv:1808.05653
Hoeijmakers et al. (2018)
Atomic iron and titanium in the atmosphere of the exoplanet KELT-9b
(系外惑星 KELT-9b の大気中の鉄とチタン原子)

概要

系外惑星の科学組成は,その形成史を制限するために重要な要素である.
鉄は遷移金属の中で最も豊富に存在する元素だが,難揮発性であるため系外惑星大気では直接検出されていなかった.

KELT-9b はウルトラホットジュピターと呼ばれるタイプの原型的な惑星である.この惑星の平衡温度は 4050 K に達し,恒星とガス惑星の間に位置しているため,大気化学を研究するための良い対象である.この惑星の大気は,化学平衡及び雲のない状態に近い,厳密に制約された化学システムであることが示唆されている.

過去の研究では,この惑星の大気からは,可視光の波長域で鉄のスペクトル線が検出可能だと予測されていた.このような高温な環境では,鉄及びその他の遷移金属元素は分子中または雲粒子中には隔離されず,原子として大気中に存在することが出来るからである.

ここでは,KELT-9b の大気中からの中性の鉄原子と一価の鉄イオン,および一価のチタンイオンの直接検出について報告する.これらの元素は,惑星のトランジットの最中に得られた高分散スペクトルに相互相関技術を適用して検出された.

ウルトラホットジュピター大気中の金属元素

ウルトラホットジュピター中の金属元素の検出にかんする理論的な予測は Kitzmann et al. (2018) によってなされている.この研究に動機づけられ,HAPRS-N 分光器を用いて KELT-9b のトランジットを観測して透過スペクトルを取得した.このスペクトル中に,Fe, Fe+, Ti と Ti+ の特徴が見られるか探査を行った.

これらの元素の大気中における存在比は,大気温度が 2500 - 6000 K の範囲で何桁も変化する.

Fe+ は,大気が化学平衡状態にあることを仮定するかどうかに依存して,3900 - 4300 K で Fe よりも多くなる.あるいは,光化学反応と大気の鉛直混合が存在するかにも依存する.一方で Ti+ は 3000 - 3400 K で Ti より多くなる.
なお,これらの推定は惑星大気が太陽金属量であることを仮定している.

観測結果

観測で得られたスペクトルの相互相関関数 (cross-correlation function, CCF) は,Fe, Fe+, Ti+ の特徴にピークが見られた.

ラインのコントラストは,Fe が (0.28 ± 0.03) × 10−3 (9.3σ), Fe+ が (2.21 ± 0.08) × 10−3 (26σ),Ti+ は (1.28 ± 0.07) × 10−3 (18σ) であった.
なお Ti に関しては明確な検出は見られず,0.18 ± 0.05 × 10-3 (3.3σ) であった.

Fe+ のラインが Fe を上回っていることから,今回の観測で探査した領域の大気の温度は ~ 4000 K を上回っていることが示唆される.また,Ti が検出されなかったこともこの解釈を支持している.

今回の検出は,将来的な近赤外線波長での一酸化炭素と水の検出に向けた一歩となる.このような高温な惑星大気中では,一酸化炭素は主要な大気成分となる分子であることが期待され,その存在度は C/H 比もしくは O/H 比を直接反映していると考えられる.

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